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二章
13 共通イベント 秋の星見2
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「…降るように流れたりはしないんだねー。」
「左様でございますね。」
お嬢様が用意された敷布、その上で仰向けになって夜空を眺めるお嬢様の瞳、星明りにさえ輝く宝石のような―
「ジェイクも、隣においでよ。」
「いえ、私はここで。」
護衛も兼ねる身としては、如何なる事態にも対処可能なようにこの場に立っておきたい。周囲を警戒し、お嬢様のご様子をうかがう。
「…お嬢様、お寒くはありませんか?先日、体調を崩されたばかりですし、あまりご無理はされませんよう。」
「うん。あれは体調不良じゃなくて、キュンです。それに、別に寒く、は…」
「お嬢様?」
「いや、うん。…あれー?やっぱり、ちょっと寒いかもー。」
「それはっ!?戻りましょう!お嬢様!お風邪を召されたのかもしれません!早急に医者を呼んで、」
「違うんだなー、ジェイク。そういうんじゃないの。寒いから、ここに来て温めてってことなの。」
「え…」
お嬢様の言葉に、不覚にも動揺してしまう。己の邪な想いが、純粋なお嬢様の言葉を曲解して―
「…いけません、お嬢様。例え相手が私であろうと、淑女としてそのようなことをおっしゃるのは…」
「大丈夫、こんなこと、ジェイクにしか言わないよ。」
「っ!…だとしても、です。お嬢様は貴い御身、王太子殿下のご婚約者というお立場なのです。もっと、ご自覚を持たれて下さい。」
「自覚かー。一応、バリバリに持ってるんだけどな。これ以上ないってくらい、思い知らされてるから。」
「でしたら…」
「…ジェイク。ジェイクは、私の立場、私に求められてる役目って何だと思う?」
「お嬢様…?」
不意に、お嬢様の声が陰った。いつもの、鈴を転がすような柔らかな音が、失われている。
「…私に求められてるのってさ、ぶっちゃけ、王太子の婚約者って立場じゃなくて、悪役令嬢って役目だからさ。」
「『悪役令嬢』、と言うのは…?」
「うん?私がそう言ってるだけなんだけどね。私が『悪』であれば、誰も、お父様でさえ、私の勝手を止めないの。ジェイクは気づいてた?」
「…」
「例え、何ヵ月も家を空けようと、執事を連れて夜遊びに出ようと、文句は言われるけど、止められはしない。…悪役令嬢の範囲であれば、私は好きに生きられる。」
「…」
(お嬢様の、お好きに…)
いつも、いつだって、お嬢様は輝いていらっしゃる─
自由に、思い付いたこと、やりたいことをなさって、そして、笑っていて下さる。だから、お嬢様は幸福なのだと信じていた。何かの「範囲」など、そんな枷を感じているなど、思いもせず。
(では、何を、…一体どうすれば、お嬢様はお幸せに、…枷なく生きることが出来るというのか…)
「…ジェイク、そんな顔しないで。」
「ですが、お嬢様…、私は…」
「まあ、何だかんだ言ってさ、結局、その役目に甘んじてるのも、私の意思ではあるんだよ?…悪役令嬢だからこそ手に入ったものがあるっていうのも、事実だから。」
「…」
「…世界で一番大切なもの、貰っちゃったからなぁ。…私が悪役令嬢でなくなったら、失くしちゃうかも?離れていっちゃうかも?って思ったら、怖くて、本気で逃げられなくなっちゃったんだよねぇ。」
「左様でございますね。」
お嬢様が用意された敷布、その上で仰向けになって夜空を眺めるお嬢様の瞳、星明りにさえ輝く宝石のような―
「ジェイクも、隣においでよ。」
「いえ、私はここで。」
護衛も兼ねる身としては、如何なる事態にも対処可能なようにこの場に立っておきたい。周囲を警戒し、お嬢様のご様子をうかがう。
「…お嬢様、お寒くはありませんか?先日、体調を崩されたばかりですし、あまりご無理はされませんよう。」
「うん。あれは体調不良じゃなくて、キュンです。それに、別に寒く、は…」
「お嬢様?」
「いや、うん。…あれー?やっぱり、ちょっと寒いかもー。」
「それはっ!?戻りましょう!お嬢様!お風邪を召されたのかもしれません!早急に医者を呼んで、」
「違うんだなー、ジェイク。そういうんじゃないの。寒いから、ここに来て温めてってことなの。」
「え…」
お嬢様の言葉に、不覚にも動揺してしまう。己の邪な想いが、純粋なお嬢様の言葉を曲解して―
「…いけません、お嬢様。例え相手が私であろうと、淑女としてそのようなことをおっしゃるのは…」
「大丈夫、こんなこと、ジェイクにしか言わないよ。」
「っ!…だとしても、です。お嬢様は貴い御身、王太子殿下のご婚約者というお立場なのです。もっと、ご自覚を持たれて下さい。」
「自覚かー。一応、バリバリに持ってるんだけどな。これ以上ないってくらい、思い知らされてるから。」
「でしたら…」
「…ジェイク。ジェイクは、私の立場、私に求められてる役目って何だと思う?」
「お嬢様…?」
不意に、お嬢様の声が陰った。いつもの、鈴を転がすような柔らかな音が、失われている。
「…私に求められてるのってさ、ぶっちゃけ、王太子の婚約者って立場じゃなくて、悪役令嬢って役目だからさ。」
「『悪役令嬢』、と言うのは…?」
「うん?私がそう言ってるだけなんだけどね。私が『悪』であれば、誰も、お父様でさえ、私の勝手を止めないの。ジェイクは気づいてた?」
「…」
「例え、何ヵ月も家を空けようと、執事を連れて夜遊びに出ようと、文句は言われるけど、止められはしない。…悪役令嬢の範囲であれば、私は好きに生きられる。」
「…」
(お嬢様の、お好きに…)
いつも、いつだって、お嬢様は輝いていらっしゃる─
自由に、思い付いたこと、やりたいことをなさって、そして、笑っていて下さる。だから、お嬢様は幸福なのだと信じていた。何かの「範囲」など、そんな枷を感じているなど、思いもせず。
(では、何を、…一体どうすれば、お嬢様はお幸せに、…枷なく生きることが出来るというのか…)
「…ジェイク、そんな顔しないで。」
「ですが、お嬢様…、私は…」
「まあ、何だかんだ言ってさ、結局、その役目に甘んじてるのも、私の意思ではあるんだよ?…悪役令嬢だからこそ手に入ったものがあるっていうのも、事実だから。」
「…」
「…世界で一番大切なもの、貰っちゃったからなぁ。…私が悪役令嬢でなくなったら、失くしちゃうかも?離れていっちゃうかも?って思ったら、怖くて、本気で逃げられなくなっちゃったんだよねぇ。」
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