【男装歴10年】異世界で冒険者パーティやってみた【好きな人がいます】

リコピン

文字の大きさ
133 / 174
【緊張】好きな人の帰省についていったら…/実家ご挨拶/地元の友人/豊漁祭/ ▶17話

#3 初めまして、息子さんとお付き合いさせて頂いている…

しおりを挟む
(どうしよう…)

港から少し離れた丘の上、ルキの実家だという家が見えてきた。ただ、見えてきたのは家だけじゃなくて、その家の玄関前に勢ぞろいしている男女四人の姿も。背が高いルキそっくりの男性二人は、多分、ルキのお父さんとお兄さん。女性二人の内、年配の女性はルキのお母さんだろうけど、もう一人は、お兄さんの奥さん─?

「あー…、多分、近所の奴らが知らせたんだろうな。俺が帰ってきてるって。」

「…」

お出迎えに緊張して足を止めそうになった私に、ルキが苦笑する。

「…そういうとこなんだよ。悪ぃな。」

「いえ、それは全然…」

そう答えながらも、脳内は高速で回転している。近づいて来るご家族とのご対面、第一声。

だけど、ザーラさんとやった事前想定シミュレーションにこのパターンは無かったから─

「…お帰り、ルキ。」

「あー、…ただいま。」

ルキを見て、嬉しそうに手を伸ばしてくる年配の女性。ルキが大人しくその腕に抱きしめられた。一瞬の抱擁のあと、女性の視線がこちらを向いて、

「あなたも…、セリさん?でいいのよね?ようこそ、我が家へ。」

「あ、初めまして、セリです。よろしくお願いします。」

少しぎこちない空気、だけど、笑顔で出迎えてくれた女性に、慌てて頭を下げる。その横で、ルキの声がして、

「で、こっちがシオン、セリの兄貴。…おふくろ、取り敢えず、中はいろうぜ。こんなとこで立ったままってのもねぇだろ。」

「ああ!そう!そうよね!ごめんなさい、ちょっと緊張してて!」

ルキの言葉に、慌てたように動き出したルキのお母さん。玄関扉を開け放ち、手招いてくれる。誘われて、室内に足を踏み入れたところで思い出した。

(ローブ…!)

ザーラさんとのシミュレーションでは、入室する前に外套は脱いで、それから入室、ご挨拶の流れ、だったのに─

「っ!」

慌てて脱いだローブ、お母さんが気を遣って、ローブを受け取ろうと手を伸ばしてくれた。その手に、ローブをお願いしていいものなのかを迷った一瞬─

「っ!?女の子なのっ!?」

「え…?」

「は?」

お母さんの、驚愕の声。男性陣二人と、もう一人の女性の動きが止まる。皆、その顔に驚きの表情を浮かべて─








「ルキ、セリのこと何て伝えてたの?」

「あ?…だから、普通に、セリの名前と、一緒にパーティ組んでる魔導師だってのと、後は結婚する予定だからって…」

改めて、お母さんが用意してくれた夕食を囲みながら行われた自己紹介。男だと思われていたらしい私も、改めて名乗り、性別も訂正したところで、何故、誤解されていたのかという話になって─

「…セリのローブ、認識阻害って、元から女だって分かってりゃ、効果ねぇんだろ?」

「はい…」

知らない相手なら、勝手に「男」だと認識させることは出来ても、幻覚や催眠のように、完全に認知を変えてしまうことは出来ない。そもそも、お母さん達は、私のことを「セリと言う名のルキの結婚相手」と認識していたはずなのに─?

「…だって、ルキ、あんた、手紙には女の子だなんて、一言も、」

「はぁ?書くか?一々、性別とか。…兄貴ん時だって、そんなん、一々、確認とってねぇだろ?」

「それは、そうだけど…」

気まずそうなお母さんに、ルキが容赦ない。お母さんの代わりに、お姉さん─やっぱり、お兄さんの奥さんだった─が、口を開いて、

「昨日、ミランダが遊びにきたのよ。」

「ミランダ?あいつ、もう帰って来てんのか?」

「ええ。昨日帰ってきて、挨拶に来てたんだけど、その時、お母さんとルキの話になって、」

「私が、『ルキがお嫁さん連れて帰ってくるー』ってはしゃいでたのよねぇ…」

ミランダの名前が出てきたことで、何となく、誤解の理由が見えてきた。

だけど、

(…お嫁さん。)

お母さんの言葉に、一人、それどころではなくなってしまって身もだえる─

「…まぁ、それで、お母さんが『相手は、ルキとパーティ組んでるセリって子だ』って言ったら、ミランダが、『セリ君は男だ』って大騒ぎして…」

「はー、マジかよ。…何やってんだよ、アイツ。」

「んー、でも、普段のセリを知ってる人間からしたら、まぁ、そうだよね、そうなるよねって感じじゃない?」

「…や、だとしても、アイツが勝手にシャシャって来んのは違くねぇ?何、勝手に話してんだっつー。」

(確かに、私が、本当に男だったら、大事故…)

息子が結婚相手に連れてくる相手が「男」だと、本人以外の口から対面前日に知らされたご家族、特に、お嫁さんを楽しみにしてくれていたらしいお母さんのショックは如何ばかりのものか。なのに、それを私に気取らせないよう、笑顔で出迎えてくれて─

流石はルキのお母さん。内心、リスペクトしつつ、「デニスの『コレ』発言には、私が男かつルキの結婚相手だという認識があったからかも?」と、ぼんやり思う。

「…でも、まぁ、誤解だったって分かったんだから、良かったじゃない?」

「良くねぇよ…」

お怒り気味のルキを宥めようとするお姉さんの言葉に、納得いかないらしいルキ。

だけど、折角のお食事会なのだからと、皆でルキをまぁまぁと宥めつつ、そこからは楽しいお食事会へと移行していった。

ルキのS級昇格や自分達の生い立ち話を肴に楽しい食事が続き、宴もたけなわ、兄の酒量が気になり始めたところで、お母さんが唐突に口にした言葉に固まる。

「…それにしても、こんな可愛い子がねぇ。…ルキ、あんた、セリちゃんのこと騙してんじゃ、」

「ねぇよ。」

「あー、でも、お母さんが心配するのも分かる。私も、ルキ君が、こんな可愛い子れて帰ってくるとは思わなかったもの。」

(…可愛い。)

正直に言えば、「可愛い」と言われるのは嬉しい。凄く、嬉しい。好きな人や、好きになって欲しい人に言われると、調子に乗ってしまいそうになる。ただ、

(…身の置きどころが。)

生まれ変わってから、自分の容姿が前世よりも「可愛く」なったことは自覚している。己惚れでなく、比較として。それでも、直接、こんなに「可愛い」と褒められることは、今までなかったから─

「セリちゃんは、本当にルキでいいの?ルキって口が悪いでしょう?ケヴィンとユーリはだんまりだし。怖いわよね?」

「いえ、そんなことは…」

話を振られて首を振る。ルキが、隣で不機嫌そうな声を上げた。

「何で、セリ、ビビらせようとしてんだよ?てか、親父と兄貴は関係ねぇだろ。」

「だって、ねぇ?これから家族になるのに、この二人、全然しゃべらないから。顔もこんなだし、怖がらせてるんじゃないかって心配じゃない?」

(顔…)

確かに、お父さんとお兄さんの表情筋は、先ほどからあまり動いていない。だけど、ルキにそっくりな二人の顔は、私的には、結構─

「ああ、大丈夫っすよ!セリは、ケヴィンさんとかユーリさんとか、結構、好きなタイプなんで!な?セリ?」

「!?」

「…は?」

「あら!本当!?」

空気を読まないことに定評のある兄の言葉に、お母さんが嬉しそうな声を上げた。気づけば、かなりの杯を空けていた兄。

(静かだったから、油断してた…)

お母さんの好奇心に満ちたキラキラの目がこちらを見ている。

「セリちゃん、うちの旦那みたいなのがタイプなの?」

「えっと…」

否定も肯定もしづらい質問に口ごもれば、

「セリは、昔っから寡黙無骨タイプ好きだもんな?シェード様も、」

「兄さんっ!?」

まだ、そのネタを引っ張るつもりだったのか。ルキのご家族の前でだけは出されたくない単語を必死に遮る。そんな私の反応がおかしかったのか、お母さんが楽しそうに笑って、

「あらあらあら。そうなの?無骨ってほどカッコいいものじゃないとは思うんだけど。」

「良かったですね。お父さんもユーリも。セリちゃんに嫌われなくて。」

自分の夫を「タイプ」だと言われても笑顔で流してくれるお母さんとお姉さんの度量に感謝しつつ、兄とは一度、きちんと話をする必要があると思った。

「…セリ、聞いてねぇ…」

「…え?」

ビックリした。ここ最近、耳にすることのなかった重低音。

「…こんなんがいいのか?コイツら、マジで喋んねぇぞ?置物だぞ?置物。」

音のする方を向けば、ルキの目が座っていた。

でも、

「…お父さんとお兄さんに、その言い方は、ちょっと…」

「っ!?」

「アハハハハ!ルキ君が!ルキ君が面白いことになってる!」

「本当、ルキ、あんた、そんな顔するのねぇ…」

ルキの発言を咎めることもなく、笑い飛ばしてしまうお姉さんとお母さん。お父さんとお兄さんは、本当にしゃべらない。その雰囲気が何故か心地よくて。

本当にいつか、ここの一員になれる日が来るのかな?と期待して、胸が温かくなる─




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす

遊鷹太
ファンタジー
王国随一の名門ハーランド公爵家の令嬢エリシアは、第一王子の婚約者でありながら、王宮の陰謀により突然追放される。濡れ衣を着せられ、全てを奪われた彼女は極寒の辺境国家ノルディアへと流される。しかしエリシアには秘密があった――前世の記憶と現代日本の経営知識を持つ転生者だったのだ。荒廃した辺境で、彼女は持ち前の戦略眼と人心掌握術で奇跡の復興を成し遂げる。やがて彼女の手腕は王国全土を震撼させ、自らを追放した者たちに復讐の刃を向ける。だが辺境王ルシアンとの運命的な出会いが、彼女の心に新たな感情を芽生えさせていく。これは、理不尽に奪われた女性が、知略と情熱で世界を変える物語――。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

処理中です...