元王子クロイツとその弟子達

焼納豆

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三人の行動

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「お待たせしました、師匠」

「気を遣っていただき、ありがとうございました。師匠」

 はじける笑顔のリサと、少々申し訳なさそうな顔をしているリージョ。

「いや、かまわねーよ。で、話を戻しても良いのか?」

「「はい」」

 ここで改めて、二人が兄妹であると伝える少し前に話していた内容を話し始める三人。

「私は、どう見てもミューテルさんは闇の奴隷商関連、それもあの態度……あの黒尽くめの男に色々命令口調で話していた事から、相当の地位にいる者だと思っています。その時の話では、更に上の立場の者を避難させる……商会長に恩を売ると言っていましたが、商会長本人を避難さようとしたのではないかと思っています。その人物がナスカ王国の相当上の人物……師匠には申し訳ないですが、その商会長と思われる人物の避難依頼を受けた時にナスカ王国に残っていたのは、王族と貴族、一部の騎士とその家族ですから、その内のだれかである事は間違いないと思います」

「リサには伝えたのですが、私の、私達の両親が攫われた後に家を乗っ取り、私を追い出したのもミューテルと言う者です。残念ながら顔も声も思い出せませんが、そこだけは間違いありません」

「本人かどうか……自白させるしかねーって事か。で、リサの話は俺としても相当可能性が高いと思うぜ?何せ、肥溜めに住む糞みてーな連中だからな。だが、誰かとなると……」

「師匠はご存じかと思いますが、今のナスカ王国はドレアが国王に即位しており、先代国王と王妃についてはその姿を見た者はおりません。そのあたりも含めて、事前調査をしてまいりましょうか?」

「……いや、そこまでしなくても良いぞ、リージョ。どうせバカドレアの事だ。権力を手に入れた後に始末したんだろ。俺には一切関係のない人物達がどうなろうが、知った事じゃねーからな」

 そうは言っているが、クロイツは心中穏やかではない。

 相当苦労してきた二人の弟子、そしてこのダンジョンで生活している赤の紋章の人々、すでに亡くなっている赤の紋章……その原因が、自分の血縁によるものかもしれないのだ。

 当然目の前の二人やダンジョン内部で生活している人々から恨まれる可能性も排除できないクロイツは、その後の言葉が続かない。

 家族の絆を知らずに育ったクロイツだが、リサはもとより、共に行動している時間は短いリージョとの間にも漸く絆が生まれたと感じていたので、その絆が消えてしまう事に恐怖を覚えていた。

「師匠!何を考えているのか、一番弟子のリサには全てわかりますよ?ですが、それは余計な事です。師匠は師匠。そしてあのクズ達は別の人間です。師匠とは一切関係ありませんから!ね?お兄ちゃん」

「当然ですよ。当り前じゃないですか。そんなに落ち込まないでください。今度師匠の大好きな女性がいそうなお店に連れて行ってあげま……」

……ピキピキ……

 なんて良い弟子達だ!と思っていたクロイツは、出かかった涙を抑えようとした所でリージョの失言によって殺気を出しているリサに気が付く。

「バッ、リージョ、お前!何を言って……」

 慌てるクロイツたが、リージョは自分の失言を悟ったのかいつの間にかポチと共に避難してこの場から離れている。

 残されたのは、クロイツに向けて集中的に殺気をまき散らしているリサと、その殺気を一身に受けているクロイツ。

 もちろん普通の高ランカー程度ではこの殺気を一切受けきる事は出来ないが、クロイツであれば何もダメージはない……ないのだが、やはり得体のしれない恐ろしさだけは感じ取ってしまう。

「ししょう~?」

「は……はい。いや、いいえ、その、リージョの言った事は多分に誤解を含むものでして、おい!リージョ!逃げるな!卑怯者が!!裏切るのか!」

「裏切る?師匠……お兄ちゃんとそんなお店に行った事があるのですか?」

「バ、バカを言うな……言わないでください。絶対に、神に誓って行っておりません!」

 こんなやり取りが暫く続き、リージョがクロイツを慰めるために言った言葉であったと納得したリサを見て、二人の元にシレっと近づいて来るリージョとポチ。

 恨めしそうに見ているクロイツとは敢えて視線を合わせないようにしているリージョとポチは、リサに話を続けるように促す。

「コホン、話を戻しますね。私の結論は、ミューテルさんは奴隷商の幹部であり、ナスカ王国の上層部、おそらく王族の誰かが商会長だと思っています」

「でもよ?ドレアにそんな組織を運営する力はねーと思うぞ。その妹のリーナは良くわからねーが、ドレアに付きまとっていただけだった気がするしな。となると、行方不明と言うか、消された両親のどちらかか、両方か……奴隷商としての活動が無くなったままであれば、前国王か王妃っていう所じゃねーの?」

 今得ている情報だけでは結論が出そうにない話に三人は少しだけ眉をしかめるが、これだけは伝えようとクロイツは口を開く。

「そうそうリージョ、生きちゃーいねーと思うが、俺の両親が商会長であった場合には容赦なく断罪してくれて良いぜ?もちろんドレアやリーナでも……だ」

「……はい、師匠」

 クロイツの置かれた状況を考えて少し沈んでしまうリージョを励ますかのように、リサが明るく声をかける。

「じゃあ師匠!とりあえずはミューテルさんをどうするか考えましょうか?」
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