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ヒルアの最後と<光剣><風剣>(7)
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軽い気持ちで六剣の洞窟に寄り道して、伝説の剣を一本抜いたロイド一行は全力でリスド王国の王城を目指している。
テスラムも六剣所持者になったので、難なく彼らの全力について行くことができている。
いや、むしろテスラムは加減をして移動しているようにすら見える。
<風剣>を抜く前まではロイドとヨナがテスラムに合わせる形だったのだが、今は逆だ。
彼らがなぜそんなに急いでいるのかと言うと、テスラムの眷属であるスライムを通してヘイロンから連絡があったのだ。
「ロイド様!ヘイロン様から連絡がありました。今日はヒルア第二王子の公開処刑の布告を行うために朝食はいつもより早くなってしまうようですぞ!」
ヨナとロイドは驚愕した。
「おいおい、という事はその時間に間に合わなかったら朝食を食べられないという事か?」
「通常であればそのようなことはないのでしょうが、今回は第二王子の公開処刑の布告でございます故。使用人達も全て一カ所に集められるでしょう。すると、当然朝食など有るわけもなく・・・」
テスラムの無慈悲な回答にヨナとロイドは戦慄する。
いや、テスラム自身も自ら導き出した回答に戦慄している。
ヨナとロイドよりも長きにわたりSランクダンジョンに住み続けて外界との直接接触を断ってきたテスラムとしても、王城の朝食という甘美な響きを捨てるわけにはいかないのだ。
「そういうわけでございます。皆様、全力での移動をお願いします」
その瞬間、三人の姿は一瞬で消えた。
そして、現在の全力ダッシュに繋がっている。
「テスラムさん、もし俺が<時空魔法>を使えれば、<空間転移>でリスド王国の王城に一瞬で移動できたのか?」
「残念ながらその通りでございますな」
「ロイド様、早く能力を取得するべき」
目的が豪華な食事になってはいるが、能力の取得を固く心に誓うロイド一行。
当然移動中に魔獣が存在しているが、彼らの移動速度を認識できる魔獣は存在しなかった。
但し、彼らの移動直線上にいる魔獣は、運悪く?体を爆散させていたが・・・
本来はかなり高価に取引されている魔獣の素材もあったのだが、彼らにしてみれば王城での朝食以上に価値のあるものではなかったので、一切無視して爆走している。
本当の全力移動なので、ロイドも少々汗をかいている。対してテスラムは涼しい顔でまだまだ余裕がありそうだ。
「テスラムさん、流石だな。今の俺はこれが限界だが、テスラムさんは少し抑えているだろう?」
「今までの経験の差でございますよ。私は無駄に長く生きておりましたので・・・」
「でも凄い。私も今はこれが全力」
<闇剣>のヨナでさえもテスラムの本気の移動にはついて行けないようだ。
「少し落ち着いたら、六剣の効率的な使用方法や体術、俺達に教えてくれないか?」
「お任せください。私が持っている全ての技術と知識を伝授させて頂きます。少々厳しくなってしまいますが」
「お手柔らかに頼むよ!」
テスラムの少々怖い笑顔に引いているヨナとロイド。
そうは言っても、正直ヨナ以外は六剣と無剣に振り回されている状況だ。辛うじてアルフォナが少々使えているのかもしれない。
こんな状態では魔王城に攻め込むことなどできないとわかっているので、六剣の全てを知っているであろうテスラムの指導を受けられることはロイド達にしてみれば願ってもないことなのだ。
六剣所持者達の全力で、通常は数日かかる移動距離もあっという間に踏破することができたロイド一行。
王城の入口には既に連絡を受けていた近衛騎士達がロイド達を待っていた。
「ヘイロン様、スミカ様、アルフォナ様のお連れ様でございますか?」
「ああ、俺はロイド、こっちは俺の傍仕え、そして執事のテスラムだ」
この場でもヨナの名前を言う事はない。
「皆様方にはこのリスド王国滅亡の危機を救っていただきましてありがとうございます。お礼と言うわけではございませんが、腕によりをかけた朝食をご用意させて頂いております。さ、どうぞこちらへ」
朝食に間に合った事が確実になり、安堵の表情を浮かべるロイド一行。
近衛騎士である男性について行くこと数分、既にここにたどり着くまでにいい匂いがしており、お腹の限界を迎えつつあった。
やがて扉を開けると、円卓上には見たこともないような料理が大量に置かれており、ヘイロン、スミカ、アルフォナが席に座っている。
もちろんナユラ王女とキルハ王子も同じ円卓に座っている状態だ。
「よう、早かったな。それとテスラムさん、これから宜しくな」
「こちらこそよろしくお願いいたします」
当然ヘイロン、スミカ、アルフォナも、ここにきているテスラムが<風剣>所持者である事を認識しているので、問題なく紹介は終わる。
テスラムも、スライムによる情報を得ていたので彼らの事は既に知っている。
余計な紹介は一切せずに着席するロイド一行。
「皆さん、改めてこのリスド王国を悪魔の脅威から助けて頂きありがとうございます。堅苦しい挨拶は無しにして、どうぞこの王城の料理人が腕によりをかけた食事をお楽しみください」
ロイド一行がお腹を空かせている事を知っているであろうキルハ王子は食事を勧めてくれる。
ロイド達は今までの環境からか、見たこともないような豪華な食事に感動してしまう。
もちろん他のメンバーも同様だ。
但し、昨日の夕食も豪華な食事をしたであろうヘイロンサイドはロイド達よりは落ち着いている。
スープにしても数種類のスープがあり、どれも味が違うが極上の一品だ。
とても信じられないような幸せな一時を過ごした六剣所持者達は、食後のデザートに移行する。
ここまで大量の食事を全員で食べきれるわけもなく、ヨナがキルハ王子に交渉して残りを<闇魔法>で収納した。
<闇魔法>による収納に驚いたキルハ王子だったが、深く突っ込んで来ることはなかった。
やがて落ち着いた全員は、今日の予定について話を始める。
「ロイド殿、我が愚弟であるヒルア第二王子の公開処刑布告をこれから行う予定です。そして、同時に城内の不穏分子の排除を実施します。少々城内が慌ただしくなってしまいますがご了承願いたい」
「それなんだがな、ヘイロンから聞いたが近衛騎士達も救助した面々以外は全員解雇と聞いたんだが」
「お恥ずかしながら、敵味方を区別できる能力もないので・・・」
「当然認識していると思うが、防衛力が大幅に下がる結果になるぞ。少なくとも第一王子に対して悪意のない者達の選別はできる。単純に上官の命令を聞いていただけの者も一気に切る必要はないだろう。ここにいるテスラムに任せてみないか?」
椅子から立ち上がり綺麗な礼をするテスラム。
数百年、いや、数千年ぶりの豪華な食事をとったであろうテスラムは、口の周りが少々面白いことになっているのだが見なかったことにしよう。
「そんなことが可能なのか?いや、ロイド殿のお仲間であれば可能なのだろう。是非お願いしたい」
「お兄様、これで大幅な国力低下も避けられるのでは?」
国力の大幅な低下を防ぐことができる目途が立ち、喜びを隠しきれないキルハ王子とナユラ王女。
その後、王城に勤務する近衛騎士を含む全ての人がホールに集められ、第二王子の所業と公開処刑を行う旨が先行して布告された。
そしてその後はギルドを通して国民に広く布告されることになる。
ホールに集められた王城勤務の面々は、ホールから退出する際にはテスラムの指示に従って移動している。
これは、敵意のある者とそうでない者を識別しているのだ。
敵意のない者はそのまま帰宅、または職場に移動させられ、敵意のある者は別のホールに移動させられている。
そこには、万が一を考えて第一王子の近衛騎士と六剣所持者が待機している。
テスラムも六剣所持者になったので、難なく彼らの全力について行くことができている。
いや、むしろテスラムは加減をして移動しているようにすら見える。
<風剣>を抜く前まではロイドとヨナがテスラムに合わせる形だったのだが、今は逆だ。
彼らがなぜそんなに急いでいるのかと言うと、テスラムの眷属であるスライムを通してヘイロンから連絡があったのだ。
「ロイド様!ヘイロン様から連絡がありました。今日はヒルア第二王子の公開処刑の布告を行うために朝食はいつもより早くなってしまうようですぞ!」
ヨナとロイドは驚愕した。
「おいおい、という事はその時間に間に合わなかったら朝食を食べられないという事か?」
「通常であればそのようなことはないのでしょうが、今回は第二王子の公開処刑の布告でございます故。使用人達も全て一カ所に集められるでしょう。すると、当然朝食など有るわけもなく・・・」
テスラムの無慈悲な回答にヨナとロイドは戦慄する。
いや、テスラム自身も自ら導き出した回答に戦慄している。
ヨナとロイドよりも長きにわたりSランクダンジョンに住み続けて外界との直接接触を断ってきたテスラムとしても、王城の朝食という甘美な響きを捨てるわけにはいかないのだ。
「そういうわけでございます。皆様、全力での移動をお願いします」
その瞬間、三人の姿は一瞬で消えた。
そして、現在の全力ダッシュに繋がっている。
「テスラムさん、もし俺が<時空魔法>を使えれば、<空間転移>でリスド王国の王城に一瞬で移動できたのか?」
「残念ながらその通りでございますな」
「ロイド様、早く能力を取得するべき」
目的が豪華な食事になってはいるが、能力の取得を固く心に誓うロイド一行。
当然移動中に魔獣が存在しているが、彼らの移動速度を認識できる魔獣は存在しなかった。
但し、彼らの移動直線上にいる魔獣は、運悪く?体を爆散させていたが・・・
本来はかなり高価に取引されている魔獣の素材もあったのだが、彼らにしてみれば王城での朝食以上に価値のあるものではなかったので、一切無視して爆走している。
本当の全力移動なので、ロイドも少々汗をかいている。対してテスラムは涼しい顔でまだまだ余裕がありそうだ。
「テスラムさん、流石だな。今の俺はこれが限界だが、テスラムさんは少し抑えているだろう?」
「今までの経験の差でございますよ。私は無駄に長く生きておりましたので・・・」
「でも凄い。私も今はこれが全力」
<闇剣>のヨナでさえもテスラムの本気の移動にはついて行けないようだ。
「少し落ち着いたら、六剣の効率的な使用方法や体術、俺達に教えてくれないか?」
「お任せください。私が持っている全ての技術と知識を伝授させて頂きます。少々厳しくなってしまいますが」
「お手柔らかに頼むよ!」
テスラムの少々怖い笑顔に引いているヨナとロイド。
そうは言っても、正直ヨナ以外は六剣と無剣に振り回されている状況だ。辛うじてアルフォナが少々使えているのかもしれない。
こんな状態では魔王城に攻め込むことなどできないとわかっているので、六剣の全てを知っているであろうテスラムの指導を受けられることはロイド達にしてみれば願ってもないことなのだ。
六剣所持者達の全力で、通常は数日かかる移動距離もあっという間に踏破することができたロイド一行。
王城の入口には既に連絡を受けていた近衛騎士達がロイド達を待っていた。
「ヘイロン様、スミカ様、アルフォナ様のお連れ様でございますか?」
「ああ、俺はロイド、こっちは俺の傍仕え、そして執事のテスラムだ」
この場でもヨナの名前を言う事はない。
「皆様方にはこのリスド王国滅亡の危機を救っていただきましてありがとうございます。お礼と言うわけではございませんが、腕によりをかけた朝食をご用意させて頂いております。さ、どうぞこちらへ」
朝食に間に合った事が確実になり、安堵の表情を浮かべるロイド一行。
近衛騎士である男性について行くこと数分、既にここにたどり着くまでにいい匂いがしており、お腹の限界を迎えつつあった。
やがて扉を開けると、円卓上には見たこともないような料理が大量に置かれており、ヘイロン、スミカ、アルフォナが席に座っている。
もちろんナユラ王女とキルハ王子も同じ円卓に座っている状態だ。
「よう、早かったな。それとテスラムさん、これから宜しくな」
「こちらこそよろしくお願いいたします」
当然ヘイロン、スミカ、アルフォナも、ここにきているテスラムが<風剣>所持者である事を認識しているので、問題なく紹介は終わる。
テスラムも、スライムによる情報を得ていたので彼らの事は既に知っている。
余計な紹介は一切せずに着席するロイド一行。
「皆さん、改めてこのリスド王国を悪魔の脅威から助けて頂きありがとうございます。堅苦しい挨拶は無しにして、どうぞこの王城の料理人が腕によりをかけた食事をお楽しみください」
ロイド一行がお腹を空かせている事を知っているであろうキルハ王子は食事を勧めてくれる。
ロイド達は今までの環境からか、見たこともないような豪華な食事に感動してしまう。
もちろん他のメンバーも同様だ。
但し、昨日の夕食も豪華な食事をしたであろうヘイロンサイドはロイド達よりは落ち着いている。
スープにしても数種類のスープがあり、どれも味が違うが極上の一品だ。
とても信じられないような幸せな一時を過ごした六剣所持者達は、食後のデザートに移行する。
ここまで大量の食事を全員で食べきれるわけもなく、ヨナがキルハ王子に交渉して残りを<闇魔法>で収納した。
<闇魔法>による収納に驚いたキルハ王子だったが、深く突っ込んで来ることはなかった。
やがて落ち着いた全員は、今日の予定について話を始める。
「ロイド殿、我が愚弟であるヒルア第二王子の公開処刑布告をこれから行う予定です。そして、同時に城内の不穏分子の排除を実施します。少々城内が慌ただしくなってしまいますがご了承願いたい」
「それなんだがな、ヘイロンから聞いたが近衛騎士達も救助した面々以外は全員解雇と聞いたんだが」
「お恥ずかしながら、敵味方を区別できる能力もないので・・・」
「当然認識していると思うが、防衛力が大幅に下がる結果になるぞ。少なくとも第一王子に対して悪意のない者達の選別はできる。単純に上官の命令を聞いていただけの者も一気に切る必要はないだろう。ここにいるテスラムに任せてみないか?」
椅子から立ち上がり綺麗な礼をするテスラム。
数百年、いや、数千年ぶりの豪華な食事をとったであろうテスラムは、口の周りが少々面白いことになっているのだが見なかったことにしよう。
「そんなことが可能なのか?いや、ロイド殿のお仲間であれば可能なのだろう。是非お願いしたい」
「お兄様、これで大幅な国力低下も避けられるのでは?」
国力の大幅な低下を防ぐことができる目途が立ち、喜びを隠しきれないキルハ王子とナユラ王女。
その後、王城に勤務する近衛騎士を含む全ての人がホールに集められ、第二王子の所業と公開処刑を行う旨が先行して布告された。
そしてその後はギルドを通して国民に広く布告されることになる。
ホールに集められた王城勤務の面々は、ホールから退出する際にはテスラムの指示に従って移動している。
これは、敵意のある者とそうでない者を識別しているのだ。
敵意のない者はそのまま帰宅、または職場に移動させられ、敵意のある者は別のホールに移動させられている。
そこには、万が一を考えて第一王子の近衛騎士と六剣所持者が待機している。
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