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ここ暫く、相当な人数が流れ込んできた湯原と水野のダンジョン。
一階層入り口建屋には長蛇の列が続き、受付で詳しく説明を聞いている者もいれば、一度この建屋で詳細を聞いて一階層に住んでいる者達は、その列を無視してダンジョン内部に侵入……と言うよりも、自分の家に帰っている。
その建屋の一室に、以前娘の病気を助けた冒険者一家の父であるジッタと、ダンジョンのブレーンであるハライチとミズイチ、移住希望者に対応する受付を代表して光族のヒカリがいる。
「申し訳ないがいくつか要望があって今日は集まって貰いました。移住者はご存じの通り多数おり、一応受付で全てを理解の上で入ってきている状況ですが、建屋の空き状況が不明と言うクレームと、時折ダンジョンの外に出る際に、奥の方は出口まで時間がかかると言うクレームが来ておりまして……贅沢言うな!と叱っては見たのですが」
安全な場所、ある程度世話は必要になるが畑や果樹園、そして立派な建屋まで無償で準備してもらいながらも、一部の者達は色々と文句を言っている。
「確かに、ここ最近は他のダンジョンの戦闘があったようで、移住者が激増していますね」
ジッタの声に、受付を代表しているヒカリが肯定する。
彼も相当に忙しいのだが、新たな主である湯原と水野の為に働ける事に喜びを感じているので、苦になっていない。
「わかりました。ジッダ様の仰る事、対応させて頂きます。その程度であれば問題ございません」
「え?ハライチ様、良いのですか?って、お願いしている俺が言うのもなんですが」
「はい。既に入居している方には二度手間になりますが、ダンジョン特有のカードを配布させて頂きます。そのカードは家族を認識し、家族に一枚、各個人に一枚配布します。家族用のカードを建屋の表に差していただければ、住んでいる事が分かります。その機能は他にもあり……」
「ハライチ、取り敢えずはそこまでで良いではありませんか。では、一階層出口と逆、二階層入り口付近の建屋に住まれる方に関しては、転移魔法陣Aを準備させて頂きます。入り口から奥に向かう際の魔法陣Bも設置いたしますので、ご安心ください」
「おぉ、ハライチ様、ミズイチ様、ありがとうございます」
「では、その旨僕の方で周知してきますね。そのカードを出す魔道具は……」
「直ぐにお持ちします」
日々、一階層に住む人々の要求をある程度聞いて生活環境を改善するのが、最近の彼らの仕事になっている。
全て聞いては増長すると言う事ではあるが、その辺りのさじ加減はハライチとミズイチに一任されているので嬉々として働き、数日後には、以前から住んでいる人々にも事情が説明され、更にはカードが配布されているので、誰かが住んでいる家の門の入り口には必ずカードが見える状態になっていた。
「チッ、俺はここに住もうと思ったんだがな……」
とある男が、自分が気に入った家の前に来るとカードが見え、そのカードを無理やり取ろうとしたのだが、ビクともせずに悪態をついて去っている。
どうせこう言った連中が出て来るだろうと見越して、表の表札代わりのカードと同時に発行された家族のカード所持者でなければ、取り外す事は出来ない仕組みを組み込んでいた。
この魔道具、レベル99であるイルーゾによってつくられており、その性能は折り紙付きだ。
毎日のように大勢の人がなだれ込んできている湯原と水野のダンジョンだが、広大な一階層である為に、まだまだ余裕がある。
その一階層を、一般人のふりをして散策している湯原と水野。
当然眷属や配下の者達が二人だけで散策する事を許すわけがなく、少々離れた位置に右手にチェー本体を巻いているイーシャと、頭に透明化して視認できないようにしている状態のスラエを乗せているプリマがいる。
「セーギ君。これって、もうお忍びじゃないと思いませんか?」
「そ、そうだよね。でも、心配して貰っている立場だから、仕方がない……かな」
二人はこう言ってはいるが、見た目少女のイーシャとプリマ二人の事を知る人物はそう多くはないので、一応お忍びは成功している。
ダンジョン内部に建造された建屋は商店に適した物も多数作成しており、二人の希望通りにその付近では色々な物が販売されていた。
中には、四階層で採れる薬草が既に販売されている程だ。
「思った以上に、この環境に慣れているみたいだね」
「なんだか、不思議ですね。嬉しい気持ちになります。皆さんの安全を守るために、頑張らなくちゃいけませんね」
普段は一階層から三階層まで各一体配置されているアイズも、この日は湯原と水野周辺の警戒用に一体が二階層から一階層に配置されており、その情報は周囲を警戒しているイーシャとプリマ、そしてチェーとスラエに即座に送信されている。
ありのままの一階層の様子を知りたい湯原と水野は、身の危険が無い限りは何もしないようにと伝えているので、時折絡まれる事もある。
「おいおい、兄ちゃん。可愛い女を連れているじゃねーかよ。俺が貰っておいてやる……って、何でもねー」
いくら空手が強くてもレベル1の湯原では到底太刀打ちできない冒険者なのだが、湯原と水野の背後からの強烈な殺気で慌てて踵を返して行く。
その後の彼の行く末は、人目の無い所で鎖族にボコボコにされてカード没収の上でダンジョンから放り出されていた。
一階層入り口建屋には長蛇の列が続き、受付で詳しく説明を聞いている者もいれば、一度この建屋で詳細を聞いて一階層に住んでいる者達は、その列を無視してダンジョン内部に侵入……と言うよりも、自分の家に帰っている。
その建屋の一室に、以前娘の病気を助けた冒険者一家の父であるジッタと、ダンジョンのブレーンであるハライチとミズイチ、移住希望者に対応する受付を代表して光族のヒカリがいる。
「申し訳ないがいくつか要望があって今日は集まって貰いました。移住者はご存じの通り多数おり、一応受付で全てを理解の上で入ってきている状況ですが、建屋の空き状況が不明と言うクレームと、時折ダンジョンの外に出る際に、奥の方は出口まで時間がかかると言うクレームが来ておりまして……贅沢言うな!と叱っては見たのですが」
安全な場所、ある程度世話は必要になるが畑や果樹園、そして立派な建屋まで無償で準備してもらいながらも、一部の者達は色々と文句を言っている。
「確かに、ここ最近は他のダンジョンの戦闘があったようで、移住者が激増していますね」
ジッタの声に、受付を代表しているヒカリが肯定する。
彼も相当に忙しいのだが、新たな主である湯原と水野の為に働ける事に喜びを感じているので、苦になっていない。
「わかりました。ジッダ様の仰る事、対応させて頂きます。その程度であれば問題ございません」
「え?ハライチ様、良いのですか?って、お願いしている俺が言うのもなんですが」
「はい。既に入居している方には二度手間になりますが、ダンジョン特有のカードを配布させて頂きます。そのカードは家族を認識し、家族に一枚、各個人に一枚配布します。家族用のカードを建屋の表に差していただければ、住んでいる事が分かります。その機能は他にもあり……」
「ハライチ、取り敢えずはそこまでで良いではありませんか。では、一階層出口と逆、二階層入り口付近の建屋に住まれる方に関しては、転移魔法陣Aを準備させて頂きます。入り口から奥に向かう際の魔法陣Bも設置いたしますので、ご安心ください」
「おぉ、ハライチ様、ミズイチ様、ありがとうございます」
「では、その旨僕の方で周知してきますね。そのカードを出す魔道具は……」
「直ぐにお持ちします」
日々、一階層に住む人々の要求をある程度聞いて生活環境を改善するのが、最近の彼らの仕事になっている。
全て聞いては増長すると言う事ではあるが、その辺りのさじ加減はハライチとミズイチに一任されているので嬉々として働き、数日後には、以前から住んでいる人々にも事情が説明され、更にはカードが配布されているので、誰かが住んでいる家の門の入り口には必ずカードが見える状態になっていた。
「チッ、俺はここに住もうと思ったんだがな……」
とある男が、自分が気に入った家の前に来るとカードが見え、そのカードを無理やり取ろうとしたのだが、ビクともせずに悪態をついて去っている。
どうせこう言った連中が出て来るだろうと見越して、表の表札代わりのカードと同時に発行された家族のカード所持者でなければ、取り外す事は出来ない仕組みを組み込んでいた。
この魔道具、レベル99であるイルーゾによってつくられており、その性能は折り紙付きだ。
毎日のように大勢の人がなだれ込んできている湯原と水野のダンジョンだが、広大な一階層である為に、まだまだ余裕がある。
その一階層を、一般人のふりをして散策している湯原と水野。
当然眷属や配下の者達が二人だけで散策する事を許すわけがなく、少々離れた位置に右手にチェー本体を巻いているイーシャと、頭に透明化して視認できないようにしている状態のスラエを乗せているプリマがいる。
「セーギ君。これって、もうお忍びじゃないと思いませんか?」
「そ、そうだよね。でも、心配して貰っている立場だから、仕方がない……かな」
二人はこう言ってはいるが、見た目少女のイーシャとプリマ二人の事を知る人物はそう多くはないので、一応お忍びは成功している。
ダンジョン内部に建造された建屋は商店に適した物も多数作成しており、二人の希望通りにその付近では色々な物が販売されていた。
中には、四階層で採れる薬草が既に販売されている程だ。
「思った以上に、この環境に慣れているみたいだね」
「なんだか、不思議ですね。嬉しい気持ちになります。皆さんの安全を守るために、頑張らなくちゃいけませんね」
普段は一階層から三階層まで各一体配置されているアイズも、この日は湯原と水野周辺の警戒用に一体が二階層から一階層に配置されており、その情報は周囲を警戒しているイーシャとプリマ、そしてチェーとスラエに即座に送信されている。
ありのままの一階層の様子を知りたい湯原と水野は、身の危険が無い限りは何もしないようにと伝えているので、時折絡まれる事もある。
「おいおい、兄ちゃん。可愛い女を連れているじゃねーかよ。俺が貰っておいてやる……って、何でもねー」
いくら空手が強くてもレベル1の湯原では到底太刀打ちできない冒険者なのだが、湯原と水野の背後からの強烈な殺気で慌てて踵を返して行く。
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ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
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