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魔王城へ向けて

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 <六剣>配下になった面々の修行も終了し、後は各人が自分に合った鍛錬を日々欠かさずに行う事によって練度を上げてくことになった。



 もちろん師匠となったテスラムさんが許す限りアドバイスをするらしい。



 そして、いつもの通り俺の部屋に<六剣>所持者全員がいる。



 魔王城は当然魔王領の中にあり、ここリスド王国からは限りなく遠い。

 だが、ある程度の場所までは<空間転移>で移動することができるので、その後は・・・俺達の力があれば精々一ヵ月って所だろう。



 もちろん道中のトラブルを見越した時間だ。



 既にナユラの力とキルハ国王の助力、そしてキュロス辺境伯からの援助で食料の他、長期遠征に必要な物資は大量にあり、時間経過があるともまずい物は俺、それ以外はそれぞれがほぼ均等に収納している。



 つまり、今すぐにでも出陣できると言う事だ。



「テスラムさん、<六剣>の状態はどうだろう。テスラムさんが思うままを教えてもらいたい」



 テスラムさんはかなり前になるが、魔王城で生活をしていた。そしてその後は<風剣>所持者となり、初代<無剣>所持者とともに魔王討伐の旅に出たのだ。



 その彼に、今の<六剣>所持者の実力を正確に判定してもらえば良い。

 実力が不足しているのであれば更なる修行、十分であると判断されればそのまま旅に出ることになる。



 そもそも、向こうの戦力を具体的に知っているのはテスラムさんだけなので、彼に判断を委ねるしかない。



「順調に仕上がっておりますので、絶対とは言えませんがおそらく大丈夫でしょう。それに、旅の途中でも修行はできますからな」



 嫌そうな顔のヘイロンとスミカ。

 だが、実際あの二人の実力はとてつもない速度で伸びているのは事実だ。



「それじゃあ、最後の復讐に向かっても問題ないという事だな?」



 改めて念を押す。俺の言葉に全員の目付きが鋭くなったのがわかる。



「ええ、問題ございません。今こそ出陣の時です。我ら<六剣>、主であるロイド様の剣となり盾となり、魔王を討伐してご覧に入れます」



 何も言わずに全員が<六剣>を顕現させて剣を天井に向かって突き出した。

 全ての<六剣>についている宝玉が激しく輝く。



 俺も<無剣>を顕現させて<六剣>の剣と軽く刃を合わせる。



「じゃあ行くぜロイド!!いよいよユリナス様の仇が取れる」

「うむ、ヘイロン殿の言う通りだ。この私の<土剣>と騎士道精神をもって全てを粉砕してくれる」

「怪我をしたときは、私に任せて下さいね」

「私も微力ですが全力を尽くします」



 ヨナとテスラムさんは無言で頷いている。



「よっしゃ、それじゃ行くとするか!!」



 既に配下となった面々、当然キルハ国王やキュロス辺境伯には魔王討伐の旅に出ることは伝えている。



 今から凡そ一か月後・・・全ての結果が出ているだろう。



 早速俺達は魔王領に最も近くの町に<空間転移>で移動した。

 本当は魔王の前に直接<空間転移>ができれば話は早いのだが、場所がイメージできない上に、魔王量の周りには何やら防御系統の魔術があるらしく、どの道<空間転移>などの便利な移動手段はとれなくしてあるそうだ。



 あくまで町に来ただけで、ここに用はない。

 そのまま魔王領を目指して移動を始める。



 もちろん人外の力があるので、尋常ならざる速度で移動している。

 道中は直接魔王とは関係がないであろう魔獣や魔族もいたが、特に移動の邪魔にならない限り放っておいた。



 少しでも前に進んでおきたいからな。



「ロイド様、流石にここまでくれば魔王には我らが侵攻したことは筒抜けになっております。十分お気を突けください」



 当然だろうな。テスラムさんの指摘に全員が気を引き締めなおした。

 特にヘイロンは<探索>を持っているので、他の<六剣>所持者よりも危険を察知しやすい。



 誰が指示を出すわけでもなく、自然と先頭を走っている。

 元王女であったナユラも呼吸を乱すことなくこの速度についてこられているのだから、<六剣>の力と的確なテスラムさんの修行の成果が出ている。



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 一方魔王城では、アミストナが第一階位の悪魔を緊急招集していた。

 魔王城謁見の間。特に豪華な造りをしているわけではないが、瘴気を出さない生物がこの場に来ると、無条件で物理・魔法攻撃を行う仕掛けが隠されている。



 一度<無剣>と<六剣>に敗北しているのだ。

 見かけ豪華な謁見の間を作るより、身の安全を優先するのは自明の理だ。



「皆の者も既に感知しておると思うが、奴らが来た。まだここまでたどり着くまでは相当の時間を要すであろう。だが、あの邪魔者共をここまで来させるわけにはいかん。奴らの力は基礎属性を冠する<六剣>だ。対策はできているな?」

「「「もちろんでございます」」」



 自らも過去に<六剣>と戦った事のある精鋭である第一階位の悪魔であるユルゲン、サファリア、ソレントス。

 彼らも<六剣>と<無剣>に復讐する為、力を磨き続けてきた。



 だが残念なことは一つだけある。

 彼らは当時よりも遥に強くなっているのだが、それ故か、辺りに無数に存在している魔獣のスライムを気にかけることは一切なかった。



 もちろん魔王であるアミストナもだ。

 まるで石ころと同じ扱いをしていた。



 つまり・・・全ての情報はテスラム、ひいてはロイド一行に洩れている。

 その状態でテスラムが魔王討伐に向かう許可を出しているのだから、よほどの隠し玉がないと彼らの勝利は難しい。



 だが、第一階位の悪魔達は当然個室を持っており、そこには衛生上?の観点からかスライムも侵入することはできていない。

 そこで秘策を準備されていると話は変わってくる。



 ロイド一行は、無駄に体力を減らす可能性のある魔獣や魔族との戦闘は殆ど行っていない。

 元から遭遇しないように避けているのもあるが、フロキル王国に魔獣と魔族が集結しているので、この場には数えるほどしかいないためだ。



 当然ロイド一行の侵攻を防ぐために悪魔が出向くことになる。

 第六階位の悪魔達から順に出陣していく。



 階位が低い悪魔ほど実力は低いが、数は多い。



 既に悪魔達はある程度の場所まで移動できる転移門を作っていたようで、魔王城からでも瞬時にロイド一行の近くに現れることができているが、ロイド達に利用できない様に瘴気の登録がしてあり、登録をしていない者達は一切転移門を利用することはできなくなっている。



 だが、例外もある。

 上位悪魔が許可をだし、且つ許可を出した上位悪魔が対象に触れていれば転移門を使用できる。



 その為、出陣後に即ロイド一行と遭遇した第六階位の悪魔達は、ロイド一行の進行方向の道に向かって攻撃した。



 第六階位と言えども悪魔。攻撃力は普通の人では至る事の出来ない境地にいる。

 道は抉れ、大きな溝ができる。



 このことにより、ロイド一行は一旦足を止めることになったのだ。



 正に悪魔達の狙い通り。



 そこへ、地上、地中、空中から一斉に襲い掛かる悪魔。

 だが、第六階位程度の悪魔に苦戦するロイド一行ではなく、難なく返り討ちにしている。



 しかし、そこに少々の油断と慢心があったのだろうか・・・



 第六階位の悪魔と、少々遅れて出陣した第五階位と第四階位、更には第三階位の悪魔が総攻撃をしてくると共に、一斉に若干ロイド一行から距離を取った。



 全方向からの攻撃を捌きつつ悪魔討伐を行っているロイド一行は、無傷ではあるが徐々にお互いの距離が離れていく。



 その隙に第一階位の悪魔が二人、ユルゲンとサファリアが現れて、スミカとナユラを攫おうとする。

 悪魔達は、複数の階位の悪魔を同時に攻撃に向かわせて、自分達が潜んでいる事をごまかしていた。

 当然力は最小限に抑えており、ナユラとスミカの近くに移動するまでヘイロンとロイドの<探索>でも正確には探知できなかったのだ。



 あくまで<六剣>に攻撃してくる悪魔の群れの一体であるとしか認識できていなかった。 
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