18 / 27
二章
17 強制イベント 真冬の聖夜祭3
しおりを挟む
「あ。」
「お嬢様っ!?」
床に落ち、砕け散ったグラス。飛び散る赤がお嬢様に届くその直前、お嬢様の身を引き寄せ背後に庇う。
「これは、一体…」
「うん。避けられなかったみたい。」
目の前、お嬢様を見つめたまま顔面を蒼白にした女生徒。その青色のドレスの裾が赤に染まっていく。
(グラスを落としたのは、この方、でしょうか?)
見知った顔、王太子殿下とファーストダンスを踊っていた女生徒が、誰かを探すように視線を彷徨わせ、
「っ!ギャレン!」
「エンジェ!どうしたっ!?これは一体!?」
現れた王太子殿下の視線が女生徒のドレスを認めた。驚きに見開かれた眼差しが、瞬時に鋭いものへと変わり、お嬢様に向けられる。
「ナディア・シュタイラート!貴様!何のつもりだ!?」
「何のつもりだと聞かれましても、」
「エンジェに対する貴様の嫌がらせの数々は把握している!だが、よもや、このような場においてまでっ!」
「いえ、私は何も。グラスを落としたのは、」
「ギャレン様!私、いきなりぶつかられて!」
「何だとっ!?ナディア、貴様!力無き者をいたぶるのがそれほど楽しいかっ!?」
(…この方は、何を仰っているのでしょう…?)
お嬢様が弱者をいたぶる?そのような真似、お嬢様がなさるはずがない。自明の理であろうお嬢様のご気性さえご理解頂けていないとは―
「…恐れながら、王太子殿下。そちらのご令嬢と接触されたのは、我が主ではありえません。我が主には、常に私がお側に、」
「貴様!従者にまで虚言を強いるか!?」
「っ!お待ちください、王太子殿下、お嬢様は決してそのような、」
「もう良い!従者を使っての言い訳など、聞きたくもない!」
言って、殿下が背を向ける。その腕に件の女生徒を伴う殿下の後ろ姿、お嬢様の視線がそれを追うのを認めて、胸が、苦しくなる―
「…お嬢様。お気を落とさずに。ご説明申し上げれば、王太子殿下もきっとお分かり頂けるはずです。」
「うん?…うーん、それはもう、いいかなぁ。」
「良い、とは…?」
「もう、ここまで来ちゃうとね。誤解も何も無いかなって。…流石、強制イベント、私がワインかぶらなくても何とかなっちゃうとか。」
「…お嬢様?」
「いやー、『下がりなさい!無礼者!』とか叫ばずに済んだだけでも、結果オーライだよ、ほんと。」
「…」
「…帰ろうか。ジェイク。」
「…」
キラキラと、先程まで星の煌めきを見せていたお嬢様の瞳から、眩い光が消えていた―
「お嬢様っ!?」
床に落ち、砕け散ったグラス。飛び散る赤がお嬢様に届くその直前、お嬢様の身を引き寄せ背後に庇う。
「これは、一体…」
「うん。避けられなかったみたい。」
目の前、お嬢様を見つめたまま顔面を蒼白にした女生徒。その青色のドレスの裾が赤に染まっていく。
(グラスを落としたのは、この方、でしょうか?)
見知った顔、王太子殿下とファーストダンスを踊っていた女生徒が、誰かを探すように視線を彷徨わせ、
「っ!ギャレン!」
「エンジェ!どうしたっ!?これは一体!?」
現れた王太子殿下の視線が女生徒のドレスを認めた。驚きに見開かれた眼差しが、瞬時に鋭いものへと変わり、お嬢様に向けられる。
「ナディア・シュタイラート!貴様!何のつもりだ!?」
「何のつもりだと聞かれましても、」
「エンジェに対する貴様の嫌がらせの数々は把握している!だが、よもや、このような場においてまでっ!」
「いえ、私は何も。グラスを落としたのは、」
「ギャレン様!私、いきなりぶつかられて!」
「何だとっ!?ナディア、貴様!力無き者をいたぶるのがそれほど楽しいかっ!?」
(…この方は、何を仰っているのでしょう…?)
お嬢様が弱者をいたぶる?そのような真似、お嬢様がなさるはずがない。自明の理であろうお嬢様のご気性さえご理解頂けていないとは―
「…恐れながら、王太子殿下。そちらのご令嬢と接触されたのは、我が主ではありえません。我が主には、常に私がお側に、」
「貴様!従者にまで虚言を強いるか!?」
「っ!お待ちください、王太子殿下、お嬢様は決してそのような、」
「もう良い!従者を使っての言い訳など、聞きたくもない!」
言って、殿下が背を向ける。その腕に件の女生徒を伴う殿下の後ろ姿、お嬢様の視線がそれを追うのを認めて、胸が、苦しくなる―
「…お嬢様。お気を落とさずに。ご説明申し上げれば、王太子殿下もきっとお分かり頂けるはずです。」
「うん?…うーん、それはもう、いいかなぁ。」
「良い、とは…?」
「もう、ここまで来ちゃうとね。誤解も何も無いかなって。…流石、強制イベント、私がワインかぶらなくても何とかなっちゃうとか。」
「…お嬢様?」
「いやー、『下がりなさい!無礼者!』とか叫ばずに済んだだけでも、結果オーライだよ、ほんと。」
「…」
「…帰ろうか。ジェイク。」
「…」
キラキラと、先程まで星の煌めきを見せていたお嬢様の瞳から、眩い光が消えていた―
42
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。
追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす
yukataka
ファンタジー
王国随一の名門ハーランド公爵家の令嬢エリシアは、第一王子の婚約者でありながら、王宮の陰謀により突然追放される。濡れ衣を着せられ、全てを奪われた彼女は極寒の辺境国家ノルディアへと流される。しかしエリシアには秘密があった――前世の記憶と現代日本の経営知識を持つ転生者だったのだ。荒廃した辺境で、彼女は持ち前の戦略眼と人心掌握術で奇跡の復興を成し遂げる。やがて彼女の手腕は王国全土を震撼させ、自らを追放した者たちに復讐の刃を向ける。だが辺境王ルシアンとの運命的な出会いが、彼女の心に新たな感情を芽生えさせていく。これは、理不尽に奪われた女性が、知略と情熱で世界を変える物語――。
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした
きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。
全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。
その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。
失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。
悪役令嬢に転生したけど、破滅エンドは王子たちに押し付けました
タマ マコト
ファンタジー
27歳の社畜OL・藤咲真帆は、仕事でも恋でも“都合のいい人”として生きてきた。
ある夜、交通事故に遭った瞬間、心の底から叫んだーー「もう我慢なんてしたくない!」
目を覚ますと、乙女ゲームの“悪役令嬢レティシア”に転生していた。
破滅が約束された物語の中で、彼女は決意する。
今度こそ、泣くのは私じゃない。
破滅は“彼ら”に押し付けて、私の人生を取り戻してみせる。
転生したので好きに生きよう!
ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。
不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。
奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。
※見切り発車感が凄い。
※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。
魔法使いとして頑張りますわ!
まるねこ
恋愛
母が亡くなってすぐに伯爵家へと来た愛人とその娘。
そこからは家族ごっこの毎日。
私が継ぐはずだった伯爵家。
花畑の住人の義妹が私の婚約者と仲良くなってしまったし、もういいよね?
これからは母方の方で養女となり、魔法使いとなるよう頑張っていきますわ。
2025年に改編しました。
いつも通り、ふんわり設定です。
ブックマークに入れて頂けると私のテンションが成層圏を超えて月まで行ける気がします。m(._.)m
Copyright©︎2020-まるねこ
悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜
言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。
しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。
それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。
「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」
破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。
気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。
「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。
「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」
学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス!
"悪役令嬢"、ここに爆誕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる