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(13)旅の移動
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初めての一人旅に心躍らせているロイは、ある程度距離を稼ぐと召喚したクラブ部隊を元に戻して歩き出す。
仮に話し相手が欲しければカードから誰かを召喚すれば良いし、安全は現在進行形で陰にスペード部隊が潜っているので、周囲の気配など掴めなくとも不安になる要素は何一つない。
しかし本人の体力がないのは否定できない事実であり、二時間ほど歩くと足が痛くなっている。
「イタタ、普段如何に動いていないかだな。でも荷台で運んでもらうのも景色が楽しめないし……」
荷台に乗った人と言う図を他人に見られたくないので、視界に入らない程の速度で移動してもらっていたロイ。
当然周囲の景色など楽しめる訳もなく、結局自分の足で歩くほかないかと重くなった腰を上げる。
街道では旅慣れている冒険者や商人達を時折見かけ、全ての人が荷馬車に乗っているか相当な量の荷物を背負っている中で、ほぼ全ての荷物をダイヤ部隊に収納してもらっているロイは、はっきり言って浮いていた。
当初は気にならなかったのだが、町から距離がある街道にいると漸く自分の姿が一般的ではない事に気が付くロイ。
「あれ?そうか。せっかく流れの冒険者の人から色々情報を聞いていたのに、何も活用できていないな。反省しないと!」
呟きつつ、人目がない位置に移動してダイヤ部隊から見かけだけは立派で重みが一切ないバックを出して貰い、あたかも旅の道具一式が入っているかのように装って歩き出す。
「重くはないけど、やっぱり邪魔ではあるな」
漸く周囲からの奇異の視線を受ける事は無くなったが、結構な大きさのバックを背負っているので、いくら重みを感じないとは言え手ぶらと比べると疲れた体には負担に感じてしまう。
「でも、俺は恵まれている方だな。これも旅の醍醐味だ!」
自分を鼓舞するように一人呟いて進むロイ。
やがて街道も暗くなり始めると、スペード部隊に最寄りの町までの距離を聞くロイだが、自分の想像よりも進んでいない事に愕然とする。
「じゃあ、少々無理をして進んでも仕方がないと言う事か」
多少暗くとも他の人々とは違って安全が担保されている為に、無理をすれば町に到着できるのだが、検討にすら値しない程距離が離れていると聞いて野営を行う事にする。
「ダイヤフォース、ダイヤフィフス」
全く同じ顔、体形の女性二人が音もなくロイの前に現れる。
「テントと食料を出してくれる?それと、夕食時の話し相手になってくれると嬉しいんだけど」
「「承知しました。身に余る光栄です」」
例の商会で販売していた最高級の食材と、リーンから渡されている高級食材を出して調理を始めるダイヤフォースと、テントを出して中にふかふかのベッドまで準備しているダイヤフィフス。
いくら頭脳に長けている部隊の者とは言え古龍程度であれば圧倒できるだけの力は余裕で持っている二人は、その力を無駄に発揮してテキパキと全ての準備を即座に整える。
「これだよ!これこそが料理だよね。あの……なんだっけ?」
「ドノデラです、ご主人様」
「そうそう、あのなんちゃって元料理長が作る猛毒じゃなくって、食材を生かすこの料理、これこそが本当の料理だよね」
「ありがとうございます、ご主人様」
料理を担当していたダイヤフォースは表情を綻ばせるが、もう一人を褒める事を忘れないロイ。
「野営の準備もありがとう。なんだか豪華な屋敷にいるかのような空間だよね。コレが野営と言うのかどうかは別にして、助かるよ」
「もったいないお言葉です、ご主人様」
二人が笑顔になったところで、共に食事を始める。
カードから召喚した者達に食事は必要ないが、逆に摂取する事も可能だ。
彼女たちにとってみれば主と共に食事をとれる栄誉を授かっているので、嬉しい気持ちを堪えきれないのか少しそわそわしている。
「っと、そうだ。スペードキングも一緒に食べよう」
常に自分の陰に潜って護衛をし、自らが率いるスペード部隊からの情報を整理してロイに伝えてくれている存在を労う事も忘れない。
「有りがたきお言葉。甘えさせて頂きます、我が主」
陰から出てくる男は、周囲の気配に気をつけながらも同じ召喚者であるダイヤ部隊の二人と共に主であるロイと食事を始める。
「スペードキングに教えてもらった町までの距離、俺の足で二日はかかるって聞いてさ、普通の人達は相当体力があるって感心したよ。いや、逆に俺の体力がなさすぎなのか?」
周囲の様子を見ても、自分程疲れている様な人はいないので少々落ち込むロイだ。
仮に話し相手が欲しければカードから誰かを召喚すれば良いし、安全は現在進行形で陰にスペード部隊が潜っているので、周囲の気配など掴めなくとも不安になる要素は何一つない。
しかし本人の体力がないのは否定できない事実であり、二時間ほど歩くと足が痛くなっている。
「イタタ、普段如何に動いていないかだな。でも荷台で運んでもらうのも景色が楽しめないし……」
荷台に乗った人と言う図を他人に見られたくないので、視界に入らない程の速度で移動してもらっていたロイ。
当然周囲の景色など楽しめる訳もなく、結局自分の足で歩くほかないかと重くなった腰を上げる。
街道では旅慣れている冒険者や商人達を時折見かけ、全ての人が荷馬車に乗っているか相当な量の荷物を背負っている中で、ほぼ全ての荷物をダイヤ部隊に収納してもらっているロイは、はっきり言って浮いていた。
当初は気にならなかったのだが、町から距離がある街道にいると漸く自分の姿が一般的ではない事に気が付くロイ。
「あれ?そうか。せっかく流れの冒険者の人から色々情報を聞いていたのに、何も活用できていないな。反省しないと!」
呟きつつ、人目がない位置に移動してダイヤ部隊から見かけだけは立派で重みが一切ないバックを出して貰い、あたかも旅の道具一式が入っているかのように装って歩き出す。
「重くはないけど、やっぱり邪魔ではあるな」
漸く周囲からの奇異の視線を受ける事は無くなったが、結構な大きさのバックを背負っているので、いくら重みを感じないとは言え手ぶらと比べると疲れた体には負担に感じてしまう。
「でも、俺は恵まれている方だな。これも旅の醍醐味だ!」
自分を鼓舞するように一人呟いて進むロイ。
やがて街道も暗くなり始めると、スペード部隊に最寄りの町までの距離を聞くロイだが、自分の想像よりも進んでいない事に愕然とする。
「じゃあ、少々無理をして進んでも仕方がないと言う事か」
多少暗くとも他の人々とは違って安全が担保されている為に、無理をすれば町に到着できるのだが、検討にすら値しない程距離が離れていると聞いて野営を行う事にする。
「ダイヤフォース、ダイヤフィフス」
全く同じ顔、体形の女性二人が音もなくロイの前に現れる。
「テントと食料を出してくれる?それと、夕食時の話し相手になってくれると嬉しいんだけど」
「「承知しました。身に余る光栄です」」
例の商会で販売していた最高級の食材と、リーンから渡されている高級食材を出して調理を始めるダイヤフォースと、テントを出して中にふかふかのベッドまで準備しているダイヤフィフス。
いくら頭脳に長けている部隊の者とは言え古龍程度であれば圧倒できるだけの力は余裕で持っている二人は、その力を無駄に発揮してテキパキと全ての準備を即座に整える。
「これだよ!これこそが料理だよね。あの……なんだっけ?」
「ドノデラです、ご主人様」
「そうそう、あのなんちゃって元料理長が作る猛毒じゃなくって、食材を生かすこの料理、これこそが本当の料理だよね」
「ありがとうございます、ご主人様」
料理を担当していたダイヤフォースは表情を綻ばせるが、もう一人を褒める事を忘れないロイ。
「野営の準備もありがとう。なんだか豪華な屋敷にいるかのような空間だよね。コレが野営と言うのかどうかは別にして、助かるよ」
「もったいないお言葉です、ご主人様」
二人が笑顔になったところで、共に食事を始める。
カードから召喚した者達に食事は必要ないが、逆に摂取する事も可能だ。
彼女たちにとってみれば主と共に食事をとれる栄誉を授かっているので、嬉しい気持ちを堪えきれないのか少しそわそわしている。
「っと、そうだ。スペードキングも一緒に食べよう」
常に自分の陰に潜って護衛をし、自らが率いるスペード部隊からの情報を整理してロイに伝えてくれている存在を労う事も忘れない。
「有りがたきお言葉。甘えさせて頂きます、我が主」
陰から出てくる男は、周囲の気配に気をつけながらも同じ召喚者であるダイヤ部隊の二人と共に主であるロイと食事を始める。
「スペードキングに教えてもらった町までの距離、俺の足で二日はかかるって聞いてさ、普通の人達は相当体力があるって感心したよ。いや、逆に俺の体力がなさすぎなのか?」
周囲の様子を見ても、自分程疲れている様な人はいないので少々落ち込むロイだ。
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