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二章
12 共通イベント 秋の星見1
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(ん?…これ、マズいんじゃない?)
空き教室の窓の下、お昼休みに、殿下ファンのご令嬢達からの「ちょっと顔貸しなさいよ」イベントをこなしているらしきエンジェちゃん。数回、ランダムで発生するミニイベントのその結末は―
「あ。」
「お嬢様?如何されました?」
「ん?えーっと、あ、ヤバい。バッチリ目が合っちゃった。あ、行っちゃった。」
「お嬢様?窓の外に何か?」
「いやー、誤解されちゃったなー、と。」
取り囲まれ、逃げられなくなったエンジェちゃんの頭上から降り注いだバケツ水。二階からぶちまけられたソレに屈することなく、キッと頭上を見上げたエンジェちゃんと目が合ったのは、三階でランチ中の悪役令嬢。
「…『私』、仕事し過ぎじゃない?」
「お嬢様は学園での授業以外にも妃教育に社交と、大変努力されていらっしゃいます。他のご令嬢方の追随を許さぬ、正にこの国の、」
「ありがとう、ジェイク。ジェイクもいつもお仕事お疲れ様。ジェイクのおかげで私、凄い助かってるよ。」
「…恐縮でございます。」
「うん!よし!じゃあ、ご飯だご飯。あ、ジェイクも座ってね。」
「…」
最近は抵抗も少なく同じ食卓についてくれるジェイク。甲斐甲斐しく世話をやこうとするのはもうどうしようもないけど、執事としての態度は少しずつ崩せてるんじゃないかな。
「…お嬢様、食後の紅茶には、お砂糖を多めに致しましょうか?」
「ん?どうして?」
「お疲れなのではありませんか?」
「ああ。」
私の「仕事し過ぎ」発言が効いてしまっているらしい。ジェイクが分かりやすく顔を曇らせている。
「私では、お嬢様のご負担を減らすことが出来ません。せめて、私に出来ることは無いかと愚考いたしました。」
「もう、何言ってるの、ジェイク。さっき言ったでしょう?ジェイクにはいつも助かってるって。嘘でもお世辞でもなく、本当だからね?」
「ですが、それでは…」
「ん?」
「足りないのです。助け…、程度では。私は、出来ることならお嬢様の背負う全て、この身に引き受けたいと願っています。それが叶わぬことが…」
「ちょ、待って!?何!?突然、どうしたの!?」
ジェイクの苦しげ、というよりは最早、切なげと言ってもいいような表情、真っ直ぐにこちらを見つめる瞳に灯る熱―
「これ、勘違いじゃないよね!私、今、ちょっと心臓キュンっていうか、ギュンってきてるよ!?」
「お嬢様?お身体の調子が?いけませんね、本日は早退して、」
「自覚無しか!?」
あっという間に主人を案じる従者の顔に戻ってしまったジェイク。なのに、私の顔の熱は戻らない。
(っ!ジェイクが、可愛くない!)
なんか、悔しくて、恥ずかしくて、
「ねぇ!ジェイク!お願いがあるんだけど!」
―流星群、一緒に見に行こう!
「…後は、念のため、虫除けの香を。…いえ、魔物除けもあったほうがいいですね。汎用品と、特注のシェルスパイダー除け、ギガアント除け、ああ、後はハンガーベアの…」
「…ジェイクは、一体どこの魔境に挑むつもりなの?」
「お嬢様。ですが、お嬢様の身に万一があってはなりません。勿論、何が現れようと、お嬢様は私がこの身を賭してお守り致しますが、あらかじめの対策も、」
「学園裏の森の広場に、星を見に行くだけだよね?学園の結界内にある。」
「…」
「はい。これとこれとこれは、置いて。」
「ですが、お嬢様…」
魔物除けの香をお嬢様に取り上げられてしまい、途端、手持無沙汰になる。心許なさに、視線をさ迷わせれば、
「はい、こっちのバスケット。ジェイクはこれ持って。」
「これは?」
「ブランケットと飲み物。で、空いてる左手には、はい。」
「お嬢様?」
差し出されたお嬢様の右手、しかし、そこには何も握られておらず─
「手、つなご?」
「えっ!?手!?お、お嬢様、それは流石にっ!」
「うん、でも、夜だからねー、暗いから。足元、危ないでしょう?」
「そ、れは確かに、はい。お嬢様のおっしゃる通りですね。」
「でしょう?だから、私が転んだりしないよう、ちゃんと、手、繋いでてくれる?」
「はい!勿論でございます!お嬢様の御身をお守りするのが私の役目!お嬢様のお身体には、傷一つつかせません!」
「うん、…私は時々、ジェイクが心配、ちょっと、申し訳なくなるよ。」
「お嬢様?」
「ジェイクは、変わらずにそのままでいてね。」
空き教室の窓の下、お昼休みに、殿下ファンのご令嬢達からの「ちょっと顔貸しなさいよ」イベントをこなしているらしきエンジェちゃん。数回、ランダムで発生するミニイベントのその結末は―
「あ。」
「お嬢様?如何されました?」
「ん?えーっと、あ、ヤバい。バッチリ目が合っちゃった。あ、行っちゃった。」
「お嬢様?窓の外に何か?」
「いやー、誤解されちゃったなー、と。」
取り囲まれ、逃げられなくなったエンジェちゃんの頭上から降り注いだバケツ水。二階からぶちまけられたソレに屈することなく、キッと頭上を見上げたエンジェちゃんと目が合ったのは、三階でランチ中の悪役令嬢。
「…『私』、仕事し過ぎじゃない?」
「お嬢様は学園での授業以外にも妃教育に社交と、大変努力されていらっしゃいます。他のご令嬢方の追随を許さぬ、正にこの国の、」
「ありがとう、ジェイク。ジェイクもいつもお仕事お疲れ様。ジェイクのおかげで私、凄い助かってるよ。」
「…恐縮でございます。」
「うん!よし!じゃあ、ご飯だご飯。あ、ジェイクも座ってね。」
「…」
最近は抵抗も少なく同じ食卓についてくれるジェイク。甲斐甲斐しく世話をやこうとするのはもうどうしようもないけど、執事としての態度は少しずつ崩せてるんじゃないかな。
「…お嬢様、食後の紅茶には、お砂糖を多めに致しましょうか?」
「ん?どうして?」
「お疲れなのではありませんか?」
「ああ。」
私の「仕事し過ぎ」発言が効いてしまっているらしい。ジェイクが分かりやすく顔を曇らせている。
「私では、お嬢様のご負担を減らすことが出来ません。せめて、私に出来ることは無いかと愚考いたしました。」
「もう、何言ってるの、ジェイク。さっき言ったでしょう?ジェイクにはいつも助かってるって。嘘でもお世辞でもなく、本当だからね?」
「ですが、それでは…」
「ん?」
「足りないのです。助け…、程度では。私は、出来ることならお嬢様の背負う全て、この身に引き受けたいと願っています。それが叶わぬことが…」
「ちょ、待って!?何!?突然、どうしたの!?」
ジェイクの苦しげ、というよりは最早、切なげと言ってもいいような表情、真っ直ぐにこちらを見つめる瞳に灯る熱―
「これ、勘違いじゃないよね!私、今、ちょっと心臓キュンっていうか、ギュンってきてるよ!?」
「お嬢様?お身体の調子が?いけませんね、本日は早退して、」
「自覚無しか!?」
あっという間に主人を案じる従者の顔に戻ってしまったジェイク。なのに、私の顔の熱は戻らない。
(っ!ジェイクが、可愛くない!)
なんか、悔しくて、恥ずかしくて、
「ねぇ!ジェイク!お願いがあるんだけど!」
―流星群、一緒に見に行こう!
「…後は、念のため、虫除けの香を。…いえ、魔物除けもあったほうがいいですね。汎用品と、特注のシェルスパイダー除け、ギガアント除け、ああ、後はハンガーベアの…」
「…ジェイクは、一体どこの魔境に挑むつもりなの?」
「お嬢様。ですが、お嬢様の身に万一があってはなりません。勿論、何が現れようと、お嬢様は私がこの身を賭してお守り致しますが、あらかじめの対策も、」
「学園裏の森の広場に、星を見に行くだけだよね?学園の結界内にある。」
「…」
「はい。これとこれとこれは、置いて。」
「ですが、お嬢様…」
魔物除けの香をお嬢様に取り上げられてしまい、途端、手持無沙汰になる。心許なさに、視線をさ迷わせれば、
「はい、こっちのバスケット。ジェイクはこれ持って。」
「これは?」
「ブランケットと飲み物。で、空いてる左手には、はい。」
「お嬢様?」
差し出されたお嬢様の右手、しかし、そこには何も握られておらず─
「手、つなご?」
「えっ!?手!?お、お嬢様、それは流石にっ!」
「うん、でも、夜だからねー、暗いから。足元、危ないでしょう?」
「そ、れは確かに、はい。お嬢様のおっしゃる通りですね。」
「でしょう?だから、私が転んだりしないよう、ちゃんと、手、繋いでてくれる?」
「はい!勿論でございます!お嬢様の御身をお守りするのが私の役目!お嬢様のお身体には、傷一つつかせません!」
「うん、…私は時々、ジェイクが心配、ちょっと、申し訳なくなるよ。」
「お嬢様?」
「ジェイクは、変わらずにそのままでいてね。」
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