【男装歴10年】異世界で冒険者パーティやってみた【好きな人がいます】

リコピン

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S級試験 ▶34話

#15 やらかした…(ルキ視点)

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頭のどっか片隅で、寝ぼけてんなってのは自覚していた。ただ、セリの声が聞こえた気がしたから返事して、それでもまだ、睡魔に負けて、意識を半分以上手放して。

(…駄目だ。完全に飲み過ぎた。)

酒には強い体質だから、酒を過ごすという経験自体があまりない。忘れていた身体のしんどさとガンガン痛む頭に、悪態が口から零れ落ちる。

(にしても、エルの野郎…)

深酒の原因、旨い酒とエルの煽りに乗せられて、気づけば酩酊状態。昼間に、セリ相手にやらかした失態を洗いざらい吐かされて、エルに爆笑されて─

(ああ、クッソ…)

思い出してきた昨日一日の自分の醜態に頭を抱える。今日はこのままこの場でふて寝を決め込むかと思い始めたところで─

「…ルキ、頭が痛いんですか?」

「…」

「お薬、もらってきましょうか?」

「…」

「ルキ…?」

最初は、「セリだ」と思った。

聞えてきた声に、こんな情けないことになってる自分を心配してくれんだなーとか、ほんっと良い奴だなとか思いながら、目を開けて、セリの方を向いて─

「っ!?」

「…ルキ?」

「っ!?っ!?」

(っヤッベェ、何だコレ!?)

何か、キラキラした綺麗な生き物が、そこに居た。

セリそっくりの金髪に、セリそっくりの碧い目で、こっちを心配そうに覗きこんで─

「ルキ…?」

「っ!?」

声までセリそっくりじゃねぇか─

って思ったところで、気が付いた。

「…セリ?」

「はい?」

「セリか?」

「?…はい。」

「マジか。セリなのか。」

「?」

戸惑うセリをもう一度じっくり眺める。

(…やっぱ、セリ、だよな。)

何故、見間違えたのか。今はもう、どっからどう見てもセリにしか見えないその姿。ただ、さっきの一瞬、見えたのはセリそっくりの─

(って、何考えてんだよ。クソッ、酒か?酒のせいだな。)

浮かんだ考えを酒のせいにして、

「…あー、マジで焦った。」

誤魔化す言葉を口にする。

「マジでさ、一瞬、天使でも現れたのかと思ったわ。」

「天使、ですか…?」

「いや、割と本気で。俺、寝てる間に召されたかもしんねーって、マジでビビった。」

「…それは、困ります。」

「だよなー。」

困ったというより、半分怒ってるみたいなセリの顔に笑って、起き上がる。

「はよ、セリ。早いな。…てか、俺が遅ぇの?」

「あ。いえ…。ごめなさい、まだ、遅くはないです。でも…」

「ん?」

寝起きと酒のせいでボロボロの自分と違い、既に身支度まできっちり済ませているセリ。「朝から爽やかな奴」なんて思いながら眺めてたら、

「あの、さっき、伝達蝶が届いて。」

「!」

「試験の結果が、」

「どうだった!?」

脳が、一気に覚醒した。勢い込んで、セリに尋ねれば、

「…不合格、でした。」

「ああ!クッソ!マジか!?」

返ってきた返事に、思いっきり凹む。

(いけるかと思ったんだけどなぁ…)

滅茶苦茶悔しい。悔しいが、セリはもっと悔しいはずだと思い直して、

「セリ、あんま、落ち込むなよ?まだ、来年受けりゃあいいだけの話で、セリなら次は絶対受かるからな?」

「…はい。」

プレッシャーになるかもしれないと思って口にした励ましに、セリが笑う。

「エルにも言われました。来年があるからって。受けたいなら何回でも受ければいいって。」

「だな。俺も、そう思う。」

「はい。」

思ったよりもセリが落ち込んでいないのは、エルの励ましのおかげか。本人にやる気があるのなら、来年に向けて、何か手伝ってやれることはないだろうかと考え始めて─

ふと、セリの様子がおかしいことに気づく。

「セリ?」

「あの…」

セリの視線が、何かを気にして泳いでいる。

「どうした?」

「えっと、その、ルキは…?」

「ん?」

「…ルキの、合否は。」

「!」

そうだった─

普通に流してしまっていたが、セリの元に伝達蝶が届いたということは、自分の元にも届いているはず。周囲を見回せば、さっきからセリが視線を泳がせていた辺りに、発光する伝達蝶の姿が。

「…居るじゃねぇか。目の前に。」

「はい。…見えてないのかと思いました。」

「…」

(酒のせいだ…)

全て酒のせいにして、目の前の蝶に手を伸ばす。

「…」

一つ、呼吸を置いて、手にした蝶を握り締め、開いた掌─

「…マジか。」

浮かんだメッセージに、呆然とする。

(マジか…)

「ルキ…?」

「ああ、うん。…受かったみてぇ。」

「っ!?おめでとうございます!」

「え?あ、…サンキュ?」

「凄い!凄いです!」

「うぉっ!?」

(ビビったー…)

セリが、抱きついてきた。

「ルキ、凄い!」

「あー、だな。…すげぇな。」

ギュウギュウに、抱きしめられてる。

(…セリでも、こんな感情表現すんだな。)

初めて見せるセリのはしゃぎっぷり。それが、それだけの「異常事態」を伝えてくる。

(あー、そっか、マジなのか。俺、合格したってことは、S級になったのか…)

実感薄かったものが、セリの爆上がりのテンションに釣られて、ジワジワとせり上がってくる。

「…やべぇ、クッソ嬉しいかも。」

「はい!」

沸き上がってきた感情のまま、セリの身体を抱きしめ返す。

「マジかぁ、俺、S級だわ…」

「はい!」

「…てか、セリ、泣いてねぇ?」

「泣いてないです!」

「いや、これ、泣いてんだろ?」

涙声だし、腕の中で肩震わせてんのに。頑なに認めようとしないセリは、顔を上げようとしない。

「…ありがとな。」

「っ!」

なんか、腕の中の震えが大きくなって、嗚咽も大きくなってきた気がするけれど─

「ハハッ!」

「!」

それをさせてんのが自分だと思うと、なんか─

引き寄せられる。

衝動に身を任せて、目の前の金糸に鼻先で触れようとして─

「ルキ―、どうだったー?」

「っ!?」

「…あれ?何、この状況?」

「っ!?っ!?」

「エル…、ルキが、ルキが受かったって、合格したって…」

「あー、そう。それで泣いてるの、セリちゃんは。おめでと、ルキ。…それで?」

「!」

「これはどっち?僕、間に合った?それとも早すぎた?」

「っ!?」

エルの胡乱な眼差し、セリを抱きしめたままだった腕をほどけば、濡れた瞳が真っ直ぐに見上げてくる。

「っ!?っ!?」

「?ルキ…?」

「あー、うん。わかった、大丈夫。ナイトは間に合ったってことだね。」

飲み込まれた感情が何だったのか。痛みを思い出した頭の中、熱に浮かされた思考がグルグルと回り続ける─




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