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二章
15 強制イベント 真冬の聖夜祭1
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(あー、攻略成功…、されちゃったなー。)
一年の締めくくりである聖夜祭、攻略が成功していれば、ここで攻略対象者がファーストダンスに誘ってくる。
そして今、学園の大広間、周囲の視線を全てかっさらって踊るギャレン様とエンジェちゃん。
(うーん、しかも、エンジェちゃん、好感度MAXでプレゼントされるティアラまで乗っけてるし。)
ゲーム中に説明は無かったけれど、王太子妃教育をバンバンこなしてきた私は知っている。実は、あのティアラ、王太子が自分の奥さんに贈るもの。つまり、ギャレン様は「ナディア・シュタイラートと結婚する気なんてないよー」、とアピールしまくっているということ。
(故意なのか、それとも何も考えてないのか…)
それが分かるだけの関係を、ギャレン様とは築けていない。
(…ジェイクが考えてることは、嫌でもわかっちゃうのに。)
壁の花と化している私の隣、ジェイクの感情の揺れは激しい。無表情なのに、その眼が雄弁過ぎて。
「…ジェイク、そんな顔しないで、私は大丈夫だからね?」
「っ!申し訳ありません、お嬢様。感情を露わにするなど、お嬢様の執事失格で、」
「大丈夫大丈夫。気づいてるの、私だけだから。」
「…お嬢様。」
悲しいとか、悔しいとか、私の代わりに憤ってくれるジェイク。彼がいるから、私は平気でいられる。
(…でも、もし、ジェイクが居なくなってしまったら…)
浮かんできた不安に首を振る。今はまだ、私は悪役令嬢、ナディア・シュタイラートなのだから―
「…ねぇ、ジェイク、お願いがあるの。」
―私とダンス、踊ってくれる?
「…お、嬢様。大変、有難いお誘い、身に余る光栄ではございますが、その、やはり、私では…」
たかが男爵家の末子、お嬢様の執事でしかない己が、栄えあるお嬢様のファーストダンスのお相手を務めるなど。しかも、このような衆目の場では、お嬢様の名誉が―
「私はジェイクと踊りたいの。」
「っ!…ですが…」
「うーん、じゃあ、仕方ない。…ジェイクついてきて?」
「お嬢様?」
身を翻し、堂々たる態度で広間を横切るお嬢様。周囲の視線など露とも気にせず、どこか明るい足取りでさえある。それでも、向けられる悪意ある視線を少しでも遮りたくて、お嬢様の背後へと寄り添った。
(お嬢様…、お労しい。)
今日のこの日のために用意されたドレス。王太子殿下の瞳の色に合わせたブルー、髪飾りには同じく青の石が輝いている。あまり好まれないダンスを、それでも完璧に仕上げたのも、全て、王太子殿下の隣に立つため。
(この場の誰よりも、美しく気高いお嬢様が…)
王太子殿下の心無い行いに背を向け、絢爛たる広間を離れる。冬の寒さ、身が凍るような屋外へと足を踏み出した。
一年の締めくくりである聖夜祭、攻略が成功していれば、ここで攻略対象者がファーストダンスに誘ってくる。
そして今、学園の大広間、周囲の視線を全てかっさらって踊るギャレン様とエンジェちゃん。
(うーん、しかも、エンジェちゃん、好感度MAXでプレゼントされるティアラまで乗っけてるし。)
ゲーム中に説明は無かったけれど、王太子妃教育をバンバンこなしてきた私は知っている。実は、あのティアラ、王太子が自分の奥さんに贈るもの。つまり、ギャレン様は「ナディア・シュタイラートと結婚する気なんてないよー」、とアピールしまくっているということ。
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「っ!申し訳ありません、お嬢様。感情を露わにするなど、お嬢様の執事失格で、」
「大丈夫大丈夫。気づいてるの、私だけだから。」
「…お嬢様。」
悲しいとか、悔しいとか、私の代わりに憤ってくれるジェイク。彼がいるから、私は平気でいられる。
(…でも、もし、ジェイクが居なくなってしまったら…)
浮かんできた不安に首を振る。今はまだ、私は悪役令嬢、ナディア・シュタイラートなのだから―
「…ねぇ、ジェイク、お願いがあるの。」
―私とダンス、踊ってくれる?
「…お、嬢様。大変、有難いお誘い、身に余る光栄ではございますが、その、やはり、私では…」
たかが男爵家の末子、お嬢様の執事でしかない己が、栄えあるお嬢様のファーストダンスのお相手を務めるなど。しかも、このような衆目の場では、お嬢様の名誉が―
「私はジェイクと踊りたいの。」
「っ!…ですが…」
「うーん、じゃあ、仕方ない。…ジェイクついてきて?」
「お嬢様?」
身を翻し、堂々たる態度で広間を横切るお嬢様。周囲の視線など露とも気にせず、どこか明るい足取りでさえある。それでも、向けられる悪意ある視線を少しでも遮りたくて、お嬢様の背後へと寄り添った。
(お嬢様…、お労しい。)
今日のこの日のために用意されたドレス。王太子殿下の瞳の色に合わせたブルー、髪飾りには同じく青の石が輝いている。あまり好まれないダンスを、それでも完璧に仕上げたのも、全て、王太子殿下の隣に立つため。
(この場の誰よりも、美しく気高いお嬢様が…)
王太子殿下の心無い行いに背を向け、絢爛たる広間を離れる。冬の寒さ、身が凍るような屋外へと足を踏み出した。
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