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リサへ新たな依頼(2)
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リベラ王国のギルドで、Sランクに分類されている魔獣ポイズナックの討伐依頼を受注するリサ。
ナスカ王国にしてみれば待ちに待った依頼受注なのだが、ナスカ王国のギルドに職員はおらず機能していない為にナスカ王国の王族にその吉報は届かない。
リサの今までの実績からも討伐証明さえあればSランク昇格は間違いないので、通常馬車で11日程度必要な距離を半日程度で移動して、一切の迷い無しに“深淵の森”に侵入する。
「あっちにいますか。聞いていたよりも大人しそうですけれど……何か好物とか、気になるものがあったのでしょうかね?」
“深淵の森”の浅い部分に出現してナスカ王国が危機的状況に陥っていると聞いていたリサだが、その元凶になっているポイズナックは“深淵の森”の少々進んだ場所にいる気配を掴んでいる。
動きは緩慢でとても攻撃的とは感じる事ができなかったリサは、同一種族の別個体がいるのではないかと判断して周囲一帯を隈なく調査するのだが……かなり大きく探索範囲を広げた状態でもポイズナックは一体しか察知する事が出来なかった。
“深淵の森”は広大で全域を調査するにはいくらリサとはいえ相当骨が折れるのだが、調査を行っていく中でとある情報を思い出す。
「そうだ!そういえば“爆炎のハロルド”さんの攻撃を受けたって言っていましたよね?少しでも羽にその傷が残っていれば、確定ですかね?」
Sランク魔獣の傷の治りは非常に速いが、個体によっては傷と認識しない程の小さな傷程度は治さない魔獣も存在する。
その可能性にかけて、今の所唯一発見できているポイズナックに近接する。
相当練度を上げているリサなので、近接されているのだがポイズナックはリサの存在に気が付く事はできない。
『あっ、あれってきっと魔術の攻撃の痕ですよね?』
本当に羽が少しだけ火傷の痕のようになっているのを見つけ、間違いなく討伐対象の個体だと思ったリサは心の中で喜びの声を上げ、そのまま攻撃に移行する。
気配は消したまま身体強化の力を上昇させ、クロイツから貰った短剣を右手に持って一気にポイズナックに近接する。
この状態でもポイズナックはリサの存在を知る事なく未だにのんびりと羽を揺らしているのだが、次の瞬間に何か違和感を覚えたのか、リサが突進してくる方向に首を傾ける。
何かを認識したわけではないのだが、何となく虫の知らせと言うレベルで首を向けたポイズナックだが、その直後に自分の体が見えたかと思うと意識を手放す。
「あれ?思った以上に楽勝でしたね」
首を切り落とされたポイズナックの胴体は倒れ、そこには気配遮断を解除したリサとロロが少々不満げに立っている。
リサとしては、せっかく少々信念を曲げてまで受けたSランク魔獣討伐だったのでもう少し手ごたえがあるかと期待していたのだが、結果は瞬殺。
「でも、これで依頼達成!ロロ、堂々と師匠の所に戻れるよ!!」
「キャン!」
通常であれば“深淵の森”の中でこれだけ無駄に騒ぐ事は他の魔獣を呼び寄せる自殺行為なのだが、この周辺はポイズナックを恐れて魔獣がおらず、仮にいたとしてもリサやロロの一切隠していない気配を感知した瞬間に逃亡していただろう。
こうしてさっさと魔物を始末した上で、当日の夜にリベラ王国のギルドに戻ってくるリサ。
今の所ポイズナックの目撃情報はナスカ王国だけであるので、討伐証明があればナスカ王国の魔物であると認識されるために驚きをもって成果を受け入れられた。
ナスカ王国にとっての吉報は全く機能していないギルド経由ではなく、世界的にSランカー昇格の報が理由と共に告知された事で王城内に広く知れ渡り、その報と共にギルド職員が再び派遣されると同時に民も戻ってきた。
「リサ様、いつの間に……」
騒ぎの中心にいたリサにミューテルと話す時間などあるわけはなく、その後暫くしてようやく受付に顔を出す事ができていたリサはミューテルから驚きの声で迎えられる。
「師匠の故郷のSランク魔獣ですから、少し手を出してしまいました。これでもう安心ですね。それで、護衛の件はどうなりましたでしょうか?」
「……それが、移動する必要がなくなったとの事で、依頼は撤回されています」
ミューテルとしては闇の奴隷商の商会長に恩を売れる機会を失って機嫌が悪いが、一応新たなSランカーのリサの前では平静を装っている。
しかし既に信頼するに値しない存在と認識しているリサには、取り繕った笑顔である事は看破されている。
その後、史上二人目のSランカーと言う事もあって大陸中がお祭り騒ぎになるのだが、当のリサはその祭りには参加する事なく一刻も早く師匠の元に向かおうと全速力で移動していた。
ナスカ王国にしてみれば待ちに待った依頼受注なのだが、ナスカ王国のギルドに職員はおらず機能していない為にナスカ王国の王族にその吉報は届かない。
リサの今までの実績からも討伐証明さえあればSランク昇格は間違いないので、通常馬車で11日程度必要な距離を半日程度で移動して、一切の迷い無しに“深淵の森”に侵入する。
「あっちにいますか。聞いていたよりも大人しそうですけれど……何か好物とか、気になるものがあったのでしょうかね?」
“深淵の森”の浅い部分に出現してナスカ王国が危機的状況に陥っていると聞いていたリサだが、その元凶になっているポイズナックは“深淵の森”の少々進んだ場所にいる気配を掴んでいる。
動きは緩慢でとても攻撃的とは感じる事ができなかったリサは、同一種族の別個体がいるのではないかと判断して周囲一帯を隈なく調査するのだが……かなり大きく探索範囲を広げた状態でもポイズナックは一体しか察知する事が出来なかった。
“深淵の森”は広大で全域を調査するにはいくらリサとはいえ相当骨が折れるのだが、調査を行っていく中でとある情報を思い出す。
「そうだ!そういえば“爆炎のハロルド”さんの攻撃を受けたって言っていましたよね?少しでも羽にその傷が残っていれば、確定ですかね?」
Sランク魔獣の傷の治りは非常に速いが、個体によっては傷と認識しない程の小さな傷程度は治さない魔獣も存在する。
その可能性にかけて、今の所唯一発見できているポイズナックに近接する。
相当練度を上げているリサなので、近接されているのだがポイズナックはリサの存在に気が付く事はできない。
『あっ、あれってきっと魔術の攻撃の痕ですよね?』
本当に羽が少しだけ火傷の痕のようになっているのを見つけ、間違いなく討伐対象の個体だと思ったリサは心の中で喜びの声を上げ、そのまま攻撃に移行する。
気配は消したまま身体強化の力を上昇させ、クロイツから貰った短剣を右手に持って一気にポイズナックに近接する。
この状態でもポイズナックはリサの存在を知る事なく未だにのんびりと羽を揺らしているのだが、次の瞬間に何か違和感を覚えたのか、リサが突進してくる方向に首を傾ける。
何かを認識したわけではないのだが、何となく虫の知らせと言うレベルで首を向けたポイズナックだが、その直後に自分の体が見えたかと思うと意識を手放す。
「あれ?思った以上に楽勝でしたね」
首を切り落とされたポイズナックの胴体は倒れ、そこには気配遮断を解除したリサとロロが少々不満げに立っている。
リサとしては、せっかく少々信念を曲げてまで受けたSランク魔獣討伐だったのでもう少し手ごたえがあるかと期待していたのだが、結果は瞬殺。
「でも、これで依頼達成!ロロ、堂々と師匠の所に戻れるよ!!」
「キャン!」
通常であれば“深淵の森”の中でこれだけ無駄に騒ぐ事は他の魔獣を呼び寄せる自殺行為なのだが、この周辺はポイズナックを恐れて魔獣がおらず、仮にいたとしてもリサやロロの一切隠していない気配を感知した瞬間に逃亡していただろう。
こうしてさっさと魔物を始末した上で、当日の夜にリベラ王国のギルドに戻ってくるリサ。
今の所ポイズナックの目撃情報はナスカ王国だけであるので、討伐証明があればナスカ王国の魔物であると認識されるために驚きをもって成果を受け入れられた。
ナスカ王国にとっての吉報は全く機能していないギルド経由ではなく、世界的にSランカー昇格の報が理由と共に告知された事で王城内に広く知れ渡り、その報と共にギルド職員が再び派遣されると同時に民も戻ってきた。
「リサ様、いつの間に……」
騒ぎの中心にいたリサにミューテルと話す時間などあるわけはなく、その後暫くしてようやく受付に顔を出す事ができていたリサはミューテルから驚きの声で迎えられる。
「師匠の故郷のSランク魔獣ですから、少し手を出してしまいました。これでもう安心ですね。それで、護衛の件はどうなりましたでしょうか?」
「……それが、移動する必要がなくなったとの事で、依頼は撤回されています」
ミューテルとしては闇の奴隷商の商会長に恩を売れる機会を失って機嫌が悪いが、一応新たなSランカーのリサの前では平静を装っている。
しかし既に信頼するに値しない存在と認識しているリサには、取り繕った笑顔である事は看破されている。
その後、史上二人目のSランカーと言う事もあって大陸中がお祭り騒ぎになるのだが、当のリサはその祭りには参加する事なく一刻も早く師匠の元に向かおうと全速力で移動していた。
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