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(1)城下町にて
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ソシケ王国と呼ばれている国家の王都にある、冒険者ギルド。
この世界には冒険者と言う職業が存在しており、彼等は日々体を張って命がけで仕事をしているのだが、その仕事内容は多岐にわたり、小間使いから外敵排除、素材・食料の入手等様々だが、そう言った人々を管理している組織がギルドだ。
達成難易度によって得られる報酬が異なり、実はその冒険者の受付を担当した者に入る手数料が異なってくる。
こうする事で受付も冒険者を大切にして育てて行こうと言う気持ちにさせるのだが、どうしても例外は発生する。
例えば……何時まで経っても小間使いの依頼しかこなせない冒険者もいるし、逆にある程度の地位を得てしまって直接冒険者と交渉する事が無くなったギルド職員もいる。
「おい、ロイ!お前、昨日の上りはなんだ!一昨日の十分の一だぞ!やる気あるのか?」
朝も早くからがなり立てているのはこのギルドのトップ、ギルドマスターであるクノデラ。
かなり前に冒険者として活動しており、その後ギルドの職員、更にはいつの間にかギルドのトップになっていた男で、以前は冒険者だったと言っても誰も信じられないような体形、所謂小太り状態になっている。
ギルドマスターになればその日のギルド総売り上げが報酬に直接響くため、先日の売り上げが非常に悪かった受付担当のロイを叱責している。
受付側から言わせれば冒険者は気の向くままに行動する者がほとんどなので、安定した成果を出してくれる者などそうはおらず、逆にどうすれば良いのか聞きたいと思っている。
「そんな程度だから、お前はハイス子爵家を追い出されたのではないのか?実家とは上手くやっているなどと言っているらしいが、怪しいな」
「そんな事を言われても困りますね。それに昨日は最も高難度の依頼をこなしてくれる人物が依頼遂行の為に移動する日なので、成果が下がるのは当然ですよ?」
「お前、ギルドマスターであるこの俺に口答えするのか?知っているぞ。御大層な能力……鑑定の結果出たお前の能力、かの有名な“収納魔法”だったそうだな。だが、何一つ収納できないので、出せる物も何もない本当のクズ能力だってな。そんな能力しかないから、子爵家から勘当されたんじゃないのか?」
ギルマスであるクノデラが言う通り、収納魔法と言う能力は非常に貴重で希少だ。
この国家、ソシケ王国では国家繁栄の一助とするとの方針の元、ある程度の年齢となった際に鑑定魔法を持つ者によって個々人の能力が判別される。
国家繁栄の一助と言う事も確かなのだが、あまりにも強大な力を持っている者が現れた場合には危険な能力が完全に覚醒する前に首輪をつける意味もある。
その中で収納魔法については少々扱いが異なる。
国家自体を直接的に危機に晒すような能力ではないのだが、その者達を国家お抱えとする事で国家繁栄の為の道具としている。
この収納魔法は行使に多大な力を必要とするので、この力を持つ者は他の一切の能力を持てないと言う事が一般的だ。
もちろんロイが収納魔法持ちだと鑑定された時には、ロイの実家でもあるハイス子爵家を始めとして貴族・王族も喜び、国王直属の一部隊に配属する話まで出ていたのだが……何を収納しようとしても入れる事が出来ないと言う散々たる状況であったため、国王直属部隊の話も流れている。
「しっかりと他の能力を持てないところだけは、立派な収納魔法だな!ハハハハ」
クノデラは気が済んだのか、捨て台詞を残して受付を後にして自室に戻って行く。
「ロイ、気にするな。金にガメツイ男のヒステリーだ。それに、俺達はロイが家族と仲が良いと言う事は誰もが知っている。と言うより、クノデラも普通理解できると思うのだが……なぁ?」
同僚の一人がロイを慰めてくれたのだが、最後は少し微妙な表現になっている。
その理由は……
「おっまたせ~!!ロイ君のお姉ちゃんがやってきましたよ!ねぇねぇロイ君!昨日私と会えなかったから寂しかった?フフ、ごめんね!急いで古龍の爪を取ってきたから!そうそう、古龍とは仲良くなったから、次からは同じ依頼であればもっと早く帰って来られるよ?嬉しいでしょう?ロイ君。今日はこれでロイ君のノルマも達成かな?一緒に朝ご飯食べに行こうよ!」
ギルドの扉が開く音がしたと同時に、ロイの前にまるで瞬間移動のような速度で移動して一気にまくしたてる女性……少々小柄で垂れ目の可愛らしい顔をしており、やや長い金髪を靡かせてその綺麗な金目でロイだけを見つめている。
この女性はリーンと言ってロイと同じくハイス子爵家の者なのだが、単独で冒険者として活動している。
「姉ちゃん落ち着いて!依頼達成は嬉しいけれど、今は早朝!!そもそもこの依頼は今日の夜に終わる想定だよ。それをこんな時間に帰ってきて……確かに立派な爪だよね。でも、俺はこれから仕事が始まるから食事は無理かな」
露骨にショボンとするリーンなのだが、そのリーンの声を聞きつけたギルドマスターのクノデラが再び受付にもの凄い勢いでやってきた。
「こ、これはこれはリーン様。今日の……おぉ!正しく古龍の爪ではありませんか!さすがは当ギルド最強の名を欲しいがままにしているだけはありますな。これだけの逸品、傷なしで手に入れられるとは素晴らしい」
手を高速でモミモミしながらリーンを褒め称えるクノデラ。
リーンが実弟であるロイにべったりなのは周知の事実なのだが、どうやらこのクノデラにはその部分は理解できないようで、地雷を踏んでリーンの機嫌を悪くしてしまう。
「まったく、リーン様の実績に比べるとウチの職員は……同じ血が流れているとは思えませんな。同じ収納魔法持ちでもリーン様は相当な容量があるとお伺いしています。更に他の力も使える等、正に最強の名にふさわしいですな」
この世界には冒険者と言う職業が存在しており、彼等は日々体を張って命がけで仕事をしているのだが、その仕事内容は多岐にわたり、小間使いから外敵排除、素材・食料の入手等様々だが、そう言った人々を管理している組織がギルドだ。
達成難易度によって得られる報酬が異なり、実はその冒険者の受付を担当した者に入る手数料が異なってくる。
こうする事で受付も冒険者を大切にして育てて行こうと言う気持ちにさせるのだが、どうしても例外は発生する。
例えば……何時まで経っても小間使いの依頼しかこなせない冒険者もいるし、逆にある程度の地位を得てしまって直接冒険者と交渉する事が無くなったギルド職員もいる。
「おい、ロイ!お前、昨日の上りはなんだ!一昨日の十分の一だぞ!やる気あるのか?」
朝も早くからがなり立てているのはこのギルドのトップ、ギルドマスターであるクノデラ。
かなり前に冒険者として活動しており、その後ギルドの職員、更にはいつの間にかギルドのトップになっていた男で、以前は冒険者だったと言っても誰も信じられないような体形、所謂小太り状態になっている。
ギルドマスターになればその日のギルド総売り上げが報酬に直接響くため、先日の売り上げが非常に悪かった受付担当のロイを叱責している。
受付側から言わせれば冒険者は気の向くままに行動する者がほとんどなので、安定した成果を出してくれる者などそうはおらず、逆にどうすれば良いのか聞きたいと思っている。
「そんな程度だから、お前はハイス子爵家を追い出されたのではないのか?実家とは上手くやっているなどと言っているらしいが、怪しいな」
「そんな事を言われても困りますね。それに昨日は最も高難度の依頼をこなしてくれる人物が依頼遂行の為に移動する日なので、成果が下がるのは当然ですよ?」
「お前、ギルドマスターであるこの俺に口答えするのか?知っているぞ。御大層な能力……鑑定の結果出たお前の能力、かの有名な“収納魔法”だったそうだな。だが、何一つ収納できないので、出せる物も何もない本当のクズ能力だってな。そんな能力しかないから、子爵家から勘当されたんじゃないのか?」
ギルマスであるクノデラが言う通り、収納魔法と言う能力は非常に貴重で希少だ。
この国家、ソシケ王国では国家繁栄の一助とするとの方針の元、ある程度の年齢となった際に鑑定魔法を持つ者によって個々人の能力が判別される。
国家繁栄の一助と言う事も確かなのだが、あまりにも強大な力を持っている者が現れた場合には危険な能力が完全に覚醒する前に首輪をつける意味もある。
その中で収納魔法については少々扱いが異なる。
国家自体を直接的に危機に晒すような能力ではないのだが、その者達を国家お抱えとする事で国家繁栄の為の道具としている。
この収納魔法は行使に多大な力を必要とするので、この力を持つ者は他の一切の能力を持てないと言う事が一般的だ。
もちろんロイが収納魔法持ちだと鑑定された時には、ロイの実家でもあるハイス子爵家を始めとして貴族・王族も喜び、国王直属の一部隊に配属する話まで出ていたのだが……何を収納しようとしても入れる事が出来ないと言う散々たる状況であったため、国王直属部隊の話も流れている。
「しっかりと他の能力を持てないところだけは、立派な収納魔法だな!ハハハハ」
クノデラは気が済んだのか、捨て台詞を残して受付を後にして自室に戻って行く。
「ロイ、気にするな。金にガメツイ男のヒステリーだ。それに、俺達はロイが家族と仲が良いと言う事は誰もが知っている。と言うより、クノデラも普通理解できると思うのだが……なぁ?」
同僚の一人がロイを慰めてくれたのだが、最後は少し微妙な表現になっている。
その理由は……
「おっまたせ~!!ロイ君のお姉ちゃんがやってきましたよ!ねぇねぇロイ君!昨日私と会えなかったから寂しかった?フフ、ごめんね!急いで古龍の爪を取ってきたから!そうそう、古龍とは仲良くなったから、次からは同じ依頼であればもっと早く帰って来られるよ?嬉しいでしょう?ロイ君。今日はこれでロイ君のノルマも達成かな?一緒に朝ご飯食べに行こうよ!」
ギルドの扉が開く音がしたと同時に、ロイの前にまるで瞬間移動のような速度で移動して一気にまくしたてる女性……少々小柄で垂れ目の可愛らしい顔をしており、やや長い金髪を靡かせてその綺麗な金目でロイだけを見つめている。
この女性はリーンと言ってロイと同じくハイス子爵家の者なのだが、単独で冒険者として活動している。
「姉ちゃん落ち着いて!依頼達成は嬉しいけれど、今は早朝!!そもそもこの依頼は今日の夜に終わる想定だよ。それをこんな時間に帰ってきて……確かに立派な爪だよね。でも、俺はこれから仕事が始まるから食事は無理かな」
露骨にショボンとするリーンなのだが、そのリーンの声を聞きつけたギルドマスターのクノデラが再び受付にもの凄い勢いでやってきた。
「こ、これはこれはリーン様。今日の……おぉ!正しく古龍の爪ではありませんか!さすがは当ギルド最強の名を欲しいがままにしているだけはありますな。これだけの逸品、傷なしで手に入れられるとは素晴らしい」
手を高速でモミモミしながらリーンを褒め称えるクノデラ。
リーンが実弟であるロイにべったりなのは周知の事実なのだが、どうやらこのクノデラにはその部分は理解できないようで、地雷を踏んでリーンの機嫌を悪くしてしまう。
「まったく、リーン様の実績に比べるとウチの職員は……同じ血が流れているとは思えませんな。同じ収納魔法持ちでもリーン様は相当な容量があるとお伺いしています。更に他の力も使える等、正に最強の名にふさわしいですな」
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