そうだバックレよう~奴隷買ったら、前世の常識とか倫理観とかどうでもよくなった~

リコピン

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本編

11.完堕ち Side E

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「…来い。」

「え?」

立ち上がって呼ぶが、戸惑うだけのステラ。その手を取る。

「…おいで、慰めてやるから。」

「!?」

「どうして欲しい?抱き締めるか?」

「っ!?」

ステラの目が驚きに見開かれ、その顔が徐々に赤く染まっていく。

「あの、慰めてくれるって、あの…」

「ん?何だ?言ってみろ。」

「っ!?…あの、私の、お願いとか、聞いて貰える感じですかっ!?」

「お願い…?」

言って、挙動不審になったステラを見て、そう言えばと思い出す。

(加虐趣味、だったな。)

思い出したが、だが、だからと言って、今さら前言を撤回するつもりはない。

「ああ、何でも言うといい、何でもしてやる。」

らしくもなく、殴られるくらいのことには甘んじる覚悟で、そう口にした。

「…あの、あの、じゃあ、こっち。ここに、座って欲しいです。」

招かれたのは二人掛けのソファ。彼我ひがの身長差が四十センチ近いことを考えれば、己を座らせた方が何かとやりやすいのだろう。

ステラの指示に従って、ソファに腰を下ろせば、

「あ、いや、えっと、足を…」

「足?」

ステラの視線の先、己の足を見下ろす。

「足を、えっと、ソファの上で組んでもらっていいですか?あぐら?みたいな感じで…」

「…」

言われた通り、足を持ち上げ、ソファの上で折り畳む。

「…で?」

「あの、えーっと、それで…」

「いい、言え。何でもしてやる。」

「っ!あの!膝の上に座ってもいいですかっ!?」

「は?」

想定外。痛みを伴う何かを望まれると思っていたのだが、

「…だめ、ですか?」

「…いや、構わん、が…」

「!」

分かりやすく喜びの表情を見せたステラ、膝の上によじ登ろうとするのを、両手を伸ばして掬い上げた。

「っ!?あの!あの!あの!これは!これは、ちょっと違う!違います!」

「違う?何が?」

「抱っこじゃなくて、いや、抱っこなんですけど!向かい合ってじゃなくて!…その、横向き、横向き抱っこでお願いします!」

「…」

その二つに何の違いがあるのかは、正直不明だが、顔を真っ赤に染めて主張するステラの拘りに従う。

膝の上、すっぽりまではいかないものの、小柄なステラが両腕の中に収まった。

「…」

「…」

そのまま固まってしまったステラに、これで満足なのか尋ねようとしたところで、

「それで!あの!ちょっと!ちょっとでいいんで、何か優しいこと言ってみて下さい!」

「は?」

「その、お疲れとか、頑張ったね、とか、偉い偉いとか…、何でもいいので!」

「…」

(なるほどな…)

相変わらず意味は分からないが、ステラが何を求めているのかは分かってきた。見下ろす自分の腕の中で、固く目を閉じているステラ。胸元に下げている石を握り締める手が、小さく震えている。

緊張故か、不安故か─

小さく、息を吐いて、

「…お疲れ様。」

「!」

「…今日一日、よく頑張ったな?…疲れただろう?」

「っ!」

ねだられたから、ではない、心からの労いの言葉を口にする。

ステラの瞳と口元がうっすらと開いていく。

「…ありがとう。」

「…ステラは偉い。よくやってる。」

「…本当に?」

「本当だ。」

「…私、今日は、本当一日、ついてなくて。…上司には怒られるし、同僚は意地悪だし。」

「…」

「折角、仕事のやる気出てきて、今日は一日頑張ろーって気分だったのに、それをあのパワハラ上司、出鼻から挫いてくるんだよ?腹立つー。」

漸く、ステラの口から愚痴めいた言葉が出てきたことに安堵する。抱えているもの、全部、吐き出してしまえと思うから。

「…あと、同僚もね?あ、女の子なんだけど、本っ当、嫌味で、いつまでもネチネチネチネチ。毎日同じようなことばっかり言ってきて…」

「…」

「…それでも、まあ、ね。お仕事だし、お給料もらってるし、振られた分の仕事はきちっとやりたいんだけど。…やってたら、こんな時間になっちゃうし…」

「…」

「…でも、お金、稼がないと…、エリアスさんに、美味しいもの、食べさせて…」

ステラの呂律が怪しくなってきた。瞼も、今にも閉じそうになっている。

「…ありがとう、エリアスさん。…明日から、また、頑張るね…。頑張って…、エリアスさんに…」

「…ステラ?」

「…」

呼ぶ名に、返る返事が無い。反応の無い身体、小さく聞こえてきた寝息に、限界だったのだろう、ステラの疲労の深さを知った。

「…頑張ったな。」

不安になるほど軽い身体を持ち上げて、ソファを下りる。移動にも目を覚ます気配のないステラを彼女の私室へと運んだ。軽くかけた浄化、服のまま、ステラをベッドへと降ろす。

「…」

泣いた目がまだ少し腫れている気はするが、穏やかな寝顔、聞こえる寝息にもう一度、今度は大きく嘆息した。

「…参った。」

自覚する熱が身体に燻る。一瞬で膨らんだ想いが、解放を求めて暴れ続けていた。




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