異世界 恋愛短編 コメディ

リコピン

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Ⅱ 【完結】五歳年下で脳筋な隊の同僚をからかい過ぎた話

Ⅱ 5. Side L

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5.


視線を感じた―

覚醒する意識の途中で感じたそれに、枕の下、護身用のナイフに手を伸ばす。そこにあるはずの感触が無いことに舌打ちしそうになって、そのままベッドの下に転がった。迎撃のため、視線の元を確かめれば―

「なっ!?」

「…おはよう、ルッツ」

「っ!?っ!?」

ベッドの上、仰向けに寝転がり、頬杖をついて、こちらを見下ろす女。見たこともないような、幸せそうな笑顔を浮かべて―

「大丈夫?」

「なっ!?はっ!?お前、何っ!?」

「落ちたとこ、痛くない?」

「え?や、それは別にっ!」

「そう?良かった」

そう言って、クリスタに見えるその女はまたニッコリ笑って、ベッドの上、身体を起こし、

「ちょーっ!?待て、待て!何だ、お前!その格好!?」

「格好?」

女が不思議そうに自分の身体、下着しか身につけていない身体を見下ろして、また、にっこりと笑う。

「フフッ」

「っ!?」

ベッドを降りた女が、背を向けた。途端、その後ろ姿から目が離せなくなる。

ゆっくりと―見せつけてるのか?―、テーブルの方へと歩いて行く女。肩甲骨の浮いた白い肌、下ろしたままの髪が背中で揺れて、なだらかな曲線、引き締まった腰の下、でかくはないが、それでも十分丸みのある―

(イヤイヤイヤ!それはマズイだろっ!?)

クリスタの身体をなめ回すように見ている自分に気づいて、つっこんだ。ついでに自分の身体に起きた分かりやすい変化にも。

俺は童貞だ。童貞だが、女の裸は何度も見たことがある。隊の連中に面白半分に娼館に連れていかれることもあるし、痴女に気に入られ、全裸で腹の上に乗っかられたことだってある。だけど、童貞の捧げ先は決めていたから、他の女の裸を見ても、特に何が起きるわけでもなかった。なのに、

(っ!くそっ!何でだよっ!?)

椅子に掛けられていた隊服に手を伸ばしたクリスタ。袖に腕を通す彼女から視線を剥がせないまま、股の間、完全に勃ち上がっているモノが痛いくらいに存在を主張してくる。これを寝起きの生理現象と言い張るには、まあ、うん、無理があるだろうな。何せ、本気度が違う。

(何で?何でだ?何でクリスタでこんな??)

あれか、最近、「そろそろ童貞を捧げる彼女を~」とか考えていたのがまずかったのか?そのせいで反応してしまっているのかもしれない。やはり、さっさと恋人でも作って、童貞を―

(ん?いや、あれ?この状況って、もしかして…)

俺ってもう、童貞じゃない、のか―?

全く記憶にない童貞喪失に、サッと血の気が引いていく。なのに、何でだ?

青ざめて、戦意喪失しても仕方ない場面で、更にガッチガチに硬くなってしまった下半身。

(俺の童貞、クリスタに…)

多分、捧げてしまった。全く記憶にないが。それでも、そのこと自体に嫌悪はない。どころか、自身の身体の反応を見る限り―

(いや、でも、全く覚えてないってのはマズくないか?てか、…勿体ねぇ)

「…ルッツ?」

「お、おう?」

隊服を、いつもみたいにきっちり着こんでしまったクリスタがベッドへと近づいて来る。ベッドの横、まだ座り込んだままのこちらに視線を合わせて、

(っ!てか、近ぇーよ!?)

いつもと明らかに違う距離感。ただでさえ、こっちは混乱しきってるってのに、

(何だ!?本当に、何だってんだ!?)

肌の露出なんて、既にゼロ。なのに身体の一部はクリスタに反応し続け、あまつさえ、緊張までし始めている。彼女のいつもと違う雰囲気に飲まれてしまって、心臓の音が速い。

(そうか、髪…)

初めて見る、髪をおろしたクリスタ―

「…ルッツ、素晴らしい夜をありがとう」

「っ!?」

「…こんな風に、誰かと朝を迎えたのは初めてだが、いい体験になった」

「えっ!?初めてって!じゃあ、お前っ!?」

「ただ、今後のためにも、今回のことは互いに忘れてしまおう」

「はっ!?何でだよ!?」

「それが、互いのためだろう?」

「んなわけあるかっ!?俺はっ!」

「覚えておく、というのか?」

「うっ!」

そもそも、覚えてない、とは言えない状況。

「…まぁ、ルッツがそうしたいのなら。お前の意思までは変えられない。…ただ、隊では、今まで通りの態度で頼む」

「あ、や、それは、まあ、そうする、けど」

「ああ。では、私は先に宿舎へ戻る。ルッツは今日、非番だろう?ゆっくりしていくといい」

「お、おう…」

「ではな」

颯爽と去っていくクリスタを茫然と見送って、ふらつきながら立ち上がる。

漸く動き出した頭の中、色々と、思うところはある。けど、何よりも、問題なのは、そう、「記憶が無い」という、ただその一点につきる。何てことをやらかしてしまったのか、本当に―

「…もったいねぇことした…」





 
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