元王子クロイツとその弟子達

焼納豆

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村での報告と

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 獲物をその目で見た門番は歓喜する。

「これは、まさしくあのグレートオーガ!ありがとうございます!!早速村長の所に向かいましょう!」

 クロイツとリサを放置した状態のままものすごい勢いで村に向かって走り出し、門番風の男が大声で依頼達成の報告をしまくっている。

 二人が村長の所に到着する頃には村民のほぼ全てが集合しており、クロイツが引き摺っている首二つを見て喜びを露わにしていた。

「冒険者殿、まさかこれほど早く依頼を達成して頂けるとは思ってもいませんでした。ありがとうございます。これでこのブサ村は救われます。ところでそちらは……助っ人ですか?」

 ここまであっさりと無傷でグレートオーガ二体を倒したのは恐らくリサを囮にしたからだろうと判断していた村長は、フードで顔を隠している人物がリサであるとは思えず、助力を頼んだ冒険者仲間なのだろうと思っていた。

「いや、今日から俺の妹であり弟子になったリサ・・だ。ホレ、顔を見せてやれ、リサ」

 クロイツに言われれば、従う以外の選択肢はないリサ。

 未だ少々恥ずかしい気持ちはあるのだが、師匠大好き病が発症し始めているリサにとってみれば、クロイツの言葉は絶対だ。

……パサ……

 フードを外すと、そこに見えるのはまごう事無き黒目・黒髪の美少女。

「え?これがリサ……ですか?」

 意図したわけではないが、村民の総意を口にする村長。

「あぁ、そうだ。リサ、信じて貰えてねーようだな。声を出せばわかってもらえるか?」

 リサとは違い少々思う所がある村長との会話をしていたので、言葉使いに素が出始めているクロイツだが、その言葉を受けたリサは、村との決別の良い機会だと思い口を開く。

 その声は良く通る澄み切った声でありつつも、少し高い甘い声でもあった。

「皆さん、今迄お世話になりました。これからは師匠と共に活動する事になりましたので、二度とここには戻りません」

 明確に決別の言葉を投げかけたのだ。

 普段のリサは聞かれた事に小さい声でボソボソと答えるだけなので、声を聴いてもリサ本人とは誰も分からないのだが、背格好は明らかにリサ。

 状況を考えれば、キングオーガ二体を相手にしていたはずのこの短時間に赤の他人が来る事も考えられない事に気が付いた村民達は、目の前の美少女がリサであると嫌でも認識した。

「こ、こいつがこんなに……」

 誰が呟いたのか、恐らく最後はこれ程までに見違えた事に対する称賛の言葉が続くのだろうが、その言葉を皮切りにリサを村に置いておくべきだと言う雰囲気が形成された。

 どう考えても慰み者になるか、この村に来る騎士達等の高位の存在に対する接待要員になるという下種の考えである事は明らかなのだが、村長も同じ考えの様で、周囲の雰囲気に後押しされるかのように一歩進み出る。

「冒険者殿。この度は対象の討伐ありがとうございます。今回冒険者殿の手助けになればと思い止む無く・・・・サポートとして一人派遣しましたが、何もなかったようで何よりです。では、リサはこちらで責任を持って引き取りますので、どうぞギルドに報告をお願い致します」

 既にクロイツから渡されていた依頼書にサインをして、押し付けるように手渡す村長。

 リサは怯えてクロイツの背後に隠れてフードを被り、身を小さくしてクロイツの服をつまみながら軽く震えている。

 クロイツは村長から受け取った書類にキッチリと依頼達成の証明部分にサインがなされている事を確認すると、リサに手を伸ばしかけていた村長の手を叩く。

「痛っ……冒険者殿、何をするのですか?」

「それはこっちのセリフだ。お前、俺に言ったよな?リサは俺の所有物だってな?そもそもその物言いが気に入らねーが、そう言う事だ。文句があるなら、お前もこいつと同じ状態にしてやってもいいんだぜ?」

 ギロリとにらみを利かせながらも、キングオーガ二体の首を顎で示すクロイツ。

 流石にこれ程の脅威の魔獣を難なく始末した冒険者にここまで言われては、これ以上誰も何もする事が出来なかった。

「行くぞ、リサ」

「はい、師匠!!」

 誰も何も言わなくなった事を確認すると、颯爽と村を後にする二人。

 クロイツとしては最後の最後で更に胸糞悪い思いをしたのだが、横を歩いているリサは、明確にクロイツがリサを守ってくれた事を感じて非常に機嫌が良さそうで、そんなリサを横目にする事でモヤモヤした気持ちも晴れてきたのだが、そうなると別の考えが頭に湧いてくる。

 今回の依頼達成の報告をギルドにする前に、外套の下には何も着ていないであろうリサの服を何とかしなくては……と。

「師匠!あの二体、どうやって倒したのですか?」

 クロイツがそんな事を思っているとは分からないリサは、幼いながらも将来的には冒険者として生計を立てる事になるだろうと理解しているのか、どのようにグレートオーガを仕留めたのかを聞いている。

「そうだな……今回は適当に収納魔法で首だけを収納して仕留めたが、これはリサにはできねーだろうな。今後の事を考えると、リサに教えられる方法で仕留めて行くべきか……」

 考えながらの会話である為に多少素が出ているのだが、リサは一切気にせずクロイツの話を真剣に聞いている。

「そうだ、リサ。町に行ったら武器を見てみるか。まだ体が出来上がってねーから確実とは言えねーが…っとスマン。言葉が荒かったな。俺の故郷でもしっかりと猫を被っていたのに……妹であり弟子であるリサに心を許した表れか?」

 自分でもこうも簡単に普段の状態で素が出てしまった事に驚いたのには理由があり、王族として過ごしていた時も一応言葉使いだけは気を付けていたのだが、怯える事が無くなったリサと話をしていると、何故だが自分も素が出やすくなっている事に気が付いたのだ。

 ここまで肯定的な事を言わると、リサはとても嬉しそうに素のクロイツを受け入れる。

「師匠、普段通りの師匠で!弟子としてお願いします」
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