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ミスクの変化(1)
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ミスクが放心しているその間に、ロイエスパーティーはさっさと鉱石を採取してこの場を離れてしまった。
ロイエス達からは膨大な数のマジックフィッシュの群れに囲われているミスクの状態は確認する事は出来ないのだが、これだけの魔物に囲われてしまっては自分達の力でも脱出する事は出来ないと確信しているので、囮としては完全に始末できたと思っていた。
一方のミスク。
視線の先には隙間なく魔物が見えてミスクを見つめているのだが、ただの一匹も攻撃を仕掛けてこないのだ。
既に自分の命、そして最愛の母の命すら諦めてしまったミスクは、一刻も早くこの恐怖の時間を終わりにしたいと思っていたほどだ。
恐怖を味わっているが故に、かなり長い時間が経過したように思えているミスク。
突然自分を囲っていた魔物の群れが地中に消えていった。
そして開けた視界の先には……当然ロイエスパーティーは存在していない。
何の力もないミスクにしてみれば、たとえこの場で助かったとしても上層階に一人で進む事は不可能だと思っている。
その為に、この場から立ち上がる事も出来なかったのだ。
暫く放心していると、心労と肉体的疲労からお腹が空く。
どうせ消える命と考えて、最後にロイエスパーティーが残した荷物の中にあるはずの贅沢な食事をしようと考えた。
他人の荷物を勝手に漁り、剰え奪ってしまう罪悪感はあったのだが、彼らは有り得ない裏切り行為をして見せたので今更だと割り切って中身を漁る。
「ここまで腐っていたのですか……」
そのバッグの中身は上の方には服と水筒。
更にその下を漁ると、何に使用するか分からい程のゴミクズが四つのバッグ全てにぎっしりと詰まっていたのだ。
漸く全てを理解したミスク。
薄々気がついてはいたが、最初からロイエスパーティーは回復魔法を餌に自分を利用し尽くしただけで真面に報酬を払うつもりはなかったのだ。
ギルドマスターの紹介という事や、母を少しでも楽にさせてあげられると言う餌に釣られて油断していた自分が恨めしい。
冷静に考えれば周囲の受付や冒険者達が自分を見る目……その視線に哀れみが含まれていたのは、こう言った事が常態化していたからだろうと漸く思い至るミスク。
母を助けたい一心で細かい事を見なかった事にしていたミスクは、今更ながら後悔していた。
「誰か……誰か……助けて……」
聞く者全てを悲しみのどん底に突き落とす様な、苦しみぬいた声を出すミスク。
「それは、あなた次第です」
突然美しい声が近くから聞こえてきたので、慌てて視線を声がした方向に移すと……
そこには同性の自分でも見惚れるほどの美貌を持った、金目金髪の女性が立っていた。
美しいながらも少し垂れ目に見える、可愛さも兼ね備えた人……良く見ると、獣の耳の様な物がついている事からどう見ても人ではなさそうだ。
危険な場所と言われるダンジョンの中にも拘らず、まるで散歩にでも出かけているような服装で……
「あなたが助かりたいと思うのであれば、助けましょう。それが我らのご主人様の御意思。ですが条件があります」
この日を迎える前に、既に主であるイジスと今後の話をしていたリティ。
その結論は、このミスクの母親であるフレイアを<水の都>のダンジョンマスターに抜擢し、ミスク自身も魔王の眷属とする事だ。
当然二人とも魔族に進化する事になる。
ダンジョンマスターになる場合に人族から魔族になり、そしてその地位から落ちた際に魔族から人族に変化するのだが、その時に、全ての怪我や欠損、病気などは無くなる。
イジスが以前魔族の時に核を砕かれるような攻撃を受けても、人族に戻った時に無事だったのはそのためだ。
この法則を利用して、人族のバミアが行使した回復魔法を魔族による回復魔法によって上書きした際の予測不能な影響を無くし、回復させようと考えていた。
魔族になると寿命が一気に延びる為に、共に生活する事を望んでいるミスクに関してはイジスがその強大な力を使って魔族に進化させると言う手段を取る事にしたのだ。
ミスクの母であるフレイアをダンジョンマスターに登録して魔族へ進化後、即人族に戻す方法も取れなくはない。
しかし、その場合には超短期間にダンジョンマスターが複数回変更される弊害に対して不安があったのだ。
誰も真実は分からないが、最悪はダンジョンコアが壊れてしまう可能性が無くもない。
そもそも、ここの<水の都>は現時点でダンジョンマスターを変更したばかり。
その為に、この案を採用してしまうと立て続けに三回マスターが変わる事になるので、余計なリスクを減らしたかったのだ。
ロイエス達からは膨大な数のマジックフィッシュの群れに囲われているミスクの状態は確認する事は出来ないのだが、これだけの魔物に囲われてしまっては自分達の力でも脱出する事は出来ないと確信しているので、囮としては完全に始末できたと思っていた。
一方のミスク。
視線の先には隙間なく魔物が見えてミスクを見つめているのだが、ただの一匹も攻撃を仕掛けてこないのだ。
既に自分の命、そして最愛の母の命すら諦めてしまったミスクは、一刻も早くこの恐怖の時間を終わりにしたいと思っていたほどだ。
恐怖を味わっているが故に、かなり長い時間が経過したように思えているミスク。
突然自分を囲っていた魔物の群れが地中に消えていった。
そして開けた視界の先には……当然ロイエスパーティーは存在していない。
何の力もないミスクにしてみれば、たとえこの場で助かったとしても上層階に一人で進む事は不可能だと思っている。
その為に、この場から立ち上がる事も出来なかったのだ。
暫く放心していると、心労と肉体的疲労からお腹が空く。
どうせ消える命と考えて、最後にロイエスパーティーが残した荷物の中にあるはずの贅沢な食事をしようと考えた。
他人の荷物を勝手に漁り、剰え奪ってしまう罪悪感はあったのだが、彼らは有り得ない裏切り行為をして見せたので今更だと割り切って中身を漁る。
「ここまで腐っていたのですか……」
そのバッグの中身は上の方には服と水筒。
更にその下を漁ると、何に使用するか分からい程のゴミクズが四つのバッグ全てにぎっしりと詰まっていたのだ。
漸く全てを理解したミスク。
薄々気がついてはいたが、最初からロイエスパーティーは回復魔法を餌に自分を利用し尽くしただけで真面に報酬を払うつもりはなかったのだ。
ギルドマスターの紹介という事や、母を少しでも楽にさせてあげられると言う餌に釣られて油断していた自分が恨めしい。
冷静に考えれば周囲の受付や冒険者達が自分を見る目……その視線に哀れみが含まれていたのは、こう言った事が常態化していたからだろうと漸く思い至るミスク。
母を助けたい一心で細かい事を見なかった事にしていたミスクは、今更ながら後悔していた。
「誰か……誰か……助けて……」
聞く者全てを悲しみのどん底に突き落とす様な、苦しみぬいた声を出すミスク。
「それは、あなた次第です」
突然美しい声が近くから聞こえてきたので、慌てて視線を声がした方向に移すと……
そこには同性の自分でも見惚れるほどの美貌を持った、金目金髪の女性が立っていた。
美しいながらも少し垂れ目に見える、可愛さも兼ね備えた人……良く見ると、獣の耳の様な物がついている事からどう見ても人ではなさそうだ。
危険な場所と言われるダンジョンの中にも拘らず、まるで散歩にでも出かけているような服装で……
「あなたが助かりたいと思うのであれば、助けましょう。それが我らのご主人様の御意思。ですが条件があります」
この日を迎える前に、既に主であるイジスと今後の話をしていたリティ。
その結論は、このミスクの母親であるフレイアを<水の都>のダンジョンマスターに抜擢し、ミスク自身も魔王の眷属とする事だ。
当然二人とも魔族に進化する事になる。
ダンジョンマスターになる場合に人族から魔族になり、そしてその地位から落ちた際に魔族から人族に変化するのだが、その時に、全ての怪我や欠損、病気などは無くなる。
イジスが以前魔族の時に核を砕かれるような攻撃を受けても、人族に戻った時に無事だったのはそのためだ。
この法則を利用して、人族のバミアが行使した回復魔法を魔族による回復魔法によって上書きした際の予測不能な影響を無くし、回復させようと考えていた。
魔族になると寿命が一気に延びる為に、共に生活する事を望んでいるミスクに関してはイジスがその強大な力を使って魔族に進化させると言う手段を取る事にしたのだ。
ミスクの母であるフレイアをダンジョンマスターに登録して魔族へ進化後、即人族に戻す方法も取れなくはない。
しかし、その場合には超短期間にダンジョンマスターが複数回変更される弊害に対して不安があったのだ。
誰も真実は分からないが、最悪はダンジョンコアが壊れてしまう可能性が無くもない。
そもそも、ここの<水の都>は現時点でダンジョンマスターを変更したばかり。
その為に、この案を採用してしまうと立て続けに三回マスターが変わる事になるので、余計なリスクを減らしたかったのだ。
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