10 / 75
(9)ギルドへの罰
しおりを挟む
目の前の黒い物体、その中は生焼けなのか所々から謎の液体が流れ出ており、実際匂いも強烈なので誰一人として手が出せていない。
普段から食料を大切にする冒険者ですら、第一歩が踏み出せずにいた。
そこに、ギルマスの半ば強行とも言える推薦によって実弟であるドノデラが料理長になった事を知っている冒険者によって、ギルマスが強制的にその料理を口にする羽目になっていた。
クノデラは震える手でナイフとフォークを持ち、できるだけ小さく目の前の黒く怪しい塊を切り取ろうとするのだが、そんな事を許す冒険者はいない。
「お前、そんなに小さいと味がとうかなんてわからねーだろ?料理長であるお前の弟の力作だ。しっかり食えよ?」
隣に来ている冒険者が、自分のナイフとフォークで少し大きめの一口に切り出す。
すると切断面から怪しい色で強烈な匂いを発する汁と、瞬間で目がやられそうなほどの煙が再度立ち上り、周囲の冒険者の嗅覚や視覚を襲う。
「うっ、ウェッ。何だこりゃ。魔獣用の罠でもこれほどの匂いを出すものはねーぞ!」
喧騒に包まれる食堂の中でクノデラはどうすればこの窮地を乗り切れるか必死で考えているのだが、良い言い訳など出てくるわけもなく長く放心していると、痺れを切らした冒険者によって肉らしき物体を口に入れられて瞬間で意識を失う。
そこからはギルドと言う組織についての糾弾が始まった。
一般職員に対しての糾弾ではなく、ギルドマスターを始めとした上層部について……だ。
冒険者達は、あれほどの高級食材を毒物に変える腕しか持っていない者を料理長にするのか、そもそも料理人であろう人物が厨房でタバコを吸っている態度等、この短い時間で得た情報だけでも相当酷いと感じていた。
ロイも突然の事でどう対処するか悩んでいたのだが、スペードキングからの情報で何とかこの場は収まるかもしれないと期待した。
「表に誰もいないと思ったら、なんでこんな所……ここって職員専用の食堂じゃないの?どうしたの?ロイ君」
ロイに早く会いたいためだけに、無駄に高い身体能力を全力で使って部屋の掃除を終わらせたリーンがやってきたのだ。
公には使える能力を何も持っていないただの職員ではこの騒動は収められないと思っていたロイは、このギルド最強と認識されているリーンであれば、自分が頼めば何とかしてくれるのではと言う期待があった。
そこである程度事情を話し、現実的に毒物とも言える大量の高級食材だった物も見せて信憑性を上げて行く。
リーンからしてみれば、ロイの言う事は無条件で正しいと思っているので過剰な説明になってしまった部分は否めないが、それでも一通り説明する。
その間、周囲の冒険者や職員、更には厨房の中のドノデラを始めとした一同も一言も口を開かずに成り行きを見守っているのだが、そのような様子はリーンの視界には入らないので、ドノデラ達だけが無駄に震えているのもわかっていない。
「う~ん、ロイ君はどうしたいの?」
「俺も大事にはしたくないけど、ちょっとこれは目に余るよね。料理の出来ない料理長ってどう考えてもおかしいし」
「わかったわ。お姉ちゃんに任せて!でも今日はこれから用事があるから、ロイ君も一緒に来てね」
即答で対応してくれると言い切った姉が、普段のポンコツ具合とは大きく異なりとても頼りがいのある立派な冒険者に見えたロイは、何故か昼なのにギルドから連れ出される事には意識が向かずにそのまま共にギルドを後にした。
その後の行動はお察しの通りにコレと言った用事がある訳でもなく、ひたすらロイを甘やかす行動をとり続けるだけのリーンだった。
「ふ~、今日は色々……いや、いつも通りと言えばいつも通りか。多少のトラブルと姉ちゃんの暴走。でも、ギルドの問題を解決してくれるのだから、今日の暴走位は目を瞑らないといけないよね」
目の前には陰から出ているスペードキングと、商会についての報告を行っていたダイヤキングがいる。
「我が主。非常に申し上げにくいのですが……情報が入りまして、リーン様がギルドで暴れ始めたようです。狙いは、ギルマスであるクノデラと料理長であるドノデラです」
「……やっぱりポンコツだったか!立場を利用して問い詰める程度かと思っていたけど、力技かい!って、ギルドの被害は?」
今までロイが陰ながらサポートをしていたとは言え、現時点では相当力を得ているリーンは文字通りギルド最強。
そのリーンがギルドで暴れているとなれば、建屋も纏めて吹き飛ばされかねないと慌てるロイ。
「我が主、ご安心ください。どうやら厨房に屯していたドノデラ一味を強引にギルマスの部屋に連れて行き、今の時点ではギルマス含めて恫喝しているだけのようです」
「恫喝!?イチ冒険者がギルマスに恫喝?」
姉に期待した自分がバカだったと激しく後悔するロイだが、ここまで来てしまってはどうする事も出来ないので、他の人や物に被害がないようにフォローしろと指示を出して現実逃避するべくふて寝した。
「も~、ギルド職員として経験を積んだら旅に出たいのに、まだ俺は知らない事が多すぎる。冒険者から得られる情報は値千金だから、簡単に情報を得られる立場のギルド職員をもう少し続けたいんだけどな。でもそろそろ潮時かもしれないな」
叶わなくなるかもしれない願望を呟き、新たな決心をしながら……
普段から食料を大切にする冒険者ですら、第一歩が踏み出せずにいた。
そこに、ギルマスの半ば強行とも言える推薦によって実弟であるドノデラが料理長になった事を知っている冒険者によって、ギルマスが強制的にその料理を口にする羽目になっていた。
クノデラは震える手でナイフとフォークを持ち、できるだけ小さく目の前の黒く怪しい塊を切り取ろうとするのだが、そんな事を許す冒険者はいない。
「お前、そんなに小さいと味がとうかなんてわからねーだろ?料理長であるお前の弟の力作だ。しっかり食えよ?」
隣に来ている冒険者が、自分のナイフとフォークで少し大きめの一口に切り出す。
すると切断面から怪しい色で強烈な匂いを発する汁と、瞬間で目がやられそうなほどの煙が再度立ち上り、周囲の冒険者の嗅覚や視覚を襲う。
「うっ、ウェッ。何だこりゃ。魔獣用の罠でもこれほどの匂いを出すものはねーぞ!」
喧騒に包まれる食堂の中でクノデラはどうすればこの窮地を乗り切れるか必死で考えているのだが、良い言い訳など出てくるわけもなく長く放心していると、痺れを切らした冒険者によって肉らしき物体を口に入れられて瞬間で意識を失う。
そこからはギルドと言う組織についての糾弾が始まった。
一般職員に対しての糾弾ではなく、ギルドマスターを始めとした上層部について……だ。
冒険者達は、あれほどの高級食材を毒物に変える腕しか持っていない者を料理長にするのか、そもそも料理人であろう人物が厨房でタバコを吸っている態度等、この短い時間で得た情報だけでも相当酷いと感じていた。
ロイも突然の事でどう対処するか悩んでいたのだが、スペードキングからの情報で何とかこの場は収まるかもしれないと期待した。
「表に誰もいないと思ったら、なんでこんな所……ここって職員専用の食堂じゃないの?どうしたの?ロイ君」
ロイに早く会いたいためだけに、無駄に高い身体能力を全力で使って部屋の掃除を終わらせたリーンがやってきたのだ。
公には使える能力を何も持っていないただの職員ではこの騒動は収められないと思っていたロイは、このギルド最強と認識されているリーンであれば、自分が頼めば何とかしてくれるのではと言う期待があった。
そこである程度事情を話し、現実的に毒物とも言える大量の高級食材だった物も見せて信憑性を上げて行く。
リーンからしてみれば、ロイの言う事は無条件で正しいと思っているので過剰な説明になってしまった部分は否めないが、それでも一通り説明する。
その間、周囲の冒険者や職員、更には厨房の中のドノデラを始めとした一同も一言も口を開かずに成り行きを見守っているのだが、そのような様子はリーンの視界には入らないので、ドノデラ達だけが無駄に震えているのもわかっていない。
「う~ん、ロイ君はどうしたいの?」
「俺も大事にはしたくないけど、ちょっとこれは目に余るよね。料理の出来ない料理長ってどう考えてもおかしいし」
「わかったわ。お姉ちゃんに任せて!でも今日はこれから用事があるから、ロイ君も一緒に来てね」
即答で対応してくれると言い切った姉が、普段のポンコツ具合とは大きく異なりとても頼りがいのある立派な冒険者に見えたロイは、何故か昼なのにギルドから連れ出される事には意識が向かずにそのまま共にギルドを後にした。
その後の行動はお察しの通りにコレと言った用事がある訳でもなく、ひたすらロイを甘やかす行動をとり続けるだけのリーンだった。
「ふ~、今日は色々……いや、いつも通りと言えばいつも通りか。多少のトラブルと姉ちゃんの暴走。でも、ギルドの問題を解決してくれるのだから、今日の暴走位は目を瞑らないといけないよね」
目の前には陰から出ているスペードキングと、商会についての報告を行っていたダイヤキングがいる。
「我が主。非常に申し上げにくいのですが……情報が入りまして、リーン様がギルドで暴れ始めたようです。狙いは、ギルマスであるクノデラと料理長であるドノデラです」
「……やっぱりポンコツだったか!立場を利用して問い詰める程度かと思っていたけど、力技かい!って、ギルドの被害は?」
今までロイが陰ながらサポートをしていたとは言え、現時点では相当力を得ているリーンは文字通りギルド最強。
そのリーンがギルドで暴れているとなれば、建屋も纏めて吹き飛ばされかねないと慌てるロイ。
「我が主、ご安心ください。どうやら厨房に屯していたドノデラ一味を強引にギルマスの部屋に連れて行き、今の時点ではギルマス含めて恫喝しているだけのようです」
「恫喝!?イチ冒険者がギルマスに恫喝?」
姉に期待した自分がバカだったと激しく後悔するロイだが、ここまで来てしまってはどうする事も出来ないので、他の人や物に被害がないようにフォローしろと指示を出して現実逃避するべくふて寝した。
「も~、ギルド職員として経験を積んだら旅に出たいのに、まだ俺は知らない事が多すぎる。冒険者から得られる情報は値千金だから、簡単に情報を得られる立場のギルド職員をもう少し続けたいんだけどな。でもそろそろ潮時かもしれないな」
叶わなくなるかもしれない願望を呟き、新たな決心をしながら……
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる