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ミスクの変化(2)
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魔族と言う存在については人族の中で噂程度にはなっており、その存在を非常に忌み嫌う人族がいるのも事実。
その部分に関してはやむを得ないリスクとして条件を出す必要があった。
「助けて頂けるのですか?でも、その条件……まさか私の母に関する事でしょうか?」
この場に異常な姿でいるリティの事、突然現れた事は頭になく、母親と再び共に暮らせる可能性について意識が向いているミスク。
その母に余計なリスクがあるのであれば、その条件は受け入れないと決心していた。
たとえ母親の状態が悪化しようとも、最後のその時まで共に生活したいと願っているからだ。
「そうとも言えますし、そうでないとも言えます。一つ質問があります。貴方は魔族と言う存在を知っていますか?」
「……えっと、噂でなら少しだけ聞いた事がります。人族よりも強い力を持っている程度の噂ですが」
正直底辺の生活をしているミスクに、正確な情報を得る手段など有る訳はない。
「わかりました。仮にあなた、そしてあなたのお母様が魔族になると言ったらどうしますか?」
「お母さんと幸せに過ごせるのであれば、種族なんてどうでも良いです!」
有りえない状況の中で理解不能な質問をされているので、ミスクとしては本心を叫びそのまま泣き崩れてしまったので、リティの優しい視線には気が付かなかった。
ミスクから質問の回答を得る事が出来たリティは、泣き崩れているミスクに優しく声をかける。
「あなたの考えは分かりました。では少々移動しましょうか」
リティはそう言ってそっと目の前のミスクに触れると、共にその場から消えた。
リティがミスクと共に転移した先は<水の都>の最下層、管理層だ。
自分の管理するダンジョン内部、そしてダンジョン間であればどこの位置にでも行く事が出来る眷属とダンジョンマスター。
その力を使って、ミスクを最下層に連れて来たのだ。
この場所には、既にイジスによって配備されていた眷属の一体によって運び込まれたフレイアがいるのだが、残念ながら未だ苦しんでいるままではある。
ミスクは泣き崩れているので、自分の居場所が別の場所になった事には一切気が付いていない。
「ミスクさん。これからあなたのお母様を治療しますので、良く聞いてください」
ダンジョン内部、それも危険度が高いと言われている<水の都>の三階層にいる(と思っている)にもかかわらず、自分の母親を治療すると言われて信じられるわけがない。
やけくそになって文句を言おうと、視線を前に向けると……
「えっ、お母さん!どうして??」
ミスクの前には、見慣れた布団に寝たままの母親がいたのだ。
「ミスクさん、落ち着いてください。貴方が話を聞いてくださらないと、お母様は苦しんだままですよ?」
「は、はい」
こう言われてしまっては大人しくするほかないミスクは、心配そうに母親に近づいて手を握り、視線をリティに向けた。
その目は全てを受け入れる覚悟の目だった。
「結構です。ではお話しさせてください。貴方はお母様と共に生活が出来るのであれば、魔族になっても構わないと仰いました。人族の間では知られていないでしょうが、実はダンジョンマスターになった時点で魔族になり、その際に全ての厄災、呪いの類、体の欠損、病気は無くなります。ですので、あなたのお母様にこのダンジョン<水の都>のダンジョンマスターになって頂きます」
言っている事はかろうじてわかるが、理解が追い付かないと言う不思議な状態のミスクだが、ここで話を切ってしまうと長く母親のフレイアが苦しむ事になるので、何とかグッと堪えている。
「ですが、魔族になる、ダンジョンマスターになると言う事をお母様に知らせる術は今のこの状態では何一つありません。ですから、貴方が決めて下さい」
「母が助かるのであれば、是非お願いします!」
迷いのない回答に、笑顔を見せるリティ。
「わかりました。お母様が魔族、ミスクさんが人族では寿命に大きな差が出てしまいますので、あなたも魔族になる……良いですか?」
「はい。そちらも是非お願いします」
ここでも全く迷いなく返事をしたミスク。
もちろんミスクとしては願ってもない事だからだ。
「素晴らしいですね。ですがあなたの進化はダンジョンマスターになる事ではなく、私のご主人様の力によって行われますので少しお待ちください。早くお母様の苦しみを無くしてあげましょう」
こう言って、この部屋の奥にある大きな水晶の様な物を持ってきたリティ。
暫定的にこのダンジョンを管理していたイジスの眷属は、この直前にマスターの立場を放棄している。
この段階でコアに異常が見られないので、連続したマスター変更ではあるが今回は全く問題ないだろうと確信したリティは作業を継続する。
万が一このダンジョンがダメであればイジス管理下の他のダンジョンで同様の行為を行おうと思っていたのだが、必要なさそうだと安堵する。
手に持った巨大なコアを、既に意識が無くなっているフレイアの手に触れさせた。
するとコアから巨大な光が発せられ、その光は全てフレイアの中に消えて聞く。
フレイアの見た目は黒目・黒髪の人族のままなのだが、顔色は一気に良くなり呼吸も安定している。
「お母さん!!」
その姿を見たミスクは手を握ったまま思わず大声を出してしまったのだが、その声に反応するようにフレイアはその目をあけて、目の前にいる最愛の娘であるミスクを見る。
意識も完全に覚醒しており、ダンジョンマスターになった事で魔族になっている事も理解できているフレイア。
ミスクと違って落ち着いており、優しくミスクを抱きしめつつも自分を助けてくれたであろう同じ魔族のリティに頭を下げる。
「お、上手く行ったようだな」
そんな中、魔王であるイジスが転移してきた。
ここの所は配下のダンジョンの把握、そしてミラバルに対する調査を行っているので少々忙しくなっていた為に、ひと段落してからこの場に転移してきたのだ。
その部分に関してはやむを得ないリスクとして条件を出す必要があった。
「助けて頂けるのですか?でも、その条件……まさか私の母に関する事でしょうか?」
この場に異常な姿でいるリティの事、突然現れた事は頭になく、母親と再び共に暮らせる可能性について意識が向いているミスク。
その母に余計なリスクがあるのであれば、その条件は受け入れないと決心していた。
たとえ母親の状態が悪化しようとも、最後のその時まで共に生活したいと願っているからだ。
「そうとも言えますし、そうでないとも言えます。一つ質問があります。貴方は魔族と言う存在を知っていますか?」
「……えっと、噂でなら少しだけ聞いた事がります。人族よりも強い力を持っている程度の噂ですが」
正直底辺の生活をしているミスクに、正確な情報を得る手段など有る訳はない。
「わかりました。仮にあなた、そしてあなたのお母様が魔族になると言ったらどうしますか?」
「お母さんと幸せに過ごせるのであれば、種族なんてどうでも良いです!」
有りえない状況の中で理解不能な質問をされているので、ミスクとしては本心を叫びそのまま泣き崩れてしまったので、リティの優しい視線には気が付かなかった。
ミスクから質問の回答を得る事が出来たリティは、泣き崩れているミスクに優しく声をかける。
「あなたの考えは分かりました。では少々移動しましょうか」
リティはそう言ってそっと目の前のミスクに触れると、共にその場から消えた。
リティがミスクと共に転移した先は<水の都>の最下層、管理層だ。
自分の管理するダンジョン内部、そしてダンジョン間であればどこの位置にでも行く事が出来る眷属とダンジョンマスター。
その力を使って、ミスクを最下層に連れて来たのだ。
この場所には、既にイジスによって配備されていた眷属の一体によって運び込まれたフレイアがいるのだが、残念ながら未だ苦しんでいるままではある。
ミスクは泣き崩れているので、自分の居場所が別の場所になった事には一切気が付いていない。
「ミスクさん。これからあなたのお母様を治療しますので、良く聞いてください」
ダンジョン内部、それも危険度が高いと言われている<水の都>の三階層にいる(と思っている)にもかかわらず、自分の母親を治療すると言われて信じられるわけがない。
やけくそになって文句を言おうと、視線を前に向けると……
「えっ、お母さん!どうして??」
ミスクの前には、見慣れた布団に寝たままの母親がいたのだ。
「ミスクさん、落ち着いてください。貴方が話を聞いてくださらないと、お母様は苦しんだままですよ?」
「は、はい」
こう言われてしまっては大人しくするほかないミスクは、心配そうに母親に近づいて手を握り、視線をリティに向けた。
その目は全てを受け入れる覚悟の目だった。
「結構です。ではお話しさせてください。貴方はお母様と共に生活が出来るのであれば、魔族になっても構わないと仰いました。人族の間では知られていないでしょうが、実はダンジョンマスターになった時点で魔族になり、その際に全ての厄災、呪いの類、体の欠損、病気は無くなります。ですので、あなたのお母様にこのダンジョン<水の都>のダンジョンマスターになって頂きます」
言っている事はかろうじてわかるが、理解が追い付かないと言う不思議な状態のミスクだが、ここで話を切ってしまうと長く母親のフレイアが苦しむ事になるので、何とかグッと堪えている。
「ですが、魔族になる、ダンジョンマスターになると言う事をお母様に知らせる術は今のこの状態では何一つありません。ですから、貴方が決めて下さい」
「母が助かるのであれば、是非お願いします!」
迷いのない回答に、笑顔を見せるリティ。
「わかりました。お母様が魔族、ミスクさんが人族では寿命に大きな差が出てしまいますので、あなたも魔族になる……良いですか?」
「はい。そちらも是非お願いします」
ここでも全く迷いなく返事をしたミスク。
もちろんミスクとしては願ってもない事だからだ。
「素晴らしいですね。ですがあなたの進化はダンジョンマスターになる事ではなく、私のご主人様の力によって行われますので少しお待ちください。早くお母様の苦しみを無くしてあげましょう」
こう言って、この部屋の奥にある大きな水晶の様な物を持ってきたリティ。
暫定的にこのダンジョンを管理していたイジスの眷属は、この直前にマスターの立場を放棄している。
この段階でコアに異常が見られないので、連続したマスター変更ではあるが今回は全く問題ないだろうと確信したリティは作業を継続する。
万が一このダンジョンがダメであればイジス管理下の他のダンジョンで同様の行為を行おうと思っていたのだが、必要なさそうだと安堵する。
手に持った巨大なコアを、既に意識が無くなっているフレイアの手に触れさせた。
するとコアから巨大な光が発せられ、その光は全てフレイアの中に消えて聞く。
フレイアの見た目は黒目・黒髪の人族のままなのだが、顔色は一気に良くなり呼吸も安定している。
「お母さん!!」
その姿を見たミスクは手を握ったまま思わず大声を出してしまったのだが、その声に反応するようにフレイアはその目をあけて、目の前にいる最愛の娘であるミスクを見る。
意識も完全に覚醒しており、ダンジョンマスターになった事で魔族になっている事も理解できているフレイア。
ミスクと違って落ち着いており、優しくミスクを抱きしめつつも自分を助けてくれたであろう同じ魔族のリティに頭を下げる。
「お、上手く行ったようだな」
そんな中、魔王であるイジスが転移してきた。
ここの所は配下のダンジョンの把握、そしてミラバルに対する調査を行っているので少々忙しくなっていた為に、ひと段落してからこの場に転移してきたのだ。
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