前世も今世も裏切られるが、信頼できる仲間と共に理想の世界を作り上げる

焼納豆

文字の大きさ
131 / 170
最後の戦い

悠里の処遇

しおりを挟む
 俺達は円卓で皆とたわいもない話をしている。
 作戦と言う作戦はなくとも叩き潰せる事を確信したためだ。

 程無くしてトーカから連絡が来た。

『ジン、悠里とかいう女と辺境伯の子供三人確保したよ。全員気絶しちゃってるけど・・・それにこの女の手、折れたままだけど今は治してあげる気にならないからこのままそっちに連れて行くね。能力はどうする?今剥奪しておく?』

『いや、能力使われても相殺できるでしょ?それならとりあえずそのまま連れてきて』

 トーカが俺の指示で悠里と辺境伯の子供三人を捕縛してくれたようだ。
 そして、トーカは<神の権能>で四人を空中に保持したまま円卓の間に現れた。

「はい、ここに置いておくね。シロ、何かあったらジンをお願いね」

 そう言って、四人を床に転がすと再召喚された幻獣達の方に嬉しそうに走り寄っていく。

 彼女も幻獣達の復活を心から喜んでいる。特に、ウェインを除く女性陣で何やら盛り上がっているようだ。
 ウェインは・・・むさい男達に囲まれているが、こっちはこっちで楽しそうだからいいか。

 俺と、そして俺の護衛の位置にいるシロは四人の前に椅子を移動して、彼らの目を覚まさせた。
 一応本来の護衛はラムだが、彼女は幻獣部隊達と女子トークを繰り広げているので、あっちでそのまま楽しんでもらいたい。
 と言うよりも、一回こちらに来そうになったのを<念話>で止めたのだ。
 
 やがて悠里が気が付き、俺と周りの状況を確認すると下を向いてしまった。
 それはそうだろう。彼女にしたら敵の最大戦力が集まっている中に一人で来てしまったのだから。

 俺は悠里について時間をかけて話をしたいため、先ずはアレン、ブゴウ、ショリーについて処遇を決めよう。

「おい、お前ら性懲りもなく<アルダ王国>にちょっかい出してきたな。あれほど忠告してやったのにだ。もちろんそれなりの覚悟があるんだろうな。あの作戦で何人犠牲にしたんだ?その償いをしなくてはならないだろうな」

 三人がガタガタ震えている。

「だが、<アルダ王国>で償うとした場合その奴隷紋は邪魔だな。とりあえず無駄に暴れられても困るから解除しておくか」

 即奴隷紋を解除してやった。

 辺境東伯の息子であるアレンが、あまりの出来事に理解が追い付いていないようで、思わず言葉にしてしまった言葉がこれだ。

「な、なんでこんなに簡単に解除することができるんだ?」

「感謝する必要はないぞ。お前たちがドルロイの命令でここで無駄に暴れる事を事前に防いだだけだ。これからきっちり償ってもらうからな」

 というと、ガジム隊長がやってきた。

「お前は、俺にゲ〇をかけやがったドワーフ!」

 こいつは威勢が良いな。状況がすぐ見えなくなる短絡的なところも変わっていない。
 他の二人はこいつの後ろをくっついているだけのやつらなので、下を向いたまま黙っている。

「おう、お前の言うドワーフのガジムだ。その腐った根性を叩き直してやろうか。ジン様、こいつらの処遇はどの様にお考えですか?」

「うん、父さんとも相談する必要はあるけれど、多数の犠牲を出しているから何もなしと言うわけにはいかない。そうすると・・・<アルダ王国>では奴隷は禁止しているが、犯罪奴隷は別だ。その辺りが妥当だと思うんだけど」

「わかりました。こいつらには一度目の襲撃時に笑わせてもらった恩がありますからな。犯罪奴隷となったら、我ら【技術開発部隊】の管轄にさせて頂いても良いでしょうか?」

「父さんの了解が得られればそれでいいよ。奴隷紋の管理はその場合ガジム隊長にするけど良い?」

「もちろんでございます。ではダン王に聞いてきますのでこれにて失礼します」

 アレン、ブゴウ、ショリーは、急展開について行けずに少し呆けている。しかし、ガジム隊長の強さも身近に接してわかったのだろう。アレンなどは当初の勢いは全くなくなってしまっている。

 そして、そんな三人をランドル副隊長、ノレンド副隊長が端の方に連れて行き、この場には悠里と俺、そしてシロのみとなった。

 悠里はガジム隊長やランドル副隊長、ノレンド副隊長の強さも理解し、青ざめている。
 もちろんここにいる俺、そしてソラもあのトーカと同等の力を持っていることを理解しているのだろう。

 俺は<神の権能>を使用して、悠里の状態を確認した。
 もしかしたら・・ユージも言っていたが、前世のマインドコントロールと、更に<心身操作>によってこのような行動を起こしてしまったのではないかと思ったからだ。

 そして結果は、思った通り<心身操作>の影響下にあった。前世の状態については既にわかりようがなく、先ずは<心身操作>の解除を実施した。

「悠里、お前北野の<心身操作>の影響下にあったぞ。なので解除してやった。だがな、いくら操られていたとしても、全ての行いがそのせいではないだろう。お前もあの三人と同じく償いが必要だ」

 悠里は下を向いたまま何も反応しない。
 本人もわかっているはずだ。いくら<心身操作>が強力な能力であったとしても、既に前世からの影響か、自らの意思もあって俺達に牙をむいたのだ。

「今後俺達は北野とドルロイを叩き潰す。あいつらに関しては最早償いと言うレベルでは済まないので、この世から消えてもらうつもりだ。だがその戦闘の際にお前の能力を再度使われて不測の事態が起こると対処が面倒だ。なので、その能力も剥奪する」

 悠里が驚いたようにこちらを見る。

「そ、そんな・・能力の剥奪なんてできるわけが・・」

 言い終わる前に、俺は既に悠里から能力を剥奪した。ついでに指輪の呪いも解除しておく。
 
「悠里、もうお前は何の力もないただの人間だ。既に能力は剥奪した。これからはどこで過ごすのも自由にしてやる。これが俺に出来る最大の譲歩だ。この国の国民、そして大同盟を組んでいる近隣諸国はお前がしたことを全員が知っているので、かなり生活には困窮するだろうが、それがお前のしたことへの罰だ。別に大同盟以外の国に出てもいいぞ。その時は魔獣に対抗する術を持たないお前の末路は決まっているけどな」

「ちょ、ちょっと・・」

 悠里が何かを言い終わる前に、【管理部隊】の隊長セリアと、キャンデル副隊長を呼んで事情を話し、カード作成の上本人の希望の場所に放逐することにして貰った。しかし、北野と斎藤の処遇もある為、一旦地下の部屋・・・と言っても外から鍵のかかる部屋で鉄格子があり見張りがいるが・・・にいて貰う事にしている。
 最後の情けで少々の金銭をカードに入れておいてやろう。
 ギルドに対しても、本当に最後の情けで命の危険がない仕事を斡旋するように伝えておいてやる。

 一応カードや<神の権能>を使用して、時々状態を確認することにしよう。
 俺も甘いな。

 そんな俺を見て、シロは微笑んで寄り添ってくれる。
 あ~、早く神獣達皆が揃わないかな。

 やがて、ガジム隊長が戻ってきた。

「ジン様、ダン王の許可が取れました。奴隷紋と【技術開発部隊】管理下に置く旨、よろしくお願いします」

 そして、ランデル副隊長、ノレンド副隊長が辺境伯の子供三人を引きずってきた。
 俺は、新たに即奴隷紋をやつらに刻み、こう伝えた。

「これからがようやく贖罪の一歩だ。精々全力で頑張れよ。ひょっとしてガジム隊長が認めたら待遇が良くなるかもしれないからな」

 それだけ伝えると、幻獣達の歓談の輪に加わるべく俺はその場を後にした。
 実際は、【技術開発部隊】はかなりの重労働が沢山ある。

 研究して物を作り、試して、改善して・・・の繰り返した。その中で今はLvが高い隊員が揃っているためにあまり苦も無く実施しているが、あの三人のLvでは相当苦労するだろう。
 更には父さんが何か指示を出すと、作業完成まで喜々として全員が不眠不休で一気に作業を行うのだ。あいつらの贖罪にはうってつけかもしれないな。
 
 今は一応緊迫した状況のはずだが、相手の戦力減少、そして俺達の異常なほどの戦力上昇に伴い、楽しい時間を過ごすことができた。

 モモが解放されたらもう一度、いや、何回でもこのように皆と楽しく過ごせる場を設けよう。

 やがて父さんが入室し、

「各国に状況を伝えることができた。皆心から生還を祝ってくれていたぞ。この状況であれば最早避難は解除しても良いと判断したので、少ししたら顔見せも兼ねて、幻獣部隊は分担して<転移>を使って避難民を各国土に移送してくれ。但し、<神狼>の町だけは避難継続としておく。セリア隊長、キャンデル副隊長、そしてロメとジュリ、問題ないか?」

 全員が頷いて了承している。俺も頷いて了承の意を示しておく。

 これであいつらが魔獣と共に攻めてくるのを待つだけだ。
 そうすればモモと再び会える。
 こんなに戦いが待ち遠しいのは初めての事ではないだろうか。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...