24 / 27
終章
23 エンドロールのその後で2
しおりを挟む
「あっつーい、何なのよ、もう!」
王都の夏は暑い。そんなこと、昔から分かってたことだけど、忘れていた。だって、王立学園に通っていた頃は、ここまで暑くはなかった。結界の中だったからなのか、暑いと言っても、こんなに我慢出来ないほどじゃなかったのに。
「あーもー、やだー。」
だからと言って、ギャレンに避暑地に連れていって欲しいと頼んでみても、全く相手にしてくれない。「妃教育に励め」それしか言わない。それどころか、ここ暫くは、顔も合わせていない。
理由は、分かっている─
(…ていうか、分かりやす過ぎるのよ!)
自身の愛用していた化粧品が、急に販売停止となり、手に入らなくなってから、肌の調子が良くない。色々試してみるものの、効果は無く、元の化粧品を売っていた店も、いつの間にか他所の国に移転していて、同じものを手に入れるのは絶望的。
それに何より─
(絶対!これが原因よね!あの、エロ王子!)
自分の胸元、少し見通しの良くなったそこに視線を落とす。
(…やだ、また少し…)
ギャレンの好みに合わせて育てた胸。化粧品と同じ店で購入していた豊胸薬は、化粧品と同じ時期から手に入らなくなってしまった。
今は、以前の半分の大きさしかないそこに触れてみる。
(なによ、これでもまだ立派な方じゃない。かさ増ししてたのなんて、ちょっとだけ。なのに、アイツ…)
あんなに好きだと、愛していると囁いていたギャレンの瞳に、もうあの頃の熱は無い。それでも、私達の関係は惰性で続いている─
「…ねぇ、あれないの。あの、かき氷ってお菓子。」
自分につけられた見張り役、侍女達に尋ねてみても、皆、首を振るだけ。
(本当、何なのよもう、最悪。)
何一つ、上手くいかない。折角、あの人が罰を受け、私の前から居なくなったのに。私の隣には、夢にまでみた王子様が居てくれるのに。私には、何も─
(…何で、あの人ばっかり。)
生まれも育ちも、何もかもが自分とは違った女。毎日、幸せそうに笑って、困ったことがあれば助けてくれる美形の執事まで侍らせて、そんな彼女が羨ましくてたまらなかった。
(私だって、あんな風に大切にされて、…愛されたかっただけなのに。)
自分だけの王子様。叶ったはずのその夢が、今はひどく遠い─
「…エンジェ様、手が止まっておられます。」
「ハァ、分かってるわよ!」
侍女の言葉に現実に引き戻される。渋々、強いられた他国語での書簡の練習を続けようとして、
「っ!?」
「きゃぁああっ!?」
「なにっ!?イヤァアア!!」
突然の轟音。ガラス窓が吹き飛んだ。テラスから、部屋の中へと突っ込んで来たのは─
「ドラゴン!?」
「うそっ!?」
「何故、ドラゴンが!?」
混乱する状況、逃げ出したいのに、怖くて身体が動かない。逃げ出そうとする侍女達の姿が見えて、慌てる。
「待って!待ちなさいよ!私を連れていきなさい!」
命じた声に、応える者はいない。我先に逃げ出す姿を大声で呼び止めるが、誰も、足を止めもしない。
(嘘、嘘嘘嘘っ!?いやよ、こんなところで!)
死にたくない!
そう願った思いが届いたのか、扉から、飛び込んできた人影─
「ギャレン!」
「エンジェ!」
助けに来てくれた王子様に、さっきまでの不満は全て吹き飛んだ。
(助けに来てくれた!やっぱり、ギャレンは私のこと!)
「エンジェ!こんなところで何をしている!さっさと逃げるんだ!」
「ギャレン!私、怖くて動けないの!助けて!」
「チッ!面倒な!」
「っ!?ギャレン!?」
舌打ちしたギャレンは、腰の剣を抜くと、そのままこちらに背を向けてしまった。手を貸してくれることもせず─
「来い!ドラゴン!貴様をこの場で滅し、俺は英雄ガロードを超える!」
「…ギャレン…?」
「我が魔剣の錆にしてくれる!」
「ギャレンッ!?」
剣を握りしめ、ドラゴンに向かっていくギャレン、恐ろしさに動けない私の前で、ドラゴンの吐いたブレスが─
「ッギャァアアアッ!?」
「ギャレンッ!!」
ギャレンを直撃した炎が、彼の身体を焼いた。そのまま、ゴロゴロと床をのたうち回るギャレン。どうすることも出来ずに見守る中、ドラゴンの視線がこちらを向いた。
「あ、あ、あ…」
這いずり、逃げようとして、ドラゴンの口がまた赤く燃えだすのが見える。
「い、い、嫌、嫌よ…」
こんな、こんなところで、こんな風に。
ドラゴンが口を開く。燃え盛る炎がこちらへと迫る─
王都の夏は暑い。そんなこと、昔から分かってたことだけど、忘れていた。だって、王立学園に通っていた頃は、ここまで暑くはなかった。結界の中だったからなのか、暑いと言っても、こんなに我慢出来ないほどじゃなかったのに。
「あーもー、やだー。」
だからと言って、ギャレンに避暑地に連れていって欲しいと頼んでみても、全く相手にしてくれない。「妃教育に励め」それしか言わない。それどころか、ここ暫くは、顔も合わせていない。
理由は、分かっている─
(…ていうか、分かりやす過ぎるのよ!)
自身の愛用していた化粧品が、急に販売停止となり、手に入らなくなってから、肌の調子が良くない。色々試してみるものの、効果は無く、元の化粧品を売っていた店も、いつの間にか他所の国に移転していて、同じものを手に入れるのは絶望的。
それに何より─
(絶対!これが原因よね!あの、エロ王子!)
自分の胸元、少し見通しの良くなったそこに視線を落とす。
(…やだ、また少し…)
ギャレンの好みに合わせて育てた胸。化粧品と同じ店で購入していた豊胸薬は、化粧品と同じ時期から手に入らなくなってしまった。
今は、以前の半分の大きさしかないそこに触れてみる。
(なによ、これでもまだ立派な方じゃない。かさ増ししてたのなんて、ちょっとだけ。なのに、アイツ…)
あんなに好きだと、愛していると囁いていたギャレンの瞳に、もうあの頃の熱は無い。それでも、私達の関係は惰性で続いている─
「…ねぇ、あれないの。あの、かき氷ってお菓子。」
自分につけられた見張り役、侍女達に尋ねてみても、皆、首を振るだけ。
(本当、何なのよもう、最悪。)
何一つ、上手くいかない。折角、あの人が罰を受け、私の前から居なくなったのに。私の隣には、夢にまでみた王子様が居てくれるのに。私には、何も─
(…何で、あの人ばっかり。)
生まれも育ちも、何もかもが自分とは違った女。毎日、幸せそうに笑って、困ったことがあれば助けてくれる美形の執事まで侍らせて、そんな彼女が羨ましくてたまらなかった。
(私だって、あんな風に大切にされて、…愛されたかっただけなのに。)
自分だけの王子様。叶ったはずのその夢が、今はひどく遠い─
「…エンジェ様、手が止まっておられます。」
「ハァ、分かってるわよ!」
侍女の言葉に現実に引き戻される。渋々、強いられた他国語での書簡の練習を続けようとして、
「っ!?」
「きゃぁああっ!?」
「なにっ!?イヤァアア!!」
突然の轟音。ガラス窓が吹き飛んだ。テラスから、部屋の中へと突っ込んで来たのは─
「ドラゴン!?」
「うそっ!?」
「何故、ドラゴンが!?」
混乱する状況、逃げ出したいのに、怖くて身体が動かない。逃げ出そうとする侍女達の姿が見えて、慌てる。
「待って!待ちなさいよ!私を連れていきなさい!」
命じた声に、応える者はいない。我先に逃げ出す姿を大声で呼び止めるが、誰も、足を止めもしない。
(嘘、嘘嘘嘘っ!?いやよ、こんなところで!)
死にたくない!
そう願った思いが届いたのか、扉から、飛び込んできた人影─
「ギャレン!」
「エンジェ!」
助けに来てくれた王子様に、さっきまでの不満は全て吹き飛んだ。
(助けに来てくれた!やっぱり、ギャレンは私のこと!)
「エンジェ!こんなところで何をしている!さっさと逃げるんだ!」
「ギャレン!私、怖くて動けないの!助けて!」
「チッ!面倒な!」
「っ!?ギャレン!?」
舌打ちしたギャレンは、腰の剣を抜くと、そのままこちらに背を向けてしまった。手を貸してくれることもせず─
「来い!ドラゴン!貴様をこの場で滅し、俺は英雄ガロードを超える!」
「…ギャレン…?」
「我が魔剣の錆にしてくれる!」
「ギャレンッ!?」
剣を握りしめ、ドラゴンに向かっていくギャレン、恐ろしさに動けない私の前で、ドラゴンの吐いたブレスが─
「ッギャァアアアッ!?」
「ギャレンッ!!」
ギャレンを直撃した炎が、彼の身体を焼いた。そのまま、ゴロゴロと床をのたうち回るギャレン。どうすることも出来ずに見守る中、ドラゴンの視線がこちらを向いた。
「あ、あ、あ…」
這いずり、逃げようとして、ドラゴンの口がまた赤く燃えだすのが見える。
「い、い、嫌、嫌よ…」
こんな、こんなところで、こんな風に。
ドラゴンが口を開く。燃え盛る炎がこちらへと迫る─
79
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?
ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」
バシッ!!
わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。
目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの?
最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故?
ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない……
前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた……
前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。
転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?
婚約破棄のその場で転生前の記憶が戻り、悪役令嬢として反撃開始いたします
タマ マコト
ファンタジー
革命前夜の王国で、公爵令嬢レティシアは盛大な舞踏会の場で王太子アルマンから一方的に婚約を破棄され、社交界の嘲笑の的になる。その瞬間、彼女は“日本の歴史オタク女子大生”だった前世の記憶を思い出し、この国が数年後に血塗れの革命で滅びる未来を知ってしまう。
悪役令嬢として嫌われ、切り捨てられた自分の立場と、公爵家の権力・財力を「運命改変の武器」にすると決めたレティシアは、貧民街への支援や貴族の不正調査をひそかに始める。その過程で、冷静で改革派の第二王子シャルルと出会い、互いに利害と興味を抱きながら、“歴史に逆らう悪役令嬢”として静かな反撃をスタートさせていく。
悪役令嬢だから知っているヒロインが幸せになれる条件【8/26完結】
音無砂月
ファンタジー
※ストーリーを全て書き上げた上で予約公開にしています。その為、タイトルには【完結】と入れさせていただいています。
1日1話更新します。
事故で死んで気が付いたら乙女ゲームの悪役令嬢リスティルに転生していた。
バッドエンドは何としてでも回避したいリスティルだけど、攻略対象者であるレオンはなぜかシスコンになっているし、ヒロインのメロディは自分の強運さを過信して傲慢になっているし。
なんだか、みんなゲームとキャラが違い過ぎ。こんなので本当にバッドエンドを回避できるのかしら。
前世ブラックOLの私が転生したら悪役令嬢でした
タマ マコト
ファンタジー
過労で倒れたブラック企業勤めのOLは、目を覚ますと公爵令嬢アーデルハイトとして転生していた。しかも立場は“断罪予定の悪役令嬢”。だが彼女は恋愛や王子の愛を選ばず、社交界を「市場」と見抜く。王家の財政が危ういことを察知し、家の莫大な資産と金融知識を武器に“期限付き融資”という刃を突きつける。理想主義の王太子と衝突しながらも、彼女は決意する――破滅を回避するためではない。国家の金脈を握り、国そのものを立て直すために。悪役令嬢の経済戦争が、静かに幕を開ける。
転生者だからって無条件に幸せになれると思うな。巻き込まれるこっちは迷惑なんだ、他所でやれ!!
柊
ファンタジー
「ソフィア・グラビーナ!」
卒業パーティの最中、突如響き渡る声に周りは騒めいた。
よくある断罪劇が始まる……筈が。
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しております。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる