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「親父、他のダンジョンの事は一先ずどうでも良いから、早くしよう」
何をしようとは具体的に言わないハリアム。
既に貰ったポーション五本は使い切っており、そのポーションすら秘匿しろと言われていたのだから更に強力な処置をしてもらう事も秘匿するべきだと道中で話し合った結果だ。
「わかった、その通りだな。良し行くぞ」
ジッタの腕の中には、10歳の少女リエッタが少々苦しそうな息をしながら眠っており、優しく抱き締めながらダンジョンに入って行く五人の家族。
初めてここに入る妻のグリンは中に存在している町の広さに驚くが、それは一瞬で、直ぐに真剣な表情をしてジッダに抱かれているリエッタに向けて視線が固定される。
その表情は、真剣ながらも不安、そして安堵が混ざった何とも言えない表情だが、もうこのダンジョンマスターに縋るしかないと、割り切っている。
入口にある一際大きな建物は混雑して直ぐには中に入れそうにない状態でヤキモキしつつ列に並んでいるが、アイズから連絡を受けたヒカリが席を外して外に出て、ジッダに視線で合図する。
その合図を正確に読み取ったジッタは家族について来るように言うと、そっと列から離脱して建屋の裏手に移動する。
「お待ちしておりました。ジッタさん、皆さん……どうやら持ちこたえて頂けたようですね。もう大丈夫です。さっ、こちらへどうぞ」
ヒカリ以外には分からないが、この場にはチェーの分裂体も存在しており、リエッタの様子を確認してヒカリに詳細を告げたのだ。
非常に衰弱しているが数日間は命の危険はないとの事で、安堵しつつも裏手から建屋に入り、とある個室に案内してリエッタを準備済みの布団に寝かせてもらう。
「では、お約束通りリエッタさんを回復致します。今から、このダンジョンの幹部が此方に転移で参ります。ここまで僕達の内情を明らかにするのは皆さんが初めてですので、完全に秘匿している訳ではありませんが、暫くは内密にお願いします」
ジッタ側からすると是非もないので只々頷き、一刻も早くリエッタを回復してもらいたい気持ちになっている。
「お待たせいたしました。私、このダンジョンマスターの忠実な僕、ハライチと申します」
ヒカリの宣言直後に転移してきたのは、右手にチェーの本体を巻いて左手にビーの原液状態の回復薬を持ったハライチだ。
「私、正確には主様の眷属ではありませんが、非常に大切……皆様が直ぐに想像するような<淫魔族>に対する行いは一切ございませんが、非常に大切にして頂いております。そこだけはお間違えの無いようにお願い致します」
世間一般に知られているダンジョンマスターの眷属・配下の<淫魔族>の扱いは、やはり夜の話に繋がりやすいが、自らの主は安易にそのような行動に走る者ではないと釘を刺しておきたかったハライチだ。
「私としては、何時でも良いのですが……カーリ様がいらっしゃいますからね」
独り言のように呟かれた言葉はチェーにしか聞こえていないが、チェーも二人の<淫魔族>が主に多大な貢献をしている事は知っており、主に対する忠誠からそう思うのも当然だろうと思っているし、敢えてハライチの言葉を周囲に漏らすような事もしない。
「実は、この回復薬は皆様が想像している以上の効果を持っております。本来はここまでは必要ないのですが、少しお願いも有る事から……あっ、ご心配なく。無理であればそれで結構ですし、当然回復はお約束した通り致します。コホン。そんな訳で、必要以上に効果のある回復薬をお持ちしました。では、どうぞ」
淡く七色に光り輝いている、非常に神々しい回復薬を渡されるジッタ。
見た目からも相当高価で効果が高い物である事は分かるし、その回復薬を手にしただけで具合が良くなっている気がするほどの貴重品。
あまり詳しくはないが、この回復薬がダンジョンにあると分かった時点で相当数の冒険者や国家がコレを求めて侵入する事は間違いないだろうと感じている。
そこまでの回復薬を渡しながら言われた“お願い”と言う言葉について少々思う所はあるのだが、今は娘の回復が最重要課題なので、軽くゆすって意識を取り戻させ、優しく口元に持って行く。
馬車の移動中に四回経験しているので、スムーズに作業は行われる。
量はそう多くないので、弱っているリエッタでも直ぐに飲み干す事が出来た。
その直後……リエッタの体が回復薬と同じ様に淡く七色に輝くと、徐々にその光が収まり……夢にまで見た元気なリエッタが見えたのだ。
「「「「リエッタ!!」」」」
道中用にと貰った五本の回復薬の効能も素晴らしく、ヒカリの言っていた完全回復させると言う言葉に縋ってここまで来たが、どうしても少々不安が残っていたジッタ一行。
今までどこの薬師に見せても、錬金術師に見せても、回復魔法を使える者に見せても、微妙に改善させる事は出来ても、治す事は出来なかったからだ。
それが、今目の前には夢にまで見た元気な娘がいるのだから、家族が抱き合って涙しながら喜んでいた。
ハライチとしては直ぐにでも主の願い、一階層の纏め役をお願いしたかったのだが、流石にここで水を差すのはどうかと思い、只々微笑んでジッタ家族をヒカリと共に見守っている。
相当時間が経過したのだが、漸く周囲に意識が向けられる程に落ち着いたジッタは、ハライチの優しい視線に気が付いて慌ててお礼を述べ、その姿に引き摺られて残りの四人も頭を下げた。
その後、漸くダンジョンマスターの意向を伝える事が出来、その程度なら……と一も二もなく了承されて安堵の表情で最下層に戻るハライチと、戦場のようになっているこの建屋の受付側に戻るヒカリだ。
何をしようとは具体的に言わないハリアム。
既に貰ったポーション五本は使い切っており、そのポーションすら秘匿しろと言われていたのだから更に強力な処置をしてもらう事も秘匿するべきだと道中で話し合った結果だ。
「わかった、その通りだな。良し行くぞ」
ジッタの腕の中には、10歳の少女リエッタが少々苦しそうな息をしながら眠っており、優しく抱き締めながらダンジョンに入って行く五人の家族。
初めてここに入る妻のグリンは中に存在している町の広さに驚くが、それは一瞬で、直ぐに真剣な表情をしてジッダに抱かれているリエッタに向けて視線が固定される。
その表情は、真剣ながらも不安、そして安堵が混ざった何とも言えない表情だが、もうこのダンジョンマスターに縋るしかないと、割り切っている。
入口にある一際大きな建物は混雑して直ぐには中に入れそうにない状態でヤキモキしつつ列に並んでいるが、アイズから連絡を受けたヒカリが席を外して外に出て、ジッダに視線で合図する。
その合図を正確に読み取ったジッタは家族について来るように言うと、そっと列から離脱して建屋の裏手に移動する。
「お待ちしておりました。ジッタさん、皆さん……どうやら持ちこたえて頂けたようですね。もう大丈夫です。さっ、こちらへどうぞ」
ヒカリ以外には分からないが、この場にはチェーの分裂体も存在しており、リエッタの様子を確認してヒカリに詳細を告げたのだ。
非常に衰弱しているが数日間は命の危険はないとの事で、安堵しつつも裏手から建屋に入り、とある個室に案内してリエッタを準備済みの布団に寝かせてもらう。
「では、お約束通りリエッタさんを回復致します。今から、このダンジョンの幹部が此方に転移で参ります。ここまで僕達の内情を明らかにするのは皆さんが初めてですので、完全に秘匿している訳ではありませんが、暫くは内密にお願いします」
ジッタ側からすると是非もないので只々頷き、一刻も早くリエッタを回復してもらいたい気持ちになっている。
「お待たせいたしました。私、このダンジョンマスターの忠実な僕、ハライチと申します」
ヒカリの宣言直後に転移してきたのは、右手にチェーの本体を巻いて左手にビーの原液状態の回復薬を持ったハライチだ。
「私、正確には主様の眷属ではありませんが、非常に大切……皆様が直ぐに想像するような<淫魔族>に対する行いは一切ございませんが、非常に大切にして頂いております。そこだけはお間違えの無いようにお願い致します」
世間一般に知られているダンジョンマスターの眷属・配下の<淫魔族>の扱いは、やはり夜の話に繋がりやすいが、自らの主は安易にそのような行動に走る者ではないと釘を刺しておきたかったハライチだ。
「私としては、何時でも良いのですが……カーリ様がいらっしゃいますからね」
独り言のように呟かれた言葉はチェーにしか聞こえていないが、チェーも二人の<淫魔族>が主に多大な貢献をしている事は知っており、主に対する忠誠からそう思うのも当然だろうと思っているし、敢えてハライチの言葉を周囲に漏らすような事もしない。
「実は、この回復薬は皆様が想像している以上の効果を持っております。本来はここまでは必要ないのですが、少しお願いも有る事から……あっ、ご心配なく。無理であればそれで結構ですし、当然回復はお約束した通り致します。コホン。そんな訳で、必要以上に効果のある回復薬をお持ちしました。では、どうぞ」
淡く七色に光り輝いている、非常に神々しい回復薬を渡されるジッタ。
見た目からも相当高価で効果が高い物である事は分かるし、その回復薬を手にしただけで具合が良くなっている気がするほどの貴重品。
あまり詳しくはないが、この回復薬がダンジョンにあると分かった時点で相当数の冒険者や国家がコレを求めて侵入する事は間違いないだろうと感じている。
そこまでの回復薬を渡しながら言われた“お願い”と言う言葉について少々思う所はあるのだが、今は娘の回復が最重要課題なので、軽くゆすって意識を取り戻させ、優しく口元に持って行く。
馬車の移動中に四回経験しているので、スムーズに作業は行われる。
量はそう多くないので、弱っているリエッタでも直ぐに飲み干す事が出来た。
その直後……リエッタの体が回復薬と同じ様に淡く七色に輝くと、徐々にその光が収まり……夢にまで見た元気なリエッタが見えたのだ。
「「「「リエッタ!!」」」」
道中用にと貰った五本の回復薬の効能も素晴らしく、ヒカリの言っていた完全回復させると言う言葉に縋ってここまで来たが、どうしても少々不安が残っていたジッタ一行。
今までどこの薬師に見せても、錬金術師に見せても、回復魔法を使える者に見せても、微妙に改善させる事は出来ても、治す事は出来なかったからだ。
それが、今目の前には夢にまで見た元気な娘がいるのだから、家族が抱き合って涙しながら喜んでいた。
ハライチとしては直ぐにでも主の願い、一階層の纏め役をお願いしたかったのだが、流石にここで水を差すのはどうかと思い、只々微笑んでジッタ家族をヒカリと共に見守っている。
相当時間が経過したのだが、漸く周囲に意識が向けられる程に落ち着いたジッタは、ハライチの優しい視線に気が付いて慌ててお礼を述べ、その姿に引き摺られて残りの四人も頭を下げた。
その後、漸くダンジョンマスターの意向を伝える事が出来、その程度なら……と一も二もなく了承されて安堵の表情で最下層に戻るハライチと、戦場のようになっているこの建屋の受付側に戻るヒカリだ。
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【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
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