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そうは行くわけもなく・・・
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映像には、ホルムンデとかいう魔導士を絶賛している連中で溢れている。
絶望的な状況から一気に勝ちの目が見えてきたのだから、そうなってしまうのも当然だろう。
「流石でございます。このまま行けば、貴殿一人で魔獣を一掃できそうな勢いですな」
「フム、我らもこのままでは存在意義が無くなってしまいますな。早速攻撃してみましょう」
触発された他のSランク冒険者達も、商人から得たアイテムを使用した攻撃を始める。
「あのアイテムスゲーな。あいつらが元から持っていた武器と同等以上の性能があるんじゃねーか?」
「そのようですな。ですが、しょせんは使い捨て程度のアイテム。<六剣>と異なり意思もなければ力もそこそこ。今は彼らが押しているように見えますが、この状況ではキュロス様の助力もあり魔獣は減少することはないので、やがてジリ貧になるでしょうな」
そうなのだ。今は広範囲の瞬滅が成功しているようなのでフロキル王国の面々は喜んでいるが、一時的に魔獣が消滅したに過ぎない。
このまま第三防壁の上からの攻撃ではなく、視認できる全ての魔獣に攻撃できるように出撃すれば状況は変わるだろうが、近接戦闘特化と言っていたSランク冒険者も、アイテムの力で防壁の上から威力のある斬撃を飛ばせるようになっていたため、わざわざ危険度の高い地上から出撃することはなかった。
あの国王は魔獣討伐に自らの近衛騎士を派遣するという話だったはずだが、いつの間にか自分の手駒以外にその役割を割り振っている。もし、国王直属の近衛騎士が出撃していれば、本当にこの状況を打破できる可能性が高いと俺は踏んでいる。
あいつらが、連携などと言う言葉を知っていればだが・・・
防壁の上にいるSランク冒険者たちの鼻息が荒くなってきた。
「ふっ、やっと本来の力が戻ってきたようだ。見よ、我が最強の魔術!”暴炎極破”」
アイテムの補助により作られた小さな炎が魔獣の群れに到達すると、突如大きな爆発を引き起こした後に豪炎となって周囲の魔獣を飲み込む。
「お!俺と同じ炎系統の使い手か。威力はそこそこと言ったところだが、何が本来の力だ。まるっきりアイテムのおかけじゃねーか。しかも、”ふっ”だってよ。ブハハ、何かっこつけてやがる」
「フフ、もう、ヘイロンさんたら。きっとあの人達は今自分に酔ってるんですよ」
スミカの言う通り、あいつらは仮初の力を自分の力と勘違いして調子に乗っている所だ。
ここから転落が待っているとも知らずに・・・
予想通り、暫くはフロキル王国のSランク冒険者たちの優位が続いた。
自分に酔っている冒険者共は、転移による避難を行う気配は一切ない。
だが、後から無尽蔵に湧き出てくる魔獣達。
当然、普段一切鍛えていないSランク冒険者達には、早くも疲れの色が見え始めた。
「む、いくら我らSランクでも、これ程の魔獣の数だとこのまま押し切るのは難しい。射程の問題もあるので、やはりこちらからも打って出る必要がある。おい、そこの騎士!我らSランクの総意として近衛騎士達による進軍を提言する。我らが持ちこたえている間に国王陛下に進言して来い!」
ホルムンデとか言う冒険者が騒いでいるが、言っていることは正しい。
こいつはある程度修羅場を経験しているのか、正しい判断ができるようだ。
突然指示を受けたにもかかわらず、第一防壁内に移動できる良い口実ができたと思っているであろう騎士は喜び勇んで王城に戻っていく。
「あれが近衛騎士か・・・騎士道精神が・・・いや、あんな奴らに言っても無駄だな」
「あきらめろアルフォナ。あの国で騎士道精神を持っているのは既に退避させたあの御仁だけだぞ。長くこの国で冒険者をやっていた俺が言うんだから間違いねー」
「ああ、わかっている。私も長きに渡り近衛騎士をしていたからな。わかっているのだが・・・」
そうアルフォナとヘイロンが嘆いている最中、Sランク冒険者達は、商人に吐き出させたアイテムが目に見えて少なくなってきているのを把握しだした。
このアイテムがなくなると、当然今までのような豪快な攻撃はできなくなる。
今後の自分の安全だけは瞬時に把握することができるあいつらは、残りのアイテムの消費を極端に嫌うようになってきた。
転移した後にも、万が一のために貴重な攻撃用のアイテムを温存しておきたいと言う気持ちが見え見えだ。
「む、少々高威力の魔術を連続して展開しすぎたようだ。魔力が不足してきた。この状況であれば残りは間もなく到着するであろう騎士達に任せても問題ないだろう」
「その通りであるな。我らのみが武勲を上げると要らぬ摩擦を生む」
「口惜しいが、私も国の為を思うあまりに威力の調節を誤ってしまったようだ。想定以上に消耗してしまった」
あの場にいる監視であろう近衛騎士たちは、これ見よがしに退避する口実を述べているSランク冒険者のセリフに一切の疑いを持っていない。
「承知しました。応援の騎士が到着し次第残りの討伐は我らにお任せください」
「あれほどの大魔術や斬撃をこの目で見ることができて光栄です。さすがはSランク冒険者!」
「では、応援が来た段階で我らは少々休ませてもらうとしよう。だが、貴殿らが出撃した暁には後衛としてフォローはしよう」
「ありがとうございます。安心して背中を預けられます!」
この部分だけを見れば、素晴らしい光景と言えるんだがな。
「ナユラ、お前んところはこんな連中はさっさと処分出来てよかったじゃねーか」
「そうですね。今回は国家転覆の危機を防げましたが、本当の危機に直面した時にこのような方々がいると士気に大きくかかわりますから」
少々苦い顔をしているナユラだが、ヘイロンの指摘はその通りなので認めている。
そんな中、映像には第一防壁と第二防壁からやってきたであろう騎士が列をなして第三防壁に到着した。
「我は国王直属の近衛騎士である!国王勅命によりこれより魔獣殲滅に打って出る。Sランクの方々に背中を預けたい!」
「任されよ!!」
そう言うと、第三防壁の門を開門して騎士達が第四防壁内に躍り出る。
門周辺、いや、第三防壁近くには魔獣はいない。インチキSランク冒険者の攻撃は遠くには届かないので、防壁周辺のみ魔獣が無駄に一掃されたからだ。
当然、ある程度離れたところには魔獣が群れを成しているが、地上からでは大量の群れになっていることを理解することはできない。
騎士達は開門された門を潜って第四防壁内に侵入すると、辺りに討伐された膨大な魔獣の量から、残りの魔獣の量は大したことは無いと判断したようだ。
「良いか、これは国王陛下の勅命である。Sランク冒険者殿のおかげで魔獣の群れは残すところあとわずかだ。死ぬ気でかかれ」
「はっ」
国王直属だけではなく、第二防壁内に待機していた高位貴族の近衛騎士一行もいる。
戦況が有利に働いていると言う報告を受けて、武勲を立てるためにありったけの戦力を送ったようなのだ。
この壁の上にいた騎士達も、今まさにこの時に地上に向かっている最中だ。
その為、騎士隊長が鼓舞していた”残りの魔獣はあと僅か”と言うセリフは聞くことができていなかった。
壁の上から状況を見ていた近衛騎士たちは、残りは決して少なくないのは理解できているはずなので、もしあいつらがこのセリフを聞いていたら違和感を感じて、自分たちだけでも避難行動を取っていたかもしれない。
この近衛騎士隊長は良いタイミングで騎士達を鼓舞してくれたもんだ。
絶望的な状況から一気に勝ちの目が見えてきたのだから、そうなってしまうのも当然だろう。
「流石でございます。このまま行けば、貴殿一人で魔獣を一掃できそうな勢いですな」
「フム、我らもこのままでは存在意義が無くなってしまいますな。早速攻撃してみましょう」
触発された他のSランク冒険者達も、商人から得たアイテムを使用した攻撃を始める。
「あのアイテムスゲーな。あいつらが元から持っていた武器と同等以上の性能があるんじゃねーか?」
「そのようですな。ですが、しょせんは使い捨て程度のアイテム。<六剣>と異なり意思もなければ力もそこそこ。今は彼らが押しているように見えますが、この状況ではキュロス様の助力もあり魔獣は減少することはないので、やがてジリ貧になるでしょうな」
そうなのだ。今は広範囲の瞬滅が成功しているようなのでフロキル王国の面々は喜んでいるが、一時的に魔獣が消滅したに過ぎない。
このまま第三防壁の上からの攻撃ではなく、視認できる全ての魔獣に攻撃できるように出撃すれば状況は変わるだろうが、近接戦闘特化と言っていたSランク冒険者も、アイテムの力で防壁の上から威力のある斬撃を飛ばせるようになっていたため、わざわざ危険度の高い地上から出撃することはなかった。
あの国王は魔獣討伐に自らの近衛騎士を派遣するという話だったはずだが、いつの間にか自分の手駒以外にその役割を割り振っている。もし、国王直属の近衛騎士が出撃していれば、本当にこの状況を打破できる可能性が高いと俺は踏んでいる。
あいつらが、連携などと言う言葉を知っていればだが・・・
防壁の上にいるSランク冒険者たちの鼻息が荒くなってきた。
「ふっ、やっと本来の力が戻ってきたようだ。見よ、我が最強の魔術!”暴炎極破”」
アイテムの補助により作られた小さな炎が魔獣の群れに到達すると、突如大きな爆発を引き起こした後に豪炎となって周囲の魔獣を飲み込む。
「お!俺と同じ炎系統の使い手か。威力はそこそこと言ったところだが、何が本来の力だ。まるっきりアイテムのおかけじゃねーか。しかも、”ふっ”だってよ。ブハハ、何かっこつけてやがる」
「フフ、もう、ヘイロンさんたら。きっとあの人達は今自分に酔ってるんですよ」
スミカの言う通り、あいつらは仮初の力を自分の力と勘違いして調子に乗っている所だ。
ここから転落が待っているとも知らずに・・・
予想通り、暫くはフロキル王国のSランク冒険者たちの優位が続いた。
自分に酔っている冒険者共は、転移による避難を行う気配は一切ない。
だが、後から無尽蔵に湧き出てくる魔獣達。
当然、普段一切鍛えていないSランク冒険者達には、早くも疲れの色が見え始めた。
「む、いくら我らSランクでも、これ程の魔獣の数だとこのまま押し切るのは難しい。射程の問題もあるので、やはりこちらからも打って出る必要がある。おい、そこの騎士!我らSランクの総意として近衛騎士達による進軍を提言する。我らが持ちこたえている間に国王陛下に進言して来い!」
ホルムンデとか言う冒険者が騒いでいるが、言っていることは正しい。
こいつはある程度修羅場を経験しているのか、正しい判断ができるようだ。
突然指示を受けたにもかかわらず、第一防壁内に移動できる良い口実ができたと思っているであろう騎士は喜び勇んで王城に戻っていく。
「あれが近衛騎士か・・・騎士道精神が・・・いや、あんな奴らに言っても無駄だな」
「あきらめろアルフォナ。あの国で騎士道精神を持っているのは既に退避させたあの御仁だけだぞ。長くこの国で冒険者をやっていた俺が言うんだから間違いねー」
「ああ、わかっている。私も長きに渡り近衛騎士をしていたからな。わかっているのだが・・・」
そうアルフォナとヘイロンが嘆いている最中、Sランク冒険者達は、商人に吐き出させたアイテムが目に見えて少なくなってきているのを把握しだした。
このアイテムがなくなると、当然今までのような豪快な攻撃はできなくなる。
今後の自分の安全だけは瞬時に把握することができるあいつらは、残りのアイテムの消費を極端に嫌うようになってきた。
転移した後にも、万が一のために貴重な攻撃用のアイテムを温存しておきたいと言う気持ちが見え見えだ。
「む、少々高威力の魔術を連続して展開しすぎたようだ。魔力が不足してきた。この状況であれば残りは間もなく到着するであろう騎士達に任せても問題ないだろう」
「その通りであるな。我らのみが武勲を上げると要らぬ摩擦を生む」
「口惜しいが、私も国の為を思うあまりに威力の調節を誤ってしまったようだ。想定以上に消耗してしまった」
あの場にいる監視であろう近衛騎士たちは、これ見よがしに退避する口実を述べているSランク冒険者のセリフに一切の疑いを持っていない。
「承知しました。応援の騎士が到着し次第残りの討伐は我らにお任せください」
「あれほどの大魔術や斬撃をこの目で見ることができて光栄です。さすがはSランク冒険者!」
「では、応援が来た段階で我らは少々休ませてもらうとしよう。だが、貴殿らが出撃した暁には後衛としてフォローはしよう」
「ありがとうございます。安心して背中を預けられます!」
この部分だけを見れば、素晴らしい光景と言えるんだがな。
「ナユラ、お前んところはこんな連中はさっさと処分出来てよかったじゃねーか」
「そうですね。今回は国家転覆の危機を防げましたが、本当の危機に直面した時にこのような方々がいると士気に大きくかかわりますから」
少々苦い顔をしているナユラだが、ヘイロンの指摘はその通りなので認めている。
そんな中、映像には第一防壁と第二防壁からやってきたであろう騎士が列をなして第三防壁に到着した。
「我は国王直属の近衛騎士である!国王勅命によりこれより魔獣殲滅に打って出る。Sランクの方々に背中を預けたい!」
「任されよ!!」
そう言うと、第三防壁の門を開門して騎士達が第四防壁内に躍り出る。
門周辺、いや、第三防壁近くには魔獣はいない。インチキSランク冒険者の攻撃は遠くには届かないので、防壁周辺のみ魔獣が無駄に一掃されたからだ。
当然、ある程度離れたところには魔獣が群れを成しているが、地上からでは大量の群れになっていることを理解することはできない。
騎士達は開門された門を潜って第四防壁内に侵入すると、辺りに討伐された膨大な魔獣の量から、残りの魔獣の量は大したことは無いと判断したようだ。
「良いか、これは国王陛下の勅命である。Sランク冒険者殿のおかげで魔獣の群れは残すところあとわずかだ。死ぬ気でかかれ」
「はっ」
国王直属だけではなく、第二防壁内に待機していた高位貴族の近衛騎士一行もいる。
戦況が有利に働いていると言う報告を受けて、武勲を立てるためにありったけの戦力を送ったようなのだ。
この壁の上にいた騎士達も、今まさにこの時に地上に向かっている最中だ。
その為、騎士隊長が鼓舞していた”残りの魔獣はあと僅か”と言うセリフは聞くことができていなかった。
壁の上から状況を見ていた近衛騎士たちは、残りは決して少なくないのは理解できているはずなので、もしあいつらがこのセリフを聞いていたら違和感を感じて、自分たちだけでも避難行動を取っていたかもしれない。
この近衛騎士隊長は良いタイミングで騎士達を鼓舞してくれたもんだ。
応援ありがとうございます!
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