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ロイエスパーティー(1)
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ダンジョン<水の都>の三階層、危険度が非常に高い場所にあるとされている鉱石を大量に手に入れたロイエス一行は、機嫌良くギルドに戻ってきた。
「おい、今回の依頼の品だ」
滅多に見る事の出来ない鉱石が大量に目の前に積まれたので、受付は目を見張る……のだが、尊大な態度のロイエスの後ろにいるパーティーの中に荷物持ちのミスクの姿がない事に気が付いた。
「あの、ミスクさんはどうしたのでしょうか?」
「あん?あいつは荷物持ちだ。何の力もない荷物持ち。そして今回の依頼は達成難易度が非常に高い依頼。お前も受付としての経験は長いんだろう?説明しなきゃ分からねーか?その辺りで察しやがれ!」
今の今まで機嫌が良かったロイエスは、冷や水を浴びせられたとばかりに一気に機嫌が悪くなる。
悲しい事に、受付の予想通りにダンジョン内部で死亡したようだ。
このロイエスパーティーの荷物持ち、先代のイジスは少々長く活動していたが、ミスクを含めて歴代の人々はかなり早くに死亡しているのだ。それも相当数。
今回ミスクがこのパーティーに加わったのは、ギルドマスターからの紹介。
その理由も知っている受付は残された母親を不憫に思いつつも何もできる事は無く、悔しさを表に出さないようにする事しかできなかった。
万が一にも本音を漏らそうものなら即ギルド受付の職を失い、その後はロイエスパーティーのみならず、ギルドマスター、ひいては高額な褒賞に目が眩んだ冒険者からも命を狙われる可能性があるからだ。
「し、失礼しました。確かに依頼達成になります。お疲れ様でした」
「フン、余計な事を言わずに素直にそう言ってりゃ良いんだよ!」
正直かなりの不満を内に秘めつつも、目の前の権力と言うモノには逆らう事が出来なかった受付は、いつもの定例句によって業務を遂行した。
「随分と早いじゃないか。それに……中々の品だね」
いつの間にかこの場に来ていたギルドマスターであるホノカは、ロイエスが持ち込んだ鉱石をみて頬を緩める。
この鉱石を買い取り額よりも高めに市場に流すので、差額がギルドの収入になり、自分の収入にもなるからだ。
その鉱石採取依頼を達成した、弟子であるロイエス率いるパーティーにいるはずの荷物持ちがいない事には気が付いている。
だが鉱石がもたらす価値と比べるとそのような事実はホノカにとっては取るに足らない事ではあるし、そもそもロイエスパーティーが荷物持ちを囮に使う事は分かり切っているので、気にする素振りすらない。
そんな思いは弟子のロイエスやそのパーティーメンバーも同じだ。
「おっ、師匠。見てくれよ。あいつのおかげで大量に持ち込む事が出来たぜ」
「良い仕事をしたじゃないか。お互いに。フフフ」
ギルドマスターにしてみれば、囮に出来る様な荷物持ちは腐る程知っている。
少々治安の悪い場所に行けば吐いて捨てる程そのような人材が存在しているのだから、少々餌をぶら下げてやれば入れ食いになる。
それも、ギルドマスターであり<拳者>の称号を持つ自らが声を掛ければ誰も疑う事が無く、ホイホイとその身を差し出して来るのだ。
その内の一人がこれほどの成果をもたらしたのだから、機嫌が良くなるのも仕方がない。
一方で現実を把握している受付はロイエスやホノカ達を視線に入れないようにしつつも、何もできない悔しさからグッと拳を握っていた。
本当に短い間だけしかミスクの姿を見る事が出来なかったが、母親のために必死で行動する人柄に大きく惹かれていたのだ。
「そんでよ、師匠。また次を頼みて~んだけどよ?」
いつものロイエスの行動だが、普通の神経であれば決して仲間が死亡した直後に言える様なセリフではない。
どうしても我慢ができなくなり、思わずロイエスパーティーとホノカのいる方向を睨みそうになった時に聞き覚えのある声が聞こえて来た。
「お~、凄い鉱石だ。これはあなた方が取ってきたのですか?」
そう、死亡した(と思っている)荷物持ちであるミスクの前に、この非道なロイエスパーティーの荷物持ちを行っていたイジスだ。
実はイジス、ミスクとフレイアが魔族になって健康体を取り戻した事を確認すると、ロイエスを追いかけていたのだ。
ギルド受付に対して、自分が無事に過ごせていると言う安全確認をさせるためでもある。
未だに何故あの状況に追いやったイジスが生きているのかは正確には理解できていないロイエス達だが、記憶をなくしていると言う情報を得ているので、その情報を信用している訳ではないが少なくとも今この時点では自らの行動を吹聴される心配はないと判断している。
しかし、どのようなきっかけでイジスの記憶が戻るか分からないし、記憶喪失が嘘であった場合にもどのタイミングで事実を公にするかを気にする必要はあった。
仮に騒がれたとしても、イジスと比べると大きく立場が違うために自分達の地位はゆるぎないと思っているのだが、その噂が余りにも広がりすぎると次なる荷物持ちが準備し辛くなるのは否定できないのだ。
「おい、今回の依頼の品だ」
滅多に見る事の出来ない鉱石が大量に目の前に積まれたので、受付は目を見張る……のだが、尊大な態度のロイエスの後ろにいるパーティーの中に荷物持ちのミスクの姿がない事に気が付いた。
「あの、ミスクさんはどうしたのでしょうか?」
「あん?あいつは荷物持ちだ。何の力もない荷物持ち。そして今回の依頼は達成難易度が非常に高い依頼。お前も受付としての経験は長いんだろう?説明しなきゃ分からねーか?その辺りで察しやがれ!」
今の今まで機嫌が良かったロイエスは、冷や水を浴びせられたとばかりに一気に機嫌が悪くなる。
悲しい事に、受付の予想通りにダンジョン内部で死亡したようだ。
このロイエスパーティーの荷物持ち、先代のイジスは少々長く活動していたが、ミスクを含めて歴代の人々はかなり早くに死亡しているのだ。それも相当数。
今回ミスクがこのパーティーに加わったのは、ギルドマスターからの紹介。
その理由も知っている受付は残された母親を不憫に思いつつも何もできる事は無く、悔しさを表に出さないようにする事しかできなかった。
万が一にも本音を漏らそうものなら即ギルド受付の職を失い、その後はロイエスパーティーのみならず、ギルドマスター、ひいては高額な褒賞に目が眩んだ冒険者からも命を狙われる可能性があるからだ。
「し、失礼しました。確かに依頼達成になります。お疲れ様でした」
「フン、余計な事を言わずに素直にそう言ってりゃ良いんだよ!」
正直かなりの不満を内に秘めつつも、目の前の権力と言うモノには逆らう事が出来なかった受付は、いつもの定例句によって業務を遂行した。
「随分と早いじゃないか。それに……中々の品だね」
いつの間にかこの場に来ていたギルドマスターであるホノカは、ロイエスが持ち込んだ鉱石をみて頬を緩める。
この鉱石を買い取り額よりも高めに市場に流すので、差額がギルドの収入になり、自分の収入にもなるからだ。
その鉱石採取依頼を達成した、弟子であるロイエス率いるパーティーにいるはずの荷物持ちがいない事には気が付いている。
だが鉱石がもたらす価値と比べるとそのような事実はホノカにとっては取るに足らない事ではあるし、そもそもロイエスパーティーが荷物持ちを囮に使う事は分かり切っているので、気にする素振りすらない。
そんな思いは弟子のロイエスやそのパーティーメンバーも同じだ。
「おっ、師匠。見てくれよ。あいつのおかげで大量に持ち込む事が出来たぜ」
「良い仕事をしたじゃないか。お互いに。フフフ」
ギルドマスターにしてみれば、囮に出来る様な荷物持ちは腐る程知っている。
少々治安の悪い場所に行けば吐いて捨てる程そのような人材が存在しているのだから、少々餌をぶら下げてやれば入れ食いになる。
それも、ギルドマスターであり<拳者>の称号を持つ自らが声を掛ければ誰も疑う事が無く、ホイホイとその身を差し出して来るのだ。
その内の一人がこれほどの成果をもたらしたのだから、機嫌が良くなるのも仕方がない。
一方で現実を把握している受付はロイエスやホノカ達を視線に入れないようにしつつも、何もできない悔しさからグッと拳を握っていた。
本当に短い間だけしかミスクの姿を見る事が出来なかったが、母親のために必死で行動する人柄に大きく惹かれていたのだ。
「そんでよ、師匠。また次を頼みて~んだけどよ?」
いつものロイエスの行動だが、普通の神経であれば決して仲間が死亡した直後に言える様なセリフではない。
どうしても我慢ができなくなり、思わずロイエスパーティーとホノカのいる方向を睨みそうになった時に聞き覚えのある声が聞こえて来た。
「お~、凄い鉱石だ。これはあなた方が取ってきたのですか?」
そう、死亡した(と思っている)荷物持ちであるミスクの前に、この非道なロイエスパーティーの荷物持ちを行っていたイジスだ。
実はイジス、ミスクとフレイアが魔族になって健康体を取り戻した事を確認すると、ロイエスを追いかけていたのだ。
ギルド受付に対して、自分が無事に過ごせていると言う安全確認をさせるためでもある。
未だに何故あの状況に追いやったイジスが生きているのかは正確には理解できていないロイエス達だが、記憶をなくしていると言う情報を得ているので、その情報を信用している訳ではないが少なくとも今この時点では自らの行動を吹聴される心配はないと判断している。
しかし、どのようなきっかけでイジスの記憶が戻るか分からないし、記憶喪失が嘘であった場合にもどのタイミングで事実を公にするかを気にする必要はあった。
仮に騒がれたとしても、イジスと比べると大きく立場が違うために自分達の地位はゆるぎないと思っているのだが、その噂が余りにも広がりすぎると次なる荷物持ちが準備し辛くなるのは否定できないのだ。
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