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ヘイロンとスミカ(1)
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日常的に旅をしているヘイロンとスミカ。
今日は、魔国アミストナに来ている。
気ままに旅をしているのだが、行く先々の冒険者ギルドで不人気の依頼、例えばリスクが大きいがリターンは少ない依頼や、依頼主の事情によって報酬をあまり出せない依頼を積極的にこなしていた。
この二人を含む<六剣>達が普通の依頼を受けてしまっては、何のリスクも無しに全て解決できてしまうため、冒険者の仕事を奪ってしまう事になる。
それは、人族と比較して身体能力が高い悪魔・魔族が住んでいる魔国アミストナにも適用されている。
そんなかれらは、国王として忙しく働いているアミストナ達に迷惑をかけないように……と、この二人はお忍びでこの魔国アミストナに来ており、気配もアミストナ達に察知されないように、極限まで消している。
「ここも随分と変わったな」
「本当ですよね」
感慨深げに歩いている二人の目には、悪魔・魔族以外の種族である人族が多数活動しているのが見えている。
「おっ、お兄さん・・・・、可愛い奥さん・・・に特製串焼き、一つどうだい?」
人族が経営している食事処。
その正面に屋台まで設置して客を呼び込んでいる一人の男に声を掛けられた二人。
「え?フフ、奥さん?可愛い奥さん??フフフフ、お兄さん、ものすごく見る目がありますね。そこにある串焼き、全部下さい!」
何故か勧められたヘイロンではなく、スミカが大きく反応して全ての串焼きを買うと言い出していた。
この店の男……実際はこの男だけではないが、<闇剣>ヨナを含めて<六剣>達の素顔は広く知れ渡っており、その性格もある程度把握されている。
スミカが食いしん坊でヘイロンと非常に仲が良く、その上押しに弱いと知っているので仕掛けた所、予想以上に食いついてきたという事だ。
「お、おぅ、まいどあり!」
予想以上のチョロさに微妙な表情の店主だが、スミカの天真爛漫な笑顔、そのスミカを優しく見ているヘイロンを見て何故か嬉しい気持ちになり、さりげなく数本おまけしているので、どちらが負けたのかは良く分からない。
この男は、もちろん目の前の二人が<六剣>である事も知っており、この世界を救った英雄である事も知っているのだが、敢えてそこは口にしない。
散々騒がれて少々疲れているだろうと言う気遣いであり、感謝の気持ちもあるからだ。
「ウフフフ、ヘイロンさん。一緒に食べましょう!」
「お前は……店主、助かる」
しかしヘイロンにはその辺りは全て理解されてしまっているようだ。
本来のスミカであればこの程度はわかる様なものだが……今はヘイロンの妻と言われて舞い上がって、いや、飛び上がっているので、そこには思い至らない。
大量の串焼きを収納袋に入れ、機嫌が良さそうにヘイロンの腕に絡みついているスミカ。
この頃になると互いに好意がある事を隠しもせずに、ロイドや他の<六剣>達からも温かい目で見守られていた。
「ヘイロンさん、あの広場に行きませんか?」
あの広場とは、以前二人がこの国に来た時に幼い子供達が<六剣>のゴッコ遊びをしていた場所だ。
「お?あそこか。行ってみるか。あのガキンチョ達、また俺達の真似でもしてりゃ面白れーけどな」
「フフ、ヘイロンさん、きっとすっごく格好良くして貰っていると思いますよ?楽しみですね!」
治安の良くなっている裏通りに入り、やがて開けた場所に到着した二人。
「スミカは俺が守る!」
「ヘイロンさん!!」
幼い声で聞こえて来たセリフに、二人は苦笑いをする。
相変わらず子供達は<六剣><無剣>ゴッコをしていたのだが、二人にとっては内容が微妙になっていたからだ。
最近の<六剣>達の情報がどのように広がっているのかを知る良い機会だと思い、引き続き影から様子を見る。
「フム、ヘイロン殿。最近は修行に身が入っているようですな」
「それ以上に、お二人の仲が良くって羨ましいです。私にも誰かいないのかしら?」
「……おい、スミカ。あれってナユラ役だよな?」
「……そうみたいですね。まさか、そんな噂になっているのですか?でも、今、相当忙しくしているので出会いがないのは事実でしょうけど」
なんだかいたたまれない気持ちになり、不本意ではあるがこの遊びを中断させる事にした二人は、子供達の前に姿を現した。
「あ~、<炎>と<水>だ!!」
「え?本当だ!本物だ!!!」
「兄ちゃん、姉ちゃん、<六剣>見せてよ!!」
やはり素顔は割れているようで、一瞬で子供達に囲まれる二人。
「ハハハ、良いぜ。だがよ、先ずは腹ごしらえだ」
「はい!さっき買ってきたばかりの串焼きよ。あわてないで食べてね」
「「「「「「「頂きま~す」」」」」」」
子供達と楽しく過ごしている二人。
約束通り<炎剣>と<水剣>を顕現させる。
もちろん危険が無いように刃周辺には体に影響のない属性の膜を覆わせて、所持者以外が触れても問題ないように配慮もしている。
「すげー、本物の<六剣>だ!」
「こんなにキレイなの、初めて見た!」
思い思いに感想を口にしている子供達。
「この子達も守れて、良かったですね」
「……あぁ、そうだな」
その様子を見ている二人は、改めて今と言う幸せを噛みしめているのだった。
今日は、魔国アミストナに来ている。
気ままに旅をしているのだが、行く先々の冒険者ギルドで不人気の依頼、例えばリスクが大きいがリターンは少ない依頼や、依頼主の事情によって報酬をあまり出せない依頼を積極的にこなしていた。
この二人を含む<六剣>達が普通の依頼を受けてしまっては、何のリスクも無しに全て解決できてしまうため、冒険者の仕事を奪ってしまう事になる。
それは、人族と比較して身体能力が高い悪魔・魔族が住んでいる魔国アミストナにも適用されている。
そんなかれらは、国王として忙しく働いているアミストナ達に迷惑をかけないように……と、この二人はお忍びでこの魔国アミストナに来ており、気配もアミストナ達に察知されないように、極限まで消している。
「ここも随分と変わったな」
「本当ですよね」
感慨深げに歩いている二人の目には、悪魔・魔族以外の種族である人族が多数活動しているのが見えている。
「おっ、お兄さん・・・・、可愛い奥さん・・・に特製串焼き、一つどうだい?」
人族が経営している食事処。
その正面に屋台まで設置して客を呼び込んでいる一人の男に声を掛けられた二人。
「え?フフ、奥さん?可愛い奥さん??フフフフ、お兄さん、ものすごく見る目がありますね。そこにある串焼き、全部下さい!」
何故か勧められたヘイロンではなく、スミカが大きく反応して全ての串焼きを買うと言い出していた。
この店の男……実際はこの男だけではないが、<闇剣>ヨナを含めて<六剣>達の素顔は広く知れ渡っており、その性格もある程度把握されている。
スミカが食いしん坊でヘイロンと非常に仲が良く、その上押しに弱いと知っているので仕掛けた所、予想以上に食いついてきたという事だ。
「お、おぅ、まいどあり!」
予想以上のチョロさに微妙な表情の店主だが、スミカの天真爛漫な笑顔、そのスミカを優しく見ているヘイロンを見て何故か嬉しい気持ちになり、さりげなく数本おまけしているので、どちらが負けたのかは良く分からない。
この男は、もちろん目の前の二人が<六剣>である事も知っており、この世界を救った英雄である事も知っているのだが、敢えてそこは口にしない。
散々騒がれて少々疲れているだろうと言う気遣いであり、感謝の気持ちもあるからだ。
「ウフフフ、ヘイロンさん。一緒に食べましょう!」
「お前は……店主、助かる」
しかしヘイロンにはその辺りは全て理解されてしまっているようだ。
本来のスミカであればこの程度はわかる様なものだが……今はヘイロンの妻と言われて舞い上がって、いや、飛び上がっているので、そこには思い至らない。
大量の串焼きを収納袋に入れ、機嫌が良さそうにヘイロンの腕に絡みついているスミカ。
この頃になると互いに好意がある事を隠しもせずに、ロイドや他の<六剣>達からも温かい目で見守られていた。
「ヘイロンさん、あの広場に行きませんか?」
あの広場とは、以前二人がこの国に来た時に幼い子供達が<六剣>のゴッコ遊びをしていた場所だ。
「お?あそこか。行ってみるか。あのガキンチョ達、また俺達の真似でもしてりゃ面白れーけどな」
「フフ、ヘイロンさん、きっとすっごく格好良くして貰っていると思いますよ?楽しみですね!」
治安の良くなっている裏通りに入り、やがて開けた場所に到着した二人。
「スミカは俺が守る!」
「ヘイロンさん!!」
幼い声で聞こえて来たセリフに、二人は苦笑いをする。
相変わらず子供達は<六剣><無剣>ゴッコをしていたのだが、二人にとっては内容が微妙になっていたからだ。
最近の<六剣>達の情報がどのように広がっているのかを知る良い機会だと思い、引き続き影から様子を見る。
「フム、ヘイロン殿。最近は修行に身が入っているようですな」
「それ以上に、お二人の仲が良くって羨ましいです。私にも誰かいないのかしら?」
「……おい、スミカ。あれってナユラ役だよな?」
「……そうみたいですね。まさか、そんな噂になっているのですか?でも、今、相当忙しくしているので出会いがないのは事実でしょうけど」
なんだかいたたまれない気持ちになり、不本意ではあるがこの遊びを中断させる事にした二人は、子供達の前に姿を現した。
「あ~、<炎>と<水>だ!!」
「え?本当だ!本物だ!!!」
「兄ちゃん、姉ちゃん、<六剣>見せてよ!!」
やはり素顔は割れているようで、一瞬で子供達に囲まれる二人。
「ハハハ、良いぜ。だがよ、先ずは腹ごしらえだ」
「はい!さっき買ってきたばかりの串焼きよ。あわてないで食べてね」
「「「「「「「頂きま~す」」」」」」」
子供達と楽しく過ごしている二人。
約束通り<炎剣>と<水剣>を顕現させる。
もちろん危険が無いように刃周辺には体に影響のない属性の膜を覆わせて、所持者以外が触れても問題ないように配慮もしている。
「すげー、本物の<六剣>だ!」
「こんなにキレイなの、初めて見た!」
思い思いに感想を口にしている子供達。
「この子達も守れて、良かったですね」
「……あぁ、そうだな」
その様子を見ている二人は、改めて今と言う幸せを噛みしめているのだった。
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