前世も今世も裏切られるが、信頼できる仲間と共に理想の世界を作り上げる

焼納豆

文字の大きさ
144 / 170
異大陸

戦況の確認

しおりを挟む
 一旦<アルダ王国>に帰還し、ユフロに状況を聞いてみる。

「<転移>で送った人たちの状態はどう?」
「回復もすんで、今は食事をしている所です。全員大けがはありませんでしたが疲労が蓄積されているようなので、今日はこの後ゆっくりしてもらう事になっています」
「わかった。それと、子供の父親についての情報、直接本人から聞くわけにはいかないから<神の権能>で記憶を読んでおいて」

 普段は記憶を読むことなんてしないが、今回はしょうがない。万が一辛い過去を思い出させてしまうかもしれないからな。

 やがて、各隊の隊長、副隊長全員が帰還してきたので、円卓の間で報告を行うことにした。
 もちろん幹部全員参加だ。

 まさか視察程度のつもりで、いきなり救出作業が始まるとは思っていなかったので、他の大陸に顔を出すことができなかった。
 そこで、全員で情報を共有する事にしたんだ。

 <ブロス大陸>担当、【管理部隊】副隊長のキャンデルが報告を始める。
 
「ジョルナス王子と共に、現時点で魔神の配下である魔獣達が攻撃をしている箇所に行ってきました。やはり魔獣は破壊衝動が高く、種類も空中、地中、地上から攻撃を仕掛けられる複数の魔獣がおり、軍隊のように統率されていました。私とグリフ副隊長の調査の結果では、統率するレベルの高い魔物が控えていると判断しました。感知したレベルは<S:帝級>でしたが・・・」

 最後は若干歯切れが悪くなっている。なぜなら、敵の部隊長的な魔物のレベルが想定よりも低いからだ。
 その為、本当は別の魔物が裏に控えているのでは、と疑心暗鬼になっている。
 だが、副隊長二人のレベルは<SS:聖級>の上限だ。更に付け加えると、グリムは【諜報部隊】の副隊長であり、探索系統のスキルは非常に高い。
 その二人の情報であるならば実際に敵のレベルは低い・・・いや、一般的には脅威になるのだろうが、俺達にとっては脅威になるはずもないレベルという事だ。

 俺達と同じ<コビア大陸>に行き、救出の状況を把握しているウェインが、自らの隊に所属するグリフ副隊長に確認する。

「グリフ副隊長、私の担当した<コビア大陸>ではジン様と神獣様達が地下に隠れていた避難民を救助した。そちらは現在戦闘中なので状況は大きく異なると思うが、敵に飲み込まれてしまった地域に避難民はいたか?」
「いいえ、探索した限りではやつらに侵攻された場所に避難民の気配はありませんでした」

 きっと、ジョルナス王子が確実に避難させつつ戦闘しているのだろうか・・・

 次は <カムリ大陸>担当、【遊撃部隊】副隊長のリゲルガだ。

「こちらも、全方位からの攻撃に耐えていると言った戦場でした。正直、あのままでは長くは持たないでと判断しました。なので、独断で申し訳ありませんが、目についた高レベルの・・・先程キャンデル副隊長の報告にあった部隊長的な魔物を数匹仕留めてしまいました。やはり<S:帝級>レベルで間違いなく、これで暫くは優勢に戦いを進めることができると思います。しかし、あの数だけは厄介ですね。広範囲旬滅系統の力を使わないと、戦局は元に戻ってしまうでしょう。しかし、我らが実施してしまう場合地形が変わってしまうので、その後の復興を考えると躊躇してしまいます。最後に情報ですが、我らのスキルで瘴気が近い場合に制限されるのは、<念話><転移>と言った距離を必要とする物であるようです」
 
 リゲルガ副隊長と、同行していたホープ副隊長も微妙に申し訳なさそうな顔をしている。
 一応今回は情報収集を主目的としていたので、敵の部隊長?をいきなり仕留めてしまった事が今後の作戦に影響を与えてしまうかもしれないと心配してるのだろう。
 ここはフォローを入れておこう。

「良い判断だったと思う。こっちもいきなり救出作戦を実施しているのだし、全く問題ない。そちらも避難民はいなかったという事で良いかな?」
「はい、我等の探索ではおりません」

 では次だ。ここからは既に魔神の手に落ちている大陸になる。

  <コビア大陸>担当、【諜報部隊】隊長のウェイン。もちろん俺も一緒に行っているが、ウェインに任せる。

「<コビア大陸>では、確かに瘴気が蔓延しており<念話><転移>そして<探索>は制限を受けた。避難民については既に救出済みだが、大陸の一部、王都周辺に限られるため、まだまだ助けを待っている人がいるだろう。既にあの地は反対勢力がいないのか、レベルの低い魔獣のみが配置されていた。やつらの拠点は王都周辺にはなさそうなので、今後は敵の拠点探しから始める必要がある」

 そう、確かに<探索>系統のスキルも制限を受けたのだ。と言っても俺達レベルであれば誤差の範囲だが。しかし、<転移>と<念話>は距離に応じて大きな制限を受ける。転移先と通信先の距離が大きければ大きい程スキルが使えない。きっと副隊長達は、微妙な制限を受けた<探索>については気が付かなかったのかもしれない。

 残るは<ドツマ大陸>担当、【管理部隊】隊長のセリアと、<リハク大陸>担当、【攻撃部隊】隊長のマーニカ最後に<ジロム大陸>担当、【遊撃部隊】隊長のエレノアだが、ウェインと同じ報告であり、避難民は探索範囲ではいなかったそうだ。

 もし、彼らの報告の通りに敵の部隊長クラスが大したことがないのであれば、一気に奪還するのも手だが、裏に俺達と同程度の魔物が控えているとしたら、いや、少なくとも魔神がいるのは間違いないので、戦力を分散してしまっては危険かもしれない。

 判断に悩むところだが、今この時でも犠牲が出ているし、救出を待っている者達もいるかもしれないのだ。
 のんびりはしていられない。

 俺は普段は使用制限をしている<神の権能>で<未来視>を発動した。
 しかし、魔神の影響を受けているのか、あの大陸での<未来視>による先読みはできなかったのだ。
 
 そうすると、兎獣人の<戦略術>を持つジュリを筆頭としたメンバーでの検討が必要になるか・・・
 キャンデル副隊長も同様の考えを持ったようだ。 

「現状の報告は一旦終わりましたので、少々休憩とさせて頂いても良いでしょうか?その間・・・エレノア隊長、ジュリをお借りしてもよろしいでしょうか?」
「ええ、もちろんよ」

 もちろん俺も<神の権能>で<戦略術>は使えるのだが、地頭が良くないのか・・・とても残念だがそういう事だ。この辺りについては、あまり触れないでくれるとありがたい。<神の権能>も万能ではなかったという事が証明されてしまったのだ。

 何故か神獣達が俺に寄り添ってきてくれるが、傷口に塩を塗られている気がするような、しないような・・・
 そんな感じで、無駄に休憩時間を使っていたら、再度会議が開催された。

 既にある程度の作戦ができたようで、ジュリが説明をする。
 
「まずは作戦の前に、新たな情報を説明させて頂きます。既に避難されていた方々から得た情報ですが、魔神の軍も一枚岩ではないようです。魔神の配下には確かに魔神に準ずる力を持つ魔物がいるようですが、その内の一人が今の魔神のやり方に異を唱えて軍から離脱したそうなのです。ウェイン隊長、ジン様、神獣様達が救出した人々はその離反した魔物にかくまわれたそうなのです。しかし、その魔物に同意するものは少数しかいなかったらしく、個人で奮闘しているとの事。先ずは彼女・・・女性だそうですが、その人に接触を至急図るべきではと思います。移動に制限があるようなので、<コビア大陸>にいるのは間違いないので、接触を第一とさせてください。そこで魔神軍の詳細を更に入手することが、確実な勝利につながります」

 そういえば、彼らの記憶を探るように指示を出していた。その報告を聞いていなかったが・・・そういう事だったのか。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...