【男装歴10年】異世界で冒険者パーティやってみた【好きな人がいます】

リコピン

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【緊張】好きな人の帰省についていったら…/実家ご挨拶/地元の友人/豊漁祭/ ▶17話

#12 立ち入り禁止

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お祭りの翌朝、朝と言うにはかなり遅い時間に起き出して身の回りを整えた。一度、朝早く起きた時に、「もう少し寝てろ」と言ってくれたルキのお言葉に甘えて、怠惰な時間を過ごしている。

ルキ本人は祭りの後片付けの手伝いに出かけてしまっているし、兄は砂像大会の実行委員長としての最後のお仕事、砂浜に乱立していたアートの解体作業に駆り出されていった。

一人、部屋で寛いで、ゴロゴロしたりニヤニヤしたりして、幸せな時間。突然、それを邪魔するノックの音が聞こえた。しかも、窓の方から─

「…」

「よ!」

「…勝手に入らないで下さい。」

「そう言うなって。ここ、危ないし目立つし。取り敢えず、中には入れてよ。」

「…」

「サンキュー!お邪魔しまーす!」

許可も無しに入って来た侵入者、デニスは部屋の中をグルっと見回して、

「良かったー。部屋ん中は流石に何もない?よな?」

「?」

「いや、俺も、普通にドアからお邪魔するつもりだったよ?出来るならそうしたかったんだけどさー、夢海月ゆめくらげのオヤジが一階で門番やってて。『宿泊客以外、二階立ち入り禁止』って言うから。…ルキにい命令おねがいなんだってさ。」

「…」

己惚れでなければ、それは私の身を案じて、ということ?だとしたら、非常に申し訳ないと思う。勿論、デニス以外に対して。

(…ルキとは、一度、きちんと話を。)

昨日の今日だったからという可能性もあるけれど、最近、過保護が加速している気がして仕方ない。

「でさー、わざわざ窓から侵入したくらい大事な話があんだけど、セリ、聞いてくれる?」

「…聞かなくていいなら、聞きたくありません。」

「んー。そうなると、多少、手荒になるかも?」

デニスの視線が部屋の中、ベッドへと向けられる。そのことに、自分でもビックリするくらい腹が立った。

(そこは…)

これ以上、この部屋にデニスといること自体が、苦痛になってきた。

「…分かりました。外で、話を聞きます。下で待っていて下さい。」

「…逃げようとしても、」

「逃げません。」

「…ん、まぁいっか。…変な真似しないでね?見張ってるから。」

言って、窓から身を躍らせるようにして出て行ったデニス。身体能力の高さを窺える動きに、私を逃がさない自信があるのだろうと思う。

(…逃げられないことはない、けど。)

それこそ、手段を選ばなければ何とでもなる。それでも、一番、穏便な方法でいった方がいいだろうから。

(こんなところで、兄さんの道楽が役に立つなんて…)

ローブをまとい、荷物の中から伝達蝶を取り出す。兄がダース単位で購入しようとした時は必至で止めたけれど、意外と便利なのかもしれないと思い始めている。

(…『ルキ』のところへ。)

デニスが部屋に侵入してきたことを伝える内容で、蝶を飛ばした。

「…さて。」

何の用かは知らないけれど、デニスが一番話を聞くであろうルキが来てくれれば心強い。後は、それまでの時間稼ぎが出来れば─

階段を降りたところで、デニスの言う通り、立ち塞がる宿屋の亭主さんに遭遇した。一瞬、こちらを確かめるような視線を向けたものの、宿の外にデニスの姿を認めて─迎えだと思ったのか─何も言わずに通された。

「…お待たせしました。」

「いや、全然、待ってない。こっちこそ、ごめんな?本当は、こんなことしたくないんだけどさー。」

「…」

「取り敢えず、こっち。」

デニスに促されるようにして足を踏み入れたのは、宿の横の細い路地。その奥に、荷物置き場のような空間があった。

「ここなら人も来ないし、ゆっくり話せる。…って言っても、時間、そんな無いか。」

「…」

「…んじゃ、担当直入に聞くんだけど、セリはルキにいのどこが好きなの?てか、ルキ兄のこと好き?」

「…」

腹が立つくらいに答える必要性を感じられない質問に、返事はしなかった。それに、デニスが笑って、

「まぁ、確かに、ルキ兄は文句無しにカッコいいよな。セリも、あーいう悪い男に憧れる?ってやつ?」

「…」

「だったらさ、俺とかどう?」

「は…?」

相手の正気と自分の耳を疑う台詞に、幻聴かと思って思わず確かめてしまった。

「俺さー、こう見えて強いよ?彼女には優しいタイプだから泣かせたりしないし、今まで付き合った子たちにも、イイ彼氏って好評よ?」

「…結構です。」

「そんな心配しないでいいって。これが初めてってわけでもないしさー。」

「は?」

「今までも、姉ちゃんに言われて、『ルキがスキー』って子達、何人かと付き合ったことあるけど、みんな、最終的には『デニスくん大好き』ってなったから!」

「…」

馬鹿だ。デニスも、姉ちゃんことミランダも。あと、歴代のルキスキー女子にはもう少し、根性を見せてほしかった。

(靡いちゃったから、デニスがこんなことに…)

「うちの姉ちゃん、どうしても、ルキ兄じゃないと駄目らしいんだよね。俺も、ルキ兄が本当の兄貴になってくれたら嬉しいし。」

「…」

「てことで、どう?俺、セリのタイプじゃないかもしんないけど、付き合ってみたらそんなこと関係なくなるし。価値観変わるよー?」

(駄目だ…)

どうやら本気らしい己惚れ発言に、デニスへの警戒心が逆に弛んでしまう。それに、

「…タイプで言えば、デニスみたいなタイプは嫌いではありません。」

「え!?マジで!?」

「『姉ちゃん』のために、こんなバカなことを出来るという点においては、好感が持てます。」

「は?え?…そうなの?」

「はい…」

私も、兄の過去話をすることで、ザーラさんの気を引こうとした。やり方に違いはあっても、根本の思いは同じだ。兄姉きょうだいを、自分の好きな人とくっつけようとする─

「…ですが、私はあなたを好きにはなりません。」

「なんで?そんなの分かんないでしょ?実際、付き合ってみれば、」

「あなたの、私への想いが軽いから。心が揺れません。波風一つ立たないです。」

「えー?そんなの、」

「ルキの想いには、心が揺らされます。グラングランです。ルキの、一挙手一投足に振り回されて、ダメになって、幸せになります。」

「…」

「私は、ルキが好きです。ルキの、が好きです。」

「…」

「…」

結構、恥ずかしい告白をしたのに。デニスが、今までにないくらい真剣な顔で黙り込んでしまった。それから、大きく、ため息をついて、

「…あーあ。だってさ、姉ちゃん。」

その一言で、路地の向こうから現れた人影。

(…お手本のような、黒幕登場。)

しかも、現れた黒幕には、敗走の予定も和解の意志も無いらしい。ミランダが、こちらを睨んで立っていた。




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