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ここは、湯原と水野のダンジョン44階層の城のとある一室。
「セーギ君。聞きました?」
「うん。残念だけど、なんだかどこかのダンジョン……」
「淀嶋・水元、そして召喚冒険者の岩本の三人に対して、弦間です、主様」
最近はのんびり過ごす事がデフォルトになってしまっているので、他のダンジョンの状況はあまり頭に残っていない湯原。
すっかり名前すら忘れ去ってしまい、ハライチにフォローして貰っている程だ。
「そうそう、それそれ。全く迷惑だよね。そのせいで心配事もあるし」
「主様、今回の争いは三つのダンジョンが絡んでおりますので、それぞれの所属国家、ラスリ王国と隣国のコッタ帝国でも相当な騒動になっております。その影響が出始めており、移住者が一気に増加する見込みです」
「ハライチちゃん。それって、今の一階層だと住居が不足すると言う事ですか?」
「いいえ、カーリ様。そうではありませんが、恐らく一階層入り口の受付を兼ねている場所、ヒカリ様達はてんてこ舞いになるでしょうし、家を決める際にも多少のいざこざは出る可能性があります」
「ハライチの指摘の通りです。受付に関しては元ダンジョンマスターの二人、元眷属がおりますので何とかなると思いますが、街中は……今後の生活も考えると人族に何とかして頂きたい所です」
「ハライチとミズイチは、何か良い案があるの?」
すっかりブレーンの二人を信頼しきっている湯原と水野は、今までも数多くの問題を可決してきた実勢があるので今回も何かあるのだろうと期待しており、その姿を見たハライチとミズイチも主からの期待の視線を受けてやる気を漲らせている。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「親父、なんだかきな臭くなっている気がしないか?」
「俺もそう思うね。少し遠くで魔物がざわついているのは聞こえるけど……未だに一度も襲われていないのは、どういう訳だろう?」
「確かに不思議だが、今は何をおいてもあのダンジョンに無事に辿り着く事だけを考えろ!」
湯原と水野のダンジョンに向かっている中年冒険者のジッタ家族の馬車が、街道をゆっくりと進んでいる。
かなり弱っているリエッタを運んでいるので、村に戻ってきた時のように急いで移動する事は出来ないのだ。
移動に時間がかかっているために二大勢力の戦闘による異変を敏感に感じ取ってはいるのだが、レベル99の分裂体のチェーが陰ながら護衛をしているので街道に魔物が現れる事はない。
湯原と水野達が心配していた事とは、この一行が何かしら影響を受けて到着できなくなる事だったのだが、その対策としてチェーの分裂体が二体追加されており、到着後に事情を説明して、一階層の纏め役になって貰おうとしていた。
湯原と水野のダンジョン管理方針としては三階層までは過剰な介入は避けて、入居者で何とかしてもらいたいと言う考えがある。
そこを踏まえて、どう見ても人でありレベル1ではないのでダンジョンマスターではないと判断される人物、奴隷でもない同族の言葉であれば、湯原達が過剰に干渉する事無く一階層は纏まるのではないかと言う期待があった。
「では継続してチェー様からの情報収集を行い、進捗は別途ご報告いたします」
あまり主に負担を掛けたくないハライチとミズイチは、ここで話を打ち切ってダンジョン内部の楽しい話に話題をすり替える。
とある階層の一部に冒険者達が休息できるエリアがあり、そこの花が咲いただの、灼熱の階層の溶岩温泉が炎系統の召喚魔物に人気だの、とりとめもない会話に引き込んで、楽しい一時を過ごしてもらえるようにしていた。
日々このように過ごしているのだが、二大勢力の戦闘は徐々に各ダンジョン内部だけに収まらなくなっており、あらかじめ対象ダンジョンは進入禁止措置が取られていたのだが、その周辺一帯も進入禁止措置が取られる程になってしまった。
当初ラスリ国家の判断では淀嶋のダンジョンと水野のダンジョンの戦闘かと思っていたのだが、どうやらそうではなく、隣国のコッタ帝国にある弦間のダンジョンと戦闘をしていると理解できていた。
戦闘しているダンジョンが隣国に在るので、即座に状況が掴めなかったのだ。
当然淀嶋と水元のダンジョンからも隣国にある弦間のダンジョンへの攻撃は続いており、人族の目に付く戦闘が多くなっている事から、両国は大混乱に陥っていた。
王都や帝都で息を殺して耐えている者、関係のなさそうなダンジョンに潜ってやり過ごそうとしている冒険者、果敢にも、戦闘している魔物同士の戦闘後のお宝を集めている者、様々だ。
「漸く着いた!早速行くぞ!!」
「お、随分とお待ちしていましたよ。ダンジョン同士の戦闘が始まっているらしく、なんだか周囲が途端に騒がしくなって困ったものですが、こちらの商売は一気に大繁盛。喜ぶべきなのか、微妙な所ですがね」
湯原と水野のダンジョン入り口に到着した馬車を預かる事を商売としている商人が、娘の回復の為だけに急いで戻って来たジッタ一行に世間話のつもりで話しかけるが、彼らにしてみれば初めて聞いた情報なので、眉を顰めてしまう。
「確かに、ここに来るまで周囲が騒がしかったが……このダンジョンは大丈夫なのか?」
「今の所は。淀嶋・水野、それに対してコッタ帝国の弦間のダンジョンらしいですよ?」
冒険者達から仕入れた情報を披露して、いつの間にか設置した柵に馬車を連れて去って行く商人だ。
「セーギ君。聞きました?」
「うん。残念だけど、なんだかどこかのダンジョン……」
「淀嶋・水元、そして召喚冒険者の岩本の三人に対して、弦間です、主様」
最近はのんびり過ごす事がデフォルトになってしまっているので、他のダンジョンの状況はあまり頭に残っていない湯原。
すっかり名前すら忘れ去ってしまい、ハライチにフォローして貰っている程だ。
「そうそう、それそれ。全く迷惑だよね。そのせいで心配事もあるし」
「主様、今回の争いは三つのダンジョンが絡んでおりますので、それぞれの所属国家、ラスリ王国と隣国のコッタ帝国でも相当な騒動になっております。その影響が出始めており、移住者が一気に増加する見込みです」
「ハライチちゃん。それって、今の一階層だと住居が不足すると言う事ですか?」
「いいえ、カーリ様。そうではありませんが、恐らく一階層入り口の受付を兼ねている場所、ヒカリ様達はてんてこ舞いになるでしょうし、家を決める際にも多少のいざこざは出る可能性があります」
「ハライチの指摘の通りです。受付に関しては元ダンジョンマスターの二人、元眷属がおりますので何とかなると思いますが、街中は……今後の生活も考えると人族に何とかして頂きたい所です」
「ハライチとミズイチは、何か良い案があるの?」
すっかりブレーンの二人を信頼しきっている湯原と水野は、今までも数多くの問題を可決してきた実勢があるので今回も何かあるのだろうと期待しており、その姿を見たハライチとミズイチも主からの期待の視線を受けてやる気を漲らせている。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「親父、なんだかきな臭くなっている気がしないか?」
「俺もそう思うね。少し遠くで魔物がざわついているのは聞こえるけど……未だに一度も襲われていないのは、どういう訳だろう?」
「確かに不思議だが、今は何をおいてもあのダンジョンに無事に辿り着く事だけを考えろ!」
湯原と水野のダンジョンに向かっている中年冒険者のジッタ家族の馬車が、街道をゆっくりと進んでいる。
かなり弱っているリエッタを運んでいるので、村に戻ってきた時のように急いで移動する事は出来ないのだ。
移動に時間がかかっているために二大勢力の戦闘による異変を敏感に感じ取ってはいるのだが、レベル99の分裂体のチェーが陰ながら護衛をしているので街道に魔物が現れる事はない。
湯原と水野達が心配していた事とは、この一行が何かしら影響を受けて到着できなくなる事だったのだが、その対策としてチェーの分裂体が二体追加されており、到着後に事情を説明して、一階層の纏め役になって貰おうとしていた。
湯原と水野のダンジョン管理方針としては三階層までは過剰な介入は避けて、入居者で何とかしてもらいたいと言う考えがある。
そこを踏まえて、どう見ても人でありレベル1ではないのでダンジョンマスターではないと判断される人物、奴隷でもない同族の言葉であれば、湯原達が過剰に干渉する事無く一階層は纏まるのではないかと言う期待があった。
「では継続してチェー様からの情報収集を行い、進捗は別途ご報告いたします」
あまり主に負担を掛けたくないハライチとミズイチは、ここで話を打ち切ってダンジョン内部の楽しい話に話題をすり替える。
とある階層の一部に冒険者達が休息できるエリアがあり、そこの花が咲いただの、灼熱の階層の溶岩温泉が炎系統の召喚魔物に人気だの、とりとめもない会話に引き込んで、楽しい一時を過ごしてもらえるようにしていた。
日々このように過ごしているのだが、二大勢力の戦闘は徐々に各ダンジョン内部だけに収まらなくなっており、あらかじめ対象ダンジョンは進入禁止措置が取られていたのだが、その周辺一帯も進入禁止措置が取られる程になってしまった。
当初ラスリ国家の判断では淀嶋のダンジョンと水野のダンジョンの戦闘かと思っていたのだが、どうやらそうではなく、隣国のコッタ帝国にある弦間のダンジョンと戦闘をしていると理解できていた。
戦闘しているダンジョンが隣国に在るので、即座に状況が掴めなかったのだ。
当然淀嶋と水元のダンジョンからも隣国にある弦間のダンジョンへの攻撃は続いており、人族の目に付く戦闘が多くなっている事から、両国は大混乱に陥っていた。
王都や帝都で息を殺して耐えている者、関係のなさそうなダンジョンに潜ってやり過ごそうとしている冒険者、果敢にも、戦闘している魔物同士の戦闘後のお宝を集めている者、様々だ。
「漸く着いた!早速行くぞ!!」
「お、随分とお待ちしていましたよ。ダンジョン同士の戦闘が始まっているらしく、なんだか周囲が途端に騒がしくなって困ったものですが、こちらの商売は一気に大繁盛。喜ぶべきなのか、微妙な所ですがね」
湯原と水野のダンジョン入り口に到着した馬車を預かる事を商売としている商人が、娘の回復の為だけに急いで戻って来たジッタ一行に世間話のつもりで話しかけるが、彼らにしてみれば初めて聞いた情報なので、眉を顰めてしまう。
「確かに、ここに来るまで周囲が騒がしかったが……このダンジョンは大丈夫なのか?」
「今の所は。淀嶋・水野、それに対してコッタ帝国の弦間のダンジョンらしいですよ?」
冒険者達から仕入れた情報を披露して、いつの間にか設置した柵に馬車を連れて去って行く商人だ。
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【作者より、感謝を込めて】
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