読心令嬢が地の底で吐露する真実

リコピン

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第三章

3-2

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「……聞きたいことも言いたいことも色々あるでしょうけど」

レジーナはそう前置きして、リオネル達へ最寄りの安全地帯への移動を提案した。このままここに突っ立っていては、またいつ魔物に襲われるか分からない。クロードなら道案内が出来るというレジーナの言葉に、リオネル達は暫し迷う様子を見せる。けれど、結局――他に道が無いからだろう――、フリッツが同意を示したことで、全員での移動が決まった。

レジーナは、人のことをまた勝手に抱き上げようとするクロードを制して、彼の後ろを歩く。ドレスの裾はボロボロの上、長時間歩くには向いていない靴のせいで、足先は既に痛みを訴えていた。

(……いっそのこと、ドレスは切ってしまおうかしら)

そうすれば、多少は歩き安くなるだろう。どこかで靴だけでも調達できればいいが。これからの移動についてレジーナが考えを巡らせる内、不意にクロードが立ち止まった。

「レジーナ……」

呼ばれた名に顔を上げる。クロードの視線の先には、大きな木の扉があった。

「ここ……?」

レジーナの問いに頷いて答えたクロードが、そのまま扉を押し開く 。軋んだ音を立てて開いた扉の向こう、見えたのは土壁の部屋だった。

「……思ったより、綺麗なのね」

「魔物避けが施してある……」

クロードに続いて足を踏み入れた部屋の中、無造作に置かれた家具には砂埃が溜まっている。ただ、クロードの言葉通り、魔物に荒らされた形跡はなく、武器や探索道具、食器など、人が生活していたらしい痕跡がそのまま残されていた。

「この部屋か?」

レジーナ達の後に続いて部屋に入って来たリオネル達に、レジーナは場所を譲る。

「ここは、宿だったのか?」

今いる部屋に続くようにしていくつかの扉が並ぶのを見て、アロイスがそう疑問を口にした。

「前線の、活動拠点だった……」

クロードが返した言葉に、レジーナは自分が見たヴィジョンの断片を思い出した。ここは、かつて騎士団が利用していた宿泊施設の一つで、大部屋に繋がるいくつかの扉は就寝用の小部屋に繋がっているらしい。

クロードがノソリと動き出す。

「念のため、香を焚いておく」

「わかったわ」

レジーナは、魔物避けの香を取るため奥の部屋に向かうクロードを見送った。彼の姿が見えなくなったところで、リオネルが口を開く。

「……レジーナ」

呼ばれた名に、レジーナはリオネルに視線を向けた。彼らは、レジーナから離れた距離、部屋のこちらとあちらで相対するように立っている。

「なにかしら?」

「……あいつは、何者だ?」

リオネルの視線は、クロードの消えた扉へと向いていた。レジーナは一瞬躊躇ってから、彼の名を口にする。

「クロードよ」

そう端的に告げるが、その名に反応を示す者はいない。ここに居る誰もが、「英雄クロード」と彼の名を結び付けて考えることはなかった。

(それはまぁ、そうでしょうね……)

絵姿でしか彼を知らない人間が今の彼の姿から「英雄クロード」を想像することは難しい。それに、私たちの知る「英雄クロード」だったら、今こんな場所に居るはずがないのだ。彼は今――

「何者なんだ?」

思考を断ち切るようにそう尋ねられ、レジーナはリオネルに首を振った。

「私も、彼とは先程ここで出会ったばかりよ」

「……あいつはこんなところで何をしている?いや、そもそも、ここは何処なんだ?」

矢継ぎ早に投げかけられる質問に、レジーナは黙ってリオネルを見つめる。向けられる五対の瞳。中には、明らかな敵意をもってレジーナを睨むものもある。それに小さな嘆息で答えて、レジーナは口を開いた。

「ここは……」

不意に漂ってきた香り。初めての香りだが、レジーナはそれが魔物除けの香だと知っていた。クロードが、香炉を手に戻って来たのだろう。

「……ここは、カシビアダンジョンの三十階層よ」




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