【男装歴10年】異世界で冒険者パーティやってみた【好きな人がいます】

リコピン

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【緊張】好きな人の帰省についていったら…/実家ご挨拶/地元の友人/豊漁祭/ ▶17話

#10 加速する過保護、遠ざかる名誉

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「あ!ルキいた!」

「っ!」

突然の叫び声、お店の入り口から聞こえた声にルキが舌打ちした。店の入り口にはミランダ達の姿、カッシュ達男性陣も含めて、十人ほどの集団が近づいて来る。

敢えてそちらを見ないようにしているらしいルキの表情が険しい。

(…さっきまでの、優しい雰囲気のルキも好きだけど…)

こういう、ちょっと目つき悪いいつものルキの方が安心してしまう。特に、さっきみたいな雰囲気、言葉の後だと。

(…心臓が、まだうるさい。)

ルキの冗談みたいな言葉に、結局、返事は出来ていないまま─

「もう!ルキ!あんた、さっさと一人で行っちゃわないでよね!」

「っせぇ、お前らと行動なんてしてねぇだろ。こっち来んじゃねぇ。」

「はぁあっ!?何、その態度!」

「いいだろ、ルキ?他に場所空いてねぇんだからさ。相席。」

「よくねぇ、散れ。」

「っ!?セリく、セリちゃんも!いいよね?」

ミランダの押し付け気味の「いいよね?」に周囲を見回してから、頷いた。

「…どうぞ。」

席が空いてないのは確かだから、致し方なし。

「おー!ありがとな!えーっと、ルキの彼女さん?」

「あー、ねぇねぇ、ひょっとして、この子、さっきの子?ルキの友達?彼女なの?」

「あっ!?あれじゃない!?ルキが、実家れて帰ってきたって子!」

「うっそ!?この子!?マジで!?全然、そんな雰囲気じゃなくない!?」

どうやら、私がルキと帰ってきたという情報は出回っているらしいけれど、返事をする間というかタイミングが無い。つかめない。

「…お前ら、マジでうっせぇ。お前ら関係ないだろ。セリに絡むな、ウゼェ。帰れ。」

「うっわ!ルキがそんなこと言うとか、笑える!」

女性陣のみでなく、男性陣も参戦してのルキと私いじり。カッシュだけが一人距離を置いてお酒を飲んでいる。

(…というか、全員、既に出来上がってる…?)

店に入る前に飲んできたのか、皆、異様にテンションが高い。

(…傍で聞いてる分にはいいんだけど。)

正直、こちらに絡んでこられるのは対処に困る。

ルキが、男性陣にガッチリ囲い込まれている横で、ミランダが話しかけてきた。

「ごめんねぇ、セリちゃん。うちら、騒がしくて。」

「いえ。」

確かに得意ではないけれど、ルキの友達だから、許容範囲。

「…セリちゃんとルキってさー、いつから付き合ってるの?」

「…付き合い始めて、三ヶ月、です。」

「ふーん、じゃあ、S級試験の時は、付き合ってなかったんだ?」

「はい。」

「あーあ、私、セリちゃんにはすっかり騙されちゃったなー。」

「…」

「男の子だって信じて疑ってなかったからさー。それで、『異性愛者だー』なんて、…ズルくない?」

「ズルい、ですか…?」

あの時は、ムカッと来ていて、それでも「女だ」と告白する気も、嘘をつく気もなかったから、正直に「異性愛者だ」と告げただけ。それを、ズルいとは思わないけれど、

「誤解されるだろうなとは思っていました。」

「…セリちゃんって、結構、イイ性格してるよね。」

「…」

(それは、自覚してる…)

しているけど、それをミランダに知られてもどうということはないので、黙った。

「…そういうの、ちょっとどうかと思うよ?ルキのことだってさー、結局、騙してたわけでしょ、」

「別に、騙されてねぇよ。」

「っ!?」

「…ルキ。」

いきなり、ルキが会話に割り込んできた。聞かれているとは思わなかったので、少し驚く。

「…てか、セリ相手なら、別に騙されてもいんだよ。お前がいちいち俺らのことに口出しすんな。」

「っ!」

顔色を変えてルキを睨むミランダ。ミランダの隣の女性二人が、まぁまぁと二人を宥める。

「ルキ、言い方きついよー。ミランダは二人のこと心配して言ってるだけじゃん?」

「関係ねぇ…」

「もー!二人は直ぐこれなんだからー。」

「あ!ねぇねぇ、セリちゃん?だっけ?二人の馴れ初めとか聞かせてよ。セリちゃんとルキって、どっちから告白したの?」

場の雰囲気を変えるためか、突然振られた話題に、一瞬、考えてしまった。

「…私、です。」

正確に言うと、知らない内に知られてしまっていたから、告白とは違う気もするけれど─

「えー、意外!セリちゃん、こんなに大人しそうなのに!実は結構、積極的?肉食系?策士だったりしてー!?」

「策士…?」

「ルキってさー、今まで全然、彼女つくんなくて、わたし達、本命は絶対、ミランダだと思ってたんだよねー!子どもの頃から一番仲良くてー、何でも言い合ってー、ケンカップル?みたいな?」

「ねぇよ。ちげぇよ。」

ルキが面倒臭そうに否定の相槌を入れている。

「ミランダも、最近、すっごく可愛くなったから、ソロソロくっつくんじゃないかって話してたの。なのに、ルキが突然、セリちゃん連れてくるから、本当、意外だった。」

「ねー?セリちゃんずるいよねー?!横からルキのこと奪ってかないでよー!」

「奪う…」

私の知る限りルキはずっとフリーだったし、所有権を主張する女性は周りにいなかった。だから、有難く─

「…いい加減にしろよ。何で、お前らはセリにちょっかい出そうとすんだよ。」

「えー、だってー…」

「大体、ずるいっての、なに?セリが男だろうと女だろうと好きになったの俺で、セリの告白だって、俺が勝手に盗聴しただけだからな?」

「は?盗聴?」

「え…?」

告白からは距離のある言葉に、周囲が戸惑う。

「みたいなもんだよ、な?」

「…」

な?と、そんな優しい笑顔で言われましても─

「…ルキ、あの、酔って…?」

「酔ってねぇよ。けど、まぁ、そろそろ帰っか。コイツら、しつけーし。」

そう言って立ち上がったルキを、周囲がブーイングで引き留めようとする。その、彼らの向こうに見える光景に、ルキを呼び止めた。

「…あの、ルキ、カッシュさんが。」

「ん?」

テーブルの端、一人、完全に潰れている上半身が見える。

「…あー、しゃーねーなー…」

言って、カッシュに近づいたルキが、声をかけ、揺すってみるけれど、反応が無い。戻って来たルキが、申し訳なさそうにしている。

「セリ、わりぃんだけど、宿帰る前に、カッシュ送ってってもいいか?だいぶ、遠回りになんだけど。」

「分かりま、」

「ちょっと!ルキ、あんた何考えてんの?」

了承しようとした言葉をミランダに遮られた。

「カッシュん家、凄い遠いじゃない!!セリちゃんみたいな女の子にそんな距離歩かせないでよ!」

「セリちゃん、健気ー。可哀想ー。」

(?…なぜに?)

ここで、健気と言われる意味が分からない。

「だいたい、カッシュの家、夢海月ゆめくらげと反対方向でしょ!」

「…っせーな。」

と言いつつ、ルキもやはり申し訳なさそうにしているので、

「ルキ、私、先に宿に帰っておきましょうか?」

「駄目だ。危ねぇだろ?」

「はぁっ!?危ないって、夢海月、すぐそこじゃん!」

「…行こうぜ、セリ。」

「はい。」

ルキの声に促されて立ち上がる。

「ねぇ?じゃあさ、ルキ、一回、カッシュ送ってきなよ。セリちゃんは、私ら見とくし、ね?」

「…置いてくわけねぇだろ。お前らん中にセリ置いてくとか、ぜってぇ、ない。」

「うっわー!なにそれ!?ムカつく―!」

再びの大ブーイング。

ただ、私も置いてかれたくはないので、ルキが却下してくれて良かった。

「あー!もう!分かった分かった!だったら、先にセリちゃんの方、宿まで送ってきなよ!その間、カッシュはあたしらが見とくから!」

ミランダのヤケクソのような叫び。だったら、「あたしら」でカッシュを送っていけばいいと思うのだけれど、全員、酔っ払いなので、それはちょっと怪しいかもしれない。

「とにかく!仲間内のことでセリちゃんに迷惑かけんの、止めな!」

「はぁ?セリを宿に一人にするのが危ねぇつってんだろ?」

「っ!?ちょ、ルキ、おま、冗談だろっ!?夢海月だぞっ!?」

「ねぇよ!何の心配だよ!夢海月じゃ何も起きねぇよ!」

「ありえねー、ルキ、お前、マジでルキか?」

「…セリ、会計してくっから、ちょい待ってて。」

男性陣の突っ込みを総スルーしたルキが、会計に向かおうとして、

「お前ら、俺、セリ周囲の声は常にスキルで拾ってっからな?、セリに余計なこと言うなよ?…マジで潰すから。」

「…」

ちょっと本気モードのルキに場が静まったのを確認して、ルキが店の入り口へと向かう。

「…え?アレ、本気?」

「…セリちゃん、マジで、その、会話聞かれてるの?いつも?この会話とかも?」

「?…ルキは遠耳が使えるので、聞こうと思えば聞こえます。…今は、聞いていると宣言した以上、聞いているんじゃないでしょうか?」

「…」

ちょっと引き気味になってしまったルキの友人達。ルキの名誉のために、フォローを入れておく。

「ただ、『常に』というのは嘘だと思います。止めて欲しいとお願いしてるので。」

「…」

駄目だ。引いた潮が戻ってこない。

「それに、あの、本当に聞かれたくない会話の時は、障壁を張ればいいだけですし…」

「…セリちゃんって…」

「やべぇ、俺、ちょっとルキがこえぇ…」

結局、返ってくることの無かった潮。ルキの名誉は流されていったままだった。




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