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Ⅱ 【完結】五歳年下で脳筋な隊の同僚をからかい過ぎた話
Ⅱ 4.
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4.
ユラユラと揺れだした身体が、そのままグラリと椅子から落ちそうになったところで、席を立って、男の身体を支えた。
「…思った以上に、粘ったな」
酒場から持ち出した酒はそれなりに強く、慣れない者なら、コップ一杯で前後不覚になるような代物。それを―二人で飲んでいたとはいえ―ほとんど空にしてしまったのだから、かなり危ないところだった。
「…さて、どうするか」
先ほど、似たようなことをこの男も言っていたなと、今は、こちらにかなりの体重をかけて目を閉じるルッツを見下ろす。
「…ルッツ、立て」
「…」
腕に手をかけて引き上げれば、何とか立ち上がった身体。そのまま誘導し、ルッツには狭い寝台に向かって軽く押せば、そのまま倒れこむ巨体。寝台の軋みにヒヤリとしたが、どうやら無事にルッツの重みに耐えきってくれたらしい。
倒れこんだルッツを暫く見守る内に、やがて聞こえてきた寝息。完全に落ちたらしいルッツを眺めながら、改めて悩む。
「…このまま放置は、流石に危険か?」
ルッツが酒に強いとはいえ、相当量のアルコールを摂取させたことは間違いない。今のところ呼吸も安定しているが、一人にするのは流石に不安ではある。
「…参ったな」
酒場でブチキレていた時には、ルッツに痛い目を見せてやる、確かにそう思っていたのだが、酔い潰れた―振りをしていた―自分を気遣い、ここまで連れてきてくれた彼の態度に、怒りはとっくに消えてしまっている。行き過ぎたお節介に腹が立つこともあるし、筋肉量を全ての判断基準にしているのはアホだと思うが、ルッツの「優しさ」まで否定するつもりはない。
「…本当に、黙ってさえいれば…」
モテないわけ、ないのだ。
そう考えると、だらしなく寝こけるルッツの顔が妙に腹立たしい。まあ、少しからかってやれくらいの気持ちはまだ残っているし、彼を一人残して帰るわけにもいかない。それに何より、自分自身、かなりの酒を飲んでいる。眠いし、面倒だし、とてもではないが、今から宿舎に帰る気力なんて残っていない。
「…まあ、いいか」
最終的にそう結論付けて、上衣に手を掛けた。脱いだ隊服を椅子にかけ、髪を解く。肌着だけになった姿で、ルッツが占領する寝台の端へと潜り込んだ。
落ちてくる目蓋に、さて、明日の朝はどうなることかと考えて口角が上がる。常なら、起きようと意識さえすれば、どんな早朝であろうと目を覚ます自信がある。だがそれも、これだけ酔っていては、ルッツより先に目覚められるかどうか。まあ、その時はその時だと、訪れた睡魔に身を委ねる。
朝起きて、あわてふためくルッツの顔を見逃すのは惜しい気もする、と思いながら―
ユラユラと揺れだした身体が、そのままグラリと椅子から落ちそうになったところで、席を立って、男の身体を支えた。
「…思った以上に、粘ったな」
酒場から持ち出した酒はそれなりに強く、慣れない者なら、コップ一杯で前後不覚になるような代物。それを―二人で飲んでいたとはいえ―ほとんど空にしてしまったのだから、かなり危ないところだった。
「…さて、どうするか」
先ほど、似たようなことをこの男も言っていたなと、今は、こちらにかなりの体重をかけて目を閉じるルッツを見下ろす。
「…ルッツ、立て」
「…」
腕に手をかけて引き上げれば、何とか立ち上がった身体。そのまま誘導し、ルッツには狭い寝台に向かって軽く押せば、そのまま倒れこむ巨体。寝台の軋みにヒヤリとしたが、どうやら無事にルッツの重みに耐えきってくれたらしい。
倒れこんだルッツを暫く見守る内に、やがて聞こえてきた寝息。完全に落ちたらしいルッツを眺めながら、改めて悩む。
「…このまま放置は、流石に危険か?」
ルッツが酒に強いとはいえ、相当量のアルコールを摂取させたことは間違いない。今のところ呼吸も安定しているが、一人にするのは流石に不安ではある。
「…参ったな」
酒場でブチキレていた時には、ルッツに痛い目を見せてやる、確かにそう思っていたのだが、酔い潰れた―振りをしていた―自分を気遣い、ここまで連れてきてくれた彼の態度に、怒りはとっくに消えてしまっている。行き過ぎたお節介に腹が立つこともあるし、筋肉量を全ての判断基準にしているのはアホだと思うが、ルッツの「優しさ」まで否定するつもりはない。
「…本当に、黙ってさえいれば…」
モテないわけ、ないのだ。
そう考えると、だらしなく寝こけるルッツの顔が妙に腹立たしい。まあ、少しからかってやれくらいの気持ちはまだ残っているし、彼を一人残して帰るわけにもいかない。それに何より、自分自身、かなりの酒を飲んでいる。眠いし、面倒だし、とてもではないが、今から宿舎に帰る気力なんて残っていない。
「…まあ、いいか」
最終的にそう結論付けて、上衣に手を掛けた。脱いだ隊服を椅子にかけ、髪を解く。肌着だけになった姿で、ルッツが占領する寝台の端へと潜り込んだ。
落ちてくる目蓋に、さて、明日の朝はどうなることかと考えて口角が上がる。常なら、起きようと意識さえすれば、どんな早朝であろうと目を覚ます自信がある。だがそれも、これだけ酔っていては、ルッツより先に目覚められるかどうか。まあ、その時はその時だと、訪れた睡魔に身を委ねる。
朝起きて、あわてふためくルッツの顔を見逃すのは惜しい気もする、と思いながら―
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