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「絢子にはナイショだったのにぃ~。静佳の大馬鹿お喋り娘―!」
あいてッ。ボックスティッシュがとんできて肩にぶつかたけど、大したダメージではございません。
投げたそのまま二つ折りになっている修平の頭に、二人はそろって言葉をぶつけた。容赦などあろうはずもない、もちろん。
「やだ修平、なんで石塚? なにナイショって。手紙? なにそれ。またバカなことしてるに決まってるけどナイショとかってめちゃ気に食わないんですけどっ」
「探偵だとかそんな真似はよしなさいと言ったところでムダだって知ってたけどね、本当にヤバいこととそうでないことの区別がつけられなくなったんだったら引き際だよ、修さん。この機会にええかげんにおとなしく暮らしなさい。これ決まりだから、撤回なしだから」
「撤回なして、おまえが勝手に決めたことがなんで俺の決定事項になってんだっ。絢子は絢子で、石塚ってなんですか、石塚って呼び捨てて。茉里絵さんだろ、茉里絵さん」
絢子ちゃんがちらりと見ると、兄様、手のひらを差し出した。お手手つないでの角度ではないし距離も無理、お先にどうぞと言っているのだ。だから絢子ちゃんは一息吸い込み、
「何がマリエさん~よ。何言っちゃってるの、あんたは。悪いけど石塚。それだって上出来、つかっちよつかっち。普段は私はそう呼んでますっ。充矢君、コレ、関連してるの? 探偵が襲われるのって、調査中の事件、だし? とか言ったら、本物の探偵さんたちに失礼だけど」
「話を全部聞かないとなんとも言えないけど。そのイシヅカマリエてのは何者なの」
「私はバイトで知り合ったんだけど、帝北大の四年生よ。ピアノとか弾くんじゃなかったっけ」
「石塚さんは、この町で困ったことになったら修平を頼るように絢子ちゃんに言われたって言ってたけど」
私は戸惑いながら口を挟んだ。絢子ちゃんのお友達だと思ってちゃんとしたお茶をご馳走したのに、もしかして全然様子が違う?
「歪むわね、どうにでも歪められるもんだわ、言葉って。ちょっと修平、私にナイショってどっちが言い出したこと? つかっちじゃないの? あんたでもちっともおかしくないけど」
「まさか絢子ちゃん、お友達じゃないの? つかっち、って」
「私たちは親しみを込めて相当込めて、あの人のことはそう呼んでるの。で、予想できるでしょーけど、友達じゃあないんです。修平と従兄妹だっていうのも、あいつ誰に聞いたんだか。だいたいね、気付くでしょ。私が人に修平を頼れなんて言うと思う? 考えたらわかるでしょ、考えたら」
いやそれは思いましたが……。
「ちょっと修平、返事。あんたがいいようにあしらわれたんじゃないの? って訊いてるんだよ、私は。絢子さんも忙しいようだから心配かけたくないだのなんだの言われて、ほいほい頷いたんでしょ。そいつはオレにも好都合だとか思っちゃって。どうなの? 当たってるんでしょ、当たりね決まりね、これで」
「くっそ、おまえな、見てきたようなことを言うなよ。見てたのか? 聞いてたのか? 忙しいだの言っといて」
「当たってるんだ。で? 何をしにきたって? つかっちは。手紙だっけ。そんなこと言ったよね? 静佳は」
「うん」
こっくり。
「だーかーら頷くなっつの、おまえはっ」
「無駄に静佳を叱らないで、私と話をしなさいってば。それで話はどこまで進んでいるのよ、修平?」
「手紙は鋭意継続捜査中だ」
「現在、滞っている状況ですね」
修平の嫌そうな発言に、佐々木の声がかぶさった。絢子ちゃん、もちろん修平の方を無視である。
「そうなの?」
「いやだって先生、ベッドに釘付けとなりましたし」
「そうじゃなくたって修平は、八方塞がって困ってたとこ。石塚さん、誰宛の手紙なのかとか内容とか、どうして脅迫なんて思いつくのかとか全然明かしてくれないんだよ。ことの重大さがわかんないって言うかね、あれじゃあ」
「重大さは充分に伝わっただろう。茉里絵さんがはらはらと涙をこぼしてお話になられたんだ、そりゃもう彼女にとって人生の一大事となる重大さなのでありましょうよ」
と聞いたら絢子ちゃん、頭は傾げて目は半開き、これ以上ないってくらいのあきれた表情こしらえまして、
「充矢君これ、捜査なんてしないでもここを青空病室にしておいたらそれでいいんじゃない? もっかい襲って来るよ。だって修平が憎たらしいんでしょ? 私ならこんな半端じゃ気が済まない」
「また是非来てくれたら楽で良いね。さっさと片付けちゃいたいし」
「どうして安静にしてなきゃなんない俺が自ら囮なんだよ。それに充矢ッ、真面目に仕事をする気がちょっとでもあるのか? おまえにはっ」
「自分の蒔いた種だからでしょ、それも」
「そうよ。きちんと自分で刈り取らなくちゃ。謎が解けないと腹立つから、ちゃんとメッセージは残してちょうだい。犯人にわかんないように、私たちにはわかりやすく」
「それ、俺死んでるだろう」
「もちろん。私に黙って私の知人と口をきこうとは、なんてことをしてくれるんだか。罰。もし友達だったらどーしてくれるんだか。反省してるのしてないの? 反省しないとつかっちの本性教えてやらんぞ、ほんとにもー」
本性。おっと、口を挟むべきとこだ。
あいてッ。ボックスティッシュがとんできて肩にぶつかたけど、大したダメージではございません。
投げたそのまま二つ折りになっている修平の頭に、二人はそろって言葉をぶつけた。容赦などあろうはずもない、もちろん。
「やだ修平、なんで石塚? なにナイショって。手紙? なにそれ。またバカなことしてるに決まってるけどナイショとかってめちゃ気に食わないんですけどっ」
「探偵だとかそんな真似はよしなさいと言ったところでムダだって知ってたけどね、本当にヤバいこととそうでないことの区別がつけられなくなったんだったら引き際だよ、修さん。この機会にええかげんにおとなしく暮らしなさい。これ決まりだから、撤回なしだから」
「撤回なして、おまえが勝手に決めたことがなんで俺の決定事項になってんだっ。絢子は絢子で、石塚ってなんですか、石塚って呼び捨てて。茉里絵さんだろ、茉里絵さん」
絢子ちゃんがちらりと見ると、兄様、手のひらを差し出した。お手手つないでの角度ではないし距離も無理、お先にどうぞと言っているのだ。だから絢子ちゃんは一息吸い込み、
「何がマリエさん~よ。何言っちゃってるの、あんたは。悪いけど石塚。それだって上出来、つかっちよつかっち。普段は私はそう呼んでますっ。充矢君、コレ、関連してるの? 探偵が襲われるのって、調査中の事件、だし? とか言ったら、本物の探偵さんたちに失礼だけど」
「話を全部聞かないとなんとも言えないけど。そのイシヅカマリエてのは何者なの」
「私はバイトで知り合ったんだけど、帝北大の四年生よ。ピアノとか弾くんじゃなかったっけ」
「石塚さんは、この町で困ったことになったら修平を頼るように絢子ちゃんに言われたって言ってたけど」
私は戸惑いながら口を挟んだ。絢子ちゃんのお友達だと思ってちゃんとしたお茶をご馳走したのに、もしかして全然様子が違う?
「歪むわね、どうにでも歪められるもんだわ、言葉って。ちょっと修平、私にナイショってどっちが言い出したこと? つかっちじゃないの? あんたでもちっともおかしくないけど」
「まさか絢子ちゃん、お友達じゃないの? つかっち、って」
「私たちは親しみを込めて相当込めて、あの人のことはそう呼んでるの。で、予想できるでしょーけど、友達じゃあないんです。修平と従兄妹だっていうのも、あいつ誰に聞いたんだか。だいたいね、気付くでしょ。私が人に修平を頼れなんて言うと思う? 考えたらわかるでしょ、考えたら」
いやそれは思いましたが……。
「ちょっと修平、返事。あんたがいいようにあしらわれたんじゃないの? って訊いてるんだよ、私は。絢子さんも忙しいようだから心配かけたくないだのなんだの言われて、ほいほい頷いたんでしょ。そいつはオレにも好都合だとか思っちゃって。どうなの? 当たってるんでしょ、当たりね決まりね、これで」
「くっそ、おまえな、見てきたようなことを言うなよ。見てたのか? 聞いてたのか? 忙しいだの言っといて」
「当たってるんだ。で? 何をしにきたって? つかっちは。手紙だっけ。そんなこと言ったよね? 静佳は」
「うん」
こっくり。
「だーかーら頷くなっつの、おまえはっ」
「無駄に静佳を叱らないで、私と話をしなさいってば。それで話はどこまで進んでいるのよ、修平?」
「手紙は鋭意継続捜査中だ」
「現在、滞っている状況ですね」
修平の嫌そうな発言に、佐々木の声がかぶさった。絢子ちゃん、もちろん修平の方を無視である。
「そうなの?」
「いやだって先生、ベッドに釘付けとなりましたし」
「そうじゃなくたって修平は、八方塞がって困ってたとこ。石塚さん、誰宛の手紙なのかとか内容とか、どうして脅迫なんて思いつくのかとか全然明かしてくれないんだよ。ことの重大さがわかんないって言うかね、あれじゃあ」
「重大さは充分に伝わっただろう。茉里絵さんがはらはらと涙をこぼしてお話になられたんだ、そりゃもう彼女にとって人生の一大事となる重大さなのでありましょうよ」
と聞いたら絢子ちゃん、頭は傾げて目は半開き、これ以上ないってくらいのあきれた表情こしらえまして、
「充矢君これ、捜査なんてしないでもここを青空病室にしておいたらそれでいいんじゃない? もっかい襲って来るよ。だって修平が憎たらしいんでしょ? 私ならこんな半端じゃ気が済まない」
「また是非来てくれたら楽で良いね。さっさと片付けちゃいたいし」
「どうして安静にしてなきゃなんない俺が自ら囮なんだよ。それに充矢ッ、真面目に仕事をする気がちょっとでもあるのか? おまえにはっ」
「自分の蒔いた種だからでしょ、それも」
「そうよ。きちんと自分で刈り取らなくちゃ。謎が解けないと腹立つから、ちゃんとメッセージは残してちょうだい。犯人にわかんないように、私たちにはわかりやすく」
「それ、俺死んでるだろう」
「もちろん。私に黙って私の知人と口をきこうとは、なんてことをしてくれるんだか。罰。もし友達だったらどーしてくれるんだか。反省してるのしてないの? 反省しないとつかっちの本性教えてやらんぞ、ほんとにもー」
本性。おっと、口を挟むべきとこだ。
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