稲穂ゆれる空の向こうに

塵あくた

文字の大きさ
48 / 64
starting

最高のプラン

しおりを挟む
数日後・・・

涼介からの連絡で彼等は再び落ち合った。


涼介が数日間かけて、懸命に考えてくれた計画はこうだった。

「待たせたな園田君、茜音。

まあ、見てくれよ。
俺の最高のプランはこれだよ」

そういって得意気に見せてくれたのは、手書きで書かれた行程表だった。

どこの駅で何時発、停車時間、到着時間、乗り換え時間まで細かく調べつくされた、立派な時刻表でもあった。

「まず、鉄道会社が夏休みに販売している格安切符を購入する。

これは「夏休み得々切符」っていう、一人一日一枚で、日本国内どこでも、普通快速列車なら乗り降り自由のフリーチケットなんだ。
子供料金はないけど、一枚二千五百円。

この切符をうまく組み合わせれば、この街から関西までなら四千円もあればいける計算だ」

「得々切符?・・・・
そんなの今まで知らなかった」

涼介の意外な知識に蒼音は感心した。

「そうだよ、あるんだよこういう便利な切符がね。

太平洋か日本海まで出て、フェリーで行くっていう手もあるけど、夏休みは予約で一杯みたいだしな。
汽車なら、この夏休み時期に四千円で行けるんだから、断然飛行機よりお得だよ。

ただし、時間はかかるけどね。

そこで、少しでも快適に行くために、夜に出発して東海道本線の夜行列車の指定席を利用するといい。
これだと寝ている間に半分の距離は稼げるからね。

日付が変わる当日分は、普通切符の子供運賃を使った方がお得なんだ。

ちょっとややこしいけどな。

それから、車内で日付が変わった時点に、フリー切符を使うのが裏技なんだ。
後は、乗り換えを何度かこなせば昼までにはおばあちゃんの家には着く計画だよ。

どう?
俺のこのプラン無理があるかな?

やっぱり・・・・」

涼介は少し不安気に確かめた。
小学生がこんな無謀な計画を遂行するなんて、無茶だろうか、と本当は却下されそうで心配なのだった。

「完璧だよ菅沼君!
よくこの数日で、ここまで綿密な計画が立てられたね。
僕感激だよ。
ありがとう!」

涼介の知識の豊富さに心底尊敬して感謝した。

「涼介、ずっと駅前の図書館に入り浸って計画立ててたもんね。
時刻表と、鉄道の本と、図書館のパソコンとにらめっこして」

どうやら琴音は、涼介の努力を知っていたようだ。

「え?
じゃあ菅沼君、宿題もそっちのけで僕のために考えてくれたの?」

蒼音は感極まって涙が出そうになった。

「違うよ!
わ、また泣く気かよ、園田君やめてよそれは!

勘違いするなよ、別に園田君のためじゃないよ。

茜音のためだよ。
茜音見てると、自分の妹見てるようで、切ないんだよ俺。

妹のためなら、兄としてほっとけないだろう?
そういう心境だよ」

『涼介あたちうれちいよ・・・
ほんとのお兄ちゃんみたいでうれちいよ』

茜音の言葉に涼介は照れながら言った。
「園田君だってそうだろう?
茜音を妹のように思うんだろう?

それに、心配無用。
俺様は宿題なんかとっくに終わらせてるよ」

「菅沼君~
君は偉大だーそして僕は幸せだよ・・
こんないい友達を持って」

やっぱり蒼音は泣いてしまった。

「わわわ・・・
泣いたら協力しないぞ!」

「うん、ごめん、わかった。

けど、そうなんだ、茜音は僕の妹みたいな存在だよ。
妹だったらよかったのにって思ってた。

たとえ、戸籍に茜音の名前が載っていないって知った今でも、僕にとってはそんなこと関係ないんだ。
戸籍ってただの紙切れだろう?」

蒼音が戸籍までとって、茜音の生前の糸口を探していたこと告白されて、琴音はしんみりしてしまった。

「そっか・・・

園田君も色々手を尽くして調べてたのね。

だけど、茜音ちゃん、妹さんじゃなかったのね。
あたしもてっきり、幼くして亡くなったお姉さんか妹さんじゃないかって・・・

本当はそう感じていたんだよ。
園田君の小さい頃の顔が茜音ちゃんにそっくりなんだもん。

でもそうじゃなかったんだね。

そうね、でもそれをはっきりさせる為に、おばあちゃんの所に行くんだもんね。
しんみりしてる場合じゃないよね」

「うん、そうだよね。
何事も前向きに考えるつもりだよ。

でもよかった、菅沼君の完璧なプランのおかげで、なんとか僕と茜音だけで行けそうだよ。

ありがとう、さっそく、明日茜音とチケットを買いに駅に行ってみるよ」

蒼音はすっきりした顔で二人にお礼を言った。




しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

椿の国の後宮のはなし

犬噛 クロ
キャラ文芸
架空の国の後宮物語。 若き皇帝と、彼に囚われた娘の話です。 有力政治家の娘・羽村 雪樹(はねむら せつじゅ)は「男子」だと性別を間違われたまま、自国の皇帝・蓮と固い絆で結ばれていた。 しかしとうとう少女であることを気づかれてしまった雪樹は、蓮に乱暴された挙句、後宮に幽閉されてしまう。 幼なじみとして慕っていた青年からの裏切りに、雪樹は混乱し、蓮に憎しみを抱き、そして……? あまり暗くなり過ぎない後宮物語。 雪樹と蓮、ふたりの関係がどう変化していくのか見守っていただければ嬉しいです。 ※2017年完結作品をタイトルとカテゴリを変更+全面改稿しております。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness

碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞> 住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。 看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。 最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。 どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……? 神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――? 定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。 過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。

一億円の花嫁

藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。 父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。 もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。 「きっと、素晴らしい旅になる」 ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが…… 幸か不幸か!? 思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。 ※エブリスタさまにも掲載

俺と結婚してくれ〜若き御曹司の真実の愛

ラヴ KAZU
恋愛
村藤潤一郎 潤一郎は村藤コーポレーションの社長を就任したばかりの二十五歳。 大学卒業後、海外に留学した。 過去の恋愛にトラウマを抱えていた。 そんな時、気になる女性社員と巡り会う。 八神あやか 村藤コーポレーション社員の四十歳。 過去の恋愛にトラウマを抱えて、男性の言葉を信じられない。 恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。 そんな時、バッグを取られ、怪我をして潤一郎のマンションでお世話になる羽目に...... 八神あやかは元恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。そんな矢先あやかの勤める村藤コーポレーション社長村藤潤一郎と巡り会う。ある日あやかはバッグを取られ、怪我をする。あやかを放っておけない潤一郎は自分のマンションへ誘った。あやかは優しい潤一郎に惹かれて行くが、会社が倒産の危機にあり、合併先のお嬢さんと婚約すると知る。潤一郎はあやかへの愛を貫こうとするが、あやかは潤一郎の前から姿を消すのであった。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...