69 / 75
(68)王都にて
しおりを挟む
王都の邸宅に戻ると、あの王城での不敬と言う言葉では生ぬるい態度をとり続けていた父と姉が普段と変わらない態度になっているので、やはり自分の常識が世間一般とは大きく乖離しているのかと思っているロイは、久しぶりに自室に戻って寛いている。
「こうしてみると、王都って平和だよね」
「本当にそうだよね。一緒に少し散歩でもする?」
「うわっ!?姉ちゃんいつの間に!」
何となくボーっと窓から外の景色を眺めていたロイなのだが、独り言に反応されて驚く。
「えへへへ、ロイ君に会いたくて来ちゃった。ルホーク兄にも連絡がついて、何をおいても明日の夕飯はロイ君と一緒に食べるためにこっちに来るって!」
「え?ここから領地って、そんなに早く到着するっけ?」
「もう出立しているみたいだから、一日中休まず移動すれば大丈夫でしょ?」
ここでも良く分からない事を言われて改めて常識が変わったのだなと思いつつも、リーンの申し出を断っても別の申し出があるのは間違いないので、それならば散歩程度であれば被害は少ないはずだと半ば諦めの気持ちで了解する。
「そうなんだ。わかったよ、姉ちゃん。じゃあ、散歩に行こうか?」
「やった!どこに行く?何食べる?何が欲しい?ウフフフ、楽しみだなぁ!早速、行こ?」
貴族の邸宅がある場所は民が住む領域に近い場所であっても治安が非常に良いのが当たり前であり、店も相応なレベルの品、対応が求められる。
ロイとしてはあまりこの周辺の散策を積極的に行った事は無く、比較的早い段階でギルドの有る場所の近くで一人暮らしをしていた事から、ある意味新鮮な感覚で周囲を歩き、リーンのこれ以上ない程の過剰接待を受けていた。
「我が主、今の所危険はないですが、つけられております」
そこにリーンにすら聞こえないようにスペードキングから情報を得たロイは、国王とのやり取りを見ればこうなるのも仕方がないだろうと肩をすくめる。
「ロイ君?肩こっちゃった?お姉ちゃんが揉み解してあげようか?」
「え?いやいや、大丈夫。何となく動かしただけだからさ」
目ざといリーンに驚きつつも、そのリーンですら察知できない気配を難なく掴むカードの者達の能力に改めて感心しているロイ。
「あれ?ロイ君。あっちが少し騒がしいね。確かあっちは、貴族向けの市があったと思うけど、行ってみよう?」
リーンに対しては否と言う選択肢はないので、ざわついている場所に向かうロイ。
今の所カード達が危険を知らせるような事が無いので何も問題ないと判断してリーンの後を追って行くと、そこには立派ではあるのだが相当汚れている服を着ている男性が周囲の者達から罵声を浴びせられていた。
「おい、出来損ない。ここはお前の様に父に捨てられた存在が来て良い場所じゃない。さっさと消えろ!」
「そうだそうだ。匂うんだよ!お前には残飯がお似合いだぜ!」
ロイとしても非常に不快になる言葉なので表情が変わってしまい、その表情を見たリーンの表情も変わる。
知っての通りリーンはロイ至上主義なので、ロイがこの状況を見て不快に思ってしまった事が許せずにいた。
「アンタ達、私の目の前で良い根性しているわね。すり潰されたいのかしら?」
ソシケ王国の王都で知らない人はいない程に有名になっている、ハイス子爵家の長女である冒険者リーン。
そもそも収納魔法持ちの時点で国家の管理対象になるため相当有名になっているのだが、更に通常では使えない他の魔法まで使いこなしている挙句に古龍まで手懐けて見せたのだから、どの様な立場の者でさえその存在は知っている。
ある意味雲の上的な存在であるハイス子爵家の長女、冒険者リーン・ハイスを知らなければ国民ではないと言っても過言ではない程なのだが、その女性がどう見ても怒りの表情を伴って突然現れたのだから、薄汚れた服の男に意識が集中していた者達は慌てて散って行く。
「はぁ、ここも落ちたわね。一応貴族に名を連ねる者、関係者しかいないはずなのに。で、貴方は何故あのような状況になっていたのかしら?」
リーンは貴族に対して興味が無く、目の前の男性がどのような存在であるかなど分かるはずもないので、ストレートに問いかける。
「ぼ、僕は、聞いての通り親に見放されたので、一人で食料を買う必要があります。ここ以外の場所に行くのは立場上許されていない為に食料を購入しようとしたのですが、御覧のありさまで困っていました」
「わかったわ。貴方もどこぞの貴族でしょう?その立場を失っても生きていける位に強くならないとダメだと思うわよ?」
「仰る通りです。リーンさん」
この男性にもリーンの名前は知られているようで、その流れで行くと当然弟の特殊な収納魔法持ちのロイの事も知られているのだが、自らも迫害されていると言って良い状態になっているからか、ロイを見下すような視線を向けるような事は無かった。
貴族、特権階級の者であれば当たり前のようにロイの情報を持っているので、程度の差はあれ見下す態度になりがちなのだが、そのような気配すらなかった事からロイ成分を補充し続けて幸せになっているリーンは余裕があるのか、赤の他人を助ける事にした。
「あら?貴方は見込みがあるわね。気に入ったわ。はい!コレを持って行って!」
料理の数々と服が入っている収納袋をその場で譲渡して、笑顔で去って行ったのだ。
「こうしてみると、王都って平和だよね」
「本当にそうだよね。一緒に少し散歩でもする?」
「うわっ!?姉ちゃんいつの間に!」
何となくボーっと窓から外の景色を眺めていたロイなのだが、独り言に反応されて驚く。
「えへへへ、ロイ君に会いたくて来ちゃった。ルホーク兄にも連絡がついて、何をおいても明日の夕飯はロイ君と一緒に食べるためにこっちに来るって!」
「え?ここから領地って、そんなに早く到着するっけ?」
「もう出立しているみたいだから、一日中休まず移動すれば大丈夫でしょ?」
ここでも良く分からない事を言われて改めて常識が変わったのだなと思いつつも、リーンの申し出を断っても別の申し出があるのは間違いないので、それならば散歩程度であれば被害は少ないはずだと半ば諦めの気持ちで了解する。
「そうなんだ。わかったよ、姉ちゃん。じゃあ、散歩に行こうか?」
「やった!どこに行く?何食べる?何が欲しい?ウフフフ、楽しみだなぁ!早速、行こ?」
貴族の邸宅がある場所は民が住む領域に近い場所であっても治安が非常に良いのが当たり前であり、店も相応なレベルの品、対応が求められる。
ロイとしてはあまりこの周辺の散策を積極的に行った事は無く、比較的早い段階でギルドの有る場所の近くで一人暮らしをしていた事から、ある意味新鮮な感覚で周囲を歩き、リーンのこれ以上ない程の過剰接待を受けていた。
「我が主、今の所危険はないですが、つけられております」
そこにリーンにすら聞こえないようにスペードキングから情報を得たロイは、国王とのやり取りを見ればこうなるのも仕方がないだろうと肩をすくめる。
「ロイ君?肩こっちゃった?お姉ちゃんが揉み解してあげようか?」
「え?いやいや、大丈夫。何となく動かしただけだからさ」
目ざといリーンに驚きつつも、そのリーンですら察知できない気配を難なく掴むカードの者達の能力に改めて感心しているロイ。
「あれ?ロイ君。あっちが少し騒がしいね。確かあっちは、貴族向けの市があったと思うけど、行ってみよう?」
リーンに対しては否と言う選択肢はないので、ざわついている場所に向かうロイ。
今の所カード達が危険を知らせるような事が無いので何も問題ないと判断してリーンの後を追って行くと、そこには立派ではあるのだが相当汚れている服を着ている男性が周囲の者達から罵声を浴びせられていた。
「おい、出来損ない。ここはお前の様に父に捨てられた存在が来て良い場所じゃない。さっさと消えろ!」
「そうだそうだ。匂うんだよ!お前には残飯がお似合いだぜ!」
ロイとしても非常に不快になる言葉なので表情が変わってしまい、その表情を見たリーンの表情も変わる。
知っての通りリーンはロイ至上主義なので、ロイがこの状況を見て不快に思ってしまった事が許せずにいた。
「アンタ達、私の目の前で良い根性しているわね。すり潰されたいのかしら?」
ソシケ王国の王都で知らない人はいない程に有名になっている、ハイス子爵家の長女である冒険者リーン。
そもそも収納魔法持ちの時点で国家の管理対象になるため相当有名になっているのだが、更に通常では使えない他の魔法まで使いこなしている挙句に古龍まで手懐けて見せたのだから、どの様な立場の者でさえその存在は知っている。
ある意味雲の上的な存在であるハイス子爵家の長女、冒険者リーン・ハイスを知らなければ国民ではないと言っても過言ではない程なのだが、その女性がどう見ても怒りの表情を伴って突然現れたのだから、薄汚れた服の男に意識が集中していた者達は慌てて散って行く。
「はぁ、ここも落ちたわね。一応貴族に名を連ねる者、関係者しかいないはずなのに。で、貴方は何故あのような状況になっていたのかしら?」
リーンは貴族に対して興味が無く、目の前の男性がどのような存在であるかなど分かるはずもないので、ストレートに問いかける。
「ぼ、僕は、聞いての通り親に見放されたので、一人で食料を買う必要があります。ここ以外の場所に行くのは立場上許されていない為に食料を購入しようとしたのですが、御覧のありさまで困っていました」
「わかったわ。貴方もどこぞの貴族でしょう?その立場を失っても生きていける位に強くならないとダメだと思うわよ?」
「仰る通りです。リーンさん」
この男性にもリーンの名前は知られているようで、その流れで行くと当然弟の特殊な収納魔法持ちのロイの事も知られているのだが、自らも迫害されていると言って良い状態になっているからか、ロイを見下すような視線を向けるような事は無かった。
貴族、特権階級の者であれば当たり前のようにロイの情報を持っているので、程度の差はあれ見下す態度になりがちなのだが、そのような気配すらなかった事からロイ成分を補充し続けて幸せになっているリーンは余裕があるのか、赤の他人を助ける事にした。
「あら?貴方は見込みがあるわね。気に入ったわ。はい!コレを持って行って!」
料理の数々と服が入っている収納袋をその場で譲渡して、笑顔で去って行ったのだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる