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後に引けない
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石崎の暴言に対して、働く……幸次としてはこの日本とは異なり本当に命を懸けて、時には命を落とす者も多数いる中で生活している環境を知っているので、そんな者達の有難みを理解していないで偉そうにしている石崎を憐みの表情で見ている。
そこまでの環境ではないが、時には理不尽を飲み込んで家族のために働くと言う難しさ、厳しさを理解できている伍葉や、両親に対して常日頃感謝の気持ちを持っている吉田も同様に石崎に対して呆れみの表情だ。
石崎は、敵認定している三人の表情を見て何故か愉悦の表情を浮かべており、自分としては退学のリスク等あってないような物なのでこの条件を曲げる気は一切なく、万が一にも幸次が勝利したとしても立場があるので原が負けた場合を含めて約束など保護にできると思っている。
もちろん幸次が負けた場合には容赦なくその立場を使って退学させる腹積もりであり、その程度の考えを持っているだろうと言う事は幸次達も理解している。
「伍葉先生。恐らくエラ呼吸共は自分達が負けた場合には約束は守らず、有り得ないが余が負けた場合には強制的に退学させるつもりだろう。肉体的には少々躾てやったが、頭脳的にも躾が必要ではなかろうか?」
自分の行動を読まれても石崎としては痛くも痒くもないので余裕の表情で幸次の話を聞いているのは、権力と言う後ろ盾による確かな実績があるからだ。
「そこで余は提案する。全員が退学届けを記入して伍葉先生に預けるのはどうだろうか?」
本当の両親ではないが自分がいた世界を救ってくれた男の両親、そして自分の守るべき家族と認識している両親をバカにされて相当頭に来ており、少し前に伍葉に諭されて落ち着いた心が大きくざわついてしまい、最早この流れは止められない。
伍葉も幸次が今迄見た事もない様な厳しい表情をしている事から意見を曲げさせる事は不可能だと感じており、せめて全員が同じ条件となるように提案する。
「幸次君……わかりました。では、三人共私がひな形を作りますから、そこに名前を記入してサインしてくださいね」
「こ、幸次君……」
吉田はこのやり取りをオロオロしながら聞いているのだが、テストが始まるまでの僅かな時間でも力になるべく直ぐに気持ちを切り替えて、今まで自分が纏めていたノートを素早く見直し、重要と思われる項目に印を入れ始めた。
対して原は相当余裕があると感じているのか、石崎と伍葉のやり取りを落ち着いて聞いており、慌ててノートを開いている吉田に対しても見下した視線を向ける。
「散々バカにして、今更慌てても無駄だってわからない所が哀れだな。良いですよ、伍葉先生。俺は、俺と石崎はサインしますよ。当然三島もサインするんだよな?」
「エラ呼吸に言われるまでもない!」
暫くざわついていたクラスだが、一時限目は英語の授業で伍葉が受け持つ予定だったのが幸いし、少々授業時間に食い込んだ騒動も収まりを見せた。
その日の昼……
「できましたよ。コレが一般的な退学願いです。簡単な事しか書いていませんので、一応読んでココに自分の名前を自筆で記入してください」
全員に渡された紙には全く同じ事が書かれており、諸事情により退学しますと言う事が書かれている書類に自分の名前を記入して伍葉に渡す。
「はっ、これでもう少しだけ我慢すれば目障りな存在が消えてくれるわけだ」
「石崎の言う通り、過ごしやすくなるのは間違いない!」
勝ち誇っている石崎と原をよそに、漸く落ち着いた幸次は全く二人を相手にせずに書面だけを伍葉に提出するとさっさと吉田と共に教室を後にしたのだが、その姿を負け犬のように逃亡し、吉田に必死で勉強を教えてもらうのだろうと予想している石崎と原の二人はバカにした様な表情で見送る。
「原、お前大丈夫だろうな?」
昼食を食べ始めるのだが、すっかり他人任せながらも余裕の表情を崩さない石崎に対し、問いかけられた原も自信満々だ。
「当然だろう?そもそも、あいつの前回の点数は知っているだろう?あの点数に負ける方が難しいと思うぞ?」
「そりゃそうだ!」
絶対に勝てると疑っていない二人とは別に、食堂に移動した幸次と吉田も同じように昼食を食べるのだが、話の内容はあっさりしたものだ。
「あの……このノート、今回のテスト範囲で出そうな所に印をつけてみたけど、参考になればと思って」
「おぉ、吉田殿。そこまでして頂けるとは有り難い」
ペラペラとノートを高速でめくる幸次は良く纏まっているノートだと感心しているのだが、吉田が重要と言った部分を含めて全ての内容が完全に頭に入っている事が確認できたので、即座にお礼と共にノートを返却する。
「ありがとう、吉田殿。余の知識が間違っていない事が確認できたぞ」
「え?幸次君、全部理解できているの?」
吉田も幸次の前々回のテストの点数は知っている……と言うよりも石崎達が面白おかしくクラス中に公表したので知っており、その幸次が自分よりも遥かに上の知識を持っている事に少しだけ驚くのだが、いつの間にか雰囲気が激変した幸次であればこの程度も難なく理解できたのだろうと納得する。
「びっくりしたけど、幸次君だもんね。フフフ、じゃあこれからも同じ学園で勉強できるね?」
「当然だろう?余は伍葉先生もそうだが、川瀬先生の授業を聞き逃すわけにはいかないからな!」
そこまでの環境ではないが、時には理不尽を飲み込んで家族のために働くと言う難しさ、厳しさを理解できている伍葉や、両親に対して常日頃感謝の気持ちを持っている吉田も同様に石崎に対して呆れみの表情だ。
石崎は、敵認定している三人の表情を見て何故か愉悦の表情を浮かべており、自分としては退学のリスク等あってないような物なのでこの条件を曲げる気は一切なく、万が一にも幸次が勝利したとしても立場があるので原が負けた場合を含めて約束など保護にできると思っている。
もちろん幸次が負けた場合には容赦なくその立場を使って退学させる腹積もりであり、その程度の考えを持っているだろうと言う事は幸次達も理解している。
「伍葉先生。恐らくエラ呼吸共は自分達が負けた場合には約束は守らず、有り得ないが余が負けた場合には強制的に退学させるつもりだろう。肉体的には少々躾てやったが、頭脳的にも躾が必要ではなかろうか?」
自分の行動を読まれても石崎としては痛くも痒くもないので余裕の表情で幸次の話を聞いているのは、権力と言う後ろ盾による確かな実績があるからだ。
「そこで余は提案する。全員が退学届けを記入して伍葉先生に預けるのはどうだろうか?」
本当の両親ではないが自分がいた世界を救ってくれた男の両親、そして自分の守るべき家族と認識している両親をバカにされて相当頭に来ており、少し前に伍葉に諭されて落ち着いた心が大きくざわついてしまい、最早この流れは止められない。
伍葉も幸次が今迄見た事もない様な厳しい表情をしている事から意見を曲げさせる事は不可能だと感じており、せめて全員が同じ条件となるように提案する。
「幸次君……わかりました。では、三人共私がひな形を作りますから、そこに名前を記入してサインしてくださいね」
「こ、幸次君……」
吉田はこのやり取りをオロオロしながら聞いているのだが、テストが始まるまでの僅かな時間でも力になるべく直ぐに気持ちを切り替えて、今まで自分が纏めていたノートを素早く見直し、重要と思われる項目に印を入れ始めた。
対して原は相当余裕があると感じているのか、石崎と伍葉のやり取りを落ち着いて聞いており、慌ててノートを開いている吉田に対しても見下した視線を向ける。
「散々バカにして、今更慌てても無駄だってわからない所が哀れだな。良いですよ、伍葉先生。俺は、俺と石崎はサインしますよ。当然三島もサインするんだよな?」
「エラ呼吸に言われるまでもない!」
暫くざわついていたクラスだが、一時限目は英語の授業で伍葉が受け持つ予定だったのが幸いし、少々授業時間に食い込んだ騒動も収まりを見せた。
その日の昼……
「できましたよ。コレが一般的な退学願いです。簡単な事しか書いていませんので、一応読んでココに自分の名前を自筆で記入してください」
全員に渡された紙には全く同じ事が書かれており、諸事情により退学しますと言う事が書かれている書類に自分の名前を記入して伍葉に渡す。
「はっ、これでもう少しだけ我慢すれば目障りな存在が消えてくれるわけだ」
「石崎の言う通り、過ごしやすくなるのは間違いない!」
勝ち誇っている石崎と原をよそに、漸く落ち着いた幸次は全く二人を相手にせずに書面だけを伍葉に提出するとさっさと吉田と共に教室を後にしたのだが、その姿を負け犬のように逃亡し、吉田に必死で勉強を教えてもらうのだろうと予想している石崎と原の二人はバカにした様な表情で見送る。
「原、お前大丈夫だろうな?」
昼食を食べ始めるのだが、すっかり他人任せながらも余裕の表情を崩さない石崎に対し、問いかけられた原も自信満々だ。
「当然だろう?そもそも、あいつの前回の点数は知っているだろう?あの点数に負ける方が難しいと思うぞ?」
「そりゃそうだ!」
絶対に勝てると疑っていない二人とは別に、食堂に移動した幸次と吉田も同じように昼食を食べるのだが、話の内容はあっさりしたものだ。
「あの……このノート、今回のテスト範囲で出そうな所に印をつけてみたけど、参考になればと思って」
「おぉ、吉田殿。そこまでして頂けるとは有り難い」
ペラペラとノートを高速でめくる幸次は良く纏まっているノートだと感心しているのだが、吉田が重要と言った部分を含めて全ての内容が完全に頭に入っている事が確認できたので、即座にお礼と共にノートを返却する。
「ありがとう、吉田殿。余の知識が間違っていない事が確認できたぞ」
「え?幸次君、全部理解できているの?」
吉田も幸次の前々回のテストの点数は知っている……と言うよりも石崎達が面白おかしくクラス中に公表したので知っており、その幸次が自分よりも遥かに上の知識を持っている事に少しだけ驚くのだが、いつの間にか雰囲気が激変した幸次であればこの程度も難なく理解できたのだろうと納得する。
「びっくりしたけど、幸次君だもんね。フフフ、じゃあこれからも同じ学園で勉強できるね?」
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