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美智のダンジョン深層のとある一室。
グダグダになりそうな女子会の様子を見てさっさと退避した湯原とは違い、完全に掴まってしまった水野と、ある意味とばっちりでこの場にいる護衛のレインとブレーンのハライチ。
チェーは我関せずとばかりに大人しく水野の腕に巻き付いた状態で微動だにしていない。
むしろその存在を消すように、余計な流れ弾が当たらないように配慮している。
「でっさ~、話の続きだけど……って言うか、カーリさん?セーギさんとはどこまで進んでいるの?実際私はそこが気になる訳よ。ねぇ?お姉ちゃん、神保さんもそうでしょう?」
朋美から突然攻撃された水野は焦る。
「え?え??進む、進むって??」
「アハハハハ、面白いわね~、カーリさん。わかった!全てこの私、神保美咲に任せてよ!私はダンジョンマスターであるとともに、恋愛マスターなのよ!」
幸せを探すと意気込んでいる神保が恋愛マスターなのかは議論が必要な所なのだが、曖昧な返事をする他ない水野。
「そ、そうですか……」
もう何が何だかわからない状態になっているのに、神保の眷属であるインキュバスがお酒のお代わりを運んでくるので更に阿鼻叫喚の図になるのだが、いくら知識がある<淫魔族>のハライチとは言え、このような事態に対処する知識は一切なく、当然初めての経験なのでどうすべきかを非常に悩んでいる。
もちろん護衛としてこの場にいる<自然族>のレインも同じなのだが、その二人にそっと近づいて優雅にお酒を勧めるインキュバス。
「お二方、どうぞお楽しみいただければと思います。我が主も、美智様、朋美様もこうして楽しくお話ができる環境を喜んでいるのです。是非ともその輪に加わって頂ければと思います」
老獪な執事と言うべきなのだろうか……非常に断り辛い頼み方でお酒を勧める。
この会話は水野も聞いており、たまには眷属の皆にも楽しんでもらいたいと言う思いもあるのか、微笑みながらレインを見て頷く主の姿を見ると、レインは有り得ないが本当に万が一の時の事をチェーに頼んでそのお酒を口にする。
「わっ、美味しいです」
「ありがとうございます。さっ、ハライチ様も是非に」
勧められるお酒を口にする二人……本来は異常状態になるような存在ではないのだが、インキュバスのアドバイスもあり耐性を弱めてお酒に身を任せ、勢いで楽しむと言う経験をしていた。
こうなると更に場はひどい事になり、同じくインキュバスの囁きに落とされた水野でさえお酒を口にして酔っぱらっていた。
このインキュバスの凄い所は、夫々が口にし易いお酒の種類を瞬時に判別して作り上げ、程よいタイミングで流れるように提供できるところだ。
自分が口を出さずとも、全員がほろ酔いで自発的にお酒を口にする状態に至ったと判断すると、後は楽しく歓談できるように自らの存在を一段階落とす配慮ぶり。
すると、長年の憂いが無くなった神保、同じく長きにわたって二人の姉妹の力で必死に生き抜いてきた朋美と美智、突然召喚されてクラスメイトから命を狙われていた水野、心の底から信頼できる主に幸せになってもらいたいレインとハライチはもう止まらない。
誰が誰に話しているのか、答えているのかわからない女子会が出来上がったのだが、全員が楽しそうに笑いながら話しているのを見て嬉しそうなインキュバスだ。
一方、巻き添えを回避して番のダンジョンにイーシャとプリマ、デルと共に一足先に戻った湯原達は、水野達が帰ってくる前に1階層の建屋の進捗を確認するために1階層の城に転移する。
当然護衛はデル、スラエ、ゴースト部隊、マーリ、グリア、ブリース、イーシャ、プリマ、ミズイチと豪華な一行だ。
視察したい湯原一人に護衛が多数。
そもそもこのダンジョンの地中には鎖族も配置されており、万全と言う言葉ではいい表せない程の過剰な護衛を引き連れて、入り口方面に移動して建屋に向かう。
これほどの過剰な護衛を行ったのには理由があり、もう一部の人々には明らかになってはいるのだが、自らがこのダンジョンのダンジョンマスターであると隠す事を止め、寧ろ公開しようとしているためだ。
今尚町の住民は増加の一途を辿っており、不埒な輩もゼロではないので、暫くは過剰であってもこのレベルの護衛が必要であるとミズイチが譲らなかった。
ゾロゾロと集団で移動するなかで、今回は姿を隠さずに空中を漂っているゴーストは非常に目立つ。
やはり少し前に神保のダンジョンの召喚魔物のゴーストが目撃されてから情報が共有され、非常に強い個体であるとの認識が共有されている為で、本来はそのゴーストよりも圧倒的に強い存在のデルが霞んでいたりする。
その雰囲気、怯えの表情が見える1階層の建屋に続く列の人々を見て、ミズイチが見惚れる笑顔でこう告げる。
「皆様、番のダンジョン1階層の移住、歓迎いたします。こちらがダンジョンマスターのセーギ様です。もうお人方カーリ様は所用でこの場にはおられませんが、お見知りおきください。それと、皆様が気になっているゴースト部隊ですが……」
その言葉を聞いて一体のゴーストがスーッと地面まで下りてくると、深々と人族の列に頭を下げたので、まさかの異次元の魔物に一礼されるとは思ってもいなかった人々はゴーストとは言え個体差が大きく、この魔物は危険ではないのだな……と思っていた。
グダグダになりそうな女子会の様子を見てさっさと退避した湯原とは違い、完全に掴まってしまった水野と、ある意味とばっちりでこの場にいる護衛のレインとブレーンのハライチ。
チェーは我関せずとばかりに大人しく水野の腕に巻き付いた状態で微動だにしていない。
むしろその存在を消すように、余計な流れ弾が当たらないように配慮している。
「でっさ~、話の続きだけど……って言うか、カーリさん?セーギさんとはどこまで進んでいるの?実際私はそこが気になる訳よ。ねぇ?お姉ちゃん、神保さんもそうでしょう?」
朋美から突然攻撃された水野は焦る。
「え?え??進む、進むって??」
「アハハハハ、面白いわね~、カーリさん。わかった!全てこの私、神保美咲に任せてよ!私はダンジョンマスターであるとともに、恋愛マスターなのよ!」
幸せを探すと意気込んでいる神保が恋愛マスターなのかは議論が必要な所なのだが、曖昧な返事をする他ない水野。
「そ、そうですか……」
もう何が何だかわからない状態になっているのに、神保の眷属であるインキュバスがお酒のお代わりを運んでくるので更に阿鼻叫喚の図になるのだが、いくら知識がある<淫魔族>のハライチとは言え、このような事態に対処する知識は一切なく、当然初めての経験なのでどうすべきかを非常に悩んでいる。
もちろん護衛としてこの場にいる<自然族>のレインも同じなのだが、その二人にそっと近づいて優雅にお酒を勧めるインキュバス。
「お二方、どうぞお楽しみいただければと思います。我が主も、美智様、朋美様もこうして楽しくお話ができる環境を喜んでいるのです。是非ともその輪に加わって頂ければと思います」
老獪な執事と言うべきなのだろうか……非常に断り辛い頼み方でお酒を勧める。
この会話は水野も聞いており、たまには眷属の皆にも楽しんでもらいたいと言う思いもあるのか、微笑みながらレインを見て頷く主の姿を見ると、レインは有り得ないが本当に万が一の時の事をチェーに頼んでそのお酒を口にする。
「わっ、美味しいです」
「ありがとうございます。さっ、ハライチ様も是非に」
勧められるお酒を口にする二人……本来は異常状態になるような存在ではないのだが、インキュバスのアドバイスもあり耐性を弱めてお酒に身を任せ、勢いで楽しむと言う経験をしていた。
こうなると更に場はひどい事になり、同じくインキュバスの囁きに落とされた水野でさえお酒を口にして酔っぱらっていた。
このインキュバスの凄い所は、夫々が口にし易いお酒の種類を瞬時に判別して作り上げ、程よいタイミングで流れるように提供できるところだ。
自分が口を出さずとも、全員がほろ酔いで自発的にお酒を口にする状態に至ったと判断すると、後は楽しく歓談できるように自らの存在を一段階落とす配慮ぶり。
すると、長年の憂いが無くなった神保、同じく長きにわたって二人の姉妹の力で必死に生き抜いてきた朋美と美智、突然召喚されてクラスメイトから命を狙われていた水野、心の底から信頼できる主に幸せになってもらいたいレインとハライチはもう止まらない。
誰が誰に話しているのか、答えているのかわからない女子会が出来上がったのだが、全員が楽しそうに笑いながら話しているのを見て嬉しそうなインキュバスだ。
一方、巻き添えを回避して番のダンジョンにイーシャとプリマ、デルと共に一足先に戻った湯原達は、水野達が帰ってくる前に1階層の建屋の進捗を確認するために1階層の城に転移する。
当然護衛はデル、スラエ、ゴースト部隊、マーリ、グリア、ブリース、イーシャ、プリマ、ミズイチと豪華な一行だ。
視察したい湯原一人に護衛が多数。
そもそもこのダンジョンの地中には鎖族も配置されており、万全と言う言葉ではいい表せない程の過剰な護衛を引き連れて、入り口方面に移動して建屋に向かう。
これほどの過剰な護衛を行ったのには理由があり、もう一部の人々には明らかになってはいるのだが、自らがこのダンジョンのダンジョンマスターであると隠す事を止め、寧ろ公開しようとしているためだ。
今尚町の住民は増加の一途を辿っており、不埒な輩もゼロではないので、暫くは過剰であってもこのレベルの護衛が必要であるとミズイチが譲らなかった。
ゾロゾロと集団で移動するなかで、今回は姿を隠さずに空中を漂っているゴーストは非常に目立つ。
やはり少し前に神保のダンジョンの召喚魔物のゴーストが目撃されてから情報が共有され、非常に強い個体であるとの認識が共有されている為で、本来はそのゴーストよりも圧倒的に強い存在のデルが霞んでいたりする。
その雰囲気、怯えの表情が見える1階層の建屋に続く列の人々を見て、ミズイチが見惚れる笑顔でこう告げる。
「皆様、番のダンジョン1階層の移住、歓迎いたします。こちらがダンジョンマスターのセーギ様です。もうお人方カーリ様は所用でこの場にはおられませんが、お見知りおきください。それと、皆様が気になっているゴースト部隊ですが……」
その言葉を聞いて一体のゴーストがスーッと地面まで下りてくると、深々と人族の列に頭を下げたので、まさかの異次元の魔物に一礼されるとは思ってもいなかった人々はゴーストとは言え個体差が大きく、この魔物は危険ではないのだな……と思っていた。
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