【男装歴10年】異世界で冒険者パーティやってみた【好きな人がいます】

リコピン

文字の大きさ
150 / 174
【魔王333号】マハリ地方で停滞 ”事前の対策を” ▶️6話

#3 実は陰で、ってちょっとカッコいい…

しおりを挟む
王都到着から三日後、魔王討伐部隊が出征を開始した。勇者を筆頭に冒険者を中心とする部隊のほかに、王宮からは騎士、神殿からは聖騎士が少数精鋭で派兵されている。

ただ、やはり、モンスターとの戦いの中心になるのは、冒険者なわけで─

「勇者くん!フラッシュバード!また来るよ!あ!ほら!そこ!」

「っ!?」

「だめだめ!こう!フラッシュバードは、こう、パリィしてからの…、ゼロ距離射撃!」

「そ、そんな、無理です!」

「…無理じゃねぇって。やれるやれる。」

「パリィ大事だからね!パリィ!」

兄とルキが、楽しそうに勇者をサポート?している様子を、荷馬車の上から眺める。

「…シオン、張り切ってるねぇ。」

「はい。…支援職でなく、戦闘職で参加するのを楽しみにしていましたから。」

普段なら戦闘には参加しない兄が、魔法銃を手に生き生きと飛び回っている。代わりに、私がエルや他の支援職メンバーの警護に回ることになったのだけれど、

(…これは、これで。)

半径一メートルでルキを誤射する危険もなくなったし、何より、楽しそうなルキをゆっくり眺めることが出来る。流石に魔王戦ともなると、そんなことは言ってられないだろうけど、移動中くらいは─

「勇者くん!パリィ!」

「無理ですっ!」

「…」

もう兄はパリィ言いたいだけなんじゃないかと思う。

兄の叫びと勇者の悲鳴にげんなりし始めていたところに、荷馬車に近づいてくる馬が見えた。乗っているのは、白い騎士服から聖騎士だと分かる。

「…エルドウィン、久しいな。」

「…どうも。」

エルをエルドウィンと呼んだその人は、どうやらエルの知り合いらしい。ただ、友達というにはエルの態度が冷たすぎる。

(…元、同僚?)

エルのそんな態度を気にしていない様子の聖騎士さんが、戦闘中の集団をあごで指した。

「ライナートと一緒なのか?あいつ、パーティメンバーに抜けられたと聞いていたが、お前が一緒なら、まあ、心配することは無かったかもしれんな。」

「…別に、ライナートと組んでるわけじゃないよ。僕の仲間はこっちの子。」

エルがこちらを指したので、聖騎士さんの視線がこちらを向く。それに、軽く会釈で返す。

「…なんだ、違ったか。そうすると、あいつは今、仲間無しで戦っているということになるのか?」

「そうだけど。別に心配するほどのことじゃないでしょ?…ライナートなら、直ぐにまたメンバー集まるだろうし…」

「まぁ、確かに。あいつの弱っている女性を惹きつける能力は凄まじいからな。」

「…パーティメンバーがそんなのばっかりっていうのも、どうかと思うけどね?」

何とも微妙な会話を続ける二人。聖騎士さんが、エルの方をじっと見て、

「心配ならば、エル、お前がライナートと組むのはどうだ?」

「えー、僕、もう、パーティ入ってるんだってば。」

「ふん。薄情なことを言うな。お前とライナートの仲だろう?」

「なに、それ。…別に、僕とライナートの仲って言ってもさー…」

「なんだ、本当に薄情なやつだな。ライナートは、お前のために聖騎士を辞めたというのに。」

「…は?」

エルが、困惑の表情を浮かべている。それに、聖騎士さんが肩をすくめて見せ、

「知らなかったのか?…まぁ、ライナートが自ら口にするはずもないか。」

「…ちょっと、ソレ、どういうこと?ちゃんと説明して。」

「お前が聖騎士を抜けた後、お前が所属していた第三の連中が、お前を侮辱する場面があったんだ。それを、たまたま聞いていたライナートが激怒してな。」

「…僕が抜けた後って…」

「まぁ、その場にお前がいるわけでなし、我慢すればいいものを、第三の連中何人かを病院送りにして、責任を取る形で聖騎士を辞めた。…上の連中は引き留めたようだが、本人が固辞してな。」

「噓でしょ…、ライナートが暴力沙汰…?」

「普段のあいつならあり得んことだが、…まあ、それだけ、お前に対する侮辱が酷かったということだ。…私でも、腹に据えかねるものがあった。」

「…」

聖騎士さんの話に呆然自失状態になったエル。聖騎士さんはその様子を少しだけ見守った後、「ではな」と小さく声をかけて去っていった。

「…そんな、僕、そんな話、全然…。だって、ライナート、そんなこと一度も…」

困惑する様子のエルに、思ったことを告げてみる。

「…エルのことが、すごく大切なんですね。」

「…」

エルに伝えた「冒険者になった動機」、それが全て「嘘」なのかは分からない。もしかして、本当にそういう動機もあったのかもしれない。ただ、辞める直接のきっかけがエルなのは間違いないだろうし、ライナートさんはそれを口にしなかった。

(…そんなん、惚れてまうやつ。)

少しだけ、…正直に言うと、凄く、ライナートさんを見直した。

(上から目線だけど…)

これなら、エルのことを任せてもいいかなって思えるくらいには見る目が変わって、今までの自分の所業を深く反省することにした。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす

遊鷹太
ファンタジー
王国随一の名門ハーランド公爵家の令嬢エリシアは、第一王子の婚約者でありながら、王宮の陰謀により突然追放される。濡れ衣を着せられ、全てを奪われた彼女は極寒の辺境国家ノルディアへと流される。しかしエリシアには秘密があった――前世の記憶と現代日本の経営知識を持つ転生者だったのだ。荒廃した辺境で、彼女は持ち前の戦略眼と人心掌握術で奇跡の復興を成し遂げる。やがて彼女の手腕は王国全土を震撼させ、自らを追放した者たちに復讐の刃を向ける。だが辺境王ルシアンとの運命的な出会いが、彼女の心に新たな感情を芽生えさせていく。これは、理不尽に奪われた女性が、知略と情熱で世界を変える物語――。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

処理中です...