文字の大きさ
大
中
小
1 / 9
狡い、狡い、狡い
人気(ひとけ)のない校舎裏は、春なのに、ヒヤリと肌寒かった。
曇天から注がれる心もとない光は、私達の所まで届くはずもない。
薄暗く、湿っぽい、陰気な気が満ちていて、私の心を暗くする。
この日、絵画コンクールで金賞を取った私を取材する為、新聞社の人が学園を訪れていた。
そこには、来年の新入生募集を有利に働かせようとする学園長の思惑があった。
『レイラくん、君は、女性初の閣僚も夢ではないぞ!』
数々の賞を受賞してきた私に、学園長は、過剰な期待を寄せる。
記者からの質問も、
『優秀な女生徒、レイラ・アンフェア像』
を作り上げようとする意図が見えるものばかりだった。
キラキラと輝くメダルを首にかけ、何枚も写真を撮られながら、私は、強い不安を感じていた。
『あぁ、また、責められる』
その不安が正に的中し、今、私は、校舎裏に連れてこられている。
「レイラお姉様ばっかり褒められて狡い!」
目の前で叫んでいる彼女は、私の双子、ライラ。
『狡い』は、彼女の決め台詞だ。
彼女は、双子なのに、いつも私を『お姉様』と呼ぶ。
『妹』ポジションにこだわるのは勝手だけど、同じ日に生まれた私達に、姉も妹もないと思う。
取材が終わるのを待ち構えていたライラは、私の手を掴むと、無理矢理校舎裏へ引っ張ってきた。
「今度こそ、私が受賞する予定だったのに!1回くらい、譲ってくれても良いでしょ!本当に、レイラお姉様は、狡い!狡い!狡い!狡い!」
頭を掻きむしり、半狂乱に騒ぐライラに、私は、耳を塞ぎたくなる。
狡い、狡いと叫ばれても、絵画コンクールで金賞を取ったのは、私の実力。
それに、ライラが出した作品だって、元は、私が描いた物だった。
私の傑作を彼女が奪ったから、仕方なく別のを描いただけ。
言いたい事は山程あるけど、言い返すと更に癇癪が酷くなるから、いつものように黙って俯く。
「その金メダルちょーだいよ!」
突然、ライラは、私の首に掛かったメダルをギューギュー引っ張った。
こうなるのが嫌で、受賞してからも隠してきたのに。
本人の希望を無視して取材を敢行した学園長のせいで、私の努力は元の木阿弥だ。
「ライラ、ダメよ。こんな事をしては、困ってしまうわ……」
なるべくライラを刺激しないように、静かな声で諭す。
本当は、心の中で、『絶対嫌よ』と叫んでいた。
無抵抗で奪われるのは、嫌。
でも、ライラと同じになるのも、嫌。
複雑な気持ちをコントロールできなくて、歯を食いしばって、首にかかる紐を握った。
簡単に奪い取れると思っていたライラは、思わぬ抵抗に驚き、メダルを握りしめて左右に振り始めた。
「レイラは、一杯持ってるでしょ!」
「……いゃ…」
互いに譲らず、揉み合っているうちに……
ブチッ
何かが千切れる音がした。
「「あっ」」
ライラの手には、メダル。
私の首には、紐。
これも、ある意味半分こなのかしら?
「わ、私が悪いんじゃないからね!さっさと渡さないレイラお姉様が悪いんだからね!」
ライラは、ポイッと私の方にメダルを投げると、脱兎の如く逃げ出した。
何度も、何度も、何度も、何度も、幼い頃から繰り返されてきた光景。
壊れた物には途端に興味を無くすその性格は、十六歳になっても変わらない。
曇天から注がれる心もとない光は、私達の所まで届くはずもない。
薄暗く、湿っぽい、陰気な気が満ちていて、私の心を暗くする。
この日、絵画コンクールで金賞を取った私を取材する為、新聞社の人が学園を訪れていた。
そこには、来年の新入生募集を有利に働かせようとする学園長の思惑があった。
『レイラくん、君は、女性初の閣僚も夢ではないぞ!』
数々の賞を受賞してきた私に、学園長は、過剰な期待を寄せる。
記者からの質問も、
『優秀な女生徒、レイラ・アンフェア像』
を作り上げようとする意図が見えるものばかりだった。
キラキラと輝くメダルを首にかけ、何枚も写真を撮られながら、私は、強い不安を感じていた。
『あぁ、また、責められる』
その不安が正に的中し、今、私は、校舎裏に連れてこられている。
「レイラお姉様ばっかり褒められて狡い!」
目の前で叫んでいる彼女は、私の双子、ライラ。
『狡い』は、彼女の決め台詞だ。
彼女は、双子なのに、いつも私を『お姉様』と呼ぶ。
『妹』ポジションにこだわるのは勝手だけど、同じ日に生まれた私達に、姉も妹もないと思う。
取材が終わるのを待ち構えていたライラは、私の手を掴むと、無理矢理校舎裏へ引っ張ってきた。
「今度こそ、私が受賞する予定だったのに!1回くらい、譲ってくれても良いでしょ!本当に、レイラお姉様は、狡い!狡い!狡い!狡い!」
頭を掻きむしり、半狂乱に騒ぐライラに、私は、耳を塞ぎたくなる。
狡い、狡いと叫ばれても、絵画コンクールで金賞を取ったのは、私の実力。
それに、ライラが出した作品だって、元は、私が描いた物だった。
私の傑作を彼女が奪ったから、仕方なく別のを描いただけ。
言いたい事は山程あるけど、言い返すと更に癇癪が酷くなるから、いつものように黙って俯く。
「その金メダルちょーだいよ!」
突然、ライラは、私の首に掛かったメダルをギューギュー引っ張った。
こうなるのが嫌で、受賞してからも隠してきたのに。
本人の希望を無視して取材を敢行した学園長のせいで、私の努力は元の木阿弥だ。
「ライラ、ダメよ。こんな事をしては、困ってしまうわ……」
なるべくライラを刺激しないように、静かな声で諭す。
本当は、心の中で、『絶対嫌よ』と叫んでいた。
無抵抗で奪われるのは、嫌。
でも、ライラと同じになるのも、嫌。
複雑な気持ちをコントロールできなくて、歯を食いしばって、首にかかる紐を握った。
簡単に奪い取れると思っていたライラは、思わぬ抵抗に驚き、メダルを握りしめて左右に振り始めた。
「レイラは、一杯持ってるでしょ!」
「……いゃ…」
互いに譲らず、揉み合っているうちに……
ブチッ
何かが千切れる音がした。
「「あっ」」
ライラの手には、メダル。
私の首には、紐。
これも、ある意味半分こなのかしら?
「わ、私が悪いんじゃないからね!さっさと渡さないレイラお姉様が悪いんだからね!」
ライラは、ポイッと私の方にメダルを投げると、脱兎の如く逃げ出した。
何度も、何度も、何度も、何度も、幼い頃から繰り返されてきた光景。
壊れた物には途端に興味を無くすその性格は、十六歳になっても変わらない。
感想 5
あなたにおすすめの小説
【完結】妹の代わりなんて、もううんざりです
美杉日和。(旧美杉。)私アイラと妹マリンは、いわゆる双子だった。一卵性で同じ格好をしてしまえば、見分けがつかないほど姿かたちも声もすべて似ていた。
しかし病弱な妹は私よりも人に愛される術にたけていた。だから気づけば両親の愛も、周りの人たちの評判もすべて妹が独占してしまう。
それでも私には、自分を理解してくれる唯一の味方である婚約者のリオンがいる。それだけを支えに生きてきた。
しかしある日、彼はこう告げた。「君よりも妹の方を愛してしまったと」
そこから全てが狂い出す。私の婚約者だった彼は、妹の婚約者となった。そして私の大切なものが全てなくなった瞬間、妹はすべて自分の計画通りだと私をあざ笑った。
許せない、どうしても。復讐をしてしまいたいと思った瞬間、妹はあっけなく死んでしまった。どんどんと狂い出すは歯車に私は――
努力はやがて報われる
星屑「努力はひけらかさな方がいい」
そう言って婚約者は妹のものとなった。不出来な姉は追いやられるように嫁に出される。嫁いだ先で新しい家族に認められながら少しずつ自信を取り戻していくマリアに、かつての家族から手紙が来て…。
家族から見捨てられた少女の努力が実を結ぶまでのお話。
私は『選んだ』
ルーシャオフィオレ侯爵家次女セラフィーヌは、いつも姉マルグレーテに『選ばさせられていた』。好きなお菓子も、ペットの犬も、ドレスもアクセサリも先に選ぶよう仕向けられ、そして当然のように姉に取られる。姉はそれを「先にいいものを選んで私に持ってきてくれている」と理解し、フィオレ侯爵も咎めることはない。
『選ばされて』姉に譲るセラフィーヌは、結婚相手までも同じように取られてしまう。姉はバルフォリア公爵家へ嫁ぐのに、セラフィーヌは貴族ですらない資産家のクレイトン卿の元へ嫁がされることに。
セラフィーヌはすっかり諦め、クレイトン卿が継承するという子爵領へ先に向かうよう家を追い出されるが、辿り着いた子爵領はすっかり自由で豊かな土地で——?
美人な姉と『じゃない方』の私
LIN私には美人な姉がいる。優しくて自慢の姉だ。
そんな姉の事は大好きなのに、偶に嫌になってしまう時がある。
みんな姉を好きになる…
どうして私は『じゃない方』って呼ばれるの…?
私なんか、姉には遠く及ばない…
わたくしの婚約者が病弱な幼馴染に縋り付かれた…あれ?
ぼん@ぼおやっじある日私の婚約者に幼馴染から連絡が来ました。
病気にかかって心細いから会いたいというのです。
これって最近聞いた…
私たち死一体どうなってしまうのでしょう…