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後編 タワー編
1-1. タワーと街と再会
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1-1.
『ガイラスタワー』
かつて、地上で最も栄え、一夜にして滅んだとされる都市『ガイラス』。その中心に位置し、一説には「神々の国へ昇る」ために造られたとされるタワー。人間の傲慢さの象徴、その傲慢に対する神々の怒りの残滓として語られる塔には、今なお多くの者が惹き付けられ、高みへと昇るために集まってくる。
この世界で唯一、未踏破階層を残す最難易度ダンジョンとして―
「ブレン、大変。お金がない」
「…」
王都からここ―滅亡後に再建された『ガイラス』の街―まで、なるべくお金を使わずに来たのだけれど。さすがに三ヶ月もかかった移動に―その間、まともにダンジョンにも潜れていないから―とうとう、手持ちのお金が尽きた。
街へ入るために必要な『滞在証』発行に使った2万オーロが、本当になけなしの最後のお金で。この金欠は間違いなく、『賢者の石』で全財産を使い果たしてしまった私のせい。
「ごめん、ブレン。とりあえず、タワーで何か狩ってくる。食事は何とかなっても、今夜の宿代が無い」
「待て、ミア。一人で行くな」
「だけど、」
「俺も行く。二人の方が早い」
「…うん、ありがとう」
結局、ブレンの言葉に甘えて、二人で向かったのは、ガイラスタワーの足元。タワーの入口までの街道は、タワーに挑戦する冒険者のみならず、彼ら相手の商売に精をだす街の人たちで溢れかえっている。
見慣れない食べ物や、冒険者向けの装備。かなり気になるお店の軒先を、少しは覗いてみたいけれど。脇目も振らずにタワーの入口を目指すブレンを追いかける。そのブレンの足取りが、
―すごく、楽しみな感じ?
待ちきれないと言わんばかりのスピードで、一心にタワーに向かっている。ブレンが昔からタワー攻略を望んでいたことを知ってはいたけど、
―そんなに昇りたかったんだ
王都から、徒歩で三ヶ月。簡単には来れない場所だったこともあるが、このタワー攻略が厄介な理由は他にもあって、中々訪れる決心がつかずにいた。
タワーの攻略において、まず、当然ながら、ゲームのように途中セーブは出来ない。転移も出来ない造りになっているから、途中でリタイアしてしまうと、再チャレンジはまた一階からやり直し、ということになる。
つまり、踏破するにはひたすら登り続けるしかなく、その間の食事や装備については、荷物運び専門のメンバーを雇って運んでもらう必要がある。道中、彼らが戦闘に巻き込まれないように気を配らねばならず、通常のダンジョンと比べて攻略はかなり難しい。
そう考えると、『賢者の石』を手に入れたことはやはり間違いではなかった、とも言える。『万物創造』が使えれば、食料問題も装備についてもある程度は目処がたつから、二人でタワーに昇ることも可能。だからこそ、この地に来たというのもあるのだけれど、主に金銭的に準備不足だったことは確かなので、反省はしないといけない。
―ごめんね、ブレン
前を行く背中に再度謝ったところで、辺りに鳴り響いたサイレン、いや、チャイム?
「…何だ?」
「わからない」
立ち止まったブレンに合わせて、足を止める。音が鳴ったのは、目の前、タワーからだと思うのだけれど―
《パーティー『サギリアの盾』が20階に到達しました》
「!?」
「何、これ?放送?」
チャイムに続いて響いた、機械的な女性の声。その内容から、予想がつくのは、
「塔の攻略状況を、報せてる?みたいだね」
「…」
正体は何となくわかっても、こんなシステムに遭遇したのは初めてで戸惑う。そして、何より、
「タワー昇るのに、パーティー名を決めなくちゃいけないのかもね」
「…」
心底、嫌そうなブレンの顔。先ほどまでの、楽しみで仕方ないという風だった様子からは想像も出来ないくらいに―
『ガイラスタワー』
かつて、地上で最も栄え、一夜にして滅んだとされる都市『ガイラス』。その中心に位置し、一説には「神々の国へ昇る」ために造られたとされるタワー。人間の傲慢さの象徴、その傲慢に対する神々の怒りの残滓として語られる塔には、今なお多くの者が惹き付けられ、高みへと昇るために集まってくる。
この世界で唯一、未踏破階層を残す最難易度ダンジョンとして―
「ブレン、大変。お金がない」
「…」
王都からここ―滅亡後に再建された『ガイラス』の街―まで、なるべくお金を使わずに来たのだけれど。さすがに三ヶ月もかかった移動に―その間、まともにダンジョンにも潜れていないから―とうとう、手持ちのお金が尽きた。
街へ入るために必要な『滞在証』発行に使った2万オーロが、本当になけなしの最後のお金で。この金欠は間違いなく、『賢者の石』で全財産を使い果たしてしまった私のせい。
「ごめん、ブレン。とりあえず、タワーで何か狩ってくる。食事は何とかなっても、今夜の宿代が無い」
「待て、ミア。一人で行くな」
「だけど、」
「俺も行く。二人の方が早い」
「…うん、ありがとう」
結局、ブレンの言葉に甘えて、二人で向かったのは、ガイラスタワーの足元。タワーの入口までの街道は、タワーに挑戦する冒険者のみならず、彼ら相手の商売に精をだす街の人たちで溢れかえっている。
見慣れない食べ物や、冒険者向けの装備。かなり気になるお店の軒先を、少しは覗いてみたいけれど。脇目も振らずにタワーの入口を目指すブレンを追いかける。そのブレンの足取りが、
―すごく、楽しみな感じ?
待ちきれないと言わんばかりのスピードで、一心にタワーに向かっている。ブレンが昔からタワー攻略を望んでいたことを知ってはいたけど、
―そんなに昇りたかったんだ
王都から、徒歩で三ヶ月。簡単には来れない場所だったこともあるが、このタワー攻略が厄介な理由は他にもあって、中々訪れる決心がつかずにいた。
タワーの攻略において、まず、当然ながら、ゲームのように途中セーブは出来ない。転移も出来ない造りになっているから、途中でリタイアしてしまうと、再チャレンジはまた一階からやり直し、ということになる。
つまり、踏破するにはひたすら登り続けるしかなく、その間の食事や装備については、荷物運び専門のメンバーを雇って運んでもらう必要がある。道中、彼らが戦闘に巻き込まれないように気を配らねばならず、通常のダンジョンと比べて攻略はかなり難しい。
そう考えると、『賢者の石』を手に入れたことはやはり間違いではなかった、とも言える。『万物創造』が使えれば、食料問題も装備についてもある程度は目処がたつから、二人でタワーに昇ることも可能。だからこそ、この地に来たというのもあるのだけれど、主に金銭的に準備不足だったことは確かなので、反省はしないといけない。
―ごめんね、ブレン
前を行く背中に再度謝ったところで、辺りに鳴り響いたサイレン、いや、チャイム?
「…何だ?」
「わからない」
立ち止まったブレンに合わせて、足を止める。音が鳴ったのは、目の前、タワーからだと思うのだけれど―
《パーティー『サギリアの盾』が20階に到達しました》
「!?」
「何、これ?放送?」
チャイムに続いて響いた、機械的な女性の声。その内容から、予想がつくのは、
「塔の攻略状況を、報せてる?みたいだね」
「…」
正体は何となくわかっても、こんなシステムに遭遇したのは初めてで戸惑う。そして、何より、
「タワー昇るのに、パーティー名を決めなくちゃいけないのかもね」
「…」
心底、嫌そうなブレンの顔。先ほどまでの、楽しみで仕方ないという風だった様子からは想像も出来ないくらいに―
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