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ロイエスパーティー(2)
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イジスが相変わらず記憶が戻っていないかの如くロイエス達が持ち込んだ鉱石を称えるかのように話しかけるので、ロイエスの機嫌も少々よくなる。
「おう、そうだぜ。お前程度がどれ程死ぬ気で行動しても、見る事すら叶わねー代物だろう?」
「そうでしょうね。これだけの大物。確かに……」
実はこの時点で、ある程度冒険者や荷物持ちとしての経験がないと分からない事をイジスが言っているのだが、あろうことかギルドマスターであるホノカも含めて誰もこの違和感を察知する事が出来なかった。
それどころか、ホノカに至ってはいやらしい笑みをうかべてイジスにこう告げた。
「イジス、お前は私の弟子であるこのロイエスをリーダーとしたパーティーと暫く行動を共にしたらどうだい?取り敢えずはパーティーとして登録しなくとも良い。だが、行動を共にする事で、お前が見る事が出来ないようなこんな鉱石を見るチャンスも有るだろうよ。それに、以前も言ったがお前は元々このパーティーの荷物持ちだった。冒険者として活動するには、慣れ親しんだ連中と行動を共にできた方が良いんじゃないかい?」
この言葉でロイエス一行はホノカの言わんとしている事を理解した。
次こそは確実に囮として使い潰して始末して来いと言う事だ。
敢えてホノカがイジスをロイエスパーティーとして登録させない方向に持って行ったのは、イジスはどう頑張っても直ぐに死亡する予定なので、その後の処理が面倒くさかったからに他ならない。
もちろんこの話を聞いている受付も全て理解しているのだが、立場上ワナワナと震えているだけで口を開く事が出来ずにいた。
そんな受付の感情をよそに、イジスは喜んでこの申し出を受けたのだ。
ホノカやロイエスパーティーはいやらしい笑みをうかべ、受付は悲しそうな顔をしていたのが対照的だ。
「そんじゃよ、荷物持ちから冒険者になったお前の実力を知っておきてーから、明日早速依頼をこなすか」
こうしてロイエス一行は短い間ではあるものの、再び囮、雑用、ストレス発散の道具を手に入れる事が出来た喜び、そして今度こそ確実にイジスを消す事で万が一記憶が戻った際の対処をしなくて済むと言う安堵から、早速翌日に再び<水の都>ダンジョン関連の依頼を行う事になったのだ。
「おう、早えーじゃねーかよ」
早朝のギルドに既にイジスがいる事で、記憶が無くなってもこんな所だけは変わらないと思いつつも取り敢えず声を掛けるロイエスだが、この行動からイジスは記憶をなくしているフリをしているだけではと言う方が、真実味があると確信しだしている。
イジスと受付の窓口の中間の位置と言う中途半端な場所にいた受付業務の女性は、ロイエスが現れたのを見て何故だか少し驚いた顔をしている。
この受付は、記憶が無くなっていると言われている以前のイジスがロイエスパーティーからどのような扱いを受けていたか、その結果これからの依頼がどれほど危険かをロイエスがギルドに到着する前のこの時間を使って必死で伝えていたのだ。
そんな受付の心配は杞憂に終わっていた。
「ありがとうございます。いつも心配をおかけして……でも大丈夫ですよ。俺もその事実は嫌と言う程知っていますから。それと、他にも荷物持ち……直近ではミスクさんが犠牲になっているんでしょ?そろそろ、その諸悪の根源を叩き潰そうかと思っていますんで、心配しないでくださいね。そうそう、もうすぐロイエスが来ますから、受付に戻った方が良いですよ」
こう言って、イジスから軽くウインクされた受付。
対応していた受付は明らかにイジスの記憶が戻っている、いや、記憶喪失のふりをしていたと理解したのだが、それを言いふらすような事は決してしないし、イジスもその事を理解しているので事実を伝えたのだ。
記憶の中にあるイジスではなく、かなり自信満々なイジスを前にして説得する必要はないのかもしれないと思った受付は、業務を始めるべく受付に向かっていた。
その途中で、イジスの言葉通りに、ギルドにロイエスが入ってきたのだ。
まるで預言者のごとくロイエスの来訪を当てて見せたイジスに驚く受付だが、逆に何か不思議な力を持っているのだと判断し、自分が思っている程イジスに危険はないのではないかと思う事が出来ていた。
暫くするとロイエスパーティーである残りの三人、バミア、ロペス、バウサーもギルドに到着し、イジスを含めた五人で再びダンジョン<水の都>三階層の鉱石入手の依頼を行うためにギルドを後にした。
「おいイジス、今日も俺達は昨日と同じ依頼をお前の為に受けてやる。あれほどの鉱石だ。そうそう見られるもんじゃねーぞ。感謝するんだな」
相当な報酬を得る事が出来ていたので、確実に始末できる<水の都>三階層にイジスを誘い込んで始末し、再び報酬を得ようと企んでいた。
その程度は理解しているイジス。
こちらも逆に<水の都>にロイエスパーティーを誘い込み、どう料理しようかを考えている。
まさに互いを潰してやろうと言う気持ちで行動を共にしている、不思議なパーティーが出来上がった。
基本的には手を出すなとは言ってしまったが、直近でさんざんな目に遭っていたミスクにも復讐の機会を与えても良いと思っているイジス。
と言うよりも再び魔王としての力を完全に取り戻してからは、このような雑魚に自分が直接積極的に手を下す事が日に日に面倒くさくなっていた。
そう思えるほどに、圧倒的な力の差があるのだ。
「おう、そうだぜ。お前程度がどれ程死ぬ気で行動しても、見る事すら叶わねー代物だろう?」
「そうでしょうね。これだけの大物。確かに……」
実はこの時点で、ある程度冒険者や荷物持ちとしての経験がないと分からない事をイジスが言っているのだが、あろうことかギルドマスターであるホノカも含めて誰もこの違和感を察知する事が出来なかった。
それどころか、ホノカに至ってはいやらしい笑みをうかべてイジスにこう告げた。
「イジス、お前は私の弟子であるこのロイエスをリーダーとしたパーティーと暫く行動を共にしたらどうだい?取り敢えずはパーティーとして登録しなくとも良い。だが、行動を共にする事で、お前が見る事が出来ないようなこんな鉱石を見るチャンスも有るだろうよ。それに、以前も言ったがお前は元々このパーティーの荷物持ちだった。冒険者として活動するには、慣れ親しんだ連中と行動を共にできた方が良いんじゃないかい?」
この言葉でロイエス一行はホノカの言わんとしている事を理解した。
次こそは確実に囮として使い潰して始末して来いと言う事だ。
敢えてホノカがイジスをロイエスパーティーとして登録させない方向に持って行ったのは、イジスはどう頑張っても直ぐに死亡する予定なので、その後の処理が面倒くさかったからに他ならない。
もちろんこの話を聞いている受付も全て理解しているのだが、立場上ワナワナと震えているだけで口を開く事が出来ずにいた。
そんな受付の感情をよそに、イジスは喜んでこの申し出を受けたのだ。
ホノカやロイエスパーティーはいやらしい笑みをうかべ、受付は悲しそうな顔をしていたのが対照的だ。
「そんじゃよ、荷物持ちから冒険者になったお前の実力を知っておきてーから、明日早速依頼をこなすか」
こうしてロイエス一行は短い間ではあるものの、再び囮、雑用、ストレス発散の道具を手に入れる事が出来た喜び、そして今度こそ確実にイジスを消す事で万が一記憶が戻った際の対処をしなくて済むと言う安堵から、早速翌日に再び<水の都>ダンジョン関連の依頼を行う事になったのだ。
「おう、早えーじゃねーかよ」
早朝のギルドに既にイジスがいる事で、記憶が無くなってもこんな所だけは変わらないと思いつつも取り敢えず声を掛けるロイエスだが、この行動からイジスは記憶をなくしているフリをしているだけではと言う方が、真実味があると確信しだしている。
イジスと受付の窓口の中間の位置と言う中途半端な場所にいた受付業務の女性は、ロイエスが現れたのを見て何故だか少し驚いた顔をしている。
この受付は、記憶が無くなっていると言われている以前のイジスがロイエスパーティーからどのような扱いを受けていたか、その結果これからの依頼がどれほど危険かをロイエスがギルドに到着する前のこの時間を使って必死で伝えていたのだ。
そんな受付の心配は杞憂に終わっていた。
「ありがとうございます。いつも心配をおかけして……でも大丈夫ですよ。俺もその事実は嫌と言う程知っていますから。それと、他にも荷物持ち……直近ではミスクさんが犠牲になっているんでしょ?そろそろ、その諸悪の根源を叩き潰そうかと思っていますんで、心配しないでくださいね。そうそう、もうすぐロイエスが来ますから、受付に戻った方が良いですよ」
こう言って、イジスから軽くウインクされた受付。
対応していた受付は明らかにイジスの記憶が戻っている、いや、記憶喪失のふりをしていたと理解したのだが、それを言いふらすような事は決してしないし、イジスもその事を理解しているので事実を伝えたのだ。
記憶の中にあるイジスではなく、かなり自信満々なイジスを前にして説得する必要はないのかもしれないと思った受付は、業務を始めるべく受付に向かっていた。
その途中で、イジスの言葉通りに、ギルドにロイエスが入ってきたのだ。
まるで預言者のごとくロイエスの来訪を当てて見せたイジスに驚く受付だが、逆に何か不思議な力を持っているのだと判断し、自分が思っている程イジスに危険はないのではないかと思う事が出来ていた。
暫くするとロイエスパーティーである残りの三人、バミア、ロペス、バウサーもギルドに到着し、イジスを含めた五人で再びダンジョン<水の都>三階層の鉱石入手の依頼を行うためにギルドを後にした。
「おいイジス、今日も俺達は昨日と同じ依頼をお前の為に受けてやる。あれほどの鉱石だ。そうそう見られるもんじゃねーぞ。感謝するんだな」
相当な報酬を得る事が出来ていたので、確実に始末できる<水の都>三階層にイジスを誘い込んで始末し、再び報酬を得ようと企んでいた。
その程度は理解しているイジス。
こちらも逆に<水の都>にロイエスパーティーを誘い込み、どう料理しようかを考えている。
まさに互いを潰してやろうと言う気持ちで行動を共にしている、不思議なパーティーが出来上がった。
基本的には手を出すなとは言ってしまったが、直近でさんざんな目に遭っていたミスクにも復讐の機会を与えても良いと思っているイジス。
と言うよりも再び魔王としての力を完全に取り戻してからは、このような雑魚に自分が直接積極的に手を下す事が日に日に面倒くさくなっていた。
そう思えるほどに、圧倒的な力の差があるのだ。
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