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(2)ロイの力の一端(1)
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リーンを褒め称えるのは問題ないのだが、リーンの前でロイを貶すような事だけはダメだろうとギルドマスターであるクノデラの言葉を聞いて真っ青になっている周りの受付達。
まだ早朝だけにこの場にいる冒険者は少ないが、誰しもが我が身に危険を感じてリーンからゆっくりと距離を取る。
ロイの姉であるリーンは本当に珍しい収納魔法持ちである上、更に他の魔法まで行使できる特別な存在だった。
流石の王族も、爵位は低いが一応は貴族であり相当な強さを持っているリーンに対して首輪を直接的につける事が出来ずにいたのだが、何とかこの国の為に動いてもらうようにするにはどうすれば良いのかを考えた結果が、期待外れのロイをギルド職員として働かせると言う事だった。
この決定に至るまでに相当情報収集した結果、リーンや長兄であるルホークだけではなく両親共にロイの事を溺愛しており、ロイに対して安定した職を斡旋しておけばハイス子爵家に恩を売れる……即ちリーンの手綱もある程度握れると踏んでいた。
通常の貴族は長兄以外に爵位を継ぐ事はできず、一般的には女性であれば政略結婚、男性であれば一人で生きて行く他ないので、生きるための手段としてギルド職員に押し込めばリーンはロイの為に必死で活動する……つまりは最終的に王家が潤う事にもなるとの結論に至った。
今の所は作戦通りの結果になっているのだが、そう言った事情はギルドには伝えられておらず、ギルドマスターとしては名前だけは立派な収納魔法と言う能力を持っているが、実質何も収納できない出来損ないのロイが突然職員になった事が非常に気に入らなかった。
その結果が視界を極度に狭くし、リーンがロイを溺愛して必死で依頼をこなしていると言う事実に気づく事なく、リーンの目の前でロイを盛大に侮辱してしまったのだ。
クノデラとしてはこれ以上ない程にリーンを持ち上げているつもりなのだが、正にリーンの逆鱗にベタベタと触れた事には気が付かない。
一瞬で周囲の空気が凍りつき、リーンは取り繕った笑顔を敵に見せる。
「ロイ君!何この中途半端ハゲ。目障なのだけど。一刻も早くロイ君に会いたいから急いで依頼を達成したのに!そうだ、確か依頼に龍の髭もあったよね?見た目銀色で龍の髭っぽいから、あの残り少ない髪の毛で依頼達成の練習をしてみようかな?」
「な、なななな、何を言っているのですか?」
動揺しているのはクノデラのみであり、ロイや他の職員、更には遠巻きにしている冒険者達でさえ成るべくして成った事態だと思っている。
そもそもリーンの視界にはロイしか入っておらず、今までも散々クノデラはリーンを持ち上げていたその一切を聞いていなかったのだが、今回はそこにロイの悪口が入ってしまったので、初めて悪い意味でクノデラはリーンの視界に入ったのだ。
ロイとしては、今の立場は自分にとって非常に良い立ち位置であるのであまり波風を立てたくないのだが、このまま放置すればリーンは間違いなく泣き喚くクノデラを完全に無視した形で髪を強引にむしり始めると確信しているので、止む無く仲裁に入る事にした。
「は~、姉ちゃん落ち着いて。クノデラさん、俺は当ギルド最強で最も貢献してくれている冒険者のリーンさんの対応をするので、今日の窓口業務はできません。良いですよね?」
リーンの依頼である食事を共にする事によって機嫌が良くなるのだが、こうなると朝食だけで済むわけがないので今日の窓口業務はできないと告げた。
「やった!流石ロイ君。お姉ちゃんは嬉しいよ!!」
初めて直接的な殺気を受けて固まってしまったクノデラは、一瞬で殺気が霧散した為に漸く真面に息を吸う事が出来ている。
その目の前では、その見た目からは考えられない程の力を持っていると嫌でもわかるほどの殺気を放っていた小柄な女性が、はち切れんばかりの笑顔で出来損ないを見ていた。
流石に殺気を受けたばかりなので、ここでロイの申し出に対して否と言おうものなら次は何をされるかわからないと自らの身を案じたクノデラは、渋々ロイの申請を許可する。
「わ、わかった。良いだろう。当ギルドに多大な貢献をして頂いているリーン様の対応、くれぐれも間違えないように!」
自らが大間違いをしたままそれだけ言うと逃げるように自室に戻って行ったのだが、もうリーンの意識にはクノデラはいないのでニコニコとロイだけを見つめていた。
「あのギャップが凄いよな。あの見た目で龍の爪だぞ?考えられるか?」
「それも古龍……普通の龍でさえ手も足も出ないのに、最強と言われる古龍の爪を無傷で」
「確かに凄いが、古龍と仲良くなったとか言っていなかったか?リーンさんって、従属魔法を持っていなかったはずだよな?」
周囲の冒険者達はリーンが達成した今回の依頼と共に、あっさりと古龍と仲良くなったと言ってのけた事に驚愕している。
そもそも最強種と言われている龍の中でも別格の強さを持つ、長きを生きる古龍。
確かにその強さと共に、長命故に人族の言葉も理解できるのだろうが、決してリーンの言うような軽い感じで仲良くなれる存在ではない。
一部、能力として獣や魔獣と呼ばれる存在を使役する従属魔法を使える者がいるのだが、遥か格上の存在には行使する事は出来ないし、そもそもリーンはその魔法を習得していない。
そう言った事から、周囲の冒険者達は今回のリーンの偉業達成に沸き立っていた。
『あ~あ、あの古龍、もう少し上手くやってくれよ。爪を置いて身を隠すとかすれば良いのに、なんで態々姉ちゃんに姿を見せるかな~。それも仲良くなっているとか言っているし、後で事情を聞かないと』
そんな中でロイは一人でこのような事を考えつつも、笑顔のリーンと共にギルドを後にした。
まだ早朝だけにこの場にいる冒険者は少ないが、誰しもが我が身に危険を感じてリーンからゆっくりと距離を取る。
ロイの姉であるリーンは本当に珍しい収納魔法持ちである上、更に他の魔法まで行使できる特別な存在だった。
流石の王族も、爵位は低いが一応は貴族であり相当な強さを持っているリーンに対して首輪を直接的につける事が出来ずにいたのだが、何とかこの国の為に動いてもらうようにするにはどうすれば良いのかを考えた結果が、期待外れのロイをギルド職員として働かせると言う事だった。
この決定に至るまでに相当情報収集した結果、リーンや長兄であるルホークだけではなく両親共にロイの事を溺愛しており、ロイに対して安定した職を斡旋しておけばハイス子爵家に恩を売れる……即ちリーンの手綱もある程度握れると踏んでいた。
通常の貴族は長兄以外に爵位を継ぐ事はできず、一般的には女性であれば政略結婚、男性であれば一人で生きて行く他ないので、生きるための手段としてギルド職員に押し込めばリーンはロイの為に必死で活動する……つまりは最終的に王家が潤う事にもなるとの結論に至った。
今の所は作戦通りの結果になっているのだが、そう言った事情はギルドには伝えられておらず、ギルドマスターとしては名前だけは立派な収納魔法と言う能力を持っているが、実質何も収納できない出来損ないのロイが突然職員になった事が非常に気に入らなかった。
その結果が視界を極度に狭くし、リーンがロイを溺愛して必死で依頼をこなしていると言う事実に気づく事なく、リーンの目の前でロイを盛大に侮辱してしまったのだ。
クノデラとしてはこれ以上ない程にリーンを持ち上げているつもりなのだが、正にリーンの逆鱗にベタベタと触れた事には気が付かない。
一瞬で周囲の空気が凍りつき、リーンは取り繕った笑顔を敵に見せる。
「ロイ君!何この中途半端ハゲ。目障なのだけど。一刻も早くロイ君に会いたいから急いで依頼を達成したのに!そうだ、確か依頼に龍の髭もあったよね?見た目銀色で龍の髭っぽいから、あの残り少ない髪の毛で依頼達成の練習をしてみようかな?」
「な、なななな、何を言っているのですか?」
動揺しているのはクノデラのみであり、ロイや他の職員、更には遠巻きにしている冒険者達でさえ成るべくして成った事態だと思っている。
そもそもリーンの視界にはロイしか入っておらず、今までも散々クノデラはリーンを持ち上げていたその一切を聞いていなかったのだが、今回はそこにロイの悪口が入ってしまったので、初めて悪い意味でクノデラはリーンの視界に入ったのだ。
ロイとしては、今の立場は自分にとって非常に良い立ち位置であるのであまり波風を立てたくないのだが、このまま放置すればリーンは間違いなく泣き喚くクノデラを完全に無視した形で髪を強引にむしり始めると確信しているので、止む無く仲裁に入る事にした。
「は~、姉ちゃん落ち着いて。クノデラさん、俺は当ギルド最強で最も貢献してくれている冒険者のリーンさんの対応をするので、今日の窓口業務はできません。良いですよね?」
リーンの依頼である食事を共にする事によって機嫌が良くなるのだが、こうなると朝食だけで済むわけがないので今日の窓口業務はできないと告げた。
「やった!流石ロイ君。お姉ちゃんは嬉しいよ!!」
初めて直接的な殺気を受けて固まってしまったクノデラは、一瞬で殺気が霧散した為に漸く真面に息を吸う事が出来ている。
その目の前では、その見た目からは考えられない程の力を持っていると嫌でもわかるほどの殺気を放っていた小柄な女性が、はち切れんばかりの笑顔で出来損ないを見ていた。
流石に殺気を受けたばかりなので、ここでロイの申し出に対して否と言おうものなら次は何をされるかわからないと自らの身を案じたクノデラは、渋々ロイの申請を許可する。
「わ、わかった。良いだろう。当ギルドに多大な貢献をして頂いているリーン様の対応、くれぐれも間違えないように!」
自らが大間違いをしたままそれだけ言うと逃げるように自室に戻って行ったのだが、もうリーンの意識にはクノデラはいないのでニコニコとロイだけを見つめていた。
「あのギャップが凄いよな。あの見た目で龍の爪だぞ?考えられるか?」
「それも古龍……普通の龍でさえ手も足も出ないのに、最強と言われる古龍の爪を無傷で」
「確かに凄いが、古龍と仲良くなったとか言っていなかったか?リーンさんって、従属魔法を持っていなかったはずだよな?」
周囲の冒険者達はリーンが達成した今回の依頼と共に、あっさりと古龍と仲良くなったと言ってのけた事に驚愕している。
そもそも最強種と言われている龍の中でも別格の強さを持つ、長きを生きる古龍。
確かにその強さと共に、長命故に人族の言葉も理解できるのだろうが、決してリーンの言うような軽い感じで仲良くなれる存在ではない。
一部、能力として獣や魔獣と呼ばれる存在を使役する従属魔法を使える者がいるのだが、遥か格上の存在には行使する事は出来ないし、そもそもリーンはその魔法を習得していない。
そう言った事から、周囲の冒険者達は今回のリーンの偉業達成に沸き立っていた。
『あ~あ、あの古龍、もう少し上手くやってくれよ。爪を置いて身を隠すとかすれば良いのに、なんで態々姉ちゃんに姿を見せるかな~。それも仲良くなっているとか言っているし、後で事情を聞かないと』
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