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多少なりとも警戒している岩本に対して、共闘する事によるメリットを提示して見せる水元。
「他にも君にメリットはあるよ!弦間を倒せば、当然君のレベルも上がるよね?それも格上で対極の存在だから、相当じゃないかな?」
実際にその通りで、岩本としてはレベル上昇後に目の前にいる二人、淀嶋と水元すら強制的に配下にできる可能性がある為、ここまで言われては首を横に振ると言う選択肢はなかった。
「わかった。俺が思うに、共闘するのが最適解だ!」
こうして表舞台から姿を消した岩本は、淀嶋と水元と言う二人のダンジョンマスターと共闘して弦間のダンジョンと戦う事にした。
「クック、よ、淀嶋も、水元も、無駄なんだな。あ、あんな雑魚を引き入れて、か、勝てる気になっているなんて、バカなんだな」
共闘を画策している三人には、更に格上であるレベル60の弦間のダンジョンの配下の眷属による直接的な監視が付いており、レベル60の猛者である事から、あの場の三人や各眷属を含めて、全てがその存在を感知できていなかった。
ダンジョンを管理するダンジョンマスターであれば、ダンジョン内部の侵入者はレベル差が大きい場合でも、辛うじて侵入されていると言う事は分かる。
今は岩本の素行や本当の能力が不明である事から、ダンジョン内部での交渉は避けた。
制約的な物で縛る事も考えたのだが、そうなると交渉は決裂するだろうと思い、敢えて何も制約を掛けない状態で交渉をしたのだ。
結果。淀嶋のダンジョンの近くのとある場所で交渉が行われ、その内容全てを弦間の眷属に知られてしまったと言う事になる。
その弦間の眷属は蜘蛛族。
気配を完全に遮断して、長い糸でその意思を遠く離れた場所に伝える事が出来る魔物だ。
淀嶋と水元も周囲の警戒は最大限にしているのだが、結果的にはあっさりと初期の情報を抜かれてしまっていた。
こうして二大勢力が直接的な戦闘に向かい進んで行く……大きく周囲を巻き込みながら……
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
完全に岩本との交信が途絶えてしまったラスリ王国の国王、ミド・ラスリは焦る。
相当な事に目を瞑ってまで抱え続けて来た召喚冒険者と言う戦力が、初めての任務すら完遂できずに消息不明になったのだ。
せっかくとてつもない効能を出せる回復薬の原料を生み出すダンジョンを、岩本の力を使って完全にコントロールできると思っていたのだが……その目論見は一気に崩れ去った。
逆に今の段階で得られている情報から、失踪したと言うよりも、ダンジョン攻略を嫌がって逃亡したと思われている岩本を抱え込んできた国王への不信、元より岩本の蛮行を良く思っていなかった家臣達からの信頼を大きく失っていた。
国王もバカではないので、今の自分の置かれている状況はよくわかっている。
最悪は、自らを守る盾であり鉾でもある近衛騎士すら信頼できなくなるかもしれないのだ。
「クッ、岩本……しかし、悔やんでも仕方があるまい。こうなれば……」
国王の対策は、絶対に逆らえない屈強な戦力を手に入れる事だった。そう、奴隷だ。
狡猾な者程情報を最重要視しており、状況に応じて商談の進め方を変えているので、今回のケースで言えば仮に国王とは言え失脚する可能性も有り、相当強気で交渉できると言う事になっている。
早速配下の者に奴隷商を探し出させて呼び出そうとしたのだが、城下町を始めとして、領内各地で縁結びの聖地にできた新たなダンジョンへの移住や移住検討で沸き立っており、移住の手伝いに奴隷を大量に使用する事から、あっさりと断られていた。
国王の依頼とは言え、失脚する可能性のある者との交渉は危険と判断されてしまったのだ。
成す術なく途方に暮れている中、二つの地方領主から連絡が入り、重鎮と共に会議に臨む事になった。
「報告申し上げます。淀嶋のダンジョン、水元のダンジョンと呼ばれている両ダンジョンに侵入していた冒険者からの報告で、内部の魔物の活性化、そして、今迄見た事もないような魔物の外部からの襲来の報告を受けました。恐らく……」
「ダンジョン同士の闘争……か」
召喚者に対する情報はある程度で回っているので、ダンジョンマスター同士の戦闘についても相当な記録が残っており、知識も有る。
そこから導き出される結論としては、誰かが呟いた通りにダンジョンマスター同士の争いと言う事になる。
こうなってしまうと、そのダンジョンのレベルや戦闘している相手によっては人族の領地に大災害を及ぼす可能性が高くなる。
普段はある意味共存共栄であるダンジョンと人族なのだが、一度別次元の力を持つ者同士の戦が起こってしまうと、国家戦力を上げて対処する他ないのだ。
国王は、ここで大袈裟に悔しがる。
「クッ、この様な事態の為に召喚冒険者の岩本を敢えて抱え込んできたのだが、無念だ」
国家の事よりも先ずは自分の保身に走ったのだが、言っている事は納得できる為に、幸運にも信頼を取り戻す事が出来ていた。
ダンジョン同士の闘争と言う危機的状況がそうさせた可能性が高いが、何もしなければ大量の犠牲が出る事は間違いない為、慎重に作戦を考えて行く重鎮達だ。
「他にも君にメリットはあるよ!弦間を倒せば、当然君のレベルも上がるよね?それも格上で対極の存在だから、相当じゃないかな?」
実際にその通りで、岩本としてはレベル上昇後に目の前にいる二人、淀嶋と水元すら強制的に配下にできる可能性がある為、ここまで言われては首を横に振ると言う選択肢はなかった。
「わかった。俺が思うに、共闘するのが最適解だ!」
こうして表舞台から姿を消した岩本は、淀嶋と水元と言う二人のダンジョンマスターと共闘して弦間のダンジョンと戦う事にした。
「クック、よ、淀嶋も、水元も、無駄なんだな。あ、あんな雑魚を引き入れて、か、勝てる気になっているなんて、バカなんだな」
共闘を画策している三人には、更に格上であるレベル60の弦間のダンジョンの配下の眷属による直接的な監視が付いており、レベル60の猛者である事から、あの場の三人や各眷属を含めて、全てがその存在を感知できていなかった。
ダンジョンを管理するダンジョンマスターであれば、ダンジョン内部の侵入者はレベル差が大きい場合でも、辛うじて侵入されていると言う事は分かる。
今は岩本の素行や本当の能力が不明である事から、ダンジョン内部での交渉は避けた。
制約的な物で縛る事も考えたのだが、そうなると交渉は決裂するだろうと思い、敢えて何も制約を掛けない状態で交渉をしたのだ。
結果。淀嶋のダンジョンの近くのとある場所で交渉が行われ、その内容全てを弦間の眷属に知られてしまったと言う事になる。
その弦間の眷属は蜘蛛族。
気配を完全に遮断して、長い糸でその意思を遠く離れた場所に伝える事が出来る魔物だ。
淀嶋と水元も周囲の警戒は最大限にしているのだが、結果的にはあっさりと初期の情報を抜かれてしまっていた。
こうして二大勢力が直接的な戦闘に向かい進んで行く……大きく周囲を巻き込みながら……
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完全に岩本との交信が途絶えてしまったラスリ王国の国王、ミド・ラスリは焦る。
相当な事に目を瞑ってまで抱え続けて来た召喚冒険者と言う戦力が、初めての任務すら完遂できずに消息不明になったのだ。
せっかくとてつもない効能を出せる回復薬の原料を生み出すダンジョンを、岩本の力を使って完全にコントロールできると思っていたのだが……その目論見は一気に崩れ去った。
逆に今の段階で得られている情報から、失踪したと言うよりも、ダンジョン攻略を嫌がって逃亡したと思われている岩本を抱え込んできた国王への不信、元より岩本の蛮行を良く思っていなかった家臣達からの信頼を大きく失っていた。
国王もバカではないので、今の自分の置かれている状況はよくわかっている。
最悪は、自らを守る盾であり鉾でもある近衛騎士すら信頼できなくなるかもしれないのだ。
「クッ、岩本……しかし、悔やんでも仕方があるまい。こうなれば……」
国王の対策は、絶対に逆らえない屈強な戦力を手に入れる事だった。そう、奴隷だ。
狡猾な者程情報を最重要視しており、状況に応じて商談の進め方を変えているので、今回のケースで言えば仮に国王とは言え失脚する可能性も有り、相当強気で交渉できると言う事になっている。
早速配下の者に奴隷商を探し出させて呼び出そうとしたのだが、城下町を始めとして、領内各地で縁結びの聖地にできた新たなダンジョンへの移住や移住検討で沸き立っており、移住の手伝いに奴隷を大量に使用する事から、あっさりと断られていた。
国王の依頼とは言え、失脚する可能性のある者との交渉は危険と判断されてしまったのだ。
成す術なく途方に暮れている中、二つの地方領主から連絡が入り、重鎮と共に会議に臨む事になった。
「報告申し上げます。淀嶋のダンジョン、水元のダンジョンと呼ばれている両ダンジョンに侵入していた冒険者からの報告で、内部の魔物の活性化、そして、今迄見た事もないような魔物の外部からの襲来の報告を受けました。恐らく……」
「ダンジョン同士の闘争……か」
召喚者に対する情報はある程度で回っているので、ダンジョンマスター同士の戦闘についても相当な記録が残っており、知識も有る。
そこから導き出される結論としては、誰かが呟いた通りにダンジョンマスター同士の争いと言う事になる。
こうなってしまうと、そのダンジョンのレベルや戦闘している相手によっては人族の領地に大災害を及ぼす可能性が高くなる。
普段はある意味共存共栄であるダンジョンと人族なのだが、一度別次元の力を持つ者同士の戦が起こってしまうと、国家戦力を上げて対処する他ないのだ。
国王は、ここで大袈裟に悔しがる。
「クッ、この様な事態の為に召喚冒険者の岩本を敢えて抱え込んできたのだが、無念だ」
国家の事よりも先ずは自分の保身に走ったのだが、言っている事は納得できる為に、幸運にも信頼を取り戻す事が出来ていた。
ダンジョン同士の闘争と言う危機的状況がそうさせた可能性が高いが、何もしなければ大量の犠牲が出る事は間違いない為、慎重に作戦を考えて行く重鎮達だ。
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