そんなコンなで毎日修行中!

西出あや

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9.妖狐の里へ

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 木々の間を縫うようにして山道を三十分ほどのぼっていくと、突然目の前が開け、大きなお屋敷が現れた。
 人間の目には見えないように、周囲には結界が張られているんだって。
 お屋敷の前の庭をキレイに手入れする庭師さん、お屋敷の中にいる長の世話係の人たち。
 当たり前だけど、全員妖狐なんだよね。
 こんなにたくさん妖狐がいるだなんて、人間の世界でずっと暮らしてきたわたしからすると、なんだか信じられない。
 すれ違うたびに、みんな康哉に向かって深々と頭をさげている。
 きっと、長の一番の跡継ぎ候補だから。
 でも、なんていうか……義務的な感じがする。
 わたしのお母さんのせいで、長になれないかもしれないって、前に言ってたっけ。
 お母さんだって、別に里を裏切るつもりなんかなかったはず。
 でも、里の人たちには、そんなふうに思われているんだっていうことが、少し滞在しただけで、イヤっていうほど伝わってくる。
 こんな中で、康哉はずっと育ってきたんだね。
 康哉に恨まれても仕方ない……とは言いたくないけど、康哉の気持ちがわからないほど、わたしだって鈍感じゃない。
 そして、康哉のあとをついて歩くわたしには、康哉以上に厳しい目が向けられている。
 きっと気づかれているに違いない。わたしが、半分人間だってこと。
 つまり――長の孫だってこと。
 今にも不安に押しつぶされてしまいそう。
 おねがい、和真。力を貸して……!
 わたしは、胸に抱いた和真をぎゅっと抱きしめた。
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