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悪魔テスラム
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俺達の目の前に現れた悪魔は、優雅に一礼して見せた。
見た感じ武器は装備していないようだが、いくら殺気がないとしても油断は禁物だ。
全員戦闘態勢になってはいるが、この悪魔は涼しい顔をしている。
「重ねて申し上げますが、私に害意は一切ございません。少々お話を聞いて頂けるとありがたいのですが」
ロイドが警戒しつつも許可を出す。
「まあ、いいだろう。正直俺もお前の気配はかなり前から感知していたが、一切の害意がないので放置してたんだ。もし悪意があるならば俺達の戦闘中にちょっかいかける方が手間がかからないだろうしな。そうしなかったってことは・・・今の所は信用してやる」
「ありがとうございます」
優雅に一礼する悪魔。しかし、俺達は武器を手放すことはしない。
そんな中、悪魔は話始める。
「少々自己紹介をさせて頂きます。私御覧の通り悪魔のテスラムと申します。初代無剣所持者の時代には既にこの世界にいた年寄りでございますが・・・悪魔と申しましたが、悪魔の王族が束ねている国家からは遥か昔に追い出されてしまいまして、何人も来ないこのダンジョンに住み着いていたわけです。そんな中、突然数回もこのダンジョンに侵入者が来たものですから、ないとは思いましたが悪魔の追撃かと警戒していた次第です」
「そうか・・・まあ、状況は何となくわかった。いくつか質問したいが良いか?」
「もちろんでございます。<炎剣>所持者殿」
「流石に長く生きているだけあって、かなりの知識はあるようだな。それで、テスラムさんと言ったか?あんたは約十年前のフロキル王国への魔族侵攻の話を知っているか?」
「ええ、魔族がフロキル王国を襲来したことは存じておりますが、既に私はここに住み着いていた状態でして、私の使い魔達から得た情報によって知り得ただけでございます」
「そうか。俺達はその魔族は上位種である悪魔の命令を受けて襲来してきたと考えているが、そのあたりはどうだ?」
「ええ、そこは間違いないでしょう」
「それも使い魔からの情報収集か?追い出されても情報集できるほど使い魔が優秀なのか?」
「ええ、実は私の使い魔はスライムでして・・・悪魔によって使役できる使い魔が異なるのです。私にとっては頼りになる者達なのですが、他の悪魔にとっては邪魔だったようで・・・この有様です」
「スライムか。確かに改めて意識すると相当数がいるな」
「ええ、私の大切な家族です。しかし、スライムは大変有用です。今あなた様がおっしゃったように、わざわざスライムに意識を飛ばさない限り警戒網にはかかりません。それは、スライムが最弱故ですな。自分に危険を及ぼす可能性がない魔族に対して常に警戒していたのではお話にならない為、無意識下で警戒対象から外しているのです」
「その性能を利用して、情報収集を行っていると?」
「おっしゃる通りでございます。悪魔の王城にもかなりのスライムが今尚生活しております。清掃等の仕事もしていますので」
「大体わかった。もう一つ質問だ。俺達はフロキル王国へ襲来した魔族の親玉へ復讐するために、この地にとどまっている。部下が返ってこない親玉が次の行動をおこすのを待っているんだ。そのあたりの情報はあるか?」
「悪魔は遊び感覚で魔族を使用しますのでな。遊びに費やした魔族が戻らずとも気にする悪魔はいないでしょう。既にご存じのようですが、リスド王国にいる悪魔も遊びで何やら動いているようです」
この爺さん、かなりの情報収集能力だ。よく考えれば、スライムは俺達の生活に深くかかわっている。
水の浄化、ゴミの除去・・・ゴミ自体を餌として食べてくれるし、人によっては使役していることもあるくらいだ。
攻撃力はなく無害。ある意味その辺の石ころ程度の認識になってしまうので、情報収集にはうってつけだ。
「リスド王国にちょっかいをかけている悪魔は位が低く第六階位と呼ばれておりますな。まあ上位悪魔から見れば使い魔である魔族と変わらないので何かあれば簡単に切り捨てられるでしょう。ですが、皆さまにはこの情報は重要です。リスド王国に来ている悪魔の上位者である悪魔・・・第五階位の悪魔はフロキル王国に魔族をけしかけた本人ですな」
「一つ確認したい。お前の言っている第五階位の悪魔とは、お前自体を追い出した悪魔か?」
「そうとも言えますし、そうでないとも言えます。恥をさらすようですが、私は全悪魔に追い出されましたので・・・」
ヘイロンは、この爺さんが俺達の復讐心を利用して、自分を追い出した悪魔を討伐するように持って行っているのではないかと疑ったようだ。
「もう少し情報が欲しい。あんたは悪魔の階位を言っていたな。第六階位と第五階位まではわかった。最後は第一階位でいいのか?」
「現時点では第一階位まででございます。そしてその上には王が一人おりますな。上位階位の悪魔は、初代無剣所持者達との戦いも経験しております。悪魔達は神の力を持つ剣に滅される寸前で、部下を盾にして闇に潜むことに成功しました。そして自らを癒して反撃の機会を待っていたのです」
「これが俺からは最後の質問だ。リスト王国に来ている悪魔から第五階位の悪魔に何らかの方法でたどり着くことはできるか?」
「上位階位の悪魔は、更に上位階位の悪魔からの命令がなければ魔王国から出ることはしないでしょう。今の時点であの第五階位の悪魔は何の命令も受けておりませんから、リスド王国にいる悪魔からたどり着く事は難しいでしょう」
ヘイロンはもう聞くことは無いとばかりに俺を見る。
「話は分かった。俺達は一旦ここを出るが、テスラムさんはここにいるのか?」
「ええ、私が悪魔やその支配下にある魔族に見つかると厄介ですからな。無剣所持者殿」
衝撃の出会いがあったが、俺達は一旦ダンジョンから帰還してアルフォナの素材換金に同行した。
と言っても、ギルドの近くからは少々距離をとって、俺達とはかかわりがないと思わせている。
そうでないと、査定がまともじゃなくなる可能性があるからな。
しかし、さすがSランクダンジョンのフロアボスの素材だ。
アルフォナの実力によって無駄な傷もない状態であるので、相当な金額になったようだ。
即送金をした後で俺達と合流したアルフォナ。
「お待たせしたロイド様、皆」
「いや、たいして待っていない。早速飯にでも行くか?」
いつもの個室を借りて夕食を始める。
「家族への送金は大丈夫だったんですか?」
「うむ、今回の魔獣はなんと金貨80枚にもなったのでな。これで完全に独り立ちするまでは持つだろう。ようやく肩の荷が降りた気がする」
スミカに応えるアルフォナ。彼女は俺だけと話す時は敬語になるが、その他に話す時は少々固い話し方になる。真面目な性格が出ているのだろうか?
しかし、金貨80枚か。俺達が持っていったら金貨20枚がいいところだろうな。
そんな状況も把握してもらわないとまずいので、正直にこの場で現状を全て説明した。
所々憤慨していたが、状況は完全に把握してもらえたようだ。
「だからロイド様は換金時の同行を断られたのですね」
「ああ、初換金だろうから同行してやりたかったんだがな。換金額が大幅に削減される可能性が高いから同行できなかったんだ。すまんな」
「とんでもございません。ご配慮感謝いたします」
と、こんなやり取りがあった。
「しかしロイド、あの爺さんなかなかの曲者だぞ。今この場にはスライムはいないが、厨房の廃棄場所にはもちろんいる。あの爺さんに言われなければ、この場でスライムの有無なんていちいち確認しないからな」
「ああ、その通りだな。ひょっとすると今までここで話していた情報も漏れていた可能性があるな」
「でもあのお爺さん、悪い感じはしませんでした」
「そうだな。部下を大切にする良い上司に見えたが・・・近衛騎士隊長とは偉い違いだ」
仲間全員で話は進む。正直俺はあの爺さんに違和感?を感じている。
これは、無剣所持者としての勘のような物かもしれないが、六剣所持者になれる資質のある者は何となくわかるのだが、それに似た何かをあの爺さんから感じているんだ。
見た感じ武器は装備していないようだが、いくら殺気がないとしても油断は禁物だ。
全員戦闘態勢になってはいるが、この悪魔は涼しい顔をしている。
「重ねて申し上げますが、私に害意は一切ございません。少々お話を聞いて頂けるとありがたいのですが」
ロイドが警戒しつつも許可を出す。
「まあ、いいだろう。正直俺もお前の気配はかなり前から感知していたが、一切の害意がないので放置してたんだ。もし悪意があるならば俺達の戦闘中にちょっかいかける方が手間がかからないだろうしな。そうしなかったってことは・・・今の所は信用してやる」
「ありがとうございます」
優雅に一礼する悪魔。しかし、俺達は武器を手放すことはしない。
そんな中、悪魔は話始める。
「少々自己紹介をさせて頂きます。私御覧の通り悪魔のテスラムと申します。初代無剣所持者の時代には既にこの世界にいた年寄りでございますが・・・悪魔と申しましたが、悪魔の王族が束ねている国家からは遥か昔に追い出されてしまいまして、何人も来ないこのダンジョンに住み着いていたわけです。そんな中、突然数回もこのダンジョンに侵入者が来たものですから、ないとは思いましたが悪魔の追撃かと警戒していた次第です」
「そうか・・・まあ、状況は何となくわかった。いくつか質問したいが良いか?」
「もちろんでございます。<炎剣>所持者殿」
「流石に長く生きているだけあって、かなりの知識はあるようだな。それで、テスラムさんと言ったか?あんたは約十年前のフロキル王国への魔族侵攻の話を知っているか?」
「ええ、魔族がフロキル王国を襲来したことは存じておりますが、既に私はここに住み着いていた状態でして、私の使い魔達から得た情報によって知り得ただけでございます」
「そうか。俺達はその魔族は上位種である悪魔の命令を受けて襲来してきたと考えているが、そのあたりはどうだ?」
「ええ、そこは間違いないでしょう」
「それも使い魔からの情報収集か?追い出されても情報集できるほど使い魔が優秀なのか?」
「ええ、実は私の使い魔はスライムでして・・・悪魔によって使役できる使い魔が異なるのです。私にとっては頼りになる者達なのですが、他の悪魔にとっては邪魔だったようで・・・この有様です」
「スライムか。確かに改めて意識すると相当数がいるな」
「ええ、私の大切な家族です。しかし、スライムは大変有用です。今あなた様がおっしゃったように、わざわざスライムに意識を飛ばさない限り警戒網にはかかりません。それは、スライムが最弱故ですな。自分に危険を及ぼす可能性がない魔族に対して常に警戒していたのではお話にならない為、無意識下で警戒対象から外しているのです」
「その性能を利用して、情報収集を行っていると?」
「おっしゃる通りでございます。悪魔の王城にもかなりのスライムが今尚生活しております。清掃等の仕事もしていますので」
「大体わかった。もう一つ質問だ。俺達はフロキル王国へ襲来した魔族の親玉へ復讐するために、この地にとどまっている。部下が返ってこない親玉が次の行動をおこすのを待っているんだ。そのあたりの情報はあるか?」
「悪魔は遊び感覚で魔族を使用しますのでな。遊びに費やした魔族が戻らずとも気にする悪魔はいないでしょう。既にご存じのようですが、リスド王国にいる悪魔も遊びで何やら動いているようです」
この爺さん、かなりの情報収集能力だ。よく考えれば、スライムは俺達の生活に深くかかわっている。
水の浄化、ゴミの除去・・・ゴミ自体を餌として食べてくれるし、人によっては使役していることもあるくらいだ。
攻撃力はなく無害。ある意味その辺の石ころ程度の認識になってしまうので、情報収集にはうってつけだ。
「リスド王国にちょっかいをかけている悪魔は位が低く第六階位と呼ばれておりますな。まあ上位悪魔から見れば使い魔である魔族と変わらないので何かあれば簡単に切り捨てられるでしょう。ですが、皆さまにはこの情報は重要です。リスド王国に来ている悪魔の上位者である悪魔・・・第五階位の悪魔はフロキル王国に魔族をけしかけた本人ですな」
「一つ確認したい。お前の言っている第五階位の悪魔とは、お前自体を追い出した悪魔か?」
「そうとも言えますし、そうでないとも言えます。恥をさらすようですが、私は全悪魔に追い出されましたので・・・」
ヘイロンは、この爺さんが俺達の復讐心を利用して、自分を追い出した悪魔を討伐するように持って行っているのではないかと疑ったようだ。
「もう少し情報が欲しい。あんたは悪魔の階位を言っていたな。第六階位と第五階位まではわかった。最後は第一階位でいいのか?」
「現時点では第一階位まででございます。そしてその上には王が一人おりますな。上位階位の悪魔は、初代無剣所持者達との戦いも経験しております。悪魔達は神の力を持つ剣に滅される寸前で、部下を盾にして闇に潜むことに成功しました。そして自らを癒して反撃の機会を待っていたのです」
「これが俺からは最後の質問だ。リスト王国に来ている悪魔から第五階位の悪魔に何らかの方法でたどり着くことはできるか?」
「上位階位の悪魔は、更に上位階位の悪魔からの命令がなければ魔王国から出ることはしないでしょう。今の時点であの第五階位の悪魔は何の命令も受けておりませんから、リスド王国にいる悪魔からたどり着く事は難しいでしょう」
ヘイロンはもう聞くことは無いとばかりに俺を見る。
「話は分かった。俺達は一旦ここを出るが、テスラムさんはここにいるのか?」
「ええ、私が悪魔やその支配下にある魔族に見つかると厄介ですからな。無剣所持者殿」
衝撃の出会いがあったが、俺達は一旦ダンジョンから帰還してアルフォナの素材換金に同行した。
と言っても、ギルドの近くからは少々距離をとって、俺達とはかかわりがないと思わせている。
そうでないと、査定がまともじゃなくなる可能性があるからな。
しかし、さすがSランクダンジョンのフロアボスの素材だ。
アルフォナの実力によって無駄な傷もない状態であるので、相当な金額になったようだ。
即送金をした後で俺達と合流したアルフォナ。
「お待たせしたロイド様、皆」
「いや、たいして待っていない。早速飯にでも行くか?」
いつもの個室を借りて夕食を始める。
「家族への送金は大丈夫だったんですか?」
「うむ、今回の魔獣はなんと金貨80枚にもなったのでな。これで完全に独り立ちするまでは持つだろう。ようやく肩の荷が降りた気がする」
スミカに応えるアルフォナ。彼女は俺だけと話す時は敬語になるが、その他に話す時は少々固い話し方になる。真面目な性格が出ているのだろうか?
しかし、金貨80枚か。俺達が持っていったら金貨20枚がいいところだろうな。
そんな状況も把握してもらわないとまずいので、正直にこの場で現状を全て説明した。
所々憤慨していたが、状況は完全に把握してもらえたようだ。
「だからロイド様は換金時の同行を断られたのですね」
「ああ、初換金だろうから同行してやりたかったんだがな。換金額が大幅に削減される可能性が高いから同行できなかったんだ。すまんな」
「とんでもございません。ご配慮感謝いたします」
と、こんなやり取りがあった。
「しかしロイド、あの爺さんなかなかの曲者だぞ。今この場にはスライムはいないが、厨房の廃棄場所にはもちろんいる。あの爺さんに言われなければ、この場でスライムの有無なんていちいち確認しないからな」
「ああ、その通りだな。ひょっとすると今までここで話していた情報も漏れていた可能性があるな」
「でもあのお爺さん、悪い感じはしませんでした」
「そうだな。部下を大切にする良い上司に見えたが・・・近衛騎士隊長とは偉い違いだ」
仲間全員で話は進む。正直俺はあの爺さんに違和感?を感じている。
これは、無剣所持者としての勘のような物かもしれないが、六剣所持者になれる資質のある者は何となくわかるのだが、それに似た何かをあの爺さんから感じているんだ。
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