【更新停止中】おキツネさまのしっぽ【冬再開予定】

リコピン

文字の大きさ
28 / 40
第二章 ツンデレ天邪鬼といっしょ

1-2.

しおりを挟む
1-2.

「シロちゃん!」

「?」

ホームルームが終わった直後、飛び出した教室。人目を忍んで訪れた校舎裏で、シロと向き合い、問い質す。

「シロちゃんは、さっきの子、知ってる?」

「ううん、知らない子なの。はじめて会ったのよ?」

「…」

フルフルと首を振るシロ。手を振っていたのは、どうやら子どもならではの気安さ故、だったらしい。

では、だとしたら―

「あの子も、『幽鬼』なのかも…」

「?」

以前、『幽鬼』の擬態に感じたような恐怖感は無かったけれど、あの子が瑞穂に何かをしたのは確実で―

「綾香さん…じゃ駄目か。綾香さん、見えないって言ってたもんね。じゃあ、やっぱり…」

取り出したスマホ。登録したきり、一度もかけたことのない連絡先を画面に呼び出す。

「…」

かけるには相当の思い切りが必要なその番号を睨み付けて、「通話」を押した。呼び出し音が鳴り始めたのを確認して、電話を耳に当てた、途端―

「はい…」

「っ!ご無沙汰してます!突然、すみません!」

耳元で響いた低めの声。テンパって顔に血が上っていくのがわかる。

「別に…。何か用があるんだろ?」

「はい!あの!」

落ち着いた声、話し方に、パニックが徐々に収まり、頭が冷えていく。

「多分、妖怪?ひょっとしたら、『幽鬼』かも?っていう子を見つけてしまって…」

「…どんなヤツだった?」

「えっと、角が二本生えてて、豹?か虎?柄のワンピースを着てる女の子でした」

「…人形ひとがた?」

「はい、シロと同じくらいのサイズの」

「…」

告げた「女の子」の外見に、電話の向こうの男が沈黙する。

「…あの、桐生さん?」

「…続けて」

「あ、はい。えっと、それで、その子のシッポの先がハート型?になってたんですが、それが友達に刺さっちゃって」

「『刺された』?」

「はい。多分そのせいで、友達の様子が一瞬でしたけどおかしくなってしまって。…その子、捕まえようとしたんですけど逃げられました」

「…友達は?」

「直ぐに元に戻ったので、そっちは大丈夫でした。…あの、今ので伝わりました?」

自分でも、焦って上手く言葉に出来ていない自信があるから不安になる。

「ああ。…話を聞いた限り、だが、予想はついた。現状、その子が何ともなければ危険は無い」

「そう、ですか。良かった…」

「…ただ、」

「?」

「念のため、直接そいつを見ておきたい。今日の放課後、その友達を連れて何処かに出てこれるか?」

「出来ます、けど。でも、」

彼にこれ以上迷惑をかけてしまうことに、抵抗を感じてしまう。

「…あんたの友達の様子も確認しておいた方がいいだろう?」

「…ありがとうございます。あの、放課後、駅かどこかでお茶することになってるんです。場所が決まったら、また連絡します」

「ああ。じゃあ、また後で」

「…」

約束を交わして通話の切れたスマホを握りしめる。さっきまではどうしていいかわからずに、とても不安だったけれど。耳元で淡々と語られた彼の言葉のおかげで、今は凄く安堵している。

「…」

だから―

恐怖からではないはずのこの胸のドキドキが、どこから来るのか。直ぐにわかってしまいそうな答えは考えないようにする。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...