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【完結】私達の冒険はまだまだ…▶️6話
#2 自分の知らないセリを知る場所(ルキ視点)
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「師匠、ただいま帰りました。」
「…久しいな。」
「はい。お久しぶりです。」
先ぶれ無しの訪問にも関わらず、セリの師、ヴァイズ・ミレンは泰然とした様子でこちらを出迎えた。その瞳が、じっと、セリに注がれている。
(…だから、来たくなかったんだよ…)
シオンに向けるのとは明らかに違う眼差し、慈しむような瞳に、セリが笑って応える。
「師匠、今日は師匠に大事なお話があって帰ってまいりました。…えーっと、中に入っても?」
「…」
招き入れられた室内、「魔導師」と聞いて思い浮かぶ通りの部屋の有り様に、セリがため息をついた。
「…師匠、部屋の片づけは小まめにってお願いしているのに。」
「…問題ない。」
「いつかまた、本の下敷きになってしまいますよ。」
「問題ない。」
「確かに、師匠は問題ないかもしれませんけど、本の方が傷んでしまいます。」
「…」
言いながら、室内に置かれた四人掛けのテーブルの周りを片付けていくセリ。あっという間に、周囲が片付いたところで、どこからか、椅子をもう一脚持ち出し、己の師をそこに座らせようとする。
「師匠、大切なお話なので、ここ、座って下さい。」
「ふむ。…ならば、茶の一つでも、」
「私がします。」
問答無用で座らされた男。シオンに促されて、同じテーブルについた。
「あー、えっと、お久しぶりです、師匠。」
「ああ。」
「えーっと、それで、一応、まぁ、初めましてになんのかな?こっちが、同じパーティ組んでるルキで、こっちが同じギルドに所属してるザーラさん。」
シオンの紹介に頭を下げる。軽く自己紹介を済ませたところで、茶を運んで来たセリが隣の席に座った。
「えー、じゃあ、改めて。大事な話ってのは、俺とセリ、結婚することになったからって報告で、セリの婚約者のルキと、俺の婚約者のザーラ、です。…まぁ、師匠には一応、話しとこうかなぁって…」
「婚姻か…」
「…」
言ったきり、その先に許可も寿ぎもなく、男はただ頷いている。それに、シオンが居心地悪そうにして、
「あー、うん、じゃあ、一応、それで大事な話ってのは終わり、なんだけどさ、あー、後は魔法銃の方の報告と、まぁ、一応、コアルームの封印の呪、俺なりに考えてきたんで見てもらいたいっていうか…」
「いいだろう。…研究室の方で、」
「待って下さい、師匠。」
立ち上がりかけたヴァイズ・ミレンをセリが制す。
「兄さんも、ちょっと待って。研究室、こもったら、二人とも出てこなくなるでしょう?」
「え?…まぁ?そうかも?」
「…その前に、ちゃんと、もうちょっと、お話して。ザーラさんのこととか。家買う話とか。」
「あー、なるほど?」
あくまで「結婚の挨拶」に拘っているらしいセリの言葉に、シオンが曖昧に頷いた。
「銃や呪の話は後にして。暫く、ここで話してて。」
「話してて、って、セリは?」
「私はちょっと、研究室を片付けてくる。」
「あー、そうな。…部屋の惨状、目に見えるよな。」
周囲を見回したシオンの目が遠くなるが、部屋の持ち主であるはずのヴァイズ・ミレンは無表情を保ったまま。
「じゃあ、師匠。少し、研究室片づけて来ますけど、私で対処できないものってありますか?」
「…今は、特にない。」
「分かりました。」
こちらにも小さく「ちょっと、行ってきます」と断りを入れたセリが席を立つ。そのまま、部屋の奥、地下へと続く階段を下りて行った。その姿を見送って、シオンが嘆息する。
「ごめん、ルキ。セリ、多分、落ち着かないんだと思う。…帰省したら、実家がゴミ屋敷だったってやつでさ。」
「ああ…」
ゴミ屋敷、までは言わないが、普段のセリとシオンの部屋を見れば、まぁ、確かに、セリの許容範囲は超えているだろう部屋の様相。ただ、自然とこの家の家事を担おうとするセリの姿に、焦りのようなものは感じてしまう。
「まぁ、ここ居た頃はセリが掃除とか担当してたからなぁ…。久しぶりに実家帰って来て、親孝行してるみたいなもんだから、許してやってよ。」
「…」
「まぁ、親って言うには、歳がアレだけど。」
シオンの視線が、ヴァイズ・ミレンに向けられるが、当の本人は我関せずで、セリの淹れたお茶を飲んでいる。
「…セリちゃんって、子どもの頃から家事を担当していたの?」
「ん?ああ、まぁ、力仕事以外は大体。…前世の記憶あって、大概のことはできちゃってたから。」
「知識はあっても、子どもの身体じゃ大変だったんじゃない?」
「…まぁ、確かに?」
心配げな様子のザーラの言葉を、シオンが肯定する。それに、ザーラが一つ、ため息をついて、
「…小さい頃からしっかりしてたのね、セリちゃん。…会ってみたかったわ。」
思わず、といった感じで溢されたザーラの声に、頷いた。
(会って、側に居たかった…)
無理な願いと分かっていても、せめて、一目でも見てみたかった。この場所で自分の知らない時間を過ごしたセリの姿を─
「…久しいな。」
「はい。お久しぶりです。」
先ぶれ無しの訪問にも関わらず、セリの師、ヴァイズ・ミレンは泰然とした様子でこちらを出迎えた。その瞳が、じっと、セリに注がれている。
(…だから、来たくなかったんだよ…)
シオンに向けるのとは明らかに違う眼差し、慈しむような瞳に、セリが笑って応える。
「師匠、今日は師匠に大事なお話があって帰ってまいりました。…えーっと、中に入っても?」
「…」
招き入れられた室内、「魔導師」と聞いて思い浮かぶ通りの部屋の有り様に、セリがため息をついた。
「…師匠、部屋の片づけは小まめにってお願いしているのに。」
「…問題ない。」
「いつかまた、本の下敷きになってしまいますよ。」
「問題ない。」
「確かに、師匠は問題ないかもしれませんけど、本の方が傷んでしまいます。」
「…」
言いながら、室内に置かれた四人掛けのテーブルの周りを片付けていくセリ。あっという間に、周囲が片付いたところで、どこからか、椅子をもう一脚持ち出し、己の師をそこに座らせようとする。
「師匠、大切なお話なので、ここ、座って下さい。」
「ふむ。…ならば、茶の一つでも、」
「私がします。」
問答無用で座らされた男。シオンに促されて、同じテーブルについた。
「あー、えっと、お久しぶりです、師匠。」
「ああ。」
「えーっと、それで、一応、まぁ、初めましてになんのかな?こっちが、同じパーティ組んでるルキで、こっちが同じギルドに所属してるザーラさん。」
シオンの紹介に頭を下げる。軽く自己紹介を済ませたところで、茶を運んで来たセリが隣の席に座った。
「えー、じゃあ、改めて。大事な話ってのは、俺とセリ、結婚することになったからって報告で、セリの婚約者のルキと、俺の婚約者のザーラ、です。…まぁ、師匠には一応、話しとこうかなぁって…」
「婚姻か…」
「…」
言ったきり、その先に許可も寿ぎもなく、男はただ頷いている。それに、シオンが居心地悪そうにして、
「あー、うん、じゃあ、一応、それで大事な話ってのは終わり、なんだけどさ、あー、後は魔法銃の方の報告と、まぁ、一応、コアルームの封印の呪、俺なりに考えてきたんで見てもらいたいっていうか…」
「いいだろう。…研究室の方で、」
「待って下さい、師匠。」
立ち上がりかけたヴァイズ・ミレンをセリが制す。
「兄さんも、ちょっと待って。研究室、こもったら、二人とも出てこなくなるでしょう?」
「え?…まぁ?そうかも?」
「…その前に、ちゃんと、もうちょっと、お話して。ザーラさんのこととか。家買う話とか。」
「あー、なるほど?」
あくまで「結婚の挨拶」に拘っているらしいセリの言葉に、シオンが曖昧に頷いた。
「銃や呪の話は後にして。暫く、ここで話してて。」
「話してて、って、セリは?」
「私はちょっと、研究室を片付けてくる。」
「あー、そうな。…部屋の惨状、目に見えるよな。」
周囲を見回したシオンの目が遠くなるが、部屋の持ち主であるはずのヴァイズ・ミレンは無表情を保ったまま。
「じゃあ、師匠。少し、研究室片づけて来ますけど、私で対処できないものってありますか?」
「…今は、特にない。」
「分かりました。」
こちらにも小さく「ちょっと、行ってきます」と断りを入れたセリが席を立つ。そのまま、部屋の奥、地下へと続く階段を下りて行った。その姿を見送って、シオンが嘆息する。
「ごめん、ルキ。セリ、多分、落ち着かないんだと思う。…帰省したら、実家がゴミ屋敷だったってやつでさ。」
「ああ…」
ゴミ屋敷、までは言わないが、普段のセリとシオンの部屋を見れば、まぁ、確かに、セリの許容範囲は超えているだろう部屋の様相。ただ、自然とこの家の家事を担おうとするセリの姿に、焦りのようなものは感じてしまう。
「まぁ、ここ居た頃はセリが掃除とか担当してたからなぁ…。久しぶりに実家帰って来て、親孝行してるみたいなもんだから、許してやってよ。」
「…」
「まぁ、親って言うには、歳がアレだけど。」
シオンの視線が、ヴァイズ・ミレンに向けられるが、当の本人は我関せずで、セリの淹れたお茶を飲んでいる。
「…セリちゃんって、子どもの頃から家事を担当していたの?」
「ん?ああ、まぁ、力仕事以外は大体。…前世の記憶あって、大概のことはできちゃってたから。」
「知識はあっても、子どもの身体じゃ大変だったんじゃない?」
「…まぁ、確かに?」
心配げな様子のザーラの言葉を、シオンが肯定する。それに、ザーラが一つ、ため息をついて、
「…小さい頃からしっかりしてたのね、セリちゃん。…会ってみたかったわ。」
思わず、といった感じで溢されたザーラの声に、頷いた。
(会って、側に居たかった…)
無理な願いと分かっていても、せめて、一目でも見てみたかった。この場所で自分の知らない時間を過ごしたセリの姿を─
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