バグ発見~モブキャラの私にレベルキャップが存在しなかった~

リコピン

文字の大きさ
39 / 64
後編 タワー編

1-1. タワーと街と再会

しおりを挟む
1-1.

『ガイラスタワー』

かつて、地上で最も栄え、一夜にして滅んだとされる都市『ガイラス』。その中心に位置し、一説には「神々の国へ昇る」ために造られたとされるタワー。人間の傲慢さの象徴、その傲慢に対する神々の怒りの残滓として語られる塔には、今なお多くの者が惹き付けられ、高みへと昇るために集まってくる。

この世界で唯一、未踏破階層を残す最難易度ダンジョンとして―





「ブレン、大変。お金がない」

「…」

王都からここ―滅亡後に再建された『ガイラス』の街―まで、なるべくお金を使わずに来たのだけれど。さすがに三ヶ月もかかった移動に―その間、まともにダンジョンにも潜れていないから―とうとう、手持ちのお金が尽きた。

街へ入るために必要な『滞在証』発行に使った2万オーロが、本当になけなしの最後のお金で。この金欠は間違いなく、『賢者の石』で全財産を使い果たしてしまった私のせい。

「ごめん、ブレン。とりあえず、タワーで何か狩ってくる。食事は何とかなっても、今夜の宿代が無い」

「待て、ミア。一人で行くな」

「だけど、」

「俺も行く。二人の方が早い」

「…うん、ありがとう」

結局、ブレンの言葉に甘えて、二人で向かったのは、ガイラスタワーの足元。タワーの入口までの街道は、タワーに挑戦する冒険者のみならず、彼ら相手の商売に精をだす街の人たちで溢れかえっている。

見慣れない食べ物や、冒険者向けの装備。かなり気になるお店の軒先を、少しは覗いてみたいけれど。脇目も振らずにタワーの入口を目指すブレンを追いかける。そのブレンの足取りが、

―すごく、楽しみな感じ?

待ちきれないと言わんばかりのスピードで、一心にタワーに向かっている。ブレンが昔からタワー攻略を望んでいたことを知ってはいたけど、

―そんなに昇りたかったんだ

王都から、徒歩で三ヶ月。簡単には来れない場所だったこともあるが、このタワー攻略が厄介な理由は他にもあって、中々訪れる決心がつかずにいた。

タワーの攻略において、まず、当然ながら、ゲームのように途中セーブは出来ない。転移も出来ない造りになっているから、途中でリタイアしてしまうと、再チャレンジはまた一階からやり直し、ということになる。

つまり、踏破するにはひたすら登り続けるしかなく、その間の食事や装備については、荷物運び専門のメンバーを雇って運んでもらう必要がある。道中、彼らが戦闘に巻き込まれないように気を配らねばならず、通常のダンジョンと比べて攻略はかなり難しい。

そう考えると、『賢者の石』を手に入れたことはやはり間違いではなかった、とも言える。『万物創造』が使えれば、食料問題も装備についてもある程度は目処がたつから、二人でタワーに昇ることも可能。だからこそ、この地に来たというのもあるのだけれど、主に金銭的に準備不足だったことは確かなので、反省はしないといけない。

―ごめんね、ブレン

前を行く背中に再度謝ったところで、辺りに鳴り響いたサイレン、いや、チャイム?

「…何だ?」

「わからない」

立ち止まったブレンに合わせて、足を止める。音が鳴ったのは、目の前、タワーからだと思うのだけれど―

《パーティー『サギリアの盾』が20階に到達しました》

「!?」

「何、これ?放送?」

チャイムに続いて響いた、機械的な女性の声。その内容から、予想がつくのは、

「塔の攻略状況を、報せてる?みたいだね」

「…」

正体は何となくわかっても、こんなシステムに遭遇したのは初めてで戸惑う。そして、何より、

「タワー昇るのに、パーティー名を決めなくちゃいけないのかもね」

「…」

心底、嫌そうなブレンの顔。先ほどまでの、楽しみで仕方ないという風だった様子からは想像も出来ないくらいに―




しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

【完結】財務大臣が『経済の話だけ』と毎日訪ねてきます。婚約破棄後、前世の経営知識で辺境を改革したら、こんな溺愛が始まりました

チャビューヘ
恋愛
三度目の婚約破棄で、ようやく自由を手に入れた。 王太子から「冷酷で心がない」と糾弾され、大広間で婚約を破棄されたエリナ。しかし彼女は泣かない。なぜなら、これは三度目のループだから。前世は過労死した41歳の経営コンサル。一周目は泣き崩れ、二周目は慌てふためいた。でも三周目の今回は違う。「ありがとうございます、殿下。これで自由になれます」──優雅に微笑み、誰も予想しない行動に出る。 エリナが選んだのは、誰も欲しがらない辺境の荒れ地。人口わずか4500人、干ばつで荒廃した最悪の土地を、金貨100枚で買い取った。貴族たちは嘲笑う。「追放された令嬢が、荒れ地で野垂れ死にするだけだ」と。 だが、彼らは知らない。エリナが前世で培った、経営コンサルタントとしての圧倒的な知識を。三圃式農業、ブランド戦略、人材採用術、物流システム──現代日本の経営ノウハウを、中世ファンタジー世界で全力展開。わずか半年で領地は緑に変わり、住民たちは希望を取り戻す。一年後には人口は倍増、財政は奇跡の黒字化。「辺境の奇跡」として王国中で噂になり始めた。 そして現れたのが、王国一の冷徹さで知られる財務大臣、カイル・ヴェルナー。氷のような視線、容赦ない数字の追及。貴族たちが震え上がる彼が、なぜか月に一度の「定期視察」を提案してくる。そして月一が週一になり、やがて──「経済政策の話がしたいだけです」という言い訳とともに、毎日のように訪ねてくるようになった。 夜遅くまで経済理論を語り合い、気づけば星空の下で二人きり。「あなたは、何者なんだ」と問う彼の瞳には、もはや氷の冷たさはない。部下たちは囁く。「閣下、またフェルゼン領ですか」。本人は「重要案件だ」と言い張るが、その頬は微かに赤い。 一方、エリナを捨てた元婚約者の王太子リオンは、彼女の成功を知って後悔に苛まれる。「俺は…取り返しのつかないことを」。かつてエリナを馬鹿にした貴族たちも掌を返し、継母は「戻ってきて」と懇願する。だがエリナは冷静に微笑むだけ。「もう、過去のことです」。ざまあみろ、ではなく──もっと前を向いている。 知的で戦略的な領地経営。冷徹な財務大臣の不器用な溺愛。そして、自分を捨てた者たちへの圧倒的な「ざまぁ」。三周目だからこそ完璧に描ける、逆転と成功の物語。 経済政策で国を変え、本物の愛を見つける──これは、消去法で選ばれただけの婚約者が、自らの知恵と努力で勝ち取った、最高の人生逆転ストーリー。

転生した世界のイケメンが怖い

祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。 第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。 わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。 でもわたしは彼らが怖い。 わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。 彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。 2024/10/06 IF追加 小説を読もう!にも掲載しています。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

【完結】男の美醜が逆転した世界で私は貴方に恋をした

梅干しおにぎり
恋愛
私の感覚は間違っていなかった。貴方の格好良さは私にしか分からない。 過去の作品の加筆修正版です。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

処理中です...