208 / 214
ベナマス王国-グアトロ王国(6)
しおりを挟む
「小隊長!私はリージョ殿を信じます。SSランカーである“黒套のリージョ”殿、その後ろには当然“白套のリサ”殿やクロイツ殿までいるのは明白です!」
「わ、私も同じです。私は楽しく生活したいです!あんな常に戦闘を欲するような、いかれた国王の下で生活できません!」
確実にこの会話が知られれば死罪なのだが“黒套のリージョ”の後押しがあると言う事が最後の一押しとなり、抑えられていた思いが溢れて来る小隊の意識は一つになり、同時に直接話をした“黒套のリージョ”のファンになると言う副次効果まで生れてしまった。
恐らく“龍と高ランカーの集い”に毎日のように通っている中でクロイツを始めとした三人に対して称賛の声が聞こえてくるので、自分達もいつの間にか三人に対する尊敬の念が生まれていたのだろう。
「良し!今日と明日の夜も店に行くか!本番の明後日の予行練習だ!」
「「「うぉ~」」」
少し前までの悲壮な感じはどこに言ったのか、予行練習と言う名の元に単純に楽しむために店に向かうのだが、まだ夜になるまでは時間があるので何故か全員が防具屋に向かって黒い外套を購入したのはお約束だ。
小隊はこの宿だけではなく他の場所でも同じ状況になっており、その日の夜にはすっかり黒い外套に身を包んだ軍人一行が店になだれ込み、“龍と高ランカーの集い”の“黒套のリージョ”モドキの割合が一気に増加した。
今までとは違い、この店の醍醐味とも言える三人について話をする事が出来る店員側としても盛り上がり、リージョと直接話をして感動している軍人達も異常に盛り上がり始めるのだが、未だ説明がなされていない小隊の面々に関してはかなり落ち込んでいるので店には来ていない。
翌日はクロイツがグアトロ王国にミーシャを連れてきたので、リージョがミーシャの対応をする為に小隊の他の面々の接触はリサが引き継ぎ、クロイツはダンジョン町に即戻る。
「この宿にベナマス国王とその側近二名がいますよ。この距離であれば貴方の力があれば朧気ながらも気配を察知できますよね?」
「確かに、明確ではないけれども覚えのある気配を三つ感じるわ」
「結構です。明日の夜に町で騒ぎが起きた際に、無駄に王城から騎士が出動します。貴方はあの三人を尾行し、王城の中に入った瞬間に好きに対処してください」
「無駄に?いいえ、何でもないわ」
何故無駄に騎士が出動するのか気になったのだが、リージョ達であれば既にグアトロ国王に全て説明の上なのだろうと判断して言葉を飲み込むミーシャだが、その予想は正しかったようでリージョは少し微笑んでいる。
「フフ、想像通りですよ。ではお願いしますね。三人を見逃すような事が無ければ、実行時……明日の夜までは好きに過ごしていただいて結構ですよ。では私はこれで」
ここまで言われてハイそうですかと休む事は出来ないミーシャ。
万が一にも失敗しては、再びあの場所に逆戻りだと思っているのだから……
慎重に行動するべく道をまたいだ逆にある宿を予約して、監視しつつ軽く休憩をする事にしたのだが、しっかりと気配を消したリージョにその行動まで監視されており、意図せずに信頼度を上げる事に成功していた。
「いよいよ明日の夜、我が覇道が始まるのだ!」
「陛下の仰る通りです。全小隊、準備は万端でございますれば、必ずや覇道を極める事が出来るでしょう」
「陛下の大陸掌握の第一歩、この目で見る事が出来て恐悦至極に存じます!」
ベナマス国王とその側近二人が今回のグアトロ王国掌握作戦の成功は間違いないと確信して喜んでいるのだが、残念ながらミーシャの実力ではある程度の気配はつかめても話の内容までは理解する事は出来ないでいる。
その日の夜……“龍と高ランカーの集い”では、今日説明に来た“白套のリサ”に扮した軍人が増え、昨晩以上に盛り上がりを見せている中で、ハルミュレが来店者全員にリサやリージョから頼まれていた事を告げる。
「皆様、本日も“龍と高ランカーの集い”にご来店いただきましてありがとうございます。本日は“白套のリサ”様と“黒套のリージョ”様のご来店が多くなっておりますが、お二方は事の他師匠であるクロイツ様を尊敬なさっています。ですので、明日は是非クロイツ様もご来店いただけると更に盛り上がるかもしれませんね。そうなれば、お店から一杯サービスさせて頂けるかもしれません!」
クロイツ推しのハルミュレの希望も多分に含まれているのだが、同じようにクロイツを尊敬している弟子二人の単純な想いもあってある程度三人に扮している人々が均等になるように調整しようとしたのだ。
リサやリージョとしてはすっかり緊張感が無くなっているかのような行動だが、これが二人の通常運転になる。
そして翌日の店には……予想通りにクロイツに扮した者も多数いるので、リサやリージョからお願いされていた通りに多少の騒動と勘違いされる程の盛り上がりを見せるために、店は予告通りに一杯無料として店の前の通りにも席を設けて営業している。
ミーシャが監視している宿にも“龍と高ランカーの集い”周辺が大騒ぎになっていると言う情報は人々の手によって伝えられ、一般市民からの情報である事からベナマス国王達も作戦が開始されたと判断して急ぎ宿の一階の食堂から出て行く。
「いよいよだわ。これで私の今後が決まるのだから、慎重に、迅速に、指示通りに行動しなくてはならないわ」
三人の後を指示通りに追いかけるミーシャの視線の先には、恐らく王城から派遣された多数の騎士が見え、その姿を目視したであろうベナマス国王一行も不敵な笑みを浮かべていた。
やがて王城の近くに到着したベナマス国王とその側近は相当高い防壁を難なく超える事に成功したのを見て、ミーシャは少々彼等に対する評価を変更した。
「随分と……見くびっていたわね。実力は、Bランクはありそうね」
「わ、私も同じです。私は楽しく生活したいです!あんな常に戦闘を欲するような、いかれた国王の下で生活できません!」
確実にこの会話が知られれば死罪なのだが“黒套のリージョ”の後押しがあると言う事が最後の一押しとなり、抑えられていた思いが溢れて来る小隊の意識は一つになり、同時に直接話をした“黒套のリージョ”のファンになると言う副次効果まで生れてしまった。
恐らく“龍と高ランカーの集い”に毎日のように通っている中でクロイツを始めとした三人に対して称賛の声が聞こえてくるので、自分達もいつの間にか三人に対する尊敬の念が生まれていたのだろう。
「良し!今日と明日の夜も店に行くか!本番の明後日の予行練習だ!」
「「「うぉ~」」」
少し前までの悲壮な感じはどこに言ったのか、予行練習と言う名の元に単純に楽しむために店に向かうのだが、まだ夜になるまでは時間があるので何故か全員が防具屋に向かって黒い外套を購入したのはお約束だ。
小隊はこの宿だけではなく他の場所でも同じ状況になっており、その日の夜にはすっかり黒い外套に身を包んだ軍人一行が店になだれ込み、“龍と高ランカーの集い”の“黒套のリージョ”モドキの割合が一気に増加した。
今までとは違い、この店の醍醐味とも言える三人について話をする事が出来る店員側としても盛り上がり、リージョと直接話をして感動している軍人達も異常に盛り上がり始めるのだが、未だ説明がなされていない小隊の面々に関してはかなり落ち込んでいるので店には来ていない。
翌日はクロイツがグアトロ王国にミーシャを連れてきたので、リージョがミーシャの対応をする為に小隊の他の面々の接触はリサが引き継ぎ、クロイツはダンジョン町に即戻る。
「この宿にベナマス国王とその側近二名がいますよ。この距離であれば貴方の力があれば朧気ながらも気配を察知できますよね?」
「確かに、明確ではないけれども覚えのある気配を三つ感じるわ」
「結構です。明日の夜に町で騒ぎが起きた際に、無駄に王城から騎士が出動します。貴方はあの三人を尾行し、王城の中に入った瞬間に好きに対処してください」
「無駄に?いいえ、何でもないわ」
何故無駄に騎士が出動するのか気になったのだが、リージョ達であれば既にグアトロ国王に全て説明の上なのだろうと判断して言葉を飲み込むミーシャだが、その予想は正しかったようでリージョは少し微笑んでいる。
「フフ、想像通りですよ。ではお願いしますね。三人を見逃すような事が無ければ、実行時……明日の夜までは好きに過ごしていただいて結構ですよ。では私はこれで」
ここまで言われてハイそうですかと休む事は出来ないミーシャ。
万が一にも失敗しては、再びあの場所に逆戻りだと思っているのだから……
慎重に行動するべく道をまたいだ逆にある宿を予約して、監視しつつ軽く休憩をする事にしたのだが、しっかりと気配を消したリージョにその行動まで監視されており、意図せずに信頼度を上げる事に成功していた。
「いよいよ明日の夜、我が覇道が始まるのだ!」
「陛下の仰る通りです。全小隊、準備は万端でございますれば、必ずや覇道を極める事が出来るでしょう」
「陛下の大陸掌握の第一歩、この目で見る事が出来て恐悦至極に存じます!」
ベナマス国王とその側近二人が今回のグアトロ王国掌握作戦の成功は間違いないと確信して喜んでいるのだが、残念ながらミーシャの実力ではある程度の気配はつかめても話の内容までは理解する事は出来ないでいる。
その日の夜……“龍と高ランカーの集い”では、今日説明に来た“白套のリサ”に扮した軍人が増え、昨晩以上に盛り上がりを見せている中で、ハルミュレが来店者全員にリサやリージョから頼まれていた事を告げる。
「皆様、本日も“龍と高ランカーの集い”にご来店いただきましてありがとうございます。本日は“白套のリサ”様と“黒套のリージョ”様のご来店が多くなっておりますが、お二方は事の他師匠であるクロイツ様を尊敬なさっています。ですので、明日は是非クロイツ様もご来店いただけると更に盛り上がるかもしれませんね。そうなれば、お店から一杯サービスさせて頂けるかもしれません!」
クロイツ推しのハルミュレの希望も多分に含まれているのだが、同じようにクロイツを尊敬している弟子二人の単純な想いもあってある程度三人に扮している人々が均等になるように調整しようとしたのだ。
リサやリージョとしてはすっかり緊張感が無くなっているかのような行動だが、これが二人の通常運転になる。
そして翌日の店には……予想通りにクロイツに扮した者も多数いるので、リサやリージョからお願いされていた通りに多少の騒動と勘違いされる程の盛り上がりを見せるために、店は予告通りに一杯無料として店の前の通りにも席を設けて営業している。
ミーシャが監視している宿にも“龍と高ランカーの集い”周辺が大騒ぎになっていると言う情報は人々の手によって伝えられ、一般市民からの情報である事からベナマス国王達も作戦が開始されたと判断して急ぎ宿の一階の食堂から出て行く。
「いよいよだわ。これで私の今後が決まるのだから、慎重に、迅速に、指示通りに行動しなくてはならないわ」
三人の後を指示通りに追いかけるミーシャの視線の先には、恐らく王城から派遣された多数の騎士が見え、その姿を目視したであろうベナマス国王一行も不敵な笑みを浮かべていた。
やがて王城の近くに到着したベナマス国王とその側近は相当高い防壁を難なく超える事に成功したのを見て、ミーシャは少々彼等に対する評価を変更した。
「随分と……見くびっていたわね。実力は、Bランクはありそうね」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
235
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる