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シス連合国(3)
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「全く、他の国の連中はわかっておらん!小国でも集まれば大国。それも強大な国家となり得るのだ!これだけの力が有りながら、今まで通りに穏健に過ごすなどバカのする事だと言う事がわからんのか!」
「ですから言っているでしょう?この連合国は貴方の国ではありません。貴方のような好戦的な人物が国家元首になってしまったら連合国全てが衰退するだけではなく、他国も衰退するのですよ?」
言い合っているのは、先日建国の宣言をしたばかりのシス連合国を構成しているベナマス王国とラトル王国の国家元首の二人だ。
「それは弱者の理論だ。強者は弱者を飲み込んで強くなる。弱肉強食がこの大陸を生き抜く基本だ!」
「偉そうに言う人物は、絶対に自分自身で戦線に出る事はありませんよね。安全な場所から訳の分からない事を騒ぐだけ。そして現実的に命の危険があるのは、碌に事情も知らされていない冒険者や騎士、傭兵達。彼等にも家族がいるのですよ?個人の欲望の為だけに多数を不幸にする事など承諾できるわけがないでしょう!」
「腑抜けたセリフは聞き飽きたわ!その程度の国家だから冒険者も低ランクしか存在せんのだ。我がベナマス王国は、確かに国土は小さく人口も少ないが、それでもAランカーを輩出している名門だぞ!実績のない者に強者の理などわかりようがないだろう!ここは黙って余の方針に従え!」
「何故建国直後に他国を侵略する必要があるのですか?彼らが我らシス連合国を構成する国家に何かをしたのですか?ないでしょう!連合国として大きくなったからと言って、その力全てを手に入れたかのように錯覚して尊大な態度をとる等、愚の骨頂。その根拠が高々Aランカー一人を輩出した事だとは、情けないと思いませんか?」
「貴様、そこまで余を愚弄するか?」
「愚弄ではありませんよ。事実を伝えているのです」
円卓に座っている他の構成国の国家元首は二人のやり取りを見ているのだが、その殆どはシス連合国の国家元首であるラトル王国の国王の意見である<余計な戦闘を行うべきではない>と言う意見に賛同している。
そもそもこの連合国は日ごろ暴走しがちなベナマス王国を抑える意味で結成された事もあり、その事実を知らない当事者のベナマス王国の国王が全ての力を得たかのように錯覚して余計に暴走してしまう逆効果の状態になっていた。
「ベナマス国王。私も国家元首であるラトル国王の意見に賛同します。歴史的にも我が国は他国……どこかの国家を除いて粉をかけられた事がありませんからな」
どこかの国家とはもちろんベナマス王国の事を指しており、身に覚えのある国王は発言者である同じく小国である国王を睨みつけている。
「そうですね。私も国家元首であるラトル国王の意見に賛同です。どうしてもと言うのであれば、連合から離脱して独自の道を進むと良いでしょう。当然反撃されても私達は無関係ですよ?」
「腰抜け共が。それで国家繁栄が成し遂げられると思っているのか?」
武闘派集団こそ国家繁栄の近道だと信じて疑っていないベナマス国王は、ここまで追い詰められてもその牙を隠す事はしなかった。
「ここまで言っても平行線とは恐れ入りましたよ、ベナマス国王。ですが、シス連合国としての総意として、戦闘する事は認めません。これは決定事項です」
ラトル国家元首の一言で他の国王達も大きく頷き拍手をすると、ベナマス国王だけは怒りの表情のままこの部屋から退出して行った。
「本当に困りましたね。あの様子では単独でも我らシス連合国の名前を使って戦闘を始めそうです。そうなる前に各国に状況を説明しなければなりません。建国そうそう情けない話ですが……最も危険な国はどこでしょうか?」
「我らと同じく、最近国家……と言うよりも、町レベルの大きさらしいが、自治権の宣言を予定している町が最も近いな。だが、町と言っても侮るなかれ。そこを治めているのが、あのSランカーのクロイツだからな。当然SSランカーの“白套のリサ”と“黒套のリージョ”の拠点でもある」
「噂によれば、赤の紋章を持つ者が安全に暮らせる町を作ったと言っているようですが、あのクロイツ達であればあり得ない話でもないでしょう」
「私もその話は聞きました。何でもクロイツが拠点にしていたダンジョンの近くに防壁を作ったとか。我が国からも職人が数人行っていたので間違いないでしょう。ただ、その際に魔獣は一切出てこなかったようですが……」
「あのクロイツがいる以上、ダンジョンもある程度制御できていると考えるのが妥当でしょうな。そうでなければダンジョンを含めた町を作るなど自殺行為。以前、Aランカー“爆炎のハロルド”が数分で撤退したと言うダンジョン。つまり、今あの防壁内部はどうなっているはわかりませんが、相当な防衛力である事だけは明白だと思います」
「そう言えば、何人か商人が出入りしているようですね」
「あ、それは我が国に来ている商人がそのうちの一人ですね。ですが、中の魔獣については知らないとしか答えませんでしたよ。本当かどうかはわかりませんが、これ以上強硬に調査してクロイツ達の不興を買うと危険なので、ここまでしか情報はありませんが」
ベナマス王国の国王が退出した円卓では、クロイツが治める町……間もなく“ダンジョン町”と言う何とも言えない名前がゼリア帝国を通じて大陸中に告知されるのだが、その話題で持ちきりになっていた。
その全てがある程度正しく事情を把握しており、流石は小国であれども国家元首と言った所だ。
「では、その町が最も危険にさらされる可能性が高い……いえ、今の状況を考えれば、我らシス連合国が危険になる可能性が高いので、ベナマス王国とシス連合国は無関係と言う事を伝えましょうか。ただし、ベナマス王国を説得中であり、攻撃を仕掛けない限りは連合国として保護している事も付け加えましょう」
「確かに、建国して即座に行動を起こしていない一国を切り捨てたとなっては連合国としての品格が問われますからな」
こうして円卓では一国だけ除いた状態で今後の方針が決定されていった。
「ですから言っているでしょう?この連合国は貴方の国ではありません。貴方のような好戦的な人物が国家元首になってしまったら連合国全てが衰退するだけではなく、他国も衰退するのですよ?」
言い合っているのは、先日建国の宣言をしたばかりのシス連合国を構成しているベナマス王国とラトル王国の国家元首の二人だ。
「それは弱者の理論だ。強者は弱者を飲み込んで強くなる。弱肉強食がこの大陸を生き抜く基本だ!」
「偉そうに言う人物は、絶対に自分自身で戦線に出る事はありませんよね。安全な場所から訳の分からない事を騒ぐだけ。そして現実的に命の危険があるのは、碌に事情も知らされていない冒険者や騎士、傭兵達。彼等にも家族がいるのですよ?個人の欲望の為だけに多数を不幸にする事など承諾できるわけがないでしょう!」
「腑抜けたセリフは聞き飽きたわ!その程度の国家だから冒険者も低ランクしか存在せんのだ。我がベナマス王国は、確かに国土は小さく人口も少ないが、それでもAランカーを輩出している名門だぞ!実績のない者に強者の理などわかりようがないだろう!ここは黙って余の方針に従え!」
「何故建国直後に他国を侵略する必要があるのですか?彼らが我らシス連合国を構成する国家に何かをしたのですか?ないでしょう!連合国として大きくなったからと言って、その力全てを手に入れたかのように錯覚して尊大な態度をとる等、愚の骨頂。その根拠が高々Aランカー一人を輩出した事だとは、情けないと思いませんか?」
「貴様、そこまで余を愚弄するか?」
「愚弄ではありませんよ。事実を伝えているのです」
円卓に座っている他の構成国の国家元首は二人のやり取りを見ているのだが、その殆どはシス連合国の国家元首であるラトル王国の国王の意見である<余計な戦闘を行うべきではない>と言う意見に賛同している。
そもそもこの連合国は日ごろ暴走しがちなベナマス王国を抑える意味で結成された事もあり、その事実を知らない当事者のベナマス王国の国王が全ての力を得たかのように錯覚して余計に暴走してしまう逆効果の状態になっていた。
「ベナマス国王。私も国家元首であるラトル国王の意見に賛同します。歴史的にも我が国は他国……どこかの国家を除いて粉をかけられた事がありませんからな」
どこかの国家とはもちろんベナマス王国の事を指しており、身に覚えのある国王は発言者である同じく小国である国王を睨みつけている。
「そうですね。私も国家元首であるラトル国王の意見に賛同です。どうしてもと言うのであれば、連合から離脱して独自の道を進むと良いでしょう。当然反撃されても私達は無関係ですよ?」
「腰抜け共が。それで国家繁栄が成し遂げられると思っているのか?」
武闘派集団こそ国家繁栄の近道だと信じて疑っていないベナマス国王は、ここまで追い詰められてもその牙を隠す事はしなかった。
「ここまで言っても平行線とは恐れ入りましたよ、ベナマス国王。ですが、シス連合国としての総意として、戦闘する事は認めません。これは決定事項です」
ラトル国家元首の一言で他の国王達も大きく頷き拍手をすると、ベナマス国王だけは怒りの表情のままこの部屋から退出して行った。
「本当に困りましたね。あの様子では単独でも我らシス連合国の名前を使って戦闘を始めそうです。そうなる前に各国に状況を説明しなければなりません。建国そうそう情けない話ですが……最も危険な国はどこでしょうか?」
「我らと同じく、最近国家……と言うよりも、町レベルの大きさらしいが、自治権の宣言を予定している町が最も近いな。だが、町と言っても侮るなかれ。そこを治めているのが、あのSランカーのクロイツだからな。当然SSランカーの“白套のリサ”と“黒套のリージョ”の拠点でもある」
「噂によれば、赤の紋章を持つ者が安全に暮らせる町を作ったと言っているようですが、あのクロイツ達であればあり得ない話でもないでしょう」
「私もその話は聞きました。何でもクロイツが拠点にしていたダンジョンの近くに防壁を作ったとか。我が国からも職人が数人行っていたので間違いないでしょう。ただ、その際に魔獣は一切出てこなかったようですが……」
「あのクロイツがいる以上、ダンジョンもある程度制御できていると考えるのが妥当でしょうな。そうでなければダンジョンを含めた町を作るなど自殺行為。以前、Aランカー“爆炎のハロルド”が数分で撤退したと言うダンジョン。つまり、今あの防壁内部はどうなっているはわかりませんが、相当な防衛力である事だけは明白だと思います」
「そう言えば、何人か商人が出入りしているようですね」
「あ、それは我が国に来ている商人がそのうちの一人ですね。ですが、中の魔獣については知らないとしか答えませんでしたよ。本当かどうかはわかりませんが、これ以上強硬に調査してクロイツ達の不興を買うと危険なので、ここまでしか情報はありませんが」
ベナマス王国の国王が退出した円卓では、クロイツが治める町……間もなく“ダンジョン町”と言う何とも言えない名前がゼリア帝国を通じて大陸中に告知されるのだが、その話題で持ちきりになっていた。
その全てがある程度正しく事情を把握しており、流石は小国であれども国家元首と言った所だ。
「では、その町が最も危険にさらされる可能性が高い……いえ、今の状況を考えれば、我らシス連合国が危険になる可能性が高いので、ベナマス王国とシス連合国は無関係と言う事を伝えましょうか。ただし、ベナマス王国を説得中であり、攻撃を仕掛けない限りは連合国として保護している事も付け加えましょう」
「確かに、建国して即座に行動を起こしていない一国を切り捨てたとなっては連合国としての品格が問われますからな」
こうして円卓では一国だけ除いた状態で今後の方針が決定されていった。
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