【男装歴10年】異世界で冒険者パーティやってみた【好きな人がいます】

リコピン

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【潜入】衝撃の舞台裏、みんなの憧れの学園でまさかの… ▶15話

#10 その感情を、全く理解できないわけではないから…

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杞憂は杞憂のままに終わった─

「えっ?フローラ、捕まったんですか…?」

急転直下、エルの作戦がバッチリはまったということなんだろうけど、昨日の今日で依頼が完了してしまうとは。

朝、女子寮から出たところをエルに掴まって教えられた事実に、暫し呆然となる。

「…えっと、ルキが犯行現場を押さえた、っていうことですよね?…あの、相手は?」

「リーンハルト。」

「えっ…?」

「ビックリだよね。実の兄にまで『セイレーンの歌声』使おうだなんて。…しかも、公爵邸内での犯行だからね。公爵も、流石に息子がそんな目にあっちゃったらどうしようもなかったらしくて、フローラの引き渡しにも素直に応じたらしいよ。」

「…フローラは、リーンハルトが好き、だったんですか?その、男性として…?」

「うーん?どうだろう?今のところ、『兄が離れていくのが許せなかった』っていう主旨のことはしゃべってるんだけどね。それが、どういう感情から来るものなのかまではねぇ…」

「そう、なんですね…」

少し後味が悪いというか、モヤっとする。フローラがターゲットにしたのが、多分、彼女を誰よりも大切に思っている相手、しかも、兄だということに。彼女は兄が離れていくことを案じていたようだけど、リーンハルトは私を救護室に送り届けただけ。しかも、私を救護室に送った後は、フローラの元に戻ったはずなのだ。

それでも、たったそれだけのことでも許せなかったというのなら─

「…兄離れ、出来てない。」

「うん。セリちゃんにも難しい課題だよね?」

「…」

ここで頷けるほど素直ではないけれど。少しだけ、考えてしまった。

「まぁ、後の処理に関しては、この国の人間の仕事だからね。僕らの仕事はおしまい☆てことだから、セリちゃん、帰る準備してきて。ルキとは、学園の外で待ち合わせしてるから。」

「はい…」

言われて、今出てきたばかりの寮へと逆戻りした。急いで荷造りを済ませ、寮を後にし、エルと二人で正門を目指す。正門の向こうにルキの赤い髪が見えてきた。ルキもこちらに気が付いたらしく、振り返り、片手を上げて合図を送ってくれる。それに応えようとしたところで、背後から駆け抜けていく人影に追い越された。

「え…?」

「レナータ・ヤンセンじゃない。…まだ、ルキに用なのかな?」

追い抜いていった影の正体に、胸がざわつく。ここ最近、私よりもずっとルキの側にいた存在に、嫉妬が込み上げてくる。追いかけるようにしてルキの元へと駆け寄れば、聞こえてきたレナータの叫び声─

「ルキ先生!お願い!私をさらって!」

「ねぇよ。…さらって、どうすりゃいんだよ?身代金?」

「ふざけないで!」

「いや、ふざけんなっても、他に使い道ねぇだろ?」

「っ!?」

「まぁ、金は持ってそうだもんな、あのおっさん。…外交問題になっからやんねぇけど。」

なかなかゲスな台詞を吐いてるルキが、悪役面で笑っている。カッコいい。

「…ルキ、じゃれてないで帰るよ。」

「いや、俺は別に何もしてねぇよ。…よ、セリ。お疲れさん。」

「ルキも、お疲れ様…」

いつものルキだ。笑って差し伸べてくれた手を取ろうとしとしたところで、横から叫び声が割り込んできた。

「どういうこと!?何よ、その女!?なんで、ルキ先生と!」

「あー、その先生っての、もうやめろよ。もう、お前の先生じゃねぇしな。柄じゃねぇってか、気色悪ぃ。」

「っ!先生!婚約者がいるって言ってたじゃない!なんで、こんな女連れて行くの!こんな女なんかより、私の方が!」

「お前の方が何?何もねぇよな?」

「っ!?」

そのまま、こちらの手を取り歩き出そうとしたルキに、レナータが必死にしがみつく。

「待って、先生!私、私、このままじゃ学園止めさせられちゃうの!修道院に入れられちゃうの!」

「ふーん。」

「お願い!助けて!先生!」

身勝手なレナータの願いに腹が立った。一言言ってやろうと思ったけれど、それよりも先に聞こえたのは、エルの声。昨日、私に向けられたのと同じくらい、冷たい声で─

「君さぁ、何で自分がそんなことになったか、理解してる?」

「それは!」

「君がルキの仕事を妨害した、その結果の処分でしょ?助けを求める相手、間違ってない?」

「そんな!私は先生の邪魔なんて!?」

「したでしょ。…君、昨日の放課後、友人二人に、ルキの潜入目的しゃべっちゃったよね?」

「っ!?」

(え…?)

驚いて、レナータを確かめる。その顔にある焦りをみつけて、エルの言葉の真実を知った。

(…本当に、バラしたんだ。)

怒り半分、呆れ半分でレナータの横顔を眺める。

「…捜査が昨日の内に終了したからいいようなものの、下手したら、ルキ、本当に依頼に失敗してたからね?…S級冒険者が依頼に失敗するってどういうことだか分かる?」

「っ!でも、依頼は上手くいったんでしょ!?だったら!」

「それは結果論。君は君の行動の責任を取らないといけないの。」

「っ!ルキ先生!お願い!許して!」

「無理だな。」

「っ!」

ルキも、やっぱり、腹に据えかねるものがあったんだろう。レナータの謝罪を一言で切って捨てた。

「俺が依頼に失敗するってのは、俺だけの話じゃねぇからな。ギルドやパーティーまで信用失うことになって、すげぇ迷惑かけることになる。おまけに、今回は一緒に仕事してたエルやセリを危険にさらす可能性だってあったんだ。…んなもん、ごめんで済まされたらたまんねぇだろ?」

「…そんな、先生、私、そんなつもりじゃ…」

「まぁ、お前がどんなつもりだったかはしんねぇけど、人の忠告は聞けってのと、そんなお前に情報垂れ流した父親の元から離れて修道院行くのは悪くないんじゃねぇの?ってのが、俺からの最後の教訓な。覚えとけよ。」

「…」

力を失ったレナータの手を、ルキが振り払った。そのまま、力なく佇んだままのレナータ。呆然自失の彼女を置いて、エルとルキが歩き出した。私も、ルキに手を引かれて歩き出す。

帰ろう─

安い同情ならあるけれど、心の底から「可哀想」だとは思えない私は、レナータにかける言葉を持たない。だから、少しだけ後味の悪いこの思いを引きずったまま、兄とザーラさんの待つ場所へ帰る。何から話せばいいのか分からないくらいたくさんのお土産話を持って─




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