元王子クロイツとその弟子達

焼納豆

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Bランクへ(3)

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 リサは宣言していた通り既に二人との契約を解除しているので、助け出した女性を連れてそのままダンジョンに移動する事にした。

 とは言えダンジョンに住むと言う事は秘匿事項の為、街道に置いてあった馬車まで移動した後に荷台に入ってもらい、リサが申し訳なさそうに少しだけ目隠しをする。

 一方四人の冒険者は、縄で適当にひとくくりにされて引き摺られた上で荷台に打ち捨てられている。

「行くぞ!」

 御者として手綱を握っているクロイツから声がかかり、ゆったりと馬車は動き出す。

「わ~、師匠って御者が出来たんですね?」

「当たり前だろ!」

 と、本当に短いこの会話が終わった途端、再びクロイツから声がかかる。

「ついたぞ!」……と。

 当然二人の女性はキョトンとするが、そんな二人の目隠しを取って半ば強引に荷台から外に出すリサ。

「「え??」」

 そこは暖かくて過ごしやすい気候、奇麗な小川、広大な畑と果実の木、かなり遠くに小さな森が見える。

「「キャン、キャン!」」

 足元には、ポチが既に準備した二人の新入り用の魔獣。

「あら?ようこそいらっしゃいました!」

 その声を聞きつけた、少し前からここに住んでいる五人がそれぞれの場所から現れる。

 畑を耕していた者、小川で洗濯をしていた者、家で食事を作っていた者達。

 説明するよりも先に彼女達五人は自分達の首の後ろを二人の女性に見せると、そこには、同じように赤い奴隷紋がある。

 これを見せた上で楽しそうに生活をしている雰囲気を感じ取っていれば、口で説明するよりも遥かに説得力があると思っての行動だ。

 この後の説明は全て任せて冒険者を乗せた馬車と共に消えるクロイツとリサ。

 冒険者四人も、強制的に意識を戻されて同じようにミュラから説明を受ける。

 こちらは二人の女性の様な嬉しそうな表情ではなく、絶望の表情をしているが……

「で、後はこいつをギルドに届ける……と」

 地上に戻り転移を使い、最寄りのギルドにカードを届けたクロイツとリサだが、何故かその後暫くしてギルドからBランク昇格が言い渡された。

 どうやらあの五人は冒険者ギルドのつまはじきものであったらしく、その最後を確認する情報をもたらした二人の功績に加算され、ランク昇格に至ったとの事だった。

 話を聞けば、と言うよりも昇格の説明がなされるときに聞かされた話としては、あの四人、明確な証拠はないが、依頼中に周囲の冒険者から素材や装備を強奪し、入念に脅しをかける事もしていたらしい。

 一部ギルドに訴えた事がある冒険者は数日後に行方不明になった事もあり、それ以降は彼らの非道を訴えられる者はいなかったとの事。

 彼らは各国のギルドを転々としており、Bランクとして実力も有った事から各ギルドでやりたい放題の行動を起こして明るみに出そうになる頃に移動しており、流石にギルドの中で要注意人物として名前が挙がっていたとの事だ。

 こう考えると、この四人の冒険者が赤の奴隷紋を持つ人物を運搬していたと言う事は、闇の奴隷商関連の人物である事は間違いない。

 その人物をギルドが要注意人物と判断して情報展開していると言う事は、ギルド全てが闇の奴隷商に汚染されている訳ではないと思えたクロイツだが、どこまで浸食しているか分からないので、取り敢えずは無暗に信用はしない事にしてリサにもその旨を伝えて行動している。

 結果的に何とも言えない昇格になったのだが、昇格に関しては取り敢えず受け取るだけは受け取った二人だ。
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